ブルアカの世界にTS転生したので日記を書く 作:TS百合好きの名無し
なんだよ新年のあいさつがミカの3Dお披露目って。なんだよあの完璧すぎる表情差分は。なんだよあの可愛いの洪水は。どうして動画の高評価は1回しかできないんだ。
ミカ可愛いよミカ
天使か? ……天使だったな。
ありがとうブルーアーカイブ。
というわけで新年のスタートを飾るのは我らのお姫様のエピソードになりました。異論は認めない(確固たる意思)
聖園ミカはとてもめんどくさい女の子である。
自由気ままに後先考えず本能で動いてしまう性質と冗談のようなフィジカルパワー。それでいて思いのほか精神的に打たれ弱く、放っておくと勝手に曇って勝手に傷ついて心を擦り減らしていく上、チョロくて他者にずっぷり依存しやすいメンタルの持ち主であるという、まさに地雷の塊のような女の子なのだ。
朧気な記憶の中に存在するブルアカをプレイしていた前世の友人たちも『可愛いけど実際に付き合いたいとは思わない』『愛でるのはありだけどそれ以上はNGなタイプ』『性格以外満点の女』と口を揃えて言っていた気がする。
……まあ事実として彼女がめんどくさい女の子であることは間違いないんだけど。
これはそんな彼女と深い仲になってしまった私の日常の一コマである。
「ぜ、全然終わらない……!」
――その時の私は、非常に気が立っていた。
というのも、前日から一睡もせずにずっと膨大な書類の処理に追われていたからだ。
きっかけはナギサの何気ない一言であった。
曰く、『ミカさんの仕事が恐ろしい量で溜まっている』と。
そうして発覚した大量の書類仕事の存在。
それらは全てティーパーティーに所属するミカが本来こなさなければならないものであり、放置しておくとトリニティ全体に迷惑がかかってしまう類のものであった。
とはいえ当のミカは書類仕事みたいな作業だと集中が長続きしないタイプだし、そもそもこれらは彼女が必死に私を探し回っている間に溜まったものであるため、責任の一端は私にもあると本人には内緒でその処理を買って出ることにしたのだ。
幸いにもミカのゴリ押しによってティーパーティー補佐官(ミカ専属)という謎の肩書きを与えられた今の私ならばこういった仕事を手伝うことも可能である。
そういうわけで私はナギサに断ってティーパーティーが所有する作業用の部屋に篭もり、ミカの代わりに書類作業に追われていた。
「はぁ……」
迫る期限への焦り、徹夜でぶっ通し書類を眺め続けていることによる疲労、普段の夜のあれこれによる寝不足、ミスをすれば様々な人たちに迷惑がかかるという責任感からくるプレッシャー……そういったものが積み重なり、この時の私は精神的な余裕をすっかり失っていた。
「ああ……やっと終わったぁ」
結局全てが片付いたのは正午を過ぎた頃。ふと気になって確認したモモトークには大量のメッセージが届いていた。
「うわ、モモトークがめっちゃ溜まってる」
ミヤコは……まあいつも通りの誘い文句。ヒフミは……モモフレンズのぬいぐるみの画像。コハルは……遠回しに正実に顔を出せとのメッセージ。そしてミカは……
「ミカは――――え?」
いつものように大量のメッセージを下へスクロールしていった私は、最新メッセージの内容を目にして凍りつく。
〈たすけて〉
短い……けれど確かな緊急のメッセージ。普段から大量のメッセージを送ってくる彼女がたった一言しかメッセージを打ってこないという平時ではあり得ない明らかな異常事態。疲れも眠気も一瞬で消し飛び、大きな焦りが私の頭を支配する。
(一体何が? 誰が彼女を? どうして気付けなかった――いや、考えるのは後だ! 急がないと!)
私は愛銃を手に、疲れた体にムチを打って必死に走り出すのだった。
「はあっ、はあっ……!」
私が端末が示す彼女の現在地へと駆けつければ、そこには確かに彼女がいた――いつも通りの変わらぬ姿で。
「あ、先生! やっと来た! 遅いよもー」
「――は?」
ガタン、と私の手から銃が地面へと滑り落ちた。
「……ミカ、何かあったんじゃないの?」
「え? ……あ、うん。あれはえっと、その、ちょっとした冗談っていうか……」
ミカが気まずそうな顔で視線をそらす。
「じょう、だん……?」
「ああ言えば先生がすぐに来てくれるかなって、そう思って――」
――冗談? 冗談であんなメッセージを送ったの? 私がどんな思いでここにやって来るのかも考えずに?
普段の私ならばきっと何事もなくその場を収めていただろう。
でもこの時の私は本当に疲れていて……そういう余裕を一切失っている状態だった。
「どうしても会いたくて――」
「ミカッ……!」
「あ……」
思わず言ってしまってから、ハッとして我に返る。
普段なら絶対に出さない明確な怒りを滲ませた私の声。それが彼女にもたらす効果は劇的で――まずいと思った時にはもう遅かった。
フッと一瞬で彼女の表情が抜け落ち、目のハイライトが消え去った。
「ミ――」
「ご、ごめんなさい。私また先生にこんな……やっぱり私悪い子だよね……も、もう絶対しないから……良い子でいられるように、もっと我慢できるように頑張るから……だからお願い……嫌いにならないで……」
堰を切ったようにあふれ出す言葉の数々。合わせてポロポロと涙をこぼす彼女の瞳がだんだんと黒く深く濁っていく。
それを見て私の頭は急速に冷えていった。
(――ああ、何をやってるんだ私は。子供のいたずら一つでこんなになってみっともない……! 馬鹿か私は! 彼女がこういう娘だってことはよく知っているはずだろ!)
「アスカ先生に嫌われたら私……私は――」
「ミカ。こっち見て」
彼女は一度こうなってしまうと、もう言葉は届かない。だから直接的な手段に出るしかない。
私はつま先立ちで彼女の肩を正面から掴み、その震える唇を自分のそれで強引に奪った。
「んっ」
「んん―!?」
甘さなんて欠片もない無理矢理唇を合わせるだけの強引なキス。だけど今の彼女にはこれが一番効くのだ。
ビクンと一瞬だけはねて硬直した身体から徐々に力が抜けていくのを確認しながら、私は彼女を抱き締め、その背中を優しくさする。
1分ほど経った頃、私はゆっくりと唇を離して問いかけた。
「私の気持ち、ちゃんと分かった?」
「……うん」
しおらしくなったミカが小さな頷きを返す。
「私がミカを嫌いになることはないよ。……その逆はあるかもしれないけど」
「っ! 私がアスカ先生のことを嫌いになるなんてありえないよ!」
必死になるミカに私は苦笑を返す。
「どうだろうね、いたずら一つでカッとなって君を泣かせてしまうような人間だよ? 私は」
「そ、それは! 私が度を越えたいたずらをしたから……!」
「うん、まあ……それはもちろん反省して欲しい」
「うっ」
「本当に心配したんだよ?」
「ごめんなさい……」
そうして縮こまるミカを優しく慰め続けて数分後、チラチラと横目で何か言いたげな視線を送って来る彼女に耐えかねて私は口を開いた。
「どうしたの?」
「あっ、えっと、その……さっきの……もう一回して欲しいなって」
「……?」
「その……き、キス……先生からしてくれることってほとんど無かったから……」
「……」
頬を赤らめ、もじもじと体を揺するミカ。その背ではパタパタと翼が忙しなく動いている。
……なんだこの可愛い生き物。
言われてみれば確かに私の方からすることはほとんど無いな。基本的にキスは彼女の方からしてくるものだし。というか一方的にされることの方が圧倒的に多い。
「……だめ?」
「……ミカ、ちょっとしゃがんで目を瞑って」
「あ――」
しゃがんだ彼女の肩に再び手を置いた私は、さっきと違い今度は優しく触れるようにキスを落とした。
「「んっ」」
おずおずと遠慮がちに私の背に回される彼女の手。
その瞬間、世界から私たち以外の音が遠ざかる。ふわふわとした心地良い幸福感に包まれながら、私たちはお互いの存在だけを感じ合っていた。
1分――3分――5分あるいはそれ以上だろうか、私たちの繋がりは私の方から離れたことによって終わりを告げた。
「あっ……」
名残り惜しそうに私の唇を見つめる妙に色っぽいミカからできるだけ視線をそらしながら、私は言った。
「もうおしまい。これ以上はちょっと抑えられる気がしない」
「……ふぇ?」
すぐに私は深呼吸を何度か行い、気を静める。
それから落ち着いて周りを見て……テーブルとその上に置かれた豪華すぎるケーキが目に入った。
「ケーキ……?」
なんだか妙に気合の入った装飾のあるケーキだけど、何かお祝い事でもあるのだろうか?
私が不思議そうにそれを見ていると、復活したミカが理由を教えてくれた。
「うん、お祝いのケーキだよ」
「お祝い? 誰の?」
「アスカ先生に決まってるでしょ」
「私の……?」
「だって今日は、
「あ……」
言われて端末で日付を確認すれば、たしかに今日は前世における私の誕生日であった。
「今の先生にはまた別の誕生日があるのは分かっていたけれど、やっぱり今日もお祝いしてあげたかったの」
「もしかして、そのために私を呼ぼうとして……」
「あはは……やり方を間違えちゃったけど、どうしても来て欲しかったから……」
そこで一呼吸おいて、天使が微笑む。
「お誕生日おめでとう、先生!」
「――――――――」
「バースデーソング歌ってあげるね!」
「――あ、ごめん、色々と限界で泣きそう。泣いていい?」
「ええっ!?」
嬉しさやら申し訳無さやらで情緒がめちゃくちゃになった私は泣いた。
「せ、先生! 泣かないで〜!」
こうして、あたふたするミカに今度は逆に私が慰められながら、二人だけの秘密の誕生日会が始まるのだった。
聖園ミカはとてもめんどくさい女の子である。
情緒不安定だし、モモトークのメッセージを大量に送りつけてくるし、甘えられる相手にとことん依存しやすいし、色々重いし、空回りの天才だ。
でも根は素直な良い子であるし、他人のために祈ることができる優しい娘でもある。
私――姫野アスカはそんな彼女を誰よりも深く愛しているのだ。
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。