ブルアカの世界にTS転生したので日記を書く   作:TS百合好きの名無し

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書きたい流れが脳内にあるのに、それを文章化することがとても難しい苦しみがある
書いている時に【本編の設定とのズレはないか】とか【構成の矛盾はないか】とか【読みやすい文章になっているか】とか【生徒同士の呼び名が合っているか】とか【もっと良い展開や表現はないだろうか】とかをずーっと気にしてしまうせいでなかなか納得のいくものを投稿できないジレンマ
※つまるところ本作は亀更新なので、続きはのんびりと待ってて……

なお今回の話は、結構踏み込む回


【幕間】4 ケイと【先生】

 

 

 

 

「な、なぜこんなことに……」

 

 トリニティ自治区郊外――気絶した不良たちが倒れ伏す戦闘現場の中心にて、巨大なレールガンを背負ったミレニアムサイエンススクールの制服姿の少女は、自身の手に持つアイテムを見て呆然と呟いた。

 少女――ケイの視線の先にあるのは、銃弾によって綺麗な穴が空いてしまった携帯端末の姿であった。

 

「失敗しました……」

 

 ミレニアムサイエンススクールを出て電車に乗り、無事にトリニティ自治区の近くまでやって来たケイは、その道中で何度かスケバン等の襲撃を受け、これらを撃退していた。

 

 どうやら一人で不用心に歩いている彼女の姿は、良からぬ輩たちには格好の餌のように見えているらしい。

 つい先程もカツアゲ目的の襲撃を受けたばかりで返り討ちにしたのだが、その際に敵の銃弾が運悪く所持品の携帯端末をピンポイントで破壊したようで、彼女は絶賛大ピンチに陥っていたのである。

 

(くっ……電源が入りません。やはり駄目そうですね)

 

 ポチポチと端末を操作してみるも反応がない。どうやら完全に壊れてしまったらしい。ケイは心の中でユウカにごめんなさいと謝った。

 

(ど、どうすれば……?)

 

 ケイは焦る。連絡手段も土地勘も全くない地で所持金0の状態……控えめに言って、詰んでいるのではなかろうか。

 

(最低限、まずはお金だけでも用意しないと野宿をすることになってしまいます)

 

 大切な王女の身体を野宿させるなど言語道断。宿は必須だ。ひとまずお金を手に入れなければとケイは考える。

 しかしこの状況でお金なんてどう手に入れれば――そこまで考えて、ケイの目にたった今倒したばかりのスケバンたちの姿が目に入った。

 刹那、彼女の高性能な頭脳が名案を導き出す。

 

「……!」

 

 ケイは無言でスケバンたちの内の一人の懐をまさぐり始める。やがてお目当ての物――財布を見つけて中身を確認する。

 

(ふむ……少ないですが、数を集めれば宿くらいは確保できそうですね)

 

「――いたぞ! 既に2班やった奴だ、油断するな!」

「仲間の敵討ちだコラアアア!!」

「覚悟しやがれ!」

 

 耳に入る怒声。振り向けばスケバンたちの新たな増援がぞろぞろと姿を現していた。

 

(ああ、新しい財布が……)

 

 一人も逃さない。そう意気込んでケイは武器を手に取った。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

“乱闘騒ぎ?”

「はい、どうやらトリニティ自治区付近で起きたらしく、先程通報が入ったのです」

 

 その日、用事でトリニティ総合学園にやって来ていた【先生】は、帰りがけに護衛を買って出てくれた正義実現委員会のハスミとともにシャーレへの帰路についていた。

 

「間が悪いと言いますか……どうやら騒ぎの場所はちょうど私たちが向かっている方向のようです。距離も近いですね」

 

 そう言って携帯を眺めながらハスミは顔を顰める。厄介ごとの気配を感じたのだろう。

 

「先生、ここは迂回して帰宅なされた方が……」

“うーん……”

 

 ハスミの提案も理解できる。しかしこの時の【先生】はなんとなく興味本位で話の続きを聞くことを選択した。

 

“それって暴れている対象の確認はできてるの?”

「ええ、通報のメッセージ内容によれば、ミレニアムのものらしき制服に身の丈ほどもある巨大な銃を持った小柄な生徒が不良たちを相手に暴れていたようです」

“……ん? 小柄で、ミレニアムの制服に巨大な銃……? それって……”

 

 あまりにも心当たりのある特徴にまさかと思いつつ先生はハスミに言う。

 

“このまま真っ直ぐ現場へ行こう。確認したいことがあるんだ”

「え? で、ですが」

 

 【先生】の脳裏には最近届いたばかりのゲーム開発部からのメッセージ内容が浮かび上がっていた。

 

“ダメかな?”

「う……わ、分かりました。【先生】のことはこの私が必ず守り抜きます。くれぐれも無茶はなさらず私の後ろにいてくださいね?」

“ありがとう、ハスミ”

 

 ハスミの了承を得て、【先生】はついに件の現場へとたどり着く。

 そこで二人が見たのは、スケバンの群れを相手に戦闘をしている髪の長い小柄な少女と、その彼女に向かって手榴弾らしきものを投げようとしているスケバンの姿である。

 それを見た二人の判断は素早かった。

 

“ハスミ!”

「お任せを!」

「――――ぎゃんっ!?」

 

 即座に立て膝で銃を構えたハスミが早撃ちを繰り出せば、銃弾が手榴弾を投げようとしていたスケバンを撃ち抜き沈黙させる。

 

「な、なんだ新手か!?」

「げっ、あの制服は正実の……! 引くぞお前ら! これ以上は粘るだけ損だ!」

「動けるやつは倒れているやつを背負え!」

「くそっ!」

 

 当然それを為したハスミたちへとスケバンたちの注目が集まるが、彼女たちはハスミの姿を見るやいなや不利を悟って撤退の準備を始める。

 

「……先生」

“うん、追う必要はないよ”

 

 あっと言う間に彼女たちはいなくなり、その場に残ったのは【先生】たちと例の少女だけ。

 ほっと一息つき、両者の視線が交わる。

 地に着くほどの長い髪をポニーテールで纏め、ミレニアムの制服を身に纏った小柄な少女が、いつかの時のように無表情で【先生】を見つめていた。

 

“やっぱり君だったんだね。久しぶり、ケイ”

「【シャーレの先生】……あなたが何故ここに」

“仕事でたまたまここに来ていただけだよ”

「先生、彼女と知り合いなのですか……?」

 

 銃を手に持ったまま警戒を解かずにハスミが【先生】に尋ねた。

 

“うん、以前ミレニアムに行った時に知り合ったんだ。大丈夫、悪い子じゃないよ”

「……そうですか」

 

 【先生】の言葉に納得したのかスッと銃を下ろすハスミ。それを確認した【先生】は改めてケイへと言葉をかけた。

 

“こんにちは、ケイ。会えて嬉しい、と言いたいところだけど何故こんなところにいるのか理由を聞いてもいいかな?”

「……人を探していました」

“それって前にも言ってた……”

「はい、私とアリスにとってお互い以上に大切な人です。トリニティ自治区に手がかりが見つかったのでここに来ています」

“そうだったんだ”

 

 ケイの探し人――【先生】はその存在についてそれほど多くを知らない。ただ分かっているのは、その人が目の前の彼女たちにとって何よりも大切な存在なのだという事実だけだ。

 

“不良に絡まれていたみたいだったけど何かあったの?”

「襲ってきたのを返り討ちにしていただけです」

“……”

「……何ですかその目は?」

 

 おそらく本当のことを全て言っているわけではない。そんな気がしたが、【先生】はそこに触れないことにした。

 彼は代わりに彼女に関係のある話題を切り出す。

 

“私のところにゲーム開発部のみんなから、ケイがミレニアムを出て行ったってメッセージが来たよ。みんな心配しているみたいだった”

「私に今すぐミレニアムに戻れと?」

 

 刺すような目を向けてくるケイに先生は首を横に振る。

 

“ううん、心配はしてるけどユウカが上手く話をしてくれたみたいで、もし見かけたらケイの手伝いをしてあげて欲しいって頼まれたよ”

「ユウカが……」

 

 ユウカの名前を出すと反応を示すケイ。それから彼女は何やら気まずそうな表情で視線を落とす。

 

“ケイ……?”

「もしよろしければユウカにメッセージをお願いできませんか。『端末を壊してしまってごめんなさい』と」

“構わないけど端末って?”

 

 ケイが無言で穴の開いた携帯端末を懐から取り出す。察するに先程の不良たちとの戦闘で壊れてしまったのだろう。それを見て【先生】は「あっ」と声を上げた。

 

“そう言えばユウカが君に旅の資金として電子クレジットと連絡手段を渡したから心配はいらないって言っていたけど……まさか”

「ええ、あなたの考えている通りです。彼女には申し訳ないのですが今の私はそれらを失っています」

“分かった。連絡しておくね”

「感謝します」

“うん――――ってどこに行くの!?”

 

 ぺこりと頭を下げたかと思いきや、そのまま何食わぬ顔で歩き去ろうとするケイを慌てて呼び止める【先生】。

 ケイは不思議そうな顔で「何か?」と【先生】の顔を見上げた。何か、じゃないが。

 

“一文無しで一体どこに行く気なの!? 寝泊まりする場所は!?”

「なんとかします」

“つまり何も当てがないってことだよね?”

「……」

 

 無言でそっぽを向くケイ。【先生】をため息をつき、空を見上げる。時刻は夕暮れ。このまま夜になろうとするタイミングで行く当てのない一文無しの生徒を放置することなど考えられなかった。

 

“ケイ、今日はこのままシャーレに来ない?”

「は?」

“人を探すにはもうだいぶ遅い時間になってしまうし、私も【先生】としてこの状態の君を放置することはできない。……きっとユウカも心配するだろうし”

「う……」

 

 ユウカの名前を出されるとケイも強い反応を返せず口ごもる。それを確認しながら彼は畳み掛ける。

 

“今日一日だけでいい。シャーレに来ないかい? 受け入れてくれるならユウカへの連絡もすぐに取ってあげるよ”

「…………はい」

“よかった。……待たせてごめんねハスミ、この子のことはこのまま私が預かるから正義実現委員会への報告は――”

「問題ありません。私の方で上手く処理しておきますので」

“ありがとう”

 

 こうして彼らはケイを加えた三人でシャーレへと向かうことになるのだった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 シャーレ――オフィス。

 

“――はい。ココアで良かったかな?”

「構いません……ありがとうございます」

 

 ソファーに座ったまま、ケイはココアの入ったマグカップを【先生】から受け取り頭を下げる。そんな彼女を見て【先生】は微笑み、同じように対面のソファーへと腰掛けた。

 ここにハスミの姿はない。彼女は二人をシャーレに届けた時点でトリニティへと引き返していた。

 だから今シャーレにいるのは【先生】とケイ、この二人だけであった。

 

「……ここは変わらないですね

 

 ケイはぼんやりとした顔で室内を見回していた。

 

“何か言った?”

「いえ、何でもありません」

 

 彼女はそう言ってココアを飲む。合わせて彼も持ってきたコーヒーを口にした。

 しばらく沈黙が場に流れる。先にそれを破ったのは【先生】だった。

 

“ケイ、君さえよければ君の探し人について聞いてもいいかな?”

「……」

“私は君の力になりたいと思っている”

 

 【先生】は真っ直ぐに彼女の目を見る。それを受けたケイは数秒の沈黙の後、その口を開いた。

 

「あの人は……私たちにとっての光でした」

 

「共に在る瞬間はいつだって満たされた気持ちでいっぱいで、幸せという感情を私たちに教えてくれたのもあの人でした」

 

「私も王女もあの人が一番大切で、だからこうして再びあの人と会うために……会う、ため、に……」

 

“……ケイ?”

 

 不意にケイの言葉が途切れる。【先生】が彼女の様子を窺えば、そこには先ほどまではなかった強い【恐れ】や【不安】といった感情の色が濃く浮かび上がっているのが見て取れた。

 一体どうしたというのか。『会いたい』と願っていた大切な人の話をして、何故そんな顔をするのだろう。

 

…………会う資格なんて私たちにあるのでしょうか

 

 良くない雰囲気を読み取った【先生】は、彼女の意識を引き戻そうと声をかけた。

 

“ケイ! しっかりして!”

「あ……」

 

 ハッとした様子で我に返るケイ。彼女に異変を感じた【先生】はすぐにその理由を尋ねた。

 

“……ケイ、君とその人との間に一体何があったの?”

「……」

 

 彼女の表情は暗く、視線はマグカップに落ちたまま動かない。その姿はまるで何かを悔いているかのような――

 

「ずっと……目を背けていた事実に今さら気付いただけです。私は、私たちは……あの人の意志を一度裏切って今ここにいるのだということを」

“裏切り……?”

 

「後悔はしていません。しかし、そこにどんな理由があろうと裏切りは裏切りなのだと私は思います」

 

「【先生】……もしも大切な人が、終わりの見えない苦難の道を何度も傷つきながら突き進んでいたとして……もうこれ以上傷ついて欲しくないと、苦しむ姿を見たくない、最悪の結末を迎えて欲しくないからと、そんな自分たちの我儘によって、その人が果たそうとしていた【責任と義務】を横から無理矢理取り上げてしまったとしたら……」

 

「そこにはどんな責任が発生するのでしょうか」

 

 それは先生にとってあまりにも不可解な問いかけだった。

 抽象的で要領を得ず、彼女の探し人のこともほとんど知らない状況で、ただ彼女が納得のいく答えだけが求められているという難しさ。

 それでもやはり彼は【先生】であって――優しく彼女に問い返してみせた。

 

“その人は……君を大切にしてくれる人?”

「……大切にされていた、と思います」

 

 ケイの言葉に【先生】は優しげな微笑を浮かべた。

 

“ならきっと、その人も一緒にその責任について考えてくれると思うよ”

「……なぜそう言い切れるのですか?」

 

 ゆっくりとケイの視線が【先生】に向けられる。

 

“君がその人のことをとても大切に想っているから”

 

 はっきりと【先生】は言う。

 

“君がそれほどまでに大切に想っている相手が、逆に君のことを大切に想っていないわけがないのだから”

「……!」

“少なくとも私なら……たとえ裏切られたとしても、怒るより先にその理由をまず考えるかな。だからいきなりその相手を恨むようなことはしないと思う”

 

 ケイは静かに【先生】の言葉を噛み締めるように聞いていた。

 やがて彼女は、彼が初めて見る柔らかな笑みを浮かべて口を開いた。

 

「……やっぱりあなたは【先生】なんですね」

 

 それをきっかけに、二人を隔てる見えない壁が薄くなったような気配がした。

 その言葉にどんな意味が込められていたのか、【先生】には分からない。それでも……決して悪いものではないことは確かだった。

 

「ありがとうございます【先生】、あなたのおかげで私の迷いは消えました」

“そっか。力になれたみたいで良かったよ”

 

 ――それから、ケイの状況を知ったユウカが即座に電話をかけてきて一悶着あったり、ソファで寝ようとしたケイを【先生】が止めたりと色々あった後、この日のシャーレの夜は穏やかに過ぎていったのであった。

 

私たちの祈りが生んだ奇跡……あなたならきっと、あの人とこのキヴォトスをハッピーエンドに導けるのでしょうか

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ 

 

 

 

 アリスの追憶―

 

 

 ――はい! アリスはアスカ先生を待っていました! 先生と会えてアリスはとても幸せです!

 ――王女、私もいるのですが……

 

 ――パンパカパーン! 本日よりアリスは再びアスカ先生を守る勇者となります! さあ先生、今日はどんな冒険に出かけますか?

 ――アスカ先生……あまり王女を甘やかさないでください。

 

 ――うわーん! アリス、またテイルズ・サガ・クロニクル1をプレイするなんて嫌です! アリスはもうやったので今度はケイがやってください!

 ――え゛っ

 

 ――大変です先生! ケイがおかしくなってしまいました!

 ――う…あ……ころして……ころして……

 

 ――先生! 先生はマスコットなんですからそんなに前へ出てはいけません! それはアリスの役目です!

 ――またこんな無茶を……王女が心配するのでやめてください。

 

 ――新しいクエスト……アリスでは手伝えないのですか?

 ――エデン条約、ですか……どうかお気をつけて。あなたに何かあれば王女が悲しみますので。

 

 ――ケイ……先生は……

 ――落ち着いてください。辛うじて弾は心臓を外れていたそうです。大丈夫ですアリス、大丈夫です……きっとすぐにあの人は目を覚まします。……やはり私たちも行くべきでした。

 

 ――勇者の力が必要と聞きました! アリスに任せてください!

 ――アスカ先生、これ以上の大人のカードの使用は控えてくださいね。

 

 ――いけません先生! それ以上その力を使っては……!

 ――ケイ……?

 

 ――ケイ、なぜ先生は戻ってこないのですか? なぜ、みんなは泣いているのですか?

 ――アリス……先生は、もう……

 

 ――【死】って何ですか? アリスには分かりません。先生……先生がいないとアリスは……アリスは……

 ――っ、この記憶は……? ……ああ、そうですか。やはり私たちはもう何度も……

 

 

 

 ――これが……これがアリスたちの冒険のエンディングなんですか?

 

 ――先生、また頭を撫でてください。

 

 ――先生、次の冒険へ連れて行ってください。

 

 ――お願いです。ずっと側にいてください。

 

 ――アリスは先生がいないと嫌です。嫌なんです。どうして、どうして……!

 

 ――ああ。

 

 ――理解、しました。つまり、アリスは――

 

 

 

 ――――アリスは、勇者にはなれなかったのですね。

 

 

 




ポニーテールのケイちゃん可愛いね

みなさま、よい年を
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