シュヴァル「…い、いよいよ夏合宿も終わり…です、ね。」
「あぁ、長いようであっという間な2ヶ月だったな。」
アルダン「皆様帰ってくると、また賑やかになりますね。」
エース「あぁ…そして秋のレースも始まるな。」
「みんな強くなったよ、秋のレースも楽しみだ。」
テン「ありがたきお言葉です…トレーナー様。」
シュヴァル「…あ、あのっ…それで何ですが…。」
「?」
シュヴァル「さ、最後に…行きたい所があるんですが…。」
「シュヴァルが言い出すなんて珍しいな…どこに行きたいんだ?」
エース「…ん、分かったぞ…''夏祭り''だな?」
「夏祭り?」
アルダン「近くの商店街で開催されるとお聞きしました。」
シュヴァル「…その…もっとチームの思い出が欲しいな…って。」
「そう言えば夏合宿の宿泊所近くでも夏祭りやってるって聞いたな。」
アルダン「ええ、あちらに比べ規模はこちらの方が小さいですが…。」
エース「トレーナーは去年行かなかったのか?毎年やってるって聞いたぞ。」
「…去年は、な?」
アルダン「ええ、そうですね。」
2人で顔を見合い、笑い合う。
まだ自分とアルダンしか居なかった時代が懐かしく思えた。
テン「…夏祭り…。」
シュヴァル「…もしかして、初めて…でしたか?」
テン「はい、あまりこの様な行事に参加する事が無いので…。」
シュヴァル「そ、その…テンさんにも色々教えたいな……って。」
テン「ありがとうございます、シュヴァルさん。」
「じゃ、夏祭りが楽しめるように練習頑張らないとな!」
エース「おーしっ、やるぜ!!」
アルダン「トレーナーさん、ご指示を。」
「まずは芝コースを3周!ペースは各々仕掛けどころを考えて走るように。
実践を意識した競り合いをイメージしてトレーニングに臨むように!」
シュヴァル「…は、はいっ…!」
「…ん、テン…重りを手にしてどうした?」
テン「トレーナー様、1走目だけアンクルを付けて走ってよろしいでしょうか?」
「…良い、が…大丈夫か?」
テン「はい、問題ありません。」
「分かった、何かあったらすぐ言うように。」
テン「かしこまりました。」
エース(あいつ…結局この夏合宿期間中ほとんどアレを付けてたな。)
アルダン(無理をしていなければ良いのですが…)
シュヴァル(重りを付けてあの走り…凄い…)
「─────始め!」
掛け声と共に、4人が走り出す。
まだメイクデビューを控えたウマ娘達が見物に来ていた。
モブウマ娘A「はや~い…さすがエースさんとアルダンさんって感じだよね。」
モブウマ娘B「でも、それについて行くシュヴァルちゃんも凄い…。」
(…この夏を通して、アイツらは幾重にも努力し強くなった…秋のレース楽しみだな)
そんな中で、皆の注目はあるウマ娘に注がれた。
モブウマ娘A「でも、やっぱりあの娘だよね!」
モブウマ娘B「そうそう、''貴公子''!」
「…?」
今走ってるのは、チームメンバーの4人だけ。
そんな呼ばれ方をするウマ娘なんか居ないと疑問に思った俺は見物に来ていたウマ娘に話しかけた。
「貴公子って?」
モブウマ娘A「わっ、トレーナーさんだ!」
モブウマ娘B「あの子ですよ、黄色い髪のテンポイントさん!」
モブウマ娘A「あの選抜レースの走りが印象的で貴公子だって呼ばれてるんですよ。」
「…テンが…。」
確かにパッと見は男のような顔立ちに見えなくもない…が。
本人が聞いたらどう思うかは…別にしておこう。
モブウマ娘A「ひゃー…惚れ惚れする走りだね~。」
モブウマ娘B「私たちも頑張らないと!」
そう言って、お辞儀をしトレーニングに向かうウマ娘達。
「貴公子…か…そうなると、テンが言う流星と掛けて…流星の貴公子…ってか。」
輝く金色の髪をなびかせて走るテンポイントの姿を見て…改めてそう実感する俺だった。
…………………
「お疲れ様、みんな。」
エース「おう、ありがとうなトレーナー。」
アルダン「先程何か話されていましたね?」
シュヴァル「ま、ままま、まさか……逆スカウト……!?」
「違うよ……。」
テン「………?」
「チームのみんなの事を褒めてたんだよ、まだメイクデビューをしてないウマ娘達がね。」
エース「ははっ、いよいよそういう立場になったんだなアタシらも。」
アルダン「えぇ、恥じないレースをしなければなりませんね。」
シュヴァル「……お、恐れ多い…。」
テン「……頑張ります。」
「さっ、シャワー浴びてきな!夏祭りの用意しなきゃね。」
アルダン「はい、分かりました。」
シュヴァル「テンさん、行きましょう…。」
テン「はい。」
エース「……………。」
「エース、どうした?」
3人の後を追わず、ターフをずっと眺めるエース。
エース「……いや…ちょっとよ…。」
「何か思う事があるって顔してるな。」
エース「……聞いてくれっか?」
「もちろん。」
エース「……アタシ、強くなってるよな?」
「もちろん、秋のレースが始まったらみんな驚くぜ。」
エース「……ああ。」
「弱気なんて、エースらしくないぜ?」
頭をクシャッと撫でると、エースは目を瞑りながらそれを受け止めた。
エース「な、なってねぇ……!
ったく…調子狂うな……でも、ありがとよ…トレーナー。」
「あぁ、またなんかあったらすぐに言ってくれよ。」
………………………………………………
【商店街前】
シュヴァル「ひ、人……凄いですね…」
アルダン「ええ、これも夏祭りの醍醐味ですね。」
テン「………………。」
エース「大丈夫か、テン?」
テン「すいません、少し気が動転してしまい…。」
「みんな、はぐれないようにな。」
シュヴァル「は、はいっ……。」
アルダン「では、トレーナーさんにエスコートしてもらいましょう。」
エース「おっ、賛成だな、それ!」
「そんなことだと思ったよ……何か気になるのあったら言えよ。」
エース「トレーナーのゴチ、やりぃ!」
「元気なんだから……。」
クイクイ。
「……ん?」
テン「……トレーナー様…あれはなんでしょう…。」
「射的だね。」
他の人がやっているのを見て目を輝かせるテンポイント。
「やってみる?」
テン「よろしいのですか…?」
エース「よーし、じゃあアタシもやるぜ!おっちゃん、2人な!」
射的屋「おっ、姉ちゃん意気込んでるねぇ!あいよ!」
エース「いいか、テン……まずは、こうやってだな。」
テン「はい…なるほど……。」
エース「後は狙って……こう!」
乾いた音ともにエースが景品に向かって弾を撃ち込む。
当たりはしたが……景品ゲットとまではいかなかった。
エース「まぁ、こんなもんだ。」
テン「……。」
真剣な表情で狙いを定めるテンポイント。
テン「ここです。」
当たり所が良かったのか、テンが撃った球は景品にヒットし落下した。
エース「ははっ、センス良いなぁ!」
テン「トレーナー様、どうぞ。」
「えっ、俺に?」
手渡されたのは、お菓子だった。
「テンがGETしたのに。」
テン「トレーナー様への贈り物でございます。」
「じゃあ、一緒に食べようか。」
テン「…ありがとうございます、トレーナー様。」
アルダン「では、私たちはどうしましょうか、シュヴァルさん。」
シュヴァル「あ、あの……僕…これがしたいです。」
指差した先にあったのは''金魚すくい''だった。
シュヴァル「その……部屋で飼いたいな…って。」
アルダン「ふふっ、釣り好きのシュヴァルさんらしいですね。」
シュヴァル「でも……出来る、かな…。」
エース「何でも挑戦だぜ、シュヴァル!」
シュヴァル「わ、分かりました……よ、よし…っ!」
テン「……トレーナーひゃま……こひらは…?」
「食べながら喋らないの…金魚すくいっていう遊びだよ。」
テン「…は、ひ……んっ……鮮やかですね。」
「だろ?昔は俺もよくやってたよ。」
シュヴァル「わ、わわっ……!!」
アルダン「惜しいですよ、シュヴァルさん。」
シュヴァル「……えっと、釣りのように…こうして……!」
結局、シュヴァルはゲットすることが出来なかった。
気を利かせた金魚すくいのおじさんが2匹サービスしてくれた。
シュヴァル「うぅ……センス無いのかな、僕…。」
エース「ははっ、楽しめればそれでOKってもんよ!」
アルダン「ええ、私も捕まえる事が出来ませんでした、そういう物ですよ。」
シュヴァル「……あっ…と、トレーナーさん、次はアレを…!」
テン「香ばしい匂いですね。」
「夏祭りで食べると普段食べる時よりも美味く感じるからなぁ。」
テン「では、私は……アレを。」
「かき氷か…何味にするの?」
テン「そうですね…トレーナー様選んでください。」
「じゃあ……レモンで。」
エース「トレーナー絶対髪の毛の色で選んだろ。」
「ぎく……っ。」
テン「はい、ではレモン味を1つ。」
アルダン「シュヴァルさん、お食べになるならそちら預かってましょうか?」
シュヴァル「あ、ありがとう……ございます…っ。」
気がついたらシュヴァルの手には、りんご飴やらわたあめやら色々持っていた。
シュヴァル「ご、ごめんなさい…!
せっかくの機会だから色々食べたいって思って……!」
「うん、大丈夫だから…ゆっくり食べな?」
エース「ははっ、腹空かせて来て良かったな!」
テン「……あぅ…トレーナー様…頭が……。」
「テンはテンで急いで食べるから…。」
エース「テン、舌出してみな?」
テン「…?……こう、でしょうか…?」
チラッと舌を見せるテンポイント。
その先端は赤よりも黄色がかっていた。
「……何か、良いな。」
テン「……むぅ……見ないでください。」
拗ねてしまったテンが何かを閃いた様子だった。
テン「こうすればトレーナー様もお揃いです。」
「んぐっ!?」
突然かき氷を口に突っ込まれた。
冷たいが、何とか飲み込むことが出来た。
テン「これでトレーナー様も同じようになります。」
(いや……あのだな、テン…)
シュヴァル(凄いなぁ…ナチュラルにああいう事が出来るって…)
アルダン(信頼の証拠ですね。)
エース(ちょっかい出すんじゃなかったな…)
ワイワイと賑わった夏祭りはすぐに更けていった……。
【帰り道】
「……結構使ったな。」
エース「ほとんどシュヴァルとテンだったけどな。」
シュヴァル「ご、ごめんなさい…。」
テン「楽しくて、つい……。」
「ま、まぁ…楽しんでくれたなら良かったよ。」
アルダン「ふふっ、来年も来たいですね。」
「そうだな、その頃には新しいメンバーとか居たりして?」
シュヴァル「新しいメンバーですか……。」
エース「出来るってなったらテンはどう思う?毎回メンバーには聞いてる質問なんだけどよ。」
テン「私は、トレーナー様の判断に従うまでです。
……ですが、仲間が増える事は良い事、かと。」
アルダン「秋のレースを見たウマ娘が選抜レースを見て欲しいと言われる可能性もありますし……。」
シュヴァル「え、っと……選抜レースってまだあるんでしたっけ…?」
「数ヶ月に1回複数レースが行われるよ。
今回テンが、走ったのはそれの夏の時期だったってこと。」
テン「私は入学して時間が経ちすぎていたので今回の選抜レースで担当トレーナーが出来なければ退学……という所まで行きましたが…
まだ入学して日が浅いウマ娘達は選抜レースに出れます。」
シュヴァル「な、なるほど……。」
「しかし、もしそうなると5人かぁ……。」
アルダン「昔の私達に言っても信じられない出来事ですね。」
エース「これもトレーナーの人徳ってやつか?」
「買い被りすぎだよ……。」
テン「いいえ、人徳です。私はそう言い続けます。」
シュヴァル「テンさんは相変わらずだね……。」
エース「トレーナーの言うことなら何でもやりそうだよな。」
テン「それは……トレーナー様が仰るなら……私は…///」
何故か自分の体を抱きしめるテンポイント。
「待て、何で顔を赤くする。」
アルダン「トレーナーさんだからですよ。」
「……えぇ…。」
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