【理事長室】
理事長「うむっ、突然呼び出してすまなかったな!」
「いえ、大丈夫です。」
快活に笑いながら扇子を拡げる秋川理事長。
その隣には、たづなさんも居た。
「それで、用件は…?」
理事長「…うむ、''あのウマ娘''について…な」
真剣な表情に変わり、以前の出来事を振り返る理事長。
「…その件、ですか。」
理事長「うむ、出来ることなら一度顔を合わせたいのがこちらの要望なのだ。
無論!キミが断るのならそれはそれで尊重するぞ!」
「…うぅーん…顔を合わせるのは…良いですけど…。」
たづな「何か気になることが…?」
「いや、どうして選抜レースとかに出ないのかなって…。」
たづな「なるほど…では、僭越ながら私の方から説明させていただきますね。」
咳払いをし、説明に移るたづなさん。
たづな「…簡単に言いますと…全く走る気が無いのです。」
「…走る気が…無い?」
たづな「分かりやすく言うと…気分屋と言うか…。」
「…なるほど…つまり、練習も真面目に取り組まない…とかですか。」
理事長「うむ、正直な話をすると…教官達も手を焼いている。」
「…でも、何でそんなウマ娘を僕に…?」
たづな「トレーナーさんのご活躍や任せても大丈夫という安心感からご提案しました。」
理事長「もし断りを入れられたらまた別のトレーナーを探すまで!」
「…まあ、会うだけ…なら。」
その言葉に、2人の表情は明るくなった。
理事長「感謝!そう言ってくれると思っていたぞ!」
たづな「実はもう呼んでいるです♪」
「え?」
たづな「多分、もう到着するかと─────」
コンコン。
その言葉の途中で、ノック音が響いた。
たづな「あっ、いらしたようです!♪」
パタパタとドアに向かうたづなさん。
(───きっと、手を焼くって言うくらいだから
凄い怖かったりするのかな…)
こちらも、ある程度身構えている中…ドアが開かれた。
─────そこに居たのは。
???「ちゃおちゃお~!♪お待ち~!♪」
「………………は?」
厳かな雰囲気に響く、明るい声に思わず変な声が出た。
中に入ってきたのは…明るい茶髪をファサファサと揺らしながらスキップ混じりで入ってきたウマ娘…だった。
(……思ってたウマ娘と違うぞ!?)
もっと目つきが怖かったり、近寄り難い雰囲気があるのかと思ってたが…。
「(…全然ラフだな…普通にトレーニングとかにも望みそうな感じなのに…)
…え、っと…キミの名前は?」
???「おっ、トレくん気になるの?♪」
「(トレくん…)…そりゃ、一応自己紹介は必要だろ…。」
???「しょーがないなー♪
…こほん、こほほん。」
わざとらしく咳払いをして、トレーナーの前に立つウマ娘。
???「初めまして、''ホクトベガ''でーすっ♪
ターフに舞い降りた…一等星!♪
を、目指しているんだけどねー♪」
「…目指してる…けど?」
ホクトベガ「まー、練習って…大変じゃん?♪
だから、程よく頑張って~…まったり行こうかな~って。」
「…ま、まったりって…。」
なるほど、これが手を焼く…ってこういう意味だったのか…。
「で、でも走ればそこそこのタイムは出るんだろ?…例えば、
ホクトベガ「…うーん、14秒くらい?」
「…えぇ…。」
平均タイムが12秒ほど。
これは選抜レースに出ても…と思ってしまうのは無理もない…のだが。
「でも、このままじゃ…。」
理事長「うむ、想像の通りだ。」
たづな「後は本人がどう思うか…ですね。」
ホクトベガ「まー、残念だけどそういう時もあるよね~♪」
本人は…何処吹く風…といった状態でケロッとしていた。
「…君はどうしたいの?」
ホクトベガ「んー、と言われてもなあ…。」
少し考え込むが…答えは出なかった。
「…とりあえず…トレーナー室に連れていきます。」
たづな「…よろしいですか?」
「まぁ…考え方が変わるかも…なので。」
理事長「懇請!よろしく頼むぞ!」
「…じゃあ、行くぞ…ホクトベガ。」
ホクトベガ「連れ去られる~♪」
「…はぁ。」
────────────────────
【その道中】
ホクトベガ「──しかし、トレくんも変わり者だねぇ♪」
「…なんで?」
ホクトベガ「正直、面倒いっしょ?」
「…馬鹿言え、そんな事思うか。」
ホクトベガ「…ほーん、してしてその心は?♪」
「まだ何もしてないのに諦めるのは俺が納得いかない。」
ホクトベガ「…ふ~ん?」
「きっと打開策があるはずだ…って俺は思う。」
ホクトベガ「…変なの~♪…似た者同士だね?♪」
「…似た者…なのか。」
そんな話をしていると、トレーナー室の前に着いた。
「着いたよ、ここがチームジュピターのトレーナー室。」
ホクトベガ「ほほぅ、中にチームメンバーが居るって事かんぬ?」
「…う、うん…。」
何かおもちゃを見つけたかのように目を輝かせるホクトベガ。
─────そして。
ホクトベガ「頼も~~~っ!!♪」
「…………!?」
元気よく扉を開けた。
もちろん、中にはチームメンバーが全員揃っていた。
エース「な、ななな、なんだ、カチコミか!?」
アルダン「…はて…どちら様でしょうか…?」
シュヴァル「…び、びっくりした…」
テン「…………はぁ。」
身構えるエースと首を傾げるアルダン。
驚いてしっぽを立たせるシュヴァルに何故か頭を抱えるテン。
反応は様々だったようだ。
「…はぁ、奇想天外な行動するな…こいつ。」
ホクトベガ「おっ、良いね良いね~♪」
4人の顔を見比べて、うんうんと頷くホクトベガ。
「…紹介するよ、この前言ってた…''ホクトベガ''だ」
ホクトベガ「はーいっ、ホクトベガで~すっ♪」
元気よく手を上げるホクトベガ。
それに対して、4人はキョトンとしていた。
エース「…お、おおぅ…コイツが…。」
アルダン「…なんと言いますか…とても、明るい方…ですね。」
シュヴァル(…僕、苦手…かも…。)
テン「…トレーナー様、これはチームに加入…という形でしょうか?」
「…とりあえず、お試しで…って形だよ、テンの時と同じで。」
ホクトベガ「お世話になりま~す♪」
ピースしながら、にへらと笑うホクトベガ。
その様子を見て頭を抱えるトレーナーだった。
ホクトベガ「ふむふむ、エーちゃんにアルル…シュヴァヴァにテンテンね!♪」
「もう既にあだ名で呼んでるし…。」
ホクトベガ「私の事は、ホクベーでもべべべでもHBでも好きなように呼んでね!♪」
何故か誇らしげに胸を張るホクトベガを見て、エースが耳打ちをした。
エース「…大丈夫か、トレーナー?」
「…ダメかもしれん。」
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