ブルアカの世界にTS転生したので日記を書く 作:TS百合好きの名無し
先に言っておくと別に闇のデュエルとかしないです。本作は健全な作品なので。
いつも感想&誤字報告ありがとうございます!
きっかけはヒフミが差し出したゲームの広告画面だった。
「アスカちゃん! どうかこのゲームで私と一緒にトップランカーを目指しましょう!」
「……?」
いつも通りの朝、謎のやる気に満ち溢れた親友から見せられた携帯に表示されていたのはとある格ゲーの広告画面。
そこに映っていたのは【コラボ】の文字と例のキモい鳥こと彼女の崇拝するペロロ様を始めとしたモモフレンズたちの姿であった。
「えっ、ナニコレ」
「最近発売された格ゲーにモモフレンズコラボのイベントが来たんです! それで、ここを見てください! ほらっ!」
「んー?」
彼女の指し示す部分をよく見ると、そこには太字で『本イベントの上位10名の中から抽選で5名様に【コラボ限定ペロロ様フィギュア】を特別にプレゼント!』と描かれている。さらにどうやら限定ペロロ様には衣装が2パターンあって*1、当選者が好きな方を選んで受け取れるらしい。
それを見て私は彼女の最初の発言の意味を完全に理解した。
「ペロロ様ファンとしてこのチャンスを逃すわけにはいきません! 是非アスカちゃんも協力してください! 二人で限定ペロロ様を手に入れましょう!」
「協力するのはいいけど……これ結構難易度が高いのでは?」
格ゲーというものは、実戦前にかなりの練習を前提とするゲームであるため、基本的に初心者には敷居が高い。さらに前提となる目標はトップ10入りときた。
コラボするゲームをよく確認してみると、ゲーム好きなら絶対に知っているであろう、有名な某格ゲーだった。つまるところプレイ人口がめちゃくちゃ多い。
簡単に説明するならば、前世でいうスマ◯ラのネット対戦で全国トップ10に入るのと同じようなもの……と言えば分かりやすいだろうか。む、無謀だ……
――いやそもそも、なんでこんな有名ゲームとモモフレンズがコラボしてるんだ? もっと他に良いコラボ先があるでしょ。
「た、確かに、道は険しいかもしれません……でも諦めるわけにはいかないんです……!」
まあヒフミならそう言うよね。生粋のペロロファンというか狂信者だもん。
私も格ゲーならそれなりに得意だし、純粋にゲームを楽しみつつ景品ついでに頂点を目指してみようかな。前世でも公式戦などに出たことは一度もなかったけど、格ゲーに慣れて暇つぶしに遊んでいたネット対戦で負けたことはなかったし案外いけるかもしれない。
「それじゃあ今日から二人で特訓だね」
私がそう言って笑うとヒフミはぱあっとその瞳を輝かせる。
「アスカちゃん……! はい! よろしくお願いします!」
こうしてこの日を境に私とヒフミの格ゲー特訓が始まったのであった。
1日目――
「うわっ、この感じ懐かしい。キャラクターもいっぱいいるからどれを使うか悩むなぁ……!」
「ペロロ様がプレイアブルキャラにあります! これはもう使うしか……!」
「よっ、ほっ……と」
「あわ、あわわっ、ア、アスカちゃんの動きが全然真似できません! 一体どうやってそんな動きを……?」
「私は昔似たゲームで遊んだことがあるからね。さすがに久々で鈍ってるけど」
「うぅ……コンピュータ相手に全然勝てません」
「ヒフミのペロロ様は攻撃が大振りだからなぁ……もっとガードや弱攻撃を織り混ぜた方がいいと思うよ」
「難しいですけれどアスカちゃんがこのゲームに理解があって助かります。これは嬉しい誤算ですね」
「あはは……ぶっちゃけ初心者なのに1日目でCPUのやや強モード相手に良い勝負できてる時点でヒフミも才能あると思うよ*2」
2日目――
「うーん、今日から始めたランクマッチだけどなかなか好スタートを切れたんじゃないかな」
「すごいですアスカちゃん……! 最初の何試合かはミスで負けてましたけど、途中からは無敗じゃないですか!」
「……へへ、やっぱりこの手のゲームは好きだから上達も早いのかも。勘もすぐ戻ったし」
「わ、私もがんばります……!」
4日目――
「一番上の階級まで来たなー」
「私はまだ二つ下の階級に到達したばかりです……」
「流石にここまで来ると簡単に勝てない相手しかいないね……うおっ、この人カウンターうまっ!? けど負けん!」
「ほえー……すごい戦いです(攻防の入れ替わりが激しすぎてよく分かりません!)」
「ぐっ……う……ここで……! 今!」
「すごい……(このアスカちゃんの対戦相手……なんと言いますか素人目線で見てもすごくレベルが高い気がします。明らかに今までの相手以上に動きが洗練されてる。プレイヤー名は――UZQueen? あれ? この名前どこかで……)」
「――いよっしゃ! 勝ったああああああっっ!!」*3
「……ふふっ『カシャッ』(なかなかお目にかかれない、普段より高いテンションで子供みたいにはしゃぐアスカちゃんのレアショット……可愛いですね)」
「しかしカウンターへの対策がまだ甘い事がよく分かったな。少し工夫を入れないと『カシャッ』……何してるの?」
「ええと、少し記念撮影を……(せっかくだしナギサ様にも写真を送っておきましょうか。あ、既読が付い――)」
ナギサ〈言い値で買いますので追加の写真もあれば……〉
ナギサ〈是非よろしくお願いいたします〉
ナギサ〈できればあと10枚ほどお願いいたします〉
ナギサ〈本当にお願いいたします〉
ナギサ〈色んな表情差分があると助かります〉
ナギサ〈正面アングルじゃなくても大丈夫です〉
ナギサ〈信じてますよヒフミさん〉*4
「あはは……*5」
「ヒフミー?」
「なんでもありません。続きをやりましょうアスカちゃん!」
ナギサ〈あの、既読が付かないのですが〉
ナギサ〈見ていますかヒフミさん?〉
ナギサ〈お願いいたします〉
ナギサ〈あの、ヒフミさん……?〉
5日目――
「ついにマスター級にまで到達しました!」
「おめでとう。これで一緒だね」
「まだまだ勝率は安定しませんが……」
「いや、初心者なのに一週間で最上階級まで駆け上がってる時点でヒフミは十分すごいからね?」
「勝率ほぼ100%のアスカちゃんに言われても……」
「ふと思ったんだけどさ、私たちって結構格ゲーが上手いのでは?」
「あはは……私はここまでで既に一杯一杯ですが、アスカちゃんに限ってはまず間違いなくトップクラスの実力者なんじゃないでしょうか。正直勝てるビジョンが見えません」
「そっかー……(私からしたら初心者でそれについてきているヒフミの方が恐ろしく感じるのだけど)」
6日目――
「とうとうヒフミもランキングトップ10入りか……これで抽選の対象にはなったね」
「はい! このまま順位を維持すれば……!」
「今日の18時にポイント集計を終了、当選者発表は明日の朝6時か……」
「ペロロ様まであと少しです! がんばりましょうアスカちゃん!」
「うん」
次の日――
ピピピピ……と携帯のアラーム音で目を覚ます。起きてすぐに携帯のメール受信ボックスを確認した。果たしてそこには――
「よかった。ちゃんと当選してる……!」
件名に『当選おめでとうございます』の文字。本文を読んでいくと、期日までに景品のペロロ様人形の欲しいデザインを選択して返信するようにURLと当選コードが書かれていた。
(まだ期限はあるしデザインは一旦保留でいいかな)
とりあえずヒフミに無事に当選したことを伝えるべくモモトークを送り、返信を待つ。十秒、三十秒、一分、二分……しかし待てど返信は無かった。
「ん……あれ?(返信が来ないな……? ヒフミなら即座に返してくると思ったんだけど)」
不思議に思いつつも、私はそのままいつものように身支度を整え、学校へと登校するのだった。
「おはよう」
「あっ、おはよーアスちん!」
「おはようアスカちゃん。……あれ? 今日はヒフミちゃんと一緒じゃないの?」
「珍しいねー」
「そう聞いてくるってことは、ヒフミはまだ学校に来てないの? 通学路で会わなかったから先に行った可能性も考えていたんだけど……」
「ヒフミちゃんはまだ来てないよ?」
登校してすぐクラスメイトに挨拶をしながら確認してみたが、やはりヒフミの姿は無かった。
気になってロボット教員に出欠席の連絡が入っていないかも聞いてみたがそちらも無いとのこと。
モモトークの返信を待ちながら授業を受け……結局4時間目を終えても返信はなかった。
「うーん……」
ここまで来るとちょっと心配になってくるなぁ。
昨日まで仲良く遊んでいたのに突然音信不通になるなんて何かあったとしか……
「――すみません、体調が悪いので早退します」
やはり気になって仕方がないので、私は学校を早退して彼女の様子を見に行くことにした。
「ヒフミー? いるー?」
ヒフミの寮の部屋の前に立ちノックと声かけをしてみるが反応なし。
「あれっ?」
試しに扉へ手をかけると鍵がかかっておらず、あっさりと扉が開いてしまう。数秒悩んだ末、私は意を決して中へと乗り込むことにした。
「おーいヒフミー?」
返事はない。カーテンが閉められているため室内は薄暗いが、ベッドに人の影らしきものを見つけた私はゆっくりと近付いて――
「ヒフ――」
近付いた瞬間私の目に入ったのは――口から血を流し、鮮血に染まったベッドの上でぴくぴくと痙攣するヒフミの姿であった。
「ヒフミーーーッ!?」
慌てて駆け寄ってその身体を起こし、即座に脈と呼吸を確認する。弱々しいが……死んではいない。しかし危険な状態だ。一体何が原因でこんなことに――いや、今は彼女の救護が何よりも優先だ。
『ア、アスカ先生! ヒフミさんのバイタルが……!』
「ヒフミしっかり! 今助けを呼ぶからね!」
「ぺ…ペロロ……ペロロ様……かひゅっ……ぺ、ペロ…ペロ……ペロロ……ペロロ様……ペロ……ぺ……ペロロ……ぺぺ…かふっ」
くっ、一刻を争う事態であれば仕方がない。考えろ、この場における最適解は……!
私はすぅっと大きく息を吸い込み叫ぶ。
「助けて【救護】!」
「――救護ォ!」
私がその言葉を発した次の瞬間、何故か玄関からではなく別方向から寮の壁を粉々にぶち抜きながらどこからともなく蒼い【医者】――もとい救護騎士団の団長である蒼森ミネが現れる。許せヒフミ、修繕費はちゃんと出すから*6。
「救護を求める気配と声を感知しました! 患者はどこですか!」
「この娘です! お願いします!」
「これは……! ひどい……! すぐに本部へ連れていきます! あなたも!」
「えっ、いや私は別に――」
「その目の隈は何ですか! 十分な睡眠が取れていない証拠です! 私の目は誤魔化されません!」
「うわーーっ!?」
◆ ◆ ◆
「――急性ストレス性反応及び睡眠不足ですね」
「はい?」
ミネ団長に連行されてたどり着いた救護騎士団の本部にて――私は強制的に寝かされたベッドの上で、傍らに立つ部員からヒフミの病状を聞かされていた。
何のことはない。今回の件は事件でも何でもなくただの突発的な事故だった。
現場に残されていた血塗れのヒフミの携帯をアロナに頼んでハッキングして中身を確認してもらったところ、例のイベントの【不当選】のメールが届いていることが発覚。おそらくこれを見てショック死しかけたというのが事の真相なのだろう。
ヒフミ落ちちゃったんだな……あれだけ頑張っていたのに。私の分を譲れば元気になってくれるだろうか。
「阿慈谷ヒフミさんの治療は無事に済んでいるのでご安心下さい。今は別室でハナエちゃん――別の部員が付いて眠らせています。今は休息をとることが一番なので」
私にヒフミの説明をしてくれた桃色のナース天使こと鷲見セリナはそう言って柔らかい笑みを浮かべる。
「そっか。ありがとう」
「いえ、これが私たちの役割なので」
救護騎士団とはこれまであまり関わりがなかったため、私が彼女と話すのはこれが初めてだ。
鷲見セリナと言えば、その不可解な出現性から前世では救護系ニンジャなどと呼ばれていたが、この世界でもそうなのだろうか。今度【先生】に彼女のことを聞いてみようかな。
「……あの、私の顔に何か?」
「ああ、ごめんね。ちょっと考え事をしていただけ」
少しばかりジロジロと見すぎた。反省。
……前世といえば、性能抜群で便利なセリナはゲームでも重宝していたっけ。ヒーラーとして有能過ぎたんだよねえ。それに何より可愛いし。クリスマスのあのメモロビすごく好きだったんだよねぇ。
「説明してくれてありがとう、セリナさん「セリナとお呼びください」……セリナも別の患者のところへ行ってくれて大丈夫だよ? 私はこのままここで休むから」
「分かりました」
さて、このまま夕方までここで少し仮眠をとらせてもらうとしよう。瞳を閉じ意識を――
「……」
「……」
視線を感じる。
「……」
「……」
視線を感じる。
「……」
「……」
視線を――
「……あの、私はもう大丈夫だから」
「いえ、この時間は人手も足りていますし今日の患者さんはいつもより少ないので暇なんですよ」
「そうなの?」
「はい」
それと私の顔を見つめ続けるのに何の関係が……?
「……」
「……」
再び目を閉じるがやはり視線を感じる。薄目で彼女の様子を窺うと、彼女はニコニコとした表情で私の顔をじっと見つめていた。
――セリナって初対面の相手にこんな行動をとる生徒だったっけ?
「あのさ」
「はい」
「さっきから私の顔を熱心に見ているみたいだけど、私の顔に何かついてる?」
「……? 何もありませんよ?」
「じゃあなんで?」
「アスカさんの顔を見ているとなんだか心が落ち着くので……」
「そうなの……?」
「はい」
よく分からないけどそういうものなのか。でもこれじゃ……
「やっぱり視線を感じると休めませんか?」
私の心を読み取ったかのように彼女が言う。
「では、これならどうですか……?」
彼女がそう言った次の瞬間、今まで感じていたはずの彼女の気配が完全に消える。
「……!?」
――えっ、怖っ!? 全く気配を感じないんだけど……!?
慌てて彼女の姿を確認すると、そこには先程と変わらず彼女の姿があった。
確かにそこにいるのに気配をまるで感じない……!
「きゅ、救護系ニンジャ……!」
「……はい?」
「何でもないです。これなら寝られそうです」
「ふふっ、それならよかったです」
――考えるのをやめたらいっぱい寝られた!
「どうかご自愛くださいね、先生」
――3日後。
登校中に物騒な装備を身に着けたヒフミを発見した。
「アスカちゃん! どうか私と一緒にブラックマーケットへ行ってくれませんか!」
ヒ、ヒフミさん…………?
アスカ
前世は格ゲーガチ勢。今回のイベントで個人ランキング1位だったのでペロロ様が確定当選。
人間離れした操作技術にキヴォトス人の身体能力が加わって化け物格ゲーマーと化したが本人にあまり自覚はない。ネット界隈では彗星のごとく現れた謎の最強格ゲーマーとして話題になっているらしい。
ヒフミ
推しを逃したショックで死にかけた自称平凡な少女。
目的は達成できなかったものの、推しへの愛だけで素人から格ゲーの頂点にまで迫ったヤベー奴。最終結果は8位。
団長
救護を求める声があればどこへでも駆けつけて救護(物理)を実行する。
救護系ニンジャ
救護のためならばどこへだろうと駆けつけ、常に要救護対象の健康状態を把握するように努めている。本気で気配を消すと感知できないため、観察対象はいくら見られていようと全く気づくことができないであろう。
UZQueen
謎多き伝説のゲーマーとしてその筋で知らぬ者はいない存在。
アスカとの初対戦で敗北した際、呆然としたまましばらく動くことができなかった。
自身に唯一の黒星を付けた謎のゲーマーASUKAを探している。
ナギサ
ヒフミさんからモモトークで写真が送られてきましたがこれは一体……なっ、こ、これはまさかお母様の激レアショット……!? な、なんと可愛らしいお姿(保存連打)……額縁に入れて飾らなければ……!
ありがとうございますヒフミさん。今夜はよく眠れそうです(ニッコニコ)
――後日
あら、お母様からモモトークが……? なんでしょうか(ウキウキ)
アスカ〈かくかくしかじか。ヒフミとブラックマーケットに行ってきます〉
――!?!?!? かはっ(吐血) うーん……(失神)