ブルアカの世界にTS転生したので日記を書く 作:TS百合好きの名無し
アビドス編、最初から最後まで興奮しっぱなしでした。
最強対決がガチSDやアニメーションで描かれるし、生徒の自立を促す先生の大人らしい姿が見られたし、個人的に最後のタイトル回収が綺麗すぎた。夢が残した足跡ってそういう……
最終章も大きく絡んできて色々な謎が少しずつ解き明かされていくのも楽しかったですね。流石ブルアカとしか言えない(ここまで早口)
――ただし、ガチャを一気に畳み掛けてきたのは許してないけどな!
(推しの水着が2つ来て石の悲鳴を上げながらひゃっほいしてる)
(限定ホシシロは当然のように天井)
アビドス編もアリウス夏イベも情報量が多すぎて興奮がおさまらないね。
……長くなりましたが、まあそれはそれとして、補習授業部編 第8話です。
――ナギサたちのいたセーフハウスにて。
「セーフハウスを発見! ターゲットは見当たりません!」
「……周囲を捜索しろ! できるだけ静かに!」
室内へぞろぞろと入ってくるガスマスクを着けた武装兵たち。その正体はアリウスから送られてきた生徒たちだった。その目的は現ティーパーティーのホストである桐藤ナギサのヘイローの破壊……すなわちナギサの暗殺であった。
「合流するはずの【スパイ】はどこだ?! あいつを早く探せ!」
見つからないターゲットに苛立ちを感じながら周囲を捜索するアリウス生たち。そこに突然無線連絡が入った。
『――こちらチームⅣ、奇襲に遭遇!』
「……なにっ!?」
『【スパイ】です! 【スパイ】が裏切りました!』
『――うわああああああああっっ!?』
仲間の悲鳴を最後に通信は一度途絶える。
「【スパイ】が裏切っただと!? な、何が起きてるんだ!!」
混乱する指揮官へ反応するように無線が再び繋がり、そこから抑揚の無い声が聞こえてきた。
『裏切り。それ以上でもそれ以下でもない。目標は私が先に貰った』
「な、何故だ! どうしてそんなことを……!」
予想だにしない事態に焦る。元凶である【スパイ】に理由を問えば、全く意味の分からない回答が返ってきた。
『早く終わらせて、試験を受けなきゃいけないから』
「……え?」
『ちなみにもう正義実現委員会に報告は届いてる、逃げるなら今のうち』
固まる指揮官へ追い打ちをかけるように【スパイ】がそう告げると今度こそ完全に通信は途絶えた。
「……退却しますか?」
「いや、ブラフだ。
部隊の隊員に声をかけられ落ち着きを取り戻す指揮官。
普通であれば退却を考える場面でありながら、アリウスの指揮官は迷うことなく自信を持って宣言した。
「気にすることはない、行け!」
「「「「「了解!!」」」」」
揃った動きでアリウスの生徒たちは進み続ける。
正義実現委員会は来ない。元々そういう条件でこの作戦は決行されているのだから。
「――後悔させてやるぞ【スパイ】め」
「こちらです!ターゲットを連れたまま、この建物に入るのを確認しました!」
「なるほど……ここに陣地を築いたということか、白洲アズサめ」
【スパイ】――白洲アズサを追ってアリウスの生徒たちがやってきたのは補習授業部が使用している合宿所であった。
目撃情報もあるためターゲットたちがここにいるのは間違いないが……
「中に通ずる入口は二箇所のみ! その内一箇所はバリケードで塞がれています!」
「開いている入口は一つ……いや、そっちは罠だ。塞がれたバリケードを爆発させて、そちらから侵入せよ!」
「騒ぎになりそうですが、大丈夫でしょうか……?」
「ああ、構わん。ちょうど【スクワッド】からも連絡が来た、すぐに増援部隊がトリニティ自治区に入ってくる。こうなってはもはやトリニティとの全面抗争も想定した方が良い。しかしできる限りその前に、ターゲットを回収する!」
指揮官の指揮に従い建物へと侵入するアリウスの生徒たち……そこで彼女たちを出迎えたのはアズサが仕掛けた数々のトラップであった。
「ぐあああああっ!」
「くそっ! うわあ!?」
「くっ、退くな退くな! 攻め入ってしまえば数がある以上、こちらが有利!」
ドオオオン!!
「く、クレイモアだと! どわああ!?」
「なんだ、ビニール袋? いや?IED!? ぎゃあぁぁ!?」
爆発に次ぐ爆発。上がる悲鳴。あちこちでアズサのトラップが火を吹き、アリウスの生徒たちを撹乱する。
そうして散々に振り回されながらも指揮官たちはついに目標の元へとたどり着く。
「……手こずらせてくれたじゃないか、白洲アズサ」
アズサの隣には浦和ハナコが立っており、数の減ったアリウスを見て満足そうに頷いていた。
「……なるほど、だいぶ減りましたね。流石はアズサちゃん」
「うん」
アズサたちを油断なく見据えながらも指揮官はターゲットを探す。しかしどこにも見つからない上にこの場所は……
「このまま行き止まり、か? ターゲットはどこにやった?」
「隠した」
「……早めに吐いた方が良い。他の部隊がこちらに向かい、今にもこの建物を包囲しようとしている。逃げても抵抗しても、どちらにせよ無意味だ」
「……増員?」
「ああ、それも部隊単位でな!」
「……【スクワッド】は?」
「【スクワッド】が来るまでも無いさ。それにどうやら、他にやることがあるみたいでね」
「なら問題ない」
焦る様子もなくアズサはハナコと共に後方へと逃げていく。
「くっ、この期に及んで……! この先に体育館しか無いのは把握済みだ! ……それに、これ以上トラップが無いこともな! 逃がすか、追え!」
まったく、なんと往生際の悪い【スパイ】なのだろうか。こちらを散々コケにしてくれた苛立ちに声を荒げ、指揮官は進軍を宣言した。
(この先は完全な行き止まり……そちらにもはや勝利は無い。終わりだ白洲アズサ……! む……!?)
照明の消えた暗い体育館の奥にふらりと現れる数人の人影。それがアズサたちと合流する。
「……なるほど、逃げたのではなく待ち伏せだったと。だが、それだけか?」
指揮官が馬鹿にしたような目でアズサを見る。
拍子抜け。視界に映る敵の数は、援軍というにはあまりも少なすぎた。
「たった五人で私たち相手に、何分耐えられると思っているのだ。こんな退路も無い場所で!」
「その通り、もう退路はない。お前たちは逃げられない」
「ですね、一先ず仕上げと行きましょうか♡」
仕上げ? 一体何を……?
訝しむ指揮官の目に突然見慣れぬ大人の姿が映った。ヘイローを持たない大人の男性……彼の正体はおそらく。
「“待ってたよ”」
「……っ!」
「ご存知かは知りませんが……補習授業部の担当であり、【シャーレ】の顧問の【先生】です♡」
「殲滅戦を始める。先生、指示を」
「ばっちり準備はできてるよ」
「“行こう、補習授業部!”」
「……ヘイローすら持たない大人が一人増えたところで何になる! 捻り潰せっ!」
補習授業部とアリウス。互いの目的を果たさんと両者はついにこの場所で激突した。
「――ふぅ」
開戦と同時に補習授業部の中から飛び出す一際小さな影。
その影はアリウスの集中砲火をものともせず、機敏にジグザグと動きながら一気に本隊の中へと突っ込んできた。
「なっ、こいつ!」
「速い……!」
「撃て!撃て!撃てぇー!」
「当たらな――」
瞬きする間に縮まる両者の距離。元々の的が小さい上に動きが恐ろしく速く射線で捉えきれない。
暗闇に瞬くマズルフラッシュ。あっという間に懐へと潜り込まれ、被害が出た。
「がっ!?」
「うあっ!?」
「……まず二人」
「んなっ……!?」
動揺したアリウス生たちの注意が完全にそちらに集中した瞬間、横から補習授業部の一斉射撃が襲いかかった。
「あがっ!?」
「ぎゃんっ!?」
「ぐあっ!?」
「……ちいっ! チームⅡとⅢで向こうに当たれ! こいつはこちらで処理する!」
アリウスは状況の悪化を避けるため部隊を分ける。しかしそれによって守りの薄くなった本隊へと2人目の刺客が襲いかかった。
「……指揮官の守りを薄くしてくれて助かる」
「白洲アズサ……!」
小柄な影とアズサの二人は慣れた動きで部隊を内側から撹乱させ、隊員の意識を次々と刈り取っていく。
同士討ちの危険によりアリウス側は無闇に発砲ができず、かと言って高レベルの技量を持つ2人を相手に、咄嗟の判断が求められる近接高速戦闘ができるほどの練度があるわけではないため、彼女たちはロクに反撃もできずにその数を減らしていった。
「くそっ!」
ちらりと様子を窺ったチームⅡとⅢの方も【先生】率いる補習授業部の連携ですぐに壊滅状態に陥っていた。
「ば、馬鹿な……こんなことが……!」
数はこちらが圧倒的に多かったはず。なのに今はそのほとんどが戦闘不能となり地に伏している。
「相手はたったの5人だぞ!?」
「練度が足りなかったね。それじゃあおやすみ」
「ぐっ、うっ……!」
最後に残った指揮官も撃たれ、戦闘開始から数分でアリウスの部隊は全滅することとなった。
「……か、勝った?」
「全員戦闘不能」
「あうぅ……アスカちゃんと【先生】がいてくれて、本当に助かりました」
「結構早く片付いたね」
「アスカの動きはすごかった。頼もしい」
「ありがとう。アズサもすごかったよ」
「“お疲れ様。みんな良い動きだったよ”」
「……はい。では難所をひとつ乗り越えたところで、次のフェーズに移りましょうか」
一先ずの緊張がほぐれ、一息つく補習授業部の面々。そこへハナコが次の行動について話し始める。
「この後アリウスの増援部隊が到着するでしょう、ですが私たちは時間を稼ぐだけで大丈夫です。正義実現委員会の部隊がここに到着するまでの間、それまで時間を稼げれば……」
ハナコの言葉にコハルが反応する。
「あ、ハスミ先輩には連絡しておいた! すぐ返事来るはず!」
「はい、ありがとうございますコハルちゃん♡……ティーパーティーの命令下にある正義実現委員会が動けるとしたら、それはティーパーティーの身辺に問題が生じた時だけ。定期連絡とかもあるでしょうし、きっと今頃ハスミさんたちはナギサさんに何かあったことには気づいたはず。それに合わせてコハルちゃんからの連絡……少なくとも状況を確認するために動き出すまで、そうそう時間はかからないはずです」
ハナコの言葉に不安そうにしていたヒフミやコハルが表情を緩める。反対にアスカは表情は穏やかでありながら、目だけは体育館の入口を油断なく見据えていた。
「あとは、早く来てくれることを願うばかりですが……」
「“アスカ、どうかしたの?”」
「……どうやら次が来たみたいです。みんな、構えて」
「え……?」
「次って……?」
ドガアアアン!!
「!?」
「これは……」
会話の最中に体育館の入口の方から聞こえてきた爆発音。驚く補習授業部の前に再び別のアリウスの部隊が姿を現し、みるみるうちに体育館を埋め尽くしていく。既にその規模はたった今倒した部隊を上回り、それどころが何倍にもなってなお増え続けていた。
それを見たハナコが焦ったように言う。
「増援部隊が、こんなに早く……!?」
「え、……え!?」
「……数が多い、大隊単位だ。多分、アリウスの半数近くが……」
「あうぅ……! こ、これだけたくさんの方が、平然とトリニティの敷地内に……!?」
「まだ、正義実現委員会が動く気配がない……?」
「“この数は……”」
「……」
「――それは仕方のないことなのですよ」
動揺する補習授業部の耳に聞こえてくる何者かの声。
アリウスの部隊が小さく左右に割れ、そこから真っ白なティーパーティーの制服を身にまとった生徒が二人、その姿を現した。
「!?」
「あなたたちは……!」
「だってこの者たちはこれから、トリニティの公的な武力集団になるのですから」
現れた二人に対し大きな反応を示したのは彼女たちを知るハナコだけだった。
「“ハナコ、彼女たちのことを知っているの?”」
「はい。私の記憶違いでなければ、彼女たちはパテル派のNo.2とNo.3です」
「えっと、パテル派ってたしか……」
「……聖園ミカがトップを務めるトリニティの分派だ」
「あうぅ……一体何が起こってるんですかぁ!?」
「……流石は浦和ハナコ。私たちのこともご存知でしたか」
「まあ、それを知ったところで今更あなたたちにできることはありませんが」
「それから……正義実現委員会は動きません、私たちがティーパーティーとして待機命令を出しましたので」
「その他の邪魔なものについても同様です。今晩の作戦に邪魔が入っては困りますから」
「そんな……」
堂々とした黒幕の登場に言葉を失うコハルたち。
そこから一人だけ前へと踏み出したのは、増援の登場時からずっと沈黙していたアスカだった。
◆ ◆ ◆
「アスカちゃん……?」
みんなの中から前へ踏み出すと、その場にいた全員の視線が私に突き刺さった。
「初めまして、でいいのかな? パテル派の幹部さんたち?」
「姫野アスカ……ミカ様を惑わした害虫めが」
「貴様のせいでミカ様は……!」
「……うわあ、なんだかすっごい嫌われてるみたいだね私」
中でも目の前にいるパテル派幹部の二人の反応は劇的で、心底忌々しそうな目で睨みつけてきた。
……うーん、これは面倒な臭いがプンプンするな。具体的に言うと狂信者ってやつ。
実を言うと私はミカの所属するパテル派の人間とほとんど会ったことがない。なぜならミカが私を自分の派閥の人間に会わせることをとても嫌がったからだ。
そのことについて、これまではそういうものなのかと気にしていなかったけれど、目の前の彼女たちを見ているとミカがあれほど嫌がっていた理由がよく理解できてしまった。
「今回の件、パテル派の総意と受け取っても?」
「構いません。今晩桐藤ナギサを消し去りミカ様をティーパーティーのホストとすれば、いずれ他の方々も理解してくれるはずですから」
「事が済めば後のことなどどうとでもなります」
――いや、完全に君たちの独断じゃん、それ。さも当然のように話しているけど言ってることがめちゃくちゃだよ。
「ふぅん……今日のこと、ミカは知ってるの?」
「……ミカ様はご存知ではない。しかし、それは些細な事です」
「ええ、今夜全てを変えてしまえばあの方はきっと……!」
「つまり知らないってことだね。報連相って知ってるかな? 組織で動く時の大原則なんだけど」
「貴様……!」
「ま、いいか。……で? こんなことをしでかした理由は聞かせてくれないの?」
私がそう聞くと、彼女たちはペラペラと事のあらましを話し出した。
「……いいでしょう。どのみちあなたと話すのもこれが最後でしょうし」
「きっかけはミカ様の様子に違和感を持ち、勝手ながら執務室にある日記を拝見させていただいたことでした」
「そこで私たちはあの方がアリウスと裏で繋がっていることを知った。私たちにとって邪魔なエデン条約を締結させない方法も」
「あの方がやろうとしていることに賛同した私たちは、それからあの方の行動が周囲に露見しないように裏でそれとなくサポートすることにしました」
「計画は順調でした……あの日、ミカ様がおかしくなられるまでは」
ギロリと鋭い視線が私に向いた。
「アリウスとの繋がりを唐突に打ち切り、あの方は毎日誰かを探して彷徨い歩くようになった」
「そうしてついに探し人とやらを見つけたあの方は、それっきりティーパーティーのホストを目指すことをやめてしまわれた」
「全てお前のせいだ、姫野アスカ……!」
「貴様という害虫が現れたせいでミカ様はすっかり変わってしまわれた!」
「だから」
「あの方の代わりに私たちが動くことしたのです」
「ミカ様に必要なのは変わるための舞台」
「あの方をホストにすれば、必ずゲヘナとの戦争が確実になるはず」
「そうすれば忌々しい角つき共をこの手で葬り去ることができる。和平などもってのほかです」
「邪魔者を全て消し、舞台さえ整えてしまえば、あの方は必ず目を覚まされるはずなのです」
狂気に染まった瞳で、自らが正しいと確信しているかのような話しぶりで、彼女たちは歌うように演説を続ける。
「あの方が導くトリニティこそがあるべき姿」
「私たちはただそれを後押しするのみ。それこそがあの方の――」
「――もういいよ。黙って」
「「……っ!」」
手に持った愛銃がミシリ、と音を立てる。
ああだめだ、ちょっと怒りが抑えられそうにない。だってこいつら、あまりにも身勝手が過ぎるから。
「真面目に聞いて損した。一体どんな理由があるのかと思ったらそれ? ――馬鹿にするなよお前たち」
怒りをそのまま視線に乗せて睨み返すと、彼女たちは口を噤んで一歩後ずさった。
「結局お前たちはミカのことなんて何も考えていない。ただ身勝手な理想を押し付けているだけじゃないか」
「き、貴様……」
「害虫の分際で調子に乗るなよ……!」
「あの娘は……ミカはそんなこと絶対に望まない。私は、優しいあの娘の幸せを壊そうとするお前たちを絶対に許さない」
「“アスカ……”」
「ごめんね【先生】。悪いけどあいつらは私に譲ってくれないかな」
こんなことをした責任をとらせるのはもちろんだけど、私のお姫様に迷惑をかけたことに対する制裁もしっかり与えないと。
「かかってきなよ。そのくだらない妄想の全てを否定してあげるから」
「吠えたな……!」
「……楽に死ねると思うなよゴミクズが!」
一触即発の空気。お互いがその手に武器を取って――
その時だ。私にとって本当の意味で予想外な出来事が起こったのは。
――ダアァァンッッ!!
今までに聞いたことのない大きさの射撃音が遠くから響いて――
◆ ◆ ◆
その少女は、アリウスの作戦の開始からずっとそこで全てを見ていた。
アズサを追って部隊が体育館に入ってきたところまで、スナイパーらしく隠密するため無言を貫いていた少女であったが、体育館での戦闘が始まり、とある人物の姿をライフルのスコープ越しに視界へ入れた瞬間――全身を歓喜の感情に包まれ、思わず声を漏らしていた。
「……! えへ、えへへ……あはっ……見つけました……! 間違いなくあの人は――」
生まれて初めて見る姿だった。でもそんなことは関係ない。自分があの人のことを間違えるはずはないのだから。
その姿を見た瞬間から胸の奥にある何かが『あの人だ』と叫んでいる。少女にとってはそれが全てだった。
「姫ちゃんの言う通りでした……!」
少女は食い入るようにその人物を見つめて笑う。それに合わせて、ハイライトの消えた闇深い彼女の瞳に小さな光が灯った。
「へへ、えへへ……」
少女はいそいそと耳元のインカムの通信チャンネルを切り替える。繋ぐ先は今回のアリウスの襲撃チームⅠの指揮官の通信機。少女は静かに体育館の中でのやりとりを聞き始めた。
「えっと、これが今のあの人の声……? ずいぶんと可愛らしい声なんですねぇ」
アリウスの第一陣があっさり倒されても少女は顔色一つ変えず、覗き見と盗聴を続ける。
やがて体育館に今回のアリウスによる襲撃を手引きしたパテル派の幹部たちの姿が現れた。
(虚しいですねぇ、憐れですねぇ、都合良く私たちを操っているつもりで、実際は自分たちが都合良く使われているだけなんて……)
ただ使い勝手が良いという理由でアリウス側は手を貸しているだけ。大人の癖に我が物顔で生徒会長として今のアリウスに居座る痛々しい留年オバサンからすれば使い捨てが前提の駒でしかないのだ。
(あぁ、マダムが本当に邪魔ですねぇ……あの人がすぐそこにいるのに会いに行けないなんて)
脳裏に浮かんだ赤い女性の姿に顔を顰めながら、少女は小さく息を吐いた。
(本当に嫌になります……って、いけませんね、任務に集中しないと後で怒られちゃいます)
任務に従事するべく、インカムから聞こえる声に耳をすませて――
『姫野アスカ……ミカ様を惑わした
――あ゛?
いったい
『
「…………は?」
『楽に死ねると思うなよ
――引き金を引く。
――ダアンッッ!!
少女の神秘が過剰に込められた銃弾が轟音とともに撃ち出され――体育館の防弾ガラスをぶち破り、その先にいる白い制服を着た対象の頭を撃ち抜いて派手に吹き飛ばした。
――引き金を引く。
間抜け顔を晒すもう一つの目標も同じように頭を撃ち抜かれ吹き飛ぶ。
「……………………あっ」
対象はもうピクリとも動かない。スコープ越しにその様子を確認して数秒後、ようやく少女は我に返った。
「ど、どどどうしましょう……!? 我慢できずに撃っちゃいました!」
あわあわとしながら撤収の準備を急ぐ少女。今の轟音は間違いなく騒ぎになるし、アリウス側に撃ったのが自分だとバレたらとても面倒なことになるだろう。
……まあ、組織内で少女がここにいることを知っているのは一人だけなのでこのまま上手く逃げてしまえば大丈夫なのだが。
「うぅ……もう少しあの人を見ていたかったです」
撤収を終える直前、彼女が名残惜しそうにもう一度だけスコープを覗いたその瞬間、その人と目が合ったような気がした。
「あ……」
気のせい? いや、違う。間違いなくあの人は今こちらを見ていた!
その事実に少女の口から笑みがこぼれる。
そのまま何かを思いついたような顔つきになった彼女は懐から何かを取り出しその場に置いた。
「えへへ、また会える日を楽しみにしていますね――
その呟きを最後に体育館から視線を切った少女は立ち去る。
その場には彼女が置いた小さな布切れが一つだけ残されていた。
◆ ◆ ◆
あの狙撃の後――事態は一気に動いた。
吹き飛んだパテル派幹部の姿に全員があっけにとられた瞬間、後方から派手にアリウス兵たちを殴り飛ばしながらミカが登場し、さらにはシスターフッド、正義実現委員会も現場に駆けつけ、瞬く間にアリウスの部隊は制圧された。
そして、今夜の戦闘が完全に終わったことを確認した私は居ても立っても居られずにその場所へと向かっていた。
「――はぁっ、はぁっ……たしか、この辺りだったはずだ」
ライトを片手に駆けつけた私は呼吸を整えつつ周囲を見回すが人の気配はない。しかしここに誰かがいたのは間違いないはずだ。
何か、何かないか――!
どうにも心が落ち着かない。あの狙撃が飛んできた方向を見た時から妙な胸騒ぎがおさまらなかった。
「……! これは……」
そうしてついにその場に落ちていた小さな布切れを見つけた。
すぐに拾ってそれを広げ――私は言葉を失った。
「あ……」
「――もう! 待ってよ先生! 突然どこ、に……」
後ろから私を追いかけてやって来たミカの言葉が途中で止まる。
彼女にも見えたのだろう。私の持つ布切れに描かれたこれが。
「先生、それ……」
「……うん、間違いないよ」
布切れに描かれていたのはちょっぴりお洒落に格好を崩されたアルファベットの文字列。
それは前世で私が【生徒募集の封筒】にいつも描いていた【サイン】と全く同じものであった。
次回はエデン前半のエピローグ。
ミカ
ようやく表に出られてすっきり。幹部2名の動きには気付いた上でアスカに相談して泳がせていた。
さあこれでまた堂々としたイチャラブ生活に戻れるぞ、と本人はウキウキ気分で考えているが、自らの行為により思わぬライバルが出現してしまったことをまだ知らない。
トリカス2名(パテル派幹部)
この世界線におけるトリニティの裏切り者。
非常に好戦的かつゲヘナを心底嫌っており、常日頃から戦争を起こしたいと願っている過激派。
捕まった後、ミカに罪を擦り付けようと画策するも先手を打ったアスカにきっちり潰された。
シスターフッド「ハナコさんとアスカさんに呼ばれたから来ました! わっぴー!」
正義実現委員会「ミカ様から招集がかかったため出動しました!」
ナギサ
大きな心の傷を負った彼女に待ち受けていたものとは……
謎のスナイパーちゃん
つい最近まで完全に消えていた目のハイライトが少し回復した。アスカ先生が大好き。赤いオバサンが大嫌い。
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