ブルアカの世界にTS転生したので日記を書く 作:TS百合好きの名無し
申し訳ないが書いてて流石に可哀そうになったので、良心の呵責によりマイルドな展開になってしまったことをここに謝罪しておく。彼女たちの火力?に期待していた方々はすまない。
いつも感想・誤字報告に深い感謝を。
というわけで補習授業部編 第7話です。
――第3次特別学力試験(最終試験)前日――
「やっほー☆ 遊びに来たよーナギちゃん!」
補習授業部の進退を賭けた最終試験を控えたその前日。ナギサはこっそりと人目を忍んで自分に会いに来たミカと二人きりで小さなお茶会を開いていた。
「よく……私のいる場所がここだと分かりましたねミカさん。一応、誰にも知らせていないはずなのですが」
「んー、なんとなく? ここに行ったらナギちゃんがいそうだなってところへ来ただけだよ? 実際ここにいたし合ってたじゃんね☆」
「……そうですか」
ただの勘だけで厳重に身を隠す自分を探り当てたと言い放つ幼馴染にナギサは頬を引き攣らせる。野生の勘というやつなのだろうか? まったく理解できないが。
「それで? ミカさんはどうして私のところへ? 先に言っておきますが、【補習授業部】の件に関しては私の管轄ですのでミカさんは干渉できませんよ?」
「別にー? ただナギちゃんの様子を見に来ただけだよ? ほら……なんだか最近色々と忙しいって聞いたからね」
どことなく棘を感じる声だった。彼女の咎めるような視線を受けナギサは口を噤む。
心当たりは……ある。目の前の幼馴染が溺愛するあの少女――自身の心すらも掻き乱してくる彼女――姫野アスカが補習授業部にいることについてだろう。溺愛する存在を突然取り上げられ、彼女の機嫌が悪くなっていることは間違いなかった。
「ねえナギちゃん、本気で彼女たちを退学させるつもりなの?」
誤魔化すことを許さない……そう感じる強い目で射抜かれ、ナギサは重々しく口を開いた。
「はい。そのつもりです」
「……」
沈黙。視線を合わせたまま身動き一つせず、二人の間に重苦しい空気が流れる。やがて先に沈黙を破ったのはミカの方だった。
「ねえナギちゃん。私って要領は良くないしナギちゃんたちほど頭が良くはないけどさ――何も分からないバカじゃないんだよ?」
――よく知っている。そんなこと言われるまでもなかった。そもそも何の能力も持たない者がティーパーティーに入れるはずがないのだから。むしろ彼女の頭は時にティーパーティーの誰よりもキレる時がある。まさに今がそうであるように。
ナギサにとっては最悪の状況だった。
「ナギちゃんが何を考えて、どういうつもりで【補習授業部】を作ったのか、どうしてあのメンバーを選んだのかも全部知ってるの」
「見えない敵がいて、守るべきものがあって、いつ襲われるか分からない怖さがあって」
「悩みもあって、その上で選んだのがあの選択肢だったんだってことも分かってる」
「知らないフリをしていたけどあの人の答案用紙にした工作だって本当は全部知ってる」
「でもさ、こんなになるまでどうして誰も頼ってくれなかったの?」
――本当に全て知られていた。それを理解したナギサは何も言えなかった。
「私たちはそんなに頼りない? 信用できない? 私がこんなことを言うのもあれだけどさ……ナギちゃんは人を信じなさすぎだよ」
そんなことはよく分かっていた。分かっていたけれどできなかったのだ。
胸が痛い。息が苦しい。辛い。モヤモヤしたものが胸の中を暴れまわって外へと出ようとする。
強く刺さった心の棘の痛みに突き動かされ、ナギサは思わずその言葉を吐き出していた。
「……か」
「え?」
「……分からないじゃないですか! 他人の心の中身なんて!」
ドン!と強く叩かれたテーブル。驚くミカに向けてナギサは口を開く。だめだ、引き返せと自分の冷静な部分が脳内で警鐘を鳴らしている。今すぐ自分の口を止めなければならないと分かっているのにそれができない。
「いつでも相手の顔色を窺って、その内心を探り合って、協力どころか蹴落とし、利用することしか考えられない者ばかりの貴族社会のこのトリニティで! 相手を心から信用することなんてできるはずがないでしょう!」
「……」
「あなたが気に入っているあの娘もそうです! あんな得体の知れない存在を何故そこまで信用しているのですか!?」
次第に言葉は熱を帯び、彼女は席から立ち上がっていた。
「でも……ナギちゃんもあの人のことは気に入っていたよね?」
「そのような事実はありません。【補習授業部】はこのトリニティに不要なゴミを集めたゴミ箱です。……ええ、そうです、あそこにいる者は全ていなくなることが正しいのです。そうすることが全てミカさんのためになります。今のミカさんはあまりにもおかしい……余計なゴミさえ掃除すればいつも通りのミカさんに戻れるはずなんです!」
――ブチッ。
話の途中から幼馴染が一体どんな顔をしていたのか――感情的になったナギサには全く見えていなかった。
そしてそれが、この場における致命的なミスを生んだ。
「あははっ☆ ナギちゃんってば、つまらない冗談を言うんだね!」
「ミカさん?」
突然けらけらと笑い出した彼女の様子を訝しむナギサ。
次の瞬間、フッと表情の抜け落ちたミカから絶対零度の視線が彼女へと向けられていた。
「……あの人を退学にさせるようなことがあったら絶対に許さないし、そうなったら私も一緒に出ていくから」
「な――」
ナギサの全身から血の気が引く。その言葉が耳に届くと同時にナギサはまるで時が止まったかような錯覚を覚えた。
脳が今の言葉の意味を理解することを全力で拒んでいた。
「ぁ……ぇ……ほ、本気、ですか……?」
「本気だけど?」
何かの間違いであって欲しい――そう考えて絞り出した言葉は即座に最悪の答えでもって返された。
「う、嘘……ですよね、ミカさんがそんなことを言うはずが……」
「あのさ、私がこうしてナギちゃんを止めようとしたのは今日が初めてじゃないよね? これまでも何回か周りに気付かれないように隙を見つけて私は声をかけてきた。『誰かを頼って』『心を開く相手をつくって』『一人で進めないで』って何度も何度も……」
「ミ、ミカさ――」
「それらを全部無視して、挙げ句の果てに今の言葉……流石にもう限界なんだけど」
「あ……」
もはや苛立ちを隠そうともしないミカ。彼女は表情を消したままスッと立ち上がる。
「ゴミ、だなんて……ナギちゃんにだけはそんなことを言って欲しくなかった」
「ま、待って……!」
幼馴染の目に浮かぶのは失望。ナギサの伸ばした手が虚しく空を切る。
大きな間違いを犯した。そのことに気付いた時にはもう遅く、ミカは一度も振り返ることなく部屋を去っていった。
「あ……あぁ……ぁぁぁ」
残されたナギサはふらふらと力無く席に座り、そのまま両手で顔を覆う。ミカが去ったその時から、じわりと視界は既に滲んでいた。
そうして静かにすすり泣く彼女に寄り添ってくれる人はどこにもいなかった。
◆ ◆ ◆
――最終試験当日深夜――
「用意はいいですかアズサちゃん?」
「問題ない」
「では、行きましょうか」
お互いに目配せをして配置に付く二人。ハナコとアズサは人目を忍んでとある場所へとやって来ていた。
先行するハナコが目の前にある扉をノックすると、やや遅れて中から疲れ切ったような覇気のない声が聞こえてきた。
「……紅茶でしたらもう結構です」
ハナコたちはその言葉に返事をせず、黙って中へと入る。
部屋の中にはティーパーティーのホストである桐藤ナギサがこちらに背を向けた状態で椅子に腰掛けていた。
「……?」
「……可哀そうに、眠れないのですね」
「っ!?」
ハナコが声をかけると同時にビクリと身体を震わせたナギサが慌てて後ろへ振り返る。そうしてハナコの姿を視界に入れた瞬間、彼女の目が大きく見開かれた。
「それもそうですよね、正義実現委員会がほとんど傍にいない状態……不安にもなりますよね、ナギサさん?」
「う、浦和ハナコさん……!? あなたがどうしてここに……!?」
「それはこのセーフハウスをどうやって知ったのか、という意味ですか? それはもちろん、全て把握しているからですよ。合計87個のセーフハウス、そしてそのローテーションまで……ふふ♡」
「……!?」
「変則的な運用もおおよそ把握しています。例えば……今のように心から不安な時は、ここの秘密の屋根裏部屋に隠れるということも♡」
「そんなっ……!」
ガタっと立ち上がりかけたナギサに向けて、背後から現れたアズサが銃を彼女の背に押し当てる。
「動くな」
「……!」
「あぁ、もちろんここまでの間に警備の方々は全員片付けさせていただきました。だからこそ、こうやって堂々と来たわけですが」
にっこりと微笑むハナコを見てナギサの身体は硬直する。
「白洲アズサさん、浦和ハナコさん……まさか……! 【裏切り者】はひとりではなくふたり……!?」
「単純な思考回路ですねぇ♡私もアズサちゃんも、ただの駒にすぎませんよ。指揮官は別にいます」
ナギサの瞳が大きく揺れる。隠しきれない動揺がそこに表れていた。
「そ、それは誰ですか……!!」
大きな焦りを顔に浮かべて尋ねるナギサの質問に答えず、ハナコはスッと笑みを引っ込めて逆に尋ね返した。
「そのお話の前にナギサさん……ここまでやる必要、ありましたか?」
「……」
「補習授業部のことです。ナギサさんの心労は、よく分かります。ですがこうして【シャーレ】まで動員して、何もここまでやる必要は無かったのではありませんか?」
「それ、は……」
「最初から怪しかった私や、アズサちゃん、アスカちゃんは仕方ありません。ですが……ヒフミちゃんとコハルちゃんに対しては、あんまりだと思いませんか?」
「……」
「特にヒフミちゃんは……ナギサさんと、仲が良かったじゃないですか。どうしてこんなことをしてしまったのですか? ヒフミちゃんがどれだけ傷ついてしまうのか、考えなかったのですか?」
「……そう、ですね。ヒフミさんには悪いことをしたかもしれません。……ですが、後悔はしていません。全ては大義のため。確かに彼女との間柄だけは、守れればと思ってはいましたが……私は……」
ナギサがそう言った次の瞬間、アズサはハナコから真っ黒なオーラが立ち昇る様を幻視した。
「ふふっ♡」
貼り付けたような笑みを浮かべ、ハナコがナギサへ一歩近づく。たった今、この場における結末は確定した。ハナコのその行動はナギサがこの場において決定的なミスを犯した証であった。
「ではあらためて私たちの指揮官からナギサさんへ、メッセージをお伝えしますね」
より近くなった距離で、よく聞こえるように、よく理解できるように、ハナコは【彼女】の雰囲気と声を真似てその言葉を放った。
「『あはは……えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様とのお友達ごっこ』……とのことです♡」
「…………ぇ……?」
何を言われたのか分からない、そんな顔で呆然とするナギサ。
それを見たハナコは笑みを深めて追撃した。
「ふふっ♡可哀そうに……結局何にも気づけないあなたはただの道化でしたね? 偽りのお友達ごっこは楽しかったですか?」
「ぁ――」
言葉にならない声。そこまでがナギサの限界だったのだろう。
プツンと糸の切れた人形のように気を失ったナギサが地面に倒れる。
「……あら? まだ続きがあったのに仕方のない人ですね」
「ヘイローも消えてる……完全に気絶したみたいだ。どうするハナコ、 念のために一度起こして予定通り弾丸は撃ち込んでおく?」
しゃがみこんで彼女の容態を確認したアズサが銃を見せながら問うと、ハナコは本当に残念そうな顔で首を振った。
「やめておきましょう。多分このまましばらくは目を覚まさないと思いますし」
「分かった。…………ところでハナコ、最後のセリフは本当に必要だった?」
「もちろんです♡お灸をすえてきてくださいと本人からも頼まれましたし。本音を言えばまだ全然言い足りませんけど♡」
「……そうか」
これ以上聞くのはやめておくべきだ。絶対にハナコは怒らせてはいけないということを強く実感したアズサであった。
「……さて、これで目標は無事に確保できましたので、次の段階へと作戦を進めましょうか」
「この日のために準備はしてきた。相手の規模は不明だがそれなりに時間は稼げるはずだ」
「アズサちゃん、無理はしないでくださいね?」
「分かってる。タイミングを見計らって合流するから問題ない」
気を引き締めてそう答えるアズサを見て、これなら大丈夫そうだとハナコは判断した。
「これで本当の【裏切り者】も焦って動くはずです。今夜の相手の行動次第で決着が楽になるので、相手が考えの足りない愚か者であることを祈っておきましょう」
「ハナコは敵の正体に心当たりがあるのか?」
「ええ、まあただの推測ですが。……正直なところ、本命だと思っていた人が実は白だったので、本当に自分の考えが合っているか自信はありませんが……」
「……」
「お喋りはこのくらいにしておきましょう。行きましょうアズサちゃん」
「ああ。絶対にやり遂げてみせる」
「ふふっ、頼りにしていますね♡」
気絶したナギサを脇に抱え、二人は次の作戦を開始するのだった。
次回、補習授業部VSアリウス
ミカ
ナギちゃんの分からず屋!ぷんぷん!
ハナコ
うーん、完全な消化不良です……これから手頃なサンドバックがやって来るのでそちらで発散するしかなさそうですね。
ヒフミ
あはは……
コハル
うぅ、助けて先生……!
先生
ナギサ……強く生きてね……
アズサ
陽動は任せてくれ
アスカ
大丈夫かなナギサ……試験が終わったら精一杯フォローしてあげないと。
ナギサ
……返事がない。ただの――
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