計算上ではCFA-41“
従来の戦闘機とは違い“
「――時間だ、無線封鎖を解除。 攻撃を開始せよ」
リリィの言葉と共に目標となる拠点から爆発の光が発生していく。 流石に肉眼では確認できない距離を機体下部に搭載されたセンサーとカメラ類が正確に捉え雪風が補正しリリィの元へ秒の狂いもなく届けられ、やがて全ての滑走路に攻撃が与えられ機能を停止した報告が届いた。 滑走路の破壊された今、敵性航空勢力の心配はないといっても良い。 今頃、滑走路を使用せずに上がることが可能な機体を探し出しているだろうが、残念なことにソレを見逃すようなパイロットはいない。 今頃地対空ミサイルで上がるまでの間を必死に露払いをしているのかもしれないが、損害が出たという報告は受け取っていないのかリリィの吐く当然だという吐息が自身に現状を知らせていた。
「各部隊の作戦進行度は予定通り――ノア中尉の方は既に目標を破壊し離脱しているな」
「なんか拍子抜けしちゃうね。 こんなのが核爆発を引き起こしただなんて」
「そうだな、だが未だに何を使用したのかすら判明していない。 B83のようなモノを撃ち込まれた訳でもなければ運び込まれたことすら不明なんだ。 それこそ“
「ま、リリィちゃん的には予想通りがいいんだよね」
こうなることを予測していたからこそ実行された作戦であり、その枠に収まっているのであれば、それは間違いなく作戦通りということになるのではないだろうか。 なんにせよ退屈な時間になりそうだと思いながら地表の状況を確認し、面白みもないと展開したモニターを消す。 複数の拠点に対する同時強襲により敵航空戦力を封じ込めた今、地上で行われているのは一方的な制圧であり言い換えれば、ただの蹂躙だ。 それでいて、その行動は敵司令部への強襲に対し迎撃、もしくは追撃を行う機体を飛ばさせないことにある時点で、目標となった拠点に対し特に制圧するという意味はない。 ただ不測の事態を起こさせないためにも制圧していたほうが都合が良いというだけだ。
小型手榴弾サイズの小型戦術核爆弾“
「――レーダーに反応、何だコイツは? 早い。 数は一、敵司令部施設に向け急速接近中」
警告音が鳴る前にリリィが息を呑み何かしらの操作を行い何かを捉え即座に進路上の部隊へと告げる――恐らく目標は敵指定部なのであろう。 しかし何故という疑念しか生まれない。 進路を見るに敵司令部より北東から――厳密に言えばロシア連邦領土内から飛翔した物体である。
「対象を捉えたが、これは“
「それよりリリィちゃん達、前に“
「雪風が認識した限りでは、その心配は無さそうだが――流石に行動原因も不明となると危機感も覚えるか。 そもそも兵装を積んでいるのか、これは?」
「私に聞かれても開発者じゃないし分からないって……」
未確認人型兵器の出現かと思ったがモニターを見た限りでは航空機のようだ。 しかし開発途中の機体なのか淡い空色を下地に可動部周辺を黄色く塗り分け、まるで足を伸ばしたかのようにエンジンを突き出した歪な姿を見せ真っ直ぐ飛ぶ。 無駄な機動を含めないからこそ落ちることのない速度は、まるでミサイルのようでもあり、その機体が持つ本来の性能が高く感じられ不安になる。 おそらくCFA-41“
目を凝らしモニターに映る機体を注視し感覚を研ぎ澄ます。 流石に都合よく何かを感じることはないが、反対に驚異という感情も沸き上がらない。 確かに戦闘機の形をしている――“白騎士事件”の時に恐怖した対象なのは間違い無いのだが、自身の感覚が慣れてしまったのか何も感じることができなかった。 敵を落とそうという殺気というものが感じ取れないとでも言えばいいのだろうか、何かしら敵対する意思を“
「――リリィちゃん、“
これ以上の判断は自身には不可能だとリリィに指示を仰ぐ。 単機による侵入、かつ経路から見て目的は我々と同様の敵司令部の破壊――しかし何故、今更になって同じ行動を起こす必要がある。 この作戦において敵の継続戦闘能力は奪われ司令部の破壊が不可能であっても再度、強襲を仕掛ければ問題なく機能は停止するのだ。 “
「何とも言えないな。 だが、もし敵司令部施設に我々の知らない……それこそ他国の軍事機密が置かれてるのであれば――私なら間違いなく処理するため消しに動くな。 その痕跡を跡形もなくすために」
「どうする? これ以上の戦力はどこにもないよね、動く?」
「我々が動くのは最悪な状態のみだ――作戦行動中の全機に告げる。 所属不明の航空機が作戦空域に侵入した。 方位0-2-0、ロシア連邦領土内から真っ直ぐ目標となる司令部施設に向かって飛行中。 これより航空無線による警告を行う。 任務が終了した機は不明機に向け警戒飛行しつつ退去、“
やはり同じ結論に辿り付いたらしく急ぎ国際緊急周波数を弄ると英語で合衆国軍と名乗った後、作戦行動中であることを伝え離脱を促し、今度はロシア語で同じように通告――しかしながら飛行経路は依然として変わらず、敵司令部へと飛び続けていた。 この場合、無線機の不調とも考えられるが、あの高度からでも恐らくではあるが拠点から上る煙は確認できているであろう。 だが進路を変えることはないということは作戦行動中であることを理解した上で飛行しているということになり、無線機の不調は考えられない。 こちらに益があるとは思えない状態だと思うとリリィも溜息をつきながら警告を発する口を止める。
これ以上動かせる戦力は、どこにもない――指定した施設等を破壊し任務を終えたとしても、相手は飛行する航空機である。 満足に補給が行えていない機体を当てるわけにはいかないだろう。 敵司令部の制空権は確保したが、あくまで制圧するのは生身の人間である――当然、ただ殺せば終わりというわけにもいかず時間をかけて無力化していくわけだが、それまでの間、あの“
「……人が乗ってるとは考えにくい速度だよねぇ、あれ」
「無人機である可能性を疑ってる、と? 確かに考えられないことではないが雪風は外部コントロールではないと判断している時点で遠隔操作の線は薄いな。 退去すれば良し、しなければ落とすだけだ」
『本当に宜しいんですか、こんなことに大事な機体を使うことになって? それに理論上可能とは言え、このように貴方様を運んだことが知れたら最高役員が良しとしても我々、現場の者が……』
「構わん――そもそも、こういう時のために用意したシステムだ」
頭上から足先に向け微かな振動を感じながらエストは密閉された空間の中で情報を整理し――この輸送システムは一般向けに扱える代物ではないなと評価していた。 戦闘空域外から高速で移動し機体を戦闘状況下においた場合、使用者への負担と機体が消費する
第五世代ジェット戦闘機にはウエポンベイの内部に搭載した弾薬を収納しステルス性を高める方式を採用しているのだが、この輸送システムは弾薬の代わりに機体を運用する搭乗者を入れ、作戦空域上空にてウエポンベイを解放し落下中に機体を展開させるシステムとなっている。 まるで人間を投下型爆弾のように扱うため開発部署には頭のネジが何本か外れたような人間しか残っていないが、おそらく合理性を追求した結果がこの振動であるのだから本当にネジが足りないと述べるしかない。 しかし、これでも振動は当初計測した数値の四割近くが遮断されている――それでも人間が耐えられない振動が発生するのは機体の表面に無駄な部分が残っており、飛行中ソレが影響を及ぼし振動を生み出しているのであろう。 そうでなければ採用しているエンジンの出力が高すぎて機体が悲鳴という名の振動を上げているかだ。
『――予定地点まで残り20、出力を下げ機体の投下体制を取ります』
「いらん、このまま落とせ」
『そんなことしたら事故になります! ただでさえ我々の首が怪しいというのにこれ以上の問題行為を行ったら首どころの話では……んんっ! 申し訳ありませんが本機は安全上の都合によりエンジンの出力を下げGAT-X105の投下体制に移ります。 現在高度5500ft、機体安定域まで700、投下までカウント360」
現状のまま機体を大きく動かした場合、空中分解する恐れが有るため投下位置を確認しながら減速する必要がある。 ただしエアブレーキ等を使い急激な減速を行うと機体自体に多大な負荷をかけてしまい機体の破損へ繋がりかねない。 そのためエンジンの出力を必要最低限までに引き下げ機体が安定した所で上昇し更に減速をかけ、投下位置まで滑空し射出――そうすることによって万全の態勢で効率的に拠点強襲を行うことが可能となる。 “
他人に余計な力を与えると碌な事にはならない。 それが大きければ大きいほど己に帰ってくる不都合は莫大なものとなる、だからこそ他人という不確定な人間に頼ることはせず自分自身で処理していた。 そのほうが正確であり管理もしやすかったからだ。 百合奈は不都合を理解しつつ与え、このような輸送システムを思いついたのであろう。 互いに篠ノ之束という人間以外の他人を信用せず、それを利用するかしないかと別々の判断をしたわけだ。 纏められた
カウントがゼロに近づく。 機体も高度を下げ現在500ft――人間には耐え切れないであろう振動も、もはや無く、ウエポンベイが解放され空と繋がる。 “ストライク”のシステムを起動させ展開準備を完了させると
「予定通り二回目の実地試験を行う。 投下後は速やかに戦域を離脱し指示が有るまで待機していろ」
『了解しました……』
その発言を境にエストは機体から切り離され落下――空中で既に完了していた“ストライク”を起動させ、その身に鎧を纏う。 元来、人間が扱えるように設計はされてはおらず、“
当然、“災厄”が扱うために生み出してきた
いつの世にも物事を悪用する存在は必ずしも息を潜め身を隠し日陰に生き続け、誰かを守るために存在する剣を自殺を促すためだけに使う者が必ずしも存在する。 そういう者程、安全な金銭の匂いに釣られるため泳がしやすいのだが、別に泳がしたところで利益になるわけでもない無駄な行為だ。 そもそも我々には問題ないだろうがメインプランのために存在している二人にとっては、急激な科学技術の発達は良い迷惑であろう。 なにせ両者共に“災厄”として見るのであれば十分に高い基礎能力を保有しているというのに身体は人間そのものなのだから死ぬという現象が通過点になることはない。 我々のように肉体の一部を欠損したところで
――さて、この船体をどのように処理してやるべきか……。
そう思いながら脚部のスラスターだけを使い落下中の姿勢を立て直し、第一回目の実地試験時に使用した装備とは別の装備で、ゆっくりと海面に落ち続けた。 出力を上げることで滞空することも可能であったが相手は海の中にいる巨大な潜水空母――高い空から身を沈ませ続ける潜水艦に有効打を与える手段を“ストライク”は持っておらず、リリィから共有された情報通りであれば艦載機の射出能力もあり、目標となる“シンファクシ”級潜水空母とは別の何かに迎撃される可能性すらある。 そうなると優位に立つためには空ではなく同じ土俵となる海中へ舞台を変えたほうが効率的なのだ。
“ストライク”には装備換装機構が備わっており、それにより機体の役割を多方向へ分散することを可能とし、これら装備の総称を
理論上は空気を急排出することで推力を得るスラスターの構造を利用し、水を中排出することで水中での運用も可能であることから、このまま海中に身を潜める“シンファクシ”級潜水空母に取り付こうかと考えるが、エストも“
《Are you Lily?》
視界の隅に表示されたメッセージ――間違いなく“
「――こちら“
“ストライク”のシステムに介入されたとしても自身が死ぬことはないと理解しているからだ。 いくらシステムに介入されたからとは言え現在のエストの神経が通った機体は、干渉することが可能だとしても、その動きを封じることはできないのだから焦るだけ無駄であり――エスト自身が既に、このような状態に慣れきっている。 淡々と問い詰めるように問うが返答は来ない。 海面に浮き出た送受信用の機器があることから全く聞こえていないわけではないだろう。 リリィからは恐ろしく早いレスポンスを持つ何かだと聞いていたのだが、これならば開発中の人工頭脳の方が早いのではないかと思える。
《can not understand. Are you Lily? Who are you? do not know.》
――理解できない。 貴方はリリィ? 貴方は誰? わからない。
理解できないのは此方の方だと言いたかったが言うだけ無駄であろうと、船体に亀裂を与えるため着水――左手に高エネルギービームライフルを持ち替え、腰から対装甲コンバットナイフ“アーマーシュナイダー”を取り出し展開する。 “ストライク”に精度の高いレーダーは搭載しておらず、あるのはカメラが捕らえた映像を拡大し照合、その後に所属を識別しモニターへ表示する、ただそれだけのシステムだ。 その画像データーを元に搭乗者の視線をシステムが捉え機体を補正し火器管制システムが動いているわけで、高度なレーダーに頼る誘導方式は採用されていない。 それゆえに対象となる“シンファクシ”級潜水空母を捉えるのはエストの目だけとなる。 ソナーでもあれば正確な位置情報を捉えることができたのであろうが、流石に海面へ影を映す巨大な構造物の姿を探す必要はなかった。 目の前にいるのだ、必要ない。
《I do not know, the presence of you. It does not exist. Not in the record.》
――私は知らない、貴方という存在を。 存在していない。 記録にない。
元から理解できない反応を見せていた“
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※あとがき
束さんの薄い本を一旦仕上げようと時間を削っています――そのため今後の予定も不確かに。 七月に投稿できるかどうかすら怪しくなりました。
あ、みなさん令和になって始めまして。 エスト主人公による一次創作でも描こうかと思い、設定を詰めてたら普段通りのエストになり――あかん、これ二次的要素を抜いた“災厄”としてのリリィちゃんだということになり、あれ、別に二次じゃなくても行けたんじゃねと後悔してる私です。 設定はあるんです、設定は……設定は。 画力がないんです。
とりあえず世界的に見た被害を書くべきだと思ったら。こんなあっさりとした山もない戦争に。 むしろ急降下してゆく魔王みたいに下がっていく消化試合。 書く必要あったのかと悩みます。 というか文字数がやっぱ足りない! 一万文字じゃ私が満足できない不満タラタラ状態!! 二万文字で書き上げたかったけど残念なことに時間がないという……。 仕方ないのでエロ本でも描いてきます。
次回は少し束さんのエr……薄い本を仕上げるため未定です。 時間をください。