ブルアカの世界にTS転生したので日記を書く 作:TS百合好きの名無し
ミレニアムサイエンススクール……それは【千年難題】という今の技術では解けない7つの難題に立ち向かう研究者達の集まりをきっかけとし、千年難題に取り組む実験や検証の過程で研究機関が増えてきた結果誕生した新興の学園。
ゲヘナ学園やトリニティ総合学園などと比べて歴史こそ浅いものの、キヴォトスにおいて「最先端」「最新鋭」と扱われるものの多くはここミレニアムで開発されたものであり、古参校にひけを取らない影響力を持つキヴォトス三大学園の一角でもある。
都市化された中心こそ最先端技術が使われた建物ばかりだが、一方で郊外には未開発地区があり、東アルプスの東丈山のようなキャンプ等に適した自然豊かな地域も存在する。
――そんなミレニアムには、【廃墟】と呼ばれし廃都市エリアがある。
連邦生徒会により立ち入りが禁止されたそこは多くの自動防衛機構が今もなお闊歩している危険地帯であり、内部には現ミレニアムでも手に余るオーパーツやオーバーテクノロジーが幾つも眠っていると言われている。
本来であれば誰も訪れない無人の地である廃墟。しかし今日はそこに奇妙な侵入者たちの姿が三つ。
彼らの正体はミレニアムのゲーム開発部に所属する才羽モモイと才羽ミドリ、そしてその付き添いとして付いてきた【シャーレの先生】。とある目的のためにこの地を訪れた彼らはさっそく機械の群れに襲われ、逃げ込んだ廃墟の内部で不思議な機械音声を聞いていた。
『対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません』
「え、え!? なんで私のこと知ってるの?」
『対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません』
「私のことも……一体どういう……?」
『対象の身元を確認します……【○○先生】。…………資格を確認しました、入室権限を付与します』
「ええっ!?」
「え、どういうこと!? 先生はいつこの建物と仲良しになったの!?」
“な、仲良くなった覚えはないけど……”
謎の基準で何らかの検査をパスした【先生】を驚いて見つめる二人。当の【先生】もまた身に覚えのない出来事に困惑していた。
『才羽モモイ、才羽ミドリの両名を、先生の【生徒】として認定、同行者である【生徒】にも資格を与えます。承認しました――下部の扉を開放します』
目の前に扉があるにも関わらず聞こえてきたのは「下部の扉」というワード。そのことにモモイが疑問を覚えた直後、三人の足元の床が突然パカリと開く。
「床がなくなっ……落ちる!?」
“……危ない!”
三人の姿はそのまま闇の中へと落ちていった。
「いやー、流石に死ぬかと思った」
床下へと落ちた三人であったが、幸いなことに高さはそれほどでもなかったようで、途中【先生】が二人の下敷きになるというアクシデント?があったものの無事に地面へ降り立つことに成功していた。
「そんなに深いところまで落ちたわけじゃないみたいだけど……ん?…………えっ!?」
「ん……? どうしたのお姉ちゃん……?…………えっ!?」
ホッと一息をついたのも束の間、何かを見つけたモモイとミドリが驚きの声をあげる。
【先生】も遅れて二人の見ている方向へと視線を向けた。
“あれは……”
二人の視線の先――謎の光によって明るく照らされたその場所に
衣類を一切纏わぬ白い裸身。完成された人形のような美しさすら感じる少女の姿をしたそれは、真っ白な椅子のような物に腰かけていた。
「お、女の子?」
「この子……眠っているのかな?」
「……返事がない。ただの死体のようだ」
「不謹慎なネタ言わないで! それに死体っていうか……ねえ、見て。この子、怪我とかじゃなくて……【電源が入ってない】みたいな感じがしない?」
「そう? 確かに言われてみれば、何だかマネキンっぽいね……どれどれ」
ある意味で怖いもの知らずなモモイが対象に近づき、その体に触れた。
「すごい、肌もしっとりしてるし柔らかい……あれ? ここに何か、文字が書かれてる……AL-IS……アル、イズ……エー、エル、アイ、エス? どう読むのか分からないけど、この子の名前?」
うーんと考え込むモモイ。やがて彼女はポツリと呟く。
「……アリス?」
「ちょっと待って、これよく見ると全部ローマ字ってわけじゃなくて……AL-1S、じゃない?」
「え、そう?」
「いったいこの子は……それにこの場所、いったい何なんだろう?」
「この子に聞いた方が早いんじゃない?」
「起きて、話してくれるなら良いんだけど……とりあえずこのままじゃ可哀そうだし、服でも着せてあげよっか」
「へえ、予備の服なんて持ってきてたんだ……ってそれ私のパンツじゃん!」
「違うよ、これは私の。猫ちゃんの表情が違うでしょ?」
「あ、ほんとだ」
この場に【先生】という男性が存在していることをすっかり忘れてしまったかのように服の話をする二人。【先生】は気まずさから黙ったまま気配を消していることを選択した。
「…………よし、これでいいかな?」
手際よく謎の少女の着替えを済ませたミドリが満足そうに頷いたその時、警報のような音が三人の耳に入る。
ピピッ、ピピピッ!
「わっ!? 何々!?」
「今の音……【この子】から聞こえた気がする」
「まさか……」
「――状態の変化、および接触許可対象を感知。休眠状態を解除します」
ぱちり。これまで一切動かなかった謎の少女が目を覚ます。
彼女はまず一番近くにいたミドリに視線を合わせ、ゆっくりとその口を開いた。
「……才羽ミドリ」
「えっ!?」
彼女は突然名前を呼ばれて驚くミドリからすぐに視線を切り、続いてモモイを見る。
「才羽モモイ……」
「わ、私の名前も!?」
そして最後に【先生】へと視線を合わせ……彼女はぴたりとその動きを止めた。
「……」
“……?”
彼女はじっと【先生】を見つめたまま動かない。謎の少女に見つめられた【先生】は目をそらすことなくその視線を受け止める。その姿に何かを感じたのかモモイたちも口を開くことなく彼らを見つめる。
10秒、20秒、はたまた1分か、先に沈黙を破ったのは少女であった。
「――あなたは……誰、ですか?」
“私は……【シャーレの先生】だよ”
そう言った瞬間、目の前の少女から気落ちするような気配を感じた。実際のところ、少女の表情は何一つ変わらない無表情のままである。しかし何故だかそこに、ほんの一瞬だけ悲しみのようなものが混じったのを彼は見たような気がしたのだ。
「そう…………ですか。あなたが【シャーレの先生】、なのですね」
少女はわずかにその視線を足元に落とし呟く。
“君はいったい……”
「……ああ。自己紹介、というものがまだでしたね」
【先生】の言葉に反応し、少女が顔を上げる。
「今は事情があって出てくることができませんが、この身体の本来の主の名はアリス。そして私は……彼女のパートナーの
再び三人の顔を順番に見回した彼女はついに己の名を彼らに告げる。
その冷たく無機質な紫色の瞳にはもう何の感情も映してはいなかった。
「アリス……必ず私があなたを……」
次回は掲示板
主人公不在のためパヴァーヌ編はサクッと終わる予定です