ブルアカの世界にTS転生したので日記を書く   作:TS百合好きの名無し

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感想、誤字報告感謝。
エピローグです。


補習授業部編9【エピローグ】

 

 

 

 アリウス襲撃事件から数時間後にはバタバタと慌ただしくも無事に試験会場へとたどり着いた補習授業部のメンバーは、それぞれの全力を尽くして最後の試験へと臨んだ。やるべきことは全てやった。後はもう祈るだけ。

 

 今日はその結果が発表される日であり、部室に集まった私たちは緊張と共に【先生】の言葉を待っていた。

 

「“それじゃあ結果を発表するね”」

 

 3次特別学力試験、結果――

 

 ハナコ――100点(合格)

 アズサ――98点(合格)

 コハル――97点(合格)

 ヒフミ――99点(合格)

 アスカ――100点(合格)

 

「やったあああ!!」

「……うん、全員無事に合格だ」

「よ、よかったです……これでみなさんとこれからも……」

 

 飛び上がって全身で喜びを表すコハル。うんうんと満足そうに何度も頷くアズサ。瞳を潤ませ安堵するヒフミ。

 結論として、補習授業部のメンバーは無事に最後の困難を乗り越えることができたのであった。

 

「うふふ、あれだけ頑張っていたのですから当然ですね」

「ハナコもお疲れ様。これからもよろしくね」

「……! ええ、こちらこそよろしくお願いいたします」

「色々とあったけどひとまずは落ち着いて良かったよ」

 

 アリウスの襲撃はミカと正義実現委員会とシスターフッドによって鎮圧され、今回の襲撃を手引きしたパテル派幹部2名は今後厳しい取り調べを受けることになった。

 とはいえ今のアリウスに君臨する【彼女】にとってあの二人は使い捨ての駒だろうし、大した情報は出てこないだろう。

 

 それに、私としてはあの狙撃現場に残されていた物の方が気になっていた。

 あの後、正義実現委員会とシスターフッドに狙撃のことを尋ねてみたけど、心当たりのある人物は誰もいないとのことだった。

 

(結局あの現場に誰がいたのかは分からずじまい。でも勘違いじゃないのは確かだ)

 

 特別な理由もなく存在するはずのない【サイン】があの場には残されていた。私はあれを見えない誰かからのメッセージだと考えている。

 疑問となるのは「なぜ姿を現さないのか」……これについては状況からおおよそ見当をつけてはいるけど……

 

「アリウスか……」

「……」

 

 アリウス、そう聞いて脳裏に思い浮かぶのは二人の少女の姿。どちらも私が本当に好きなキャラクターで、絆ランクの高さもトップ10に入っていたはずだ。

 ミカ、ミヤコ、レイサという前例。もしも前世での絆ランクの高さが記憶の有り無しに関係していると仮定するならば……きっと可能性はある。

 

「そういえば……」

 

 そこまで考えて、ふと気になることがあったので私の視線が隣に立つハナコへと向く。

 

「うーん?(ハナコは……どっちなんだ?)」

「……? どうかしましたかアスカちゃん?」 

 

 今思えばこの世界のハナコって妙に私に対する距離感が近い気がするんだね。普通に考えて性格的に仲良くなるまでに時間がかかりそうな娘だと思っていたんだけど。

 ……前世のブルアカでは、たしかハナコも絆ランクはかなり上げていたはずなんだよね。

 

「ア、アスカちゃん……?」

「……むぅ」

「…………あ、あの、そんなに熱いまなざしで見つめられると困ってしまうのですが」

 

 分からん! もう本人に直接聞いた方が早いか。

 私は何故か照れた顔でこちらを見ている彼女へと身体を寄せ、【先生】たちに聞こえないように小声で疑問をぶつけた。

 

あのさ……ハナコって今、私のことどれくらい好きなの?

「ふぇっ!?」

あ、ごめん間違えた。……ハナコは私のことどこまで知ってるのって聞きたくて

「え!?……えっ」

 

「――失礼します! こちらに姫野アスカ様はいらっしゃいますか!?」

 

 ハナコの返事を待っていたその時、扉を勢いよく開けながらティーパーティーの一員と思わしき生徒が姿を現し、その場にいた全員の視線が私に集中する。

 すっごく嫌な予感がした。

 

「私はここにいるけど……どうしたの?」

「……ナギサ様がまた発作を起こされました! 私はミカ様から至急アスカ様を呼ぶように言われこちらに!」

 

 私はちらりとみんなの顔を見る。コハルとアズサはよく分かってなさそうな顔、ヒフミと【先生】は苦笑いを、ハナコは私にだけ見える角度で不機嫌そうにこちらを睨んでいた。よく分からないけどごめんねハナコ。

 

「えっと……呼ばれちゃったからちょっと行ってくるね」

「“……フォローを任せちゃってごめんねアスカ。ナギサのことをお願い”」

「うん、任せて。ナギサのことは私にも責任の一端があるから」

 

 そうしてみんなに見送られながら私が部室を後にするのであった。

 

 

 

 ここで現在のティーパーティーのホスト、桐藤ナギサのことについて少し語ろうと思う。

 

 アリウス襲撃事件の日を境に、桐藤ナギサにはある大きな変化が生じていた。

 後から知ったことなのだが、ミカとハナコの怒りのダブルパンチが急所に直撃した彼女の精神は、私の気付かぬうちにそれはもう危険な状態に陥っていたのである。

 

 襲撃を鎮圧した後、目を覚ましたナギサと対面した私は一目でその異常性に気付いた。

 

『……』

『ナ、ナギサ様……?』

 

 はっきり言ってあの時の彼女は今にも死にそうな――いや、既に死んでしまったかのような生気の無い表情をしていたのだ。

 深い暗闇を覗くような感覚。文字通りこの世の全てに絶望し、光を失った瞳が私に向けられていた。

 多分放っておいたら誰にも何も言わずにどこかへ消えていたのではないだろうか。

 アレは冗談抜きに笑えない状況だった。本当に。

 

 まさに一刻を争う状況だと悟った私は、ひどく慌てた様子のミカと気まずそうなハナコから素早く事情を聞き、その場ですぐにナギサのメンタルケアを行った。

 

『ごめん、しばらく彼女と二人きりにしてくれないかな』

 

 【原作】でも彼女がヒフミ関係のトラウマを負う姿はあったが、ここまで精神を追い詰めるようなものではなかった。

 

 一番に守ろうとした幼馴染に絶縁宣言をもらい、寵愛対象に心を弄ばれていたと明かされる……ナギサにとってあまりにも絶望的な展開だ。こんなの一人で耐えられるわけがない。というか元々弱っていたナギサに対してオーバーキルにも程があるだろう。

 

『覚えていますかナギサ様? 約束しましたよね、全てが終わったら一緒にお茶会をしようって』

 

『……いいですか、落ち着いてください。ここにあなたを傷つけるものはありません』

 

『……ッ! 大丈夫……大丈夫です。私の身体はこう見えて結構丈夫なので。さあ、大きく息を吐いて……吸って……そのまま私から目を逸らさないでくださいナギサ様』

 

『よく聞いてください。ミカはあなたを捨てたわけでもありませんし、ヒフミだってあなたを弄んでいたわけではありません。もちろん私だってあなたの敵になったつもりはありません。そんな事実はこの世のどこにもないんです』

 

『ナギサ様。あなたの目に映る私は、本当にあなたの敵ですか……?』

 

『一緒に謝りに行きましょう。もしも二人に会うのが怖いのなら、私が隣でずっとこの手を握っています。大丈夫です、あなたは決して一人ではありません』

 

『何度だってやり直せます……あなたはまだ子供なんですから』

 

 だから、壊れる寸前の彼女の心を回復させるべく私は己の全身全霊をもって彼女を癒し続けて――

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「ミカ!」

「あっ、アスカ先生! 早く! ナギちゃんがヤバい!」

 

 現場に到着するやいなやミカが焦った声で私を呼ぶ。人前で絶対に使ってはいけない呼び方をしているあたり、本気で困っているのが分かる。

 彼女の腕の中では青い顔をしたナギサが過呼吸を起こして倒れ込んでいた。

 

「ナギちゃんをお願い! 私は部屋の外で誰かが来ないように見張っているから!」

「うん、頼んだよ」

 

 私はすぐさまミカと交代し、彼女の顔を胸元に抱きかかえるようにすると、安心する声を意識しながら彼女へ優しく囁きかけた。

 

「……ほらナギサ、私だよ。少しずつ身体の力を抜いて全てを私に委ねるといい。ゆっくり……ゆっくりでいい。……よし、いい子だ」

 

 そうして安心させるように声をかけ続けて数分後、虚ろだった彼女の目が徐々に私の顔をはっきりと捉えはじめ、その表情が柔らかいものになる。

 

「ひゅー、ひゅー、けほっ……! あ…………()()()……?」

「……うん、私が来たからもう大丈夫だよ」

「ありがとう、ございま……す」

 

 落ち着いたことで力が抜けたのだろう。彼女は私の腕の中でそのまま眠るように気を失った。

 

 

 それからしばらく経って、席を外していたミカが部屋に戻ってくる。彼女は私の膝枕で眠るナギサの顔をじっと見つめた後、口を開いた。

 

「……えっと、ナギちゃんは寝ちゃったの? ……ありがとう、アスカ先生」

「ひとまずはこれでよし……で? 今回は何が原因でこんなことになったの?」

 

 私がミカへと問いかければ、彼女は眉尻を下げて困ったように呟く。

 

「えっと……それが本当によく分からなくて……」

「とりあえず、ナギサがこうなる直前に何があったのか教えてくれる?」

「別に……ただいつものようにくだらないお話をしていただけだよ? 特別なことなんてしてないし、起こってもいない。ただ会話の途中で私が笑ったら、突然ナギちゃんの様子がおかしくなってこうなったの」

「……うーん?」

 

 ただ普通に喋っていただけ。なのにミカが笑ったタイミングで様子がおかしくなったナギサ。

 一体何が彼女をおかしく……ん? 笑う……? それってもしかして――

 

「ねえミカ、ちなみにその時ミカはどんな風に笑ったのかな?」

「え? こう、普通に【あははっ】って」

「……ああ、うん、そっかぁ……」

 

 聞き覚えのあるフレーズに思わず苦笑いをする。

 原因は即座に判明した。判明したのだけど……これ、まずくないか? 特定のワード一つ聞いただけで過呼吸を引き起こすほどだなんて。ナギサのトラウマの後遺症があまりにも重症すぎるぞ……

 

「これは……定期的に治療をしないといけないね。責任の一端は私にもあるから、症状が良くなるまでは治療に協力するよ。幸い今のナギサは私に心を開いてくれているわけだし」

「……あ、あのさ、そのことでちょーっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「ん、何かな?」

 

 

「――()()()って何?」

 

 

 ピシリ……!と穏やかな空気にヒビが入る音が聞こえたような気がした。

 

「……」

「ここ静かだし、私耳がいいから中の声が少し聞こえちゃって。あはは……私の聞き間違い、かな? ああうん、多分そうだよね、あのナギちゃんがそんなこと言うわけ――え、何その顔、まさか本当に?」

 

 思わず目を逸らしてしまった私の反応で何かを察したのだろう。信じられないといった顔でミカの視線が私とナギサを交互に何度も行き来する。

 一方、私は私であの日を思い出して遠い目になっていた。

 

「嘘でしょ……? あの日に一体何があったの!? 私、何も聞いてないよ……? ねえ、どういうことなの?」

「違う、違うんだミカ……私はただ普通に彼女のことを励ましただけで」

 

 ――ミカたちからナギサを任されたあの時、私は色々と限界だったナギサの心を繋ぎ止めるために必死だったのだ。あの時の自分の行動に後悔はない……後悔はないのだけど……

 

「何故か介抱している途中からナギサが私をお母様と呼ぶようになったんだ。決して私から強要したわけじゃない。彼女が勝手に私を母親扱いするようになったんだ」

「…………いや、なんで?」

「分からない。最初は否定しようとしたんだ。でも、なんだかここで拒絶すると今度こそ完全に潰れてしまいそうな危うさを感じて……」

「えぇー……」

 

 もはやなんと言えば良いのか分からない、そんな表情でミカがナギサを見る。

 

「ていうか起きてるなら自分で説明してよナギちゃん」

「……」

 

 よく見るといつの間にかナギサのヘイローが点灯していた。ヘイローは意識のある時にしか見られないため、今の彼女は目を覚ましているということだ。

 

「ナギサ様……?」

「……」

 

 もう大丈夫だろうと判断し、以前のように畏まった声で呼びかけてみるも彼女は目を瞑ったままで反応を返さない。それどころかそのまま無言の圧力のようなものを発し始めた。

 

「あー、その、()()()、君から話してくれると私は嬉しいかなーって」

「……仕方ありませんね」

 

 そう言って私に膝枕をされたままゴロリと頭の向きを変えたナギサは、ミカの顔を下から見上げながらキリッとした表情で口を開いた。

 

「お母様はお母様です。ミカさんなら分かってくれますよね?」

「ごめん全然意味が分からない」

 

 即答だった。正直私もミカと同意見だから彼女の気持ちはよく分かる。本当にどうしてこうなったんだろうか。

 ――弱ったナギサが途中から可愛くなってきて甘やかしすぎたのが悪かったのかな? いやでもいきなりお母様呼びになるのはやっぱりおかしい気がするんだ。

 多分今のナギサの姿をティーパーティーの娘たちが見たら卒倒するんじゃないだろうか。

 

 そのまま言いたいことは言ったと言わんばかりのすっきりとした表情で視線を私へと向け直したナギサは、何かを期待するような目で私の手をとって自分の頭へと置く行動を見せた。

 

「……」

「……? ダメ、ですか?」

 

 え? 撫でろってこと? ……まあ、別に構わないけど。

 

 いつもミカにやっているようにナギサの頭を撫でる。

 彼女はそれを心地よさそうに受け入れ、それを見るミカはというと、いい加減心配よりも怒りの感情の方が勝ってきたのか不機嫌そうな目を私たちに向け始めていた。

 

「むうううぅ〜……あ!」

 

 と、そこで突然ミカはいたずらを思いついたような顔になり、ナギサへと声をかける。

 

「アスカさんの娘になるってことは、ナギちゃんは私の娘でもあるってことじゃんね。……ほらナギちゃ〜ん、もう一人のお母様にも甘えていいんだよ〜?」

 

 両手を広げ、幼い娘にかけるような声で話しかけるミカに対し、ナギサは急に冷めた表情になったかと思うと、ミカの顔を見て言った。

 

「……いやです。私のお母様はゴリラじゃありません」

「は?」

「ちょっと!?」

 

 ゴゴゴゴゴ……と恐ろしい威圧感を放ち始めたラブリーマイエンジェルゴ――お姫様を見て慌てる私をよそに、すっと身を起こしたナギサは流れるように私の背後に隠れる。

 

「助けてくださいお母様。凶暴なゴリラがその本性を露わにして私を襲おうとしています」

「怒らせたのはナギサだよね!?」

「アスカさんどいて! そのバカ娘を殴れない!」

「ステイ! ステイ! 殴っちゃだめなんだってばーー!」

 

 終わり良ければ全て良し? 紆余曲折ありつつも、ティーパーティーは今日も賑やかなのであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

「補習授業部の皆はしっかりと、自分たちの力で合格を勝ち取ったのだね」

 

 補習授業部が合格したその夜、夢の中で【先生】はセイアと対峙していた。

 

「コハルはこの後、晴れて正義実現委員会に戻れるはずだ」

 

「ハナコは自らをさらけ出せる良き相手を、良き友を見つけられたようだね。これで彼女が学園を去ろうとすることはまずないだろう」

 

「アズサはきっと、これからも学びを続けられる」

 

「ある意味で誰よりも最前線で、真摯に努力を積み重ねてきたヒフミは、今までの日常に戻れるだろうね」

 

「ミカは晴れて犯人探しから解放されて、自由になる。今回の部下の裏切り行為の件で多少の批判を受けるだろうがね」

 

「そして皆を支えてくれた彼女もまた、ひとまずは自分の日常に戻るのだろう」

 

「ナギサは……予定通り、エデン条約に調印しに行くだろう」

 

「うん、ここまではよくできた話だ。……でもまだ、エンドロールには早すぎる」

 

「なにせ君が見守るべき結末は、まだその全貌を現してはいない」

 

「このまま君たちが何もしなければ物語は破局へと収束していく。暗雲……誰の手にも負えないような、二度と太陽を拝めなくなるような、そんな暗雲が、今ゆっくりと押し寄せて来ている」

 

「まだ残っているものがある、これで終幕じゃない……そのことは君がきっと、誰よりもよく分かっているだろう?」

 

 【先生】は小さな頷きを返した。

 そうだ、まだ何も終わってなどいない。

 

 

「――だが、決して絶望はしないで欲しい。未来にあるのは絶望の可能性だけではない」

 

「“……!”」

 

「鍵となるのはあなたと()()だ。2人だけが物語の結末を変えられる」

 

「お願いだ【先生】、あなたたちの力をどうか貸して欲しい」

 

 ――もちろん、と【先生】は力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 




区切りが良いので本作はここで一旦終わりとさせていただきます。
(エデン条約後半の構想は簡単にできないため保留)

今後はアスカたちの日常の出来事を気が向いた時に書いていこうかなと考え中
話のネタに関するアンケートを作ってみたのでよろしくお願いいたします。お好きなものを一つ選んでどうぞ。

一番読みたい日常話はどれ?(タイトルは仮)

  • 宇沢と遊園地
  • 聖園ミカは面倒くさい
  • アスカと乙女心
  • 母と娘
  • シスターとアスカ
  • ウサギの◯◯はすごいらしい
  • アスカと正義実現委員会
  • ◯◯◯先生の追憶
  • お姫様と王子様
  • 阿慈谷ヒフミ死す
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