ブルアカの世界にTS転生したので日記を書く 作:TS百合好きの名無し
最近ブルアカ作品が増えてきて嬉しい。
◯月☓日 晴れ
今日、突然前世の記憶が甦った。
まだ頭が混乱しているが、考えを整理するためにもひとまず現在の状況をまとめようと思う。
結論から言えば、どうやら私はブルアカの世界にTS転生したらしい。
今日の授業中に流れ弾が脳天に直撃して気を失ったことをきっかけに、前世の記憶がどばっと脳内に溢れてきたのだ。あまりの情報量にマジで頭が割れるかと思った。
その記憶と現状を照らし合わせて考えると、ここがブルーアーカイブの世界であることはまず間違いない。
今の自分のプロフィールはざっとこんな感じだ。
名前:姫野アスカ
所属校:トリニティ総合学園
学年:2年生
部活:無所属
身長:146cm
趣味:読書
使用銃:アサルトライフル、スナイパーライフル
交友関係:ぼっち
で、肝心の自分の容姿だが……めっちゃ可愛い。
ツーサイドアップにまとめたピンク系の髪とその上で輝く赤いヘイロー。
くりくりした愛らしい赤い瞳。
低めの背丈と、庇護欲をかき立てるまだまだ幼さが残る顔立ち。
胸は身長のわりにちょっとある方だと思う。女の子の体なんて初めてだから合ってるか知らないが。
記憶が戻ってから改めて自分の容姿を鏡で確認した時は呆然としたものだ。
なんせ前世の私の好みをそのまま具現化したような美少女が映っていたのだから。
私、可愛い。ピンク髪最高。ロリ最高。美少女最高。
もはや可愛い以外の言葉が見つからない。
なんだこれはたまげたなあ……
眠くなってきたのでそろそろ寝る。
もしかしたらこれがただの夢ってこともありえるかもだし、次に目が覚めたらいつもの天井が広がっているといいなあ。
◯月☓日 晴れ
残念?なことに寝て起きても現状に変化はなかった。
まあ、美少女にTS転生したのが夢じゃなかったと理解して悪い気はしなかったので問題はない。前世にもこれといって未練とかないし。
さっそくだが今日は一つ嬉しい発見があった。
私の日記を記録しているこの携帯端末だが、なんと対価を払って物資を手元に召喚することが可能なのだ。一体全体どんな原理で動いているのかは不明だが便利なので気にしないことにする。キヴォトスだしそういうこともあるだろう。カレーパンうまうま。
……なんか明らかに特別製っぽい端末だけど転生特典か何かなのかな?
一応このことは秘密にしておいた方が良さそうだ。
それはそうとまだ気になることがあるので明日もこの端末について調べてみようと思う。
◯月☓日 晴れ
これは高性能になるわけだ。中身が最強だもの。今世でもよろしくね。
今日は最高に幸せな一日だった。
◯月☓日 晴れ
前世の記憶が戻ってから学校の授業がなかなか新鮮で結構楽しい。
元男としては銃を構えてドンパチするだけでワクワクする。元々サバゲーなどが好きだったから尚更だ。
そういえば、記憶を取り戻してから身体に不思議な力が漲り過ぎていて力の制御が少し難しくなった。力だけではなく思考速度なども強化されていると思う。
今までの私は中の下くらいの平々凡々な実力のモブ生徒だったので、普段から抑えておかないと面倒なことになるかもしれない。
◯月☓日 曇り
そろそろ友達を作りたい……というかぼっちから脱却したい。
記憶が戻る前の私は相当なコミュ障であり、常に帽子を目深に被り、伸びた前髪で目元を隠すというド陰キャなモブ生徒であった。そのためまともに会話できる友人が校内外問わず一人もいないのである。つらい。
相棒たちにも相談してみたが、友達は自然とできるものなので焦る必要はないと言われてしまった。嘘を言っているようには見えなかったので彼女たちの言葉を信じることにする。
私と相棒たちは友達じゃないのかと聞いてみると、一蓮托生のパートナーは友達よりも深い関係だから違うのだと無い胸を張って自慢気に返された。
◯月☓日 晴れ
ブラックマーケットを散策していたら阿慈谷ヒフミと遭遇した。
マーケットでペロロ様のグッズを発見した私がそれを興味本位で手にとって眺めていたら『ペロロ様に興味があるんですか!?』とすごい勢いで詰め寄られたのだ。そこから怒涛のペロロ様への愛を延々と聞かされ続けた。オタクの熱量はすごい。
結局彼女の熱量に押され、グッズを購入した私は彼女と連絡先を交換して別れることになった。
彼女は連絡先を交換する瞬間まで、私が自分と同じクラスの生徒だと気づいてなかったらしく、ひどく驚いていた。どんだけ影が薄かったんだ今までの私は。……いや、学校の外では前髪が目にかからないようにピンで留めてるから気づきにくいのかも。自分でもだいぶ印象が変わる自覚があるし。
なにはともあれ友達第一号ゲットだぜ!
◯月☓日 雨
あれからヒフミとはよく会話する仲になった。
彼女のおかげで学校で寂しい思いをすることはなくなったので感謝だ。
それによって学校に友達がいるとこうも学校生活の充実度が違うのかと気付かされた。
ペロロ様への愛に狂っているけど、基本良い子だから一緒にいて安心する存在だ。トリニティのトップ様が気に入るのも納得だな。ペロロ様への愛に狂っているけど。
――そういえば風の噂でシャーレのことを耳にした。
どうやら【先生】は今アビドスにいるらしい。ファンとして原作ストーリーの始まりを目撃できなかったのは非常に残念だが仕方ない。彼の動向については適度に影から見守っていくことにする。彼の失敗はこの世界の終わりを意味するからだ。【先生】は色々と背負っているものが大きすぎる。
……もし、私が【先生】として彼の立場に転生していたら多分吐いていたかもしれない。
だって私は知っているのだ。ブルアカの世界の平和が非常に危ういバランスで成り立っていることを。
この世界の彼が【本編】の【先生】であることを私は強く願っている。
……なんだか暗い雰囲気になってしまったな。これ以上は考えても仕方ないのでやめよう。
◯月☓日 晴れ
エ駄死の下江コハルと遭遇した。
人気のない場所で食い入るように本を読みながらワタワタと赤面を繰り返していたのが気になって、背後から中身を覗き込むとカバーを偽装したエロ本だった。君ってやつは本当に……
そっと声をかけたら素っ頓狂な声を上げていて面白かった。
ちょっぴり嗜虐心が芽生えてしまったので、その場で彼女をからかって遊んだ。生のエ駄死が聞けて私は満足である。
◯月☓日 曇り
今日、突然ナギサ様から呼び出しをくらった。
一体何事かと身構えながらティーパーティーの領域へと向かったところ、ナギサ様からただ単に私と話してみたかっただけなのだと言われた。
どうやらナギサ様のお気に入りであるヒフミが最近よく話すようになった【お友達】のことが前から気になっていたらしい。
ついでに普段のヒフミの様子をあれこれと聞かれたので教えてあげると、とても楽しそうに聞いてくれた。うーん、愛されてるなあヒフミ。これで未来での脳破壊が確定しているのだと思うとなんとも言えない気持ちになっちゃうね。
二人でヒフミの話をして盛り上がった後、最後にナギサ様から『もしよろしければ一つ相談に乗ってもらえないでしょうか』と、彼女の悩みを少し聞くことになった。
悩みというのは彼女の幼馴染みでありティーパーティーのメンバーでもあるあの娘……ラブリーマイエンジェルゴリラに関することであった。
どうやら最近のお転婆姫はティーパーティーの仕事そっちのけで頻繁に外出を繰り返しており、行き先が毎回違う上に理由を聞いても『探している人がいるの』としか答えてくれないらしい。
誰を何のために探しているのかも分からず、普段の彼女らしからぬ表情を度々見せるようにもなったのだという。
これについて何か知っていることはないかと言われたが、私には黙って首を振ることしかできなかった。
ううむ……私も記憶を取り戻してから一度も彼女の姿を見たことがないのを残念に思っていたが、一体どうなっているのだろうか。こんなシナリオあったっけ?
彼女は前世のブルアカで数少ない絆レベルをMAXまで上げていた生徒だったから色々と思い入れがある娘なんだよなぁ……
メモロビは常に1番目固定でバトル編成にもほぼ毎回入れてたくらいだし。
ナギサ様には『何か分かったら伝えますね』とだけ言ってその場は解散になった。
◯月☓日 雨
きょうはなんにもないすばらしい一日だった。
◯月☓日 晴れ
今日はコハルと一緒に正義実現委員会のお仕事を手伝った。
無所属の私が部活の体験という体でコハルに付き添う形でだ。
ハスミ先輩とマシロちゃんの胸囲の格差社会に慄いていたら、何かを感じ取ったコハルにエ駄死をくらった。
いやあれ見て無反応を貫くのは無理だよ。全体的に全てが大きいスーパーダイナマイトボディに思わず『でっっっっっか』って声が出ちゃったもん(この一言のせいでハスミ先輩が何かを勘違いして落ち込んでしまったので慌てて誤解を解いた)。
先輩たちはとても優しくて良い人だったし、コハルと二人で正義実現委員会の仕事をするのはそれなりに楽しかった。
帰りにそれを伝えたら、先輩たちから結構熱心に勧誘された。特にコハルが一番乗り気だったのが意外だった。
結局返事は保留にさせてもらったが、部活云々は関係なくいつでも遊びに来て良いと言われたので今後もちょくちょく遊びに行こうと思う。
◯月☓日 晴れ
今日はトリニティにある射撃場で遠距離射撃の練習をした。私には遠距離射撃の適性もあるらしく、狙い通りにポンポンと的に命中するのが面白くてつい夢中になってしまった。
うっかり射撃場の記録ランキングを変動させてしまったが、見る人はそんなに多くないので大丈夫だ……と思いたい。
今後本気で射撃場を使用する時は人のいない時間帯を選ぶことにする。
◯月☓日 晴れ
今日は正義実現委員会に遊びに行ったらコハルちゃんがいなかったので、近くにいたモブちゃんと交流した。
ゲームをプレイしていた頃からずっと思っていたけど正実モブちゃん可愛すぎないか? 目隠れ+黒髪ロング+黒セーラー服+ベレー帽とか私の好みドンピシャだよ。
二人でトリニティの最近の話題を話していたらあっという間に時間が過ぎ去ってしまった。なかなか話しやすい娘だったし楽しかったな。
ユミちゃん(今日交流した正実モブ娘ちゃんの名前)は商店街にあるケーキ屋のチョコレートケーキが好きとのことなので、次に会う時は差し入れしてあげようと思う。
◯月☓日 曇り
痴女が出た。
エロさとかそれ以前に衝撃が想像以上で宇宙猫状態になった。
流れで一緒に深夜徘徊をすることになり、ちょくちょくこちらを露出魔に仕立て上げようとするのをかわしながら痴女と交流をした。
◯月☓日 晴れ
ヒフミに誘われて一緒にブラックマーケットへ行った。
今さらだけど、闇市に気軽に足を運べる時点で彼女が【普通】や【平凡】を名乗るのは無理があると思う。
今日の彼女のお目当ては限定版ペロロ様の抱き枕(ぬいぐるみ)だった。どこがどう特別なのか素人の私にはさっぱり分からなかったが、マニアの間ではお宝グッズになるらしい。
ペロロ様を手に入れるところまでは何も問題はなかったけれど、帰ろうとしたところで金目当ての不良たちの襲撃を受けた。
そこそこ数が多かったため、もしもあの場にいたのがヒフミ一人だったら危なかった気がする。実際に初動で私が咄嗟に庇わなければ彼女は怪我をしていただろうし。
人数差は大きかったが私と相棒たちが組めばまず負けることはないので、終わってみれば圧勝だった。手加減のいらない相手だったので調子に乗ってそこそこ本気で戦ってしまい、ヒフミに私の実力がほぼバレてしまったけど……できれば秘密にして欲しいと頼んだら受け入れてくれたし多分大丈夫。
ところで今日の戦利品である例のペロロ様抱き枕だけど、意外にもなかなか抱き心地が良くて癖になる。今夜はさっそくコイツを抱いて眠ってみよう。
◆ ◆ ◆
「――そういうわけであのペロロ様の抱き枕、結構気に入ってるんだ」
「えへへ、アスカちゃんにも気に入ってもらえてよかったです。やっぱりペロロ様は最高なんです」
そう言って私の隣で嬉しそうな笑みを浮かべるヒフミを見ながら、私は歩く。
私たちは休日のお出かけでキヴォトス市内の繁華街にある大型商店街へとやって来ていた。休日ということもあって商店街は大いに賑わっているようだ。とにかく人が多い。ボーっとしているとはぐれてしまいそうだ。
ぶらぶらと歩いていた私はふと目に入った店を見て足を止めた。
「あ……」
「どうかしましたかアスカちゃ――ああ、あれはペットショップですね。アスカちゃんは動物とか好きなんですか?」
「うん。基本的にペットとして飼えるものは全部好き」
「そうなんですね! じゃあせっかくですし見ていきますか?」
「えーっと……」
私がヒフミに返事をしようとしたその時、耳に付けたインカムから元気な相棒たちの声が聞こえてきた。
『アスカ先生! 私はワンちゃんが見たいです!』
『先輩、落ち着いてください』
「……ヒフミがいいならそうしようかな」
「では行きましょう!」
元々今日はこれといった目的もないのでどこへ行くのも自由だ。適当に中を見回ったら昼食の時間にちょうど良さそうかな……なんて考えながらペットショップへ移動する。
二人で中に入ると、入り口付近でさっそく私が大好きな動物のトップ3に入るハムスターがお出迎えをしてくれた。
「ハムスターだ」
「うわぁ! ちっちゃくて可愛いです!」
「私、このサイズ感が結構好きなんだよね。」
ハムスターは……前世でも子供の頃から大好きで飼ってみたいと思っていたけど親にダメって言われて結局一度も飼ったことがないんだよなぁ……
見た目が変わってもネズミはネズミだからって父親が言っていたのを覚えている。愛嬌があって可愛いんだけどね。
「こっちは……犬と猫のエリアか」
「どの子も可愛いです!」
『わあっ、ワンちゃんがいっぱいです! 可愛いです!』
『猫……』
続いてやって来たのは犬と猫のエリアだ。あちこちに獣人っぽい存在たちがたくさんいるにもかかわらず、こういう普通の動物も普通に存在しているところにキヴォトスのごちゃまぜ感を感じる。まあいなかったら食糧とか色々と困るだろうしね。
「アスカちゃんは犬と猫ならどちらが好きですか?」
「猫……かな。気まぐれだけど寂しくなると足下にやって来て甘えてくるところとか、丸っこいフォルムや仕草が好きなんだ」
「私もです! 猫ちゃん可愛いですよね……飼ってみたいのは山々ですけどウチの寮はペット禁止ですし……」
ヒフミが残念そうな顔をした。
「トリニティはその辺が特に厳しいからねぇ。仮にもお嬢様学校だし」
「はい……」
肩を落としてズーンと沈んでしまったヒフミの頭を撫でながら私は言う。
「よしよし、元気だしなって。飼う以外にも猫カフェみたいなふれあいの場はあると思うから大丈夫だよ」
「そ、そうですよね! 私、猫カフェには前から興味あったんですよ!」
「時間がある時に探しておくよ」
私は元気を取り戻したヒフミから視線を切り、あるものを探してペットショップの全体を見回してみた。
「……やっぱりいないか」
「……? 何か探している動物がいるんですか?」
「まあね。私が一番好きな動物……かな」
残念ながらそれは見つからなかったけど、時系列的にもっと後の話だということは元々分かっていたので問題はない。
それに見つけたとして、今の私はこの世界の【先生】ではないのだからその役割を奪うことは極力しないつもりだ。
私はただ、推しの絆ストーリーの聖地を確認してみたかっただけなのだから。
「アスカちゃんの一番好きな動物って何なんですか?」
「ウサギだよ」
「ウサギ……」
「なんていうか……昔、知り合いにウサギが大好きな娘がいたんだ。面白いことにその娘もまたウサギのようでウサギではない性格の持ち主で、ウサギに【ぴょんこ】なんて名前を付ける可愛い娘で――」
「――――――アス、カ
「――え?」
その瞬間、私は驚いて思わず後ろを振り返った。
妙に耳に通る音で聞こえてきた
そこにはウサ耳型のヘッドセット、青色のセーラー服をベースとした制服、特殊部隊の最新兵装を身にまとった
「ミヤコ……?」
「……っ!」
「――えっ、うわあ!?」
「アスカちゃん!?」
不意打ちだった。その姿を見て自然と彼女の名を呟いた瞬間、彼女が凄まじい勢いで駆け寄って来て私は流れるように地面に押し倒されていた。
「え、ええっ!?」
そのまま間を置かずに彼女にずいっと顔を近付けられ、至近距離で視線が交わる。ふわりと彼女の白髪が垂れて私の頬を擽った。
とりあえずどいて欲しい……そう言おうとして、今にも泣き出しそうな彼女の表情が目に入り、私は口を噤んだ。
「ああ……間違いないです。間違えるはずがありません。たとえどんなにお姿が変わろうとも、私が
不思議と、彼女の言う
本当に、本当に信じられないことだけど、多分このミヤコ――彼女は――
「――まさか」
「ええ、そうですよ。私は――
私の口から否定の言葉は出なかった。ただ、納得だけがあった。直感のような何かで私もまた、目の前の彼女との間に確かな絆の繋がりを感じていたからだ。
食い入るように私の顔を見ていた彼女はやがて、ほんの少しだけ肩の力を抜いた様子で告げる。
「これが今の先生のお姿なのですね……どおりで探しても見つからないわけです。まさか先生が大人ではなく子供……それも女生徒になっているなんて考えもしませんでした」
「それはまあ……私もびっくりしたところだけど」
「先生、どこか二人きりになれるところへ行きませんか? 色々と話したいことが――」
「ちょ、ちょーっと! 一旦アスカちゃんから離れてください!」
「ぐえっ」
「むっ」
と、そこで今まで放置されていたヒフミが復活。彼女の肩を押しのけるようにして私たちの間に入り、私をゆっくりと立ち上がらせてくれた。
……あ、あのヒフミさん、心配して手を握ってくれるのは嬉しいんだけどちょっと力が強すぎる気が……
「何でしょう? 私たちの邪魔はしないでいただきたいのですが」
「あ、あなたは誰ですか!? こんな場所でいきなりアスカちゃんを押し倒してキ、キスをしようとするなんて! そういうのはよくないと思います!」
「私はSRT特殊学園所属RABBIT小隊のリーダーを務めている月雪ミヤコです。アスカせ――さんの忠実なる部下であり、公私共に深い付き合いの者です」
「えすあー……? よく分かりませんが、今のアスカちゃんは私とお出かけ中なので渡せません!」
「アスカさん、私と一緒に行くのは嫌ですか?」
「えっ、嫌じゃないけど……。ねえヒフミ、彼女も一緒に行っちゃダメ? 久々に会った知り合いなんだ。悪い娘じゃないのは私が保証するから」
「えっ、うーん……アスカちゃんがそう言うならいいですけど」
「なるほど。記憶のない彼女すら既にこれとは流石ですね」
どことなく呆れたような声色でミヤコがヒフミを見て言った。ん? 褒められているのかなこれ?
話がまとまりかけたその時、唐突にミヤコの携帯が鳴り出す。
素早い反応で即座に通話に出た彼女は、数回の簡潔なやりとりの後に携帯をしまって残念そうな顔で口を開いた。
「すみません、どうやら急用が入ってしまったようです。せっかくご許可をいただいたのに申し訳ありません」
「あぁ、任務なら仕方ないよ。そっちの方が大事だからね」
「はい……ようやく、ようやく先生と会えたのに」
本当に……心底残念そうに肩を落とす彼女。
心なしかヘッドセットのウサ耳もしょぼーんと折れているのが見えるような気がした。
表面上は無表情でいることが多い故に無愛想と思われがちな彼女だけど、こうして見ると結構感情豊かで分かりやすいな。
「っと、呑気に眺めている場合じゃなかった。ミヤコ、モモトーク出して。登録するから」
「あ、はい!」
登録画面を出してもらい、ささっと彼女を登録。私はそのまま彼女のアカウントへ一言だけメッセージを送った。
「……!」
「行ってらっしゃいミヤコ。気をつけてね」
ハッとした顔でこちら見る彼女へ向けて私は言う。
去り際にほんの一瞬だけ嬉しそうな表情を見せ、彼女は任務に向かっていった。
「……行っちゃいました。アスカちゃんって色んな人と知り合いなんですね。いつの間にか正義実現委員会の人たちとも仲良くなっていましたし」
足早に去っていくミヤコを見送った後、ヒフミは何か言いたげな顔で私を見て、それから自分の足元に視線を落としてそう言った。
知り合いか……確かに記憶を取り戻してからはどんどん知り合いが増えて交友関係の輪が広がっている自覚はある。
それはそうと私の自惚れでなければヒフミのこの様子は多分……
「もしかして……妬いてるの?」
「えっ!? い、いえ私は……別に」
「ヒフミって嘘をつく時に視線を右に逸らすよね」
「えっ、嘘ですよね!?」
「うん嘘」
「あっ」
慌てて自分の視線の方向を直そうとするヒフミにそう言うと、彼女はカマをかけられたのだと気づいてこちらを可愛く睨んできた。全く怖くないのでニコニコの笑顔で返したところ、彼女はバツが悪そうに視線を逸らして言った。
「アスカちゃんにとって私はたくさんいるお友達の一人に過ぎないのかもしれませんけど……私にとっては初めてのお友達だったんです」
「あれ? でもヒフミは私以外にも話をする娘たちがいるじゃん」
「確かに話をすることはありますけど、アスカちゃんみたいにペロロ様のことで一緒に盛りあがってくれて、一緒にお出かけもしてくれるようなお友達は初めてなんです」
それに、と彼女は続けて言う。
「アスカちゃんと一緒にいると何故かとても落ち着くんです。安心できる、とも言うのでしょうか。この人なら何も余計なことを気にせずにありのままの自分を見せてもいいんだって……上手く言葉にしづらいのですがそんな感じがするんです」
「ふぅん……そりゃ光栄だ。私もヒフミといる時はいつもよりリラックスできてると思うし、結構相性が良いのかもね私たち」
「……! はい、私もそう思います!」
ぱあっと輝く笑みを見せて喜ぶヒフミ。私は彼女の背後にぶんぶんと左右に振られる犬の尻尾を幻視した。
なんだろう、今日のヒフミは妙に可愛く見える。というかヒフミの私に対する好感度が想像以上に高い……高くない?
まあ彼女みたいな可愛い娘に好かれて困ることはないし嬉しさしかないから問題なし。
「そろそろ買い物の続きと行こうか」
「はい!」
機嫌の良くなったヒフミと一緒に私は引き続き買い物を楽しむのだった。
◆ ◆ ◆
深夜。月明かりと僅かな街頭の明かりのみが存在する人気の無いとある公園へと私はやって来ていた。
「彼女はもう来ているのかな……」
「お待ちしておりました、アスカ先生」
「うわっ!? びっくりした! 急に背後から現れるのは心臓に悪いからやめて……」
「……ふふっ、申し訳ありません。先生の驚く顔が見てみたかったので」
そこにいたのは昼間に商店街で出会った少女――月雪ミヤコだった。
〈今日の夜にあの公園で〉――あの時、別れ際に私が打ったモモトークのメッセージを受けて彼女はここにやって来たのだろう。
「よかった。違う公園にいたらどうしようってちょっと心配してた」
「私が先生との思い出の場所を間違えるとでも?」
「思わないけど一応ね」
先生ガチ勢のこの娘に限って間違えることはないと思っていたけど。
彼女はその視線を私の顔から身体に移して言う。
「制服のまま抜け出してきたんですね。トリニティは他と比べて校則が厳しい学園だと記憶しておりますが」
「今はこれしか服を持ってないから。……校則については思いっきり破っちゃってるけどバレなければセーフセーフ。そんなものよりミヤコとの約束の方が大事だからね」
「……ありがとうございます」
ほんのり頬を赤く染めたミヤコが嬉しそうに微笑む。
うん、これが見れただけでも校則違反をした意味があるね。
「それにしても……」
「……?」
やがていつもの無表情顔に戻った彼女がじーっと私を
「――先生、随分と可愛らしいお姿になりましたね」
「す、好きでこんなに小さくなったんじゃないからね!?」
私が覚えている公式の設定だとミヤコの身長は156cm。つまり彼女の方が今の私より10cm背が高いのだ。必然的に私は彼女の顔を少し見上げる形になる。これじゃどっちが大人なのか分からないね。
「いえ、否定しているわけではありません。どんなお姿であろうと私は気にしませんし先生は先生ですから」
「ミヤコ……」
「ただ――」
ほんの一瞬、こちらを見つめるその瞳に映ったドロリとしたナニカ。
ぞくりと悪寒のようなものが私の背に走った。
「――なんだかすごく美味しそうだなと」
「ふぁっ!?」
ずいっと彼女が一歩前へ踏み出す。
私は無意識に一歩後ずさった。
「先生、知っていますか? 10cm差のカップルというのは男性側が女性側にスキンシップをとりやすく、見た目のバランスもちょうど良いらしいです」
「そ、そうなんだ。でも今の私はミヤコより小さいから」
「今の先生は女の子なので問題ありません」
「そっかぁ」
話しながら私が後ずされば、その分の距離を彼女が詰めてくる。頬を紅潮させながら瞳を妖しく光らせる彼女はもはやその欲望を全く隠さなくなっていた。その姿はさながら獲物を前にした獣そのものだ。
――こ、こやつ、完全に発情してやがる!!
「あ……」
トン……と背中が木にぶつかり私は止まった。
「先生、あなたを失って私たちがどれほど悲しい気持ちになったのかあなたは知らないでしょう。私はもう、あんな寂しい思いはしたくないです」
彼女の手がついに私の肩を捉える。それほど力をこめられている感じはしないのに、何故だか絶対に逃げられないような気がした。
「ミヤ、コ……」
「ウサギは寂しくても弱らないそうですが……私は、ウサギではないので」
そうして彼女との距離が縮まって――
その日、私は年中発情期であるウサギの恐ろしさをその身をもって理解したのであった。
続かない。
ヒフミ
原作よりちょっとしっとりしてる。良い娘。
痴女
痴女。
コハル
多分友達になったら毎日楽しそう。
ミヤコ
無敵構文の使い手。卑しいウサギ。
ミカ
自走する地雷。マイラブリーエンジェルゴリラ。
正実モブ
モブという名のネームド。可愛い。
ナギサ
色んな意味で脳を破壊されそうな人。あはは……
ハスミ
でかい人。
マシロ
多分履いてない。
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