【菊花賞 当日】
シュヴァル「…すぅ~…はぁ~…。」
京都レース場の控え室で1人、流石に息を整えるシュヴァル。
シュヴァル「…よ、よし…っ。」
アルダン「気合十分ですね。」
エース「あぁ、勝負服もよく似合ってるじゃねぇか。」
シュヴァル「…ありがとう、ございます。」
テン「シュヴァルさん、帽子が…。」
シュヴァル「あっ…ありがとうございます…。」
帽子を直され、顔もリラックスした表情に戻っていた。
「…緊張はするだろうけど…自分のレースに徹するんだよ。」
シュヴァル「…トレーナーさん…分かりました。」
マスク姿ではあったが、その顔つきは真剣な物だと伺える。
エース「大丈夫か?」
「熱も無いし大丈夫だよ、まぁ少し体はしんどいけど…。」
アルダン「では、私たちはスタンドに向かいましょう。」
エース「だな、行くぞテン。」
テン「分かりました。」
「…………………。」
シュヴァル「トレーナー…さん?」
1人、控え室から出ないトレーナーにシュヴァルは首を傾げていた。
「…頑張れよ、シュヴァル。」
シュヴァル「…ぁ…。」
そっと抱き寄せると、驚きつつもシュヴァルは胸に収まった。
シュヴァル「………は、い…///」
「スタンドで待ってるからな。」
そう言うと、トレーナーも控え室を後にした。
シュヴァル(…そうだ、これは僕だけのレースじゃない…トレーナーさんと…チームのみんなの為のレースでもあるんだ……頑張るぞ…僕…っ…)
…………………………………………………。
【パドック】
シュヴァル(…凄い…これが、クラシック級のGI…っ)
周りを見ると、各々勝負服に身を包んだウマ娘達が観客の声に応えていた。
観客A「ドゥラメンテ、怪我で出れなかったんだよなぁ、このレース。」
観客B「あぁ、残念だよな…でも…その影響が今日走るウマ娘達の熱を上げてるよな」
出走ウマ娘A「やれる…やれる…私にだって…!」
出走ウマ娘B「今日しかない…勝つんだ…絶対に…!!」
シュヴァル(空気が…ピリついてる…やっぱり、苦手だな…この雰囲気…)
──そんな中、シュヴァルの目にあるウマ娘が映った。
キタサン「シュヴァルちゃん!」
シュヴァル「─────キタさん…。」
同期で…''皐月賞''も''日本ダービー''も走った…僕なんかよりも全然凄いウマ娘…。
キタサン「やっと一緒に走れるね!」
シュヴァル「…………う、うん…。」
キタサン「レース楽しみにしてるよ、シュヴァルちゃん!」
シュヴァル(…ブレないメンタル…凄いな…いつだってキミは…怯まないよね…)
シュヴァル(キミは…キミの強さがある…そして、それを見つけられた…
僕はまだ…それが…無いな…。)
【緊張するだろうけど、自分のレースに徹するんだよ】
シュヴァル(…ううん、今は自分に出来ることだけ…。
僕は…同期に…キミに追いついてみせる…)
実況【いよいよクラシック級GIも終わりを告げようとしています。
長い長い…未体験の距離の先にあるゴールを目指すウマ娘18人。
残念ながら、2冠ウマ娘のドゥラメンテは怪我で出走断念となってしまいましたが
果たして、最後の冠を戴冠するのは…果たしてどのウマ娘か!】
シュヴァル(…っ)
キタサン「…すぅ……………。」
──ガッコン!
実況「今スタートしました!さぁ、先行争いはどのウマ娘か。
まだまだ先の長いレース、ペース配分はどうか?」
キタサン(シュヴァルちゃんは……っ)
シュヴァル(……この位置は、絶対に譲らない…っ!)
実況「中団を進む4番キタサンブラック。
その後ろに初GIレースのシュヴァルグラン。」
エース「…マーク策だな。」
アルダン「えぇ、ぴったりとくっついていますね。」
テン「如何でしょう、トレーナー様。」
「ついては、いけている…この後どうするか…だな。」
シュヴァル(まだ…まだだ…スタミナ勝負なら僕にだって…!)
キタサン(…位置を下げても…シュヴァルちゃんのマークが離れない…
─────ならっ!)
シュヴァル「…くっ!」
実況「キタサンブラック上がってきた!
シュヴァルグランも同じく位置を押し上げていく!」
キタサン「────やぁああああぁっ!!!」
シュヴァル「…………えっ………。」
一気に突き放されたシュヴァル。
何とか食らいつこうと加速を見せるが…その差は全く埋まらない。
シュヴァル(速い…っ…これが…キタサン…っ…)
実況「───キタサンブラック、飛び込んだ!!
ゴール板を駆け抜け、今1着でゴールイン!!」
観客「──ワァアアアアァアア!!」
実況「喝采だ!大喝采だ!!この景色、正しくお祭りだ!キタサン大祭りだ!!」
キタサン「やったーーー!やったよーーっ!!」
シュヴァル「はぁっ…はぁっ…かはっ…!!」
エース「…9着…か。」
アルダン「…大丈夫でしょうか…。」
「…………………。」
テン「トレーナー様。」
「あぁ、分かっている。」
息を切らし、膝から崩れ落ちるシュヴァル。
シュヴァル(負けた…まだ…僕には…追いつくことすら出来ないのか…っ)
歓声を浴びるキタサンブラックを見て、悔しさを滲ませるシュヴァル。
シュヴァル(明るくて…前向きで…
きっと、折れたって…すぐに立ち上がって走り出すんだろな…)
シュヴァル「…でも…でも、今に…見てろ…僕にだって…っ…!」
「…アイツは大丈夫だ。」
エース「トレーナー?」
「芯の強さは…チーム1だからな。」
……………………………………
【帰り道】
シュヴァル「…ありがとうございました、トレーナーさん。」
アルダン「…シュヴァルさん。」
「…………。」
エース「トレーナー?聞いてんのか?」
「…シュヴァル。」
シュヴァル「…あ…は、はい…?」
何か言われるのかと身構えたシュヴァルの頭を撫でた。
「…悔しかった、よな。」
シュヴァル「……ぁ…。」
「…強くなろうな、シュヴァルだけの強さを…俺もサポート出来るように
今以上に頑張るから。」
シュヴァル「……ぁ…トレーナー…さん…。」
「…だから、今は…素直になったら?」
シュヴァル「─────ぅ…。」
シュヴァル「……ぁ………あぁっ……!!」
悔し涙を流しながら…トレーナーに抱きつくシュヴァル。
シュヴァル「ぼ、く…っ…僕…っ!!」
「勝とう、同期に…
シュヴァル「…………はい……っ!!」
その様子を見ていた3人は何も言わずに静かに見守っていた。
エース(泣きたい時は泣けばいい…一緒に強くなろうな、シュヴァル)
アルダン(…ライバルに負けたくない気持ち…私も分かります。)
テン(…私も、いつか…)
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