俺のポケットモンスター   作:越谷さん

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【舞台】ガラル地方・ブラッシータウン
【登場人物】
《ハルカ》ミシロタウン出身のポケモントレーナー。愉快なポケモン達と談笑しながら、行き当たりばったりな冒険を続ける。
《ユウリ》トウカシティ出身のポケモントレーナー。美しい女性とポケモンをこよなく愛する。
《コウジ》マサラタウン出身のポケモントレーナー。最強を追い求めるハルカ達の先輩トレーナー。
《ソウマ》ワカバタウン出身のポケモントレーナー。眼鏡がトレードマークで、情報戦が得意。


【傑作選010】新天地! ガラルのはじめの一歩!

 大気圏を通過する飛行機の窓から、ふと下界を覗く。群青色の海に囲まれた雄大な大陸では、森や山、大地がまるで息をしているかの様に過ごしていた。

 ここはガラル地方。大自然と共に生きるこの大陸に、遂に彼は足跡を付けた。

「着いたぁー!」

 飛行機の搭乗口から降りたハルカは、空港のド真ん中でそう両手を掲げた。

「遂に来たぜガラル地方! すげぇ! 冒険の匂いがこんなとこまでプンプンする!」

 ハルカの瞳は照り付けるように輝き、ガラルの空気を吸い込む鼻息は徐々に荒くなる。周囲を歩く別の観光客からの視線は、寒冷地帯の様に冷ややかだった。

「落ち着きなよ。まだ着いたばかりだろ?」

「おっ、悪ぃ悪ぃ」

 後ろから掛けられた声に、ハルカは振り返って心拍を整える。声を掛けてきたのは、ハルカと同じ飛行機に乗ってきたユウリだ。

「いやー、やっぱ初めての場所はテンション上がっちまうな!」

「全く……」

 いつまで子供のままなんだと、ユウリは大人びた溜息を吐く。

「……それにしても」

 ユウリはそう口を開くと、人波に鋭く目を光らせる。彼の目が捕らえたのは、横並びに歩く現地の金髪女子二人組だった。

「うひょーっ! あれがガラル美人か! 金髪に映える白い肌が最高に堪んねぇぜ!」

「いやお前が落ち着け」

 数秒前の自分の発言を忘れたのか、箍が外れた様に暴走するユウリに、ハルカがそう注意する。二人を見つめる視線の温度は、更に下がっていった。

「全く、どこに行っても君達を見つけるのには苦労しないな」

 不意に聞き慣れた声が耳に聞こえてきて、二人は首をそちらに向ける。そこに立っていたのは、友人であるソウマだった。

「ソウマ!」

 見知らぬ土地で見知った友人を見つけて、二人は安心感からソウマに駆け寄る。

「久し振り!」

「先に着いてたのか?」

「いや、俺も今着いたところだ」

 ジョウトのワカバタウン出身であるソウマは、ホウエンから来た二人とは別の飛行機に乗ってガラルにやって来た。この地を訪れた理由は、皆同じである。

「コウジはこの街の噴水広場で待ってるらしい。俺達も行くとしよう」

 スマホロトムに映った地図を頼りに、ソウマが目的地へと歩き出す。ハルカとユウリはソウマを先頭にして、まるで母カモネギの後ろを歩く子カモネギの様についていった。

 

 ◎

 

 ブラッシータウン。ガラル地方の郊外に位置する、自然の長閑な町だ。蒸気機関が線路を走る音が心地良く鳴り響き、石畳を歩く人々の歩調もどこかのんびりしていた。

「ったく、遠路遥々ここまで来た訳なんだから、噴水集合じゃなくて出迎えに来てくれたって良いのにな」

「まぁ、色々都合があるんじゃねぇの?」

 一同も他愛ない会話を垂れ流しながら、ブラッシータウンを散策する。

 彼らがこのガラルを訪れたのは、この先に居るだろうコウジに招待されたからだ。『まだ見ぬ土地で新しい冒険をしないか?』とチケットと共に同封された一通の手紙。その文章を読んで、ポケモントレーナーならじっとなどしてられなかった。

「……あそこだ」

 目的地が見えたようで、ソウマがそう呟く。前方を見ると、確かに鮮やかに宙を舞う噴水がハルカ達を歓迎していた。その前には、こちらに手を振る見知った姿が。

「コウジ!」

 彼らをこの地に呼んだ張本人だ。隣には彼の相棒である純黒色のリザードン――リチャードも居る。

「やぁ、よく来たな」

「久し振りだなー!」

「リチャードも元気だったか?」

 ハルカがそう言ってリチャードの頬を撫でると、リチャードは「バギュァ」と元気そうに返事をした。久し振りの再会に、一同の会話も弾む。

「それでコウジ、例の件なんだけど……」

 そう話を切り出したソウマは、クイッと眼鏡を整える。隣に立つハルカとユウリも、揃って期待の眼差しを向けていた。

「……そうだな」

 コウジは口角を吊り上げると、ポケットから三つのモンスターボールを取り出した。

「それじゃあ、早速ご対面といこうか!」

 噴水よりも高くモンスターボールを放り投げると、それぞれ中からポケモンが飛び出してくる。枝の様なスティックを持った猿のポケモン。鼻先に絆創膏の様な模様のあるウサギのポケモン。今にも泣き出しそうな瞳のトカゲのポケモン。どれもハルカ達が初めて見るポケモンだ。

「「「おぉ!」」」

 初対面のポケモン達に、一同の興奮は止まらない。今にも触って弄くり回しそうな様子だ。

「左からこざるポケモンのサルノリ、うさぎポケモンのヒバニー、みずとかげポケモンのメッソンだ」

 紹介も途中で、ポケモン達は右往左往に散らばり出す。サルノリは木の上に上り、メッソンは噴水の中へ、ヒバニーは広場を走り回った。

 サルノリが陽気にスティックを叩くと、実っていた木の実が噴水に落下する。それに驚いたメッソンが慌てて噴水から飛び出し、その衝撃でヒバニーが水浸しになった。全身を震わせて体を乾かすヒバニーへと他の二匹が体を寄せると、最終的には仲良しそうに笑い合っていた。

「こいつらがガラル地方の御三家ポケモンか……」

「なぁ! 本当にこいつら貰って良いのか!?」

「勿論、その為に用意したんだからな」

 コウジはハルカ達を招待する特典として、旅立ちの相棒をプレゼントする事を約束していた。ハルカ達は彼らとの出逢いを楽しみにここまで来たと言っても過言ではなかった。

「えー……どいつにしよっかなー……」

 見れば見る程個性的なポケモンで、誰を選ぼうか迷ってしまう。そんな中、最初に選んだのはソウマだった。

「じゃあ俺はこいつにしよう」

 そう言ってソウマが目の前でしゃがんだのは、絆創膏の模様を鼻先に貼ったヒバニーだ。

「記念すべき俺のガラルでの最初のポケモンはヒバニーだ。名前は、そうだなぁ……シュウトにしよう。よろしくな、シューくん」

 ソウマが差し出した拳に、シューくんが嬉しそうに拳を合わせる。早くも意気が投合しているようだ。

「じゃあ僕はこいつだ!」

 次に選んだユウリは、そう言ってメッソンを抱きかかえる。

「今にも泣き出しそうな顔しやがって。泣き虫っぽいからお前の名前はルイだ!」

 ユウリの言った意味が分かっていないのか、ルイは不思議そうに首を傾げている。それでもユウリの表情は晴れやかだった。

「それじゃあ俺はこいつだな」

 ハルカがそう言うと、残されたサルノリの前で膝を曲げる。

「別に余り物だからとかそんな理由じゃないぞ? 俺は最初からお前を選ぼうと思ってたんだ」

 サルノリに向けて、ハルカは右の掌を見せた。

「俺はハルカ! これからよろしくな、サルノリ!」

 こちらこそと言うように、サルノリが満面の笑みで掌にスティックを合わせる。これが二人にとってのハイタッチとなった。

「あーそうだ、名前決めなきゃな……」

 なにか良い名前はないかと、ハルカは頭を捻らせる。しばらくして、頭の上を浮遊していた電球がピコンッと光った。

「よし、今日からお前の名前はブロリーだ!」

「また妙な名前を……」

 相変わらずのネーミングセンスだと、一同は脇で頭を抱える。

「昔読んだ漫画にそんな名前のキャラが居たんだよ!」

 当の本人は、全く反省していないようだ。

「そういやー、ハルカの手持ちになった訳だから、もうブロリーと喋れるのか?」

「ん? あぁ、そうだな」

 ハルカのポケモンと話せる特殊能力は、手持ちのポケモンとなった瞬間に発動する。顔を目の前のブロリーに戻して、ハルカはブロリーの声にそっと耳を傾けた。

「ブロリー! 由来は分からぬが、逞しそうで良い響きな名前だな! きっと意味も素敵な事だろう! 小生は気に入ったぞ! これからよろしくな、ハルカ!」

 リズムを刻む様にスティックを叩きながら発せられたブロリーの言葉に、ハルカは硬直する。言葉の内容もさることながら、更に頭に響いたのはその声自体だった。

 ――……声、野太っ!

 目の前の可愛らしい子猿から聞こえたとは思えない超低音。それこそ満月の夜に現れる巨大怪獣の様な声だった。

「どうしたハルカ?」

「いや、なんでもない……」

 進化したら重量級になるのだろうなと、ハルカはブロリーの未来を予見した。

「さて、相棒も無事決まった事だし」

 トレーナーとポケモンの顔合わせも終わって、コウジがふと口を開く。

「早速してみないか? ポケモンバトル」

「!?」

 コウジの提案に、一同は肩を弾く。組み合わさったばかりの相棒に、そっと目を向けてみる。相棒の表情は、トレーナーの心と早くもシンクロしていた。

「……そんなの」

「「「やるに決まってんだろ!」」」

 ポケモントレーナーとして、バトルの申し出を蹴る事など出来なかった。

 

 ◎

 

 噴水広場で適度に距離を離しながら、ハルカ達は戦闘前の準備運動をしていた。勝負の匂いを嗅ぎ付けてか、現地の人々も観覧に集まってくる。

「ルールは三匹によるバトルロワイヤルだ。お前達、準備は良いか?」

 審判であるコウジが、一同に確認する。しかしその確認は元より不要だった。

「勿論!」

「僕も!」

「いつでもかかってこい!」

 臨戦態勢な一同に、コウジは表情を崩した。

「それじゃあ、バトル開始!」

 コウジが突き刺す様に右手を挙げ、開戦のゴングが鳴り響く。

 最初に動き出したのはソウマだ。

「シューくん! ひのこ!」

 ソウマの指示を受けて、シューくんが口から火の粉を噴射する。火の飛んだ先には、くさタイプのブロリーが居た。

「ブロリー逃げろ!」

「へ?」

 指示がよく分からなかったのか、敵に背中を向けてブロリーが振り返る。当然、降りかかった火の粉はブロリーの尻に着火した。

「熱っ!」

 尻の毛を薪の様にしてゆらりと揺れる炎に、ブロリーはのた打ち回った。

「あちゃちゃちゃあっちゃ! 尻が真っ赤に燃える!」

「大丈夫! 猿の尻ってそういうもんだから!」

 なにが大丈夫かよく分からないアドバイスで、ハルカはグッとガッツポーズをする。完全に掌で踊るブロリーに、ソウマは口角を吊り上げた。

「先手必勝、相性有利な相手を先に攻めるのはバトルロワイヤルの定石だろ」

 作戦通りだと言うように、ソウマは眼鏡を整える。相棒のシューくんもドンと胸を張っていた。

「全く以てその通りだ!」

 ハルカとは別の方向から声が聞こえ、ソウマはハッと振り返る。そう、これはバトルロワイヤル。倒すべき相手は一人ではないのだ。

「ルイ! みずでっぽう!」

 ユウリの指示通り、ルイは口から水の弾丸を発射する。弾丸は軌道を描きながら、シューくんの顔面に命中した。

「シューくん!」

 ほのおタイプのシューくんに、水鉄砲は効果抜群だ。シューくんは顔が濡れて力が出ずに、そのまま地面に倒れた。

「ハハハッ! 油断したなソウマ!」

 敵を一人打ち倒したと、ユウリは豪快に口を開けて笑う。

「よし! このまま続けてブロリーにもみずでっぽうだ!」

 明らかに調子に乗るユウリの指示に合わせ、ルイは従順に水の弾丸を撃つ。ブロリーに照準を合わせた弾丸は狙い通りブロリーの尻に命中し、燃え盛っていた炎を消火した。

「はぁ、気持ち良いぃ……」

「なにぃ!?」

 予想外のアシストに、ユウリは酷く動揺する。

「よし! 俺達も行くぜ! ブロリー、えだづき!」

 ブロリーは頭に取り付けていたスティックを右手に携え、ルイに向かって突撃する。テンポ良く披露されるブロリーの突きから、ルイは怯えた様子で逃げ回っていた。

 その間に戦線から離れていたシューくんが、ようやく立ち上がる。

「いけるか、シューくん」

 ソウマの確認に、シューくんは当然だと首を縦に振った。頼もしい相棒だと、ソウマは微笑する。

「シューくん! ひのこ!」

 シューくんの口から飛び出した火の粉が、ブロリーとルイのもとへと飛んでくる。ブロリーにとってあの火は、トラウマものの代物だ。

「ブロリー! ルイの後ろに隠れろ!」

「了解!」

 ハルカの指示に、ブロリーはルイの背後に身を隠す。突然の事に錯乱するルイは、そのままブロリーに代わって火の粉を顔面で受け止めた。

「ルイ!」

 ルイの顔面が薄らと黒ずむ。効果はいまひとつだが、その恐怖体験からルイの涙腺は崩壊した。

「おい! ルイを盾にするなんて卑怯だぞ!」

「バトルに卑怯もクソもねぇんだよ!」

 泣き声に掻き消されないように大声で抗議するユウリに、ハルカが舌を出して挑発する。

 確かにここは戦場。卑怯などという言葉に甘えては、勝利は掴めない。

「ここまで実力は互角か……」

「大丈夫かルイ!」

「次で決めてやる!」

 ポケモン達は体勢を立て直して、中央に駆け出す。己の最後の力を振り絞って、三匹一斉にぶつかった。

「たいあたり!」

「はたく!」

「ひっかく!」

 空中で衝突した三匹は、衝撃に耐えられずに四方八方へ離散する。吹き飛ばされた三匹の目はグルグルと渦を巻いており、皆戦闘不能の状態となっていた。

「……相討ちだな」

 審判の溢した言葉により、バトルは勝者不在のまま幕を閉じた。

「ブロリー! 大丈夫か!?」

 地面に仰向けになって倒れたブロリーに、ハルカが慌てて駆け寄る。ハルカの腕で眠ったまま、ブロリーは薄らと笑みを浮かべた。

「……すまないハルカ。初陣を勝利で飾れなくて」

「なに言ってんだよ。ブロリーはよく頑張ってくれたよ」

 申し訳なさそうに口を開くブロリーに、ハルカは優しく頭を撫でる。ソウマとユウリも、それぞれシューくんとルイを労っているようだ。

 緊張感が解けた中、コウジが賞賛の拍手を鳴らしながら歩み寄ってくる。側まで近付くと、体力回復の効果のあるオボンの実を一人ずつに分けてくれた。

「いやぁ、実に良い勝負だった。俺も思わずリチャードを出して参戦するところだったよ」

「それは勘弁してくれ」

 幼気なポケモン達が火を吹く黒き竜に蹂躙される様を想像して、ハルカは血の気を引かせた。

「さて、これで俺からしてやれる事は全部終わった訳だが、これからお前達どうするんだ?」

 コウジは素朴な疑問に首を傾げる。

 ここまで全く同じ道を辿ってきたハルカ達だが、なにもこの先も同じ道を辿る訳ではない。トレーナーの数だけ、冒険の数が待っているのだ。

 最初に答えたのは、「ふっ」と不敵な笑みを浮かべたユウリだ。

「そんなものは決まってる……」

 ユウリはそう言うと、整った顔立ちでキラリと瞳を光らせる。

「これからガラル美人をナンパしてガラル観光だ! 行くぞルイ! 僕がお前に本当の雌ってヤツを教えてやる!」

 出逢いを待っているガラルの美女を探して、ユウリはルイを胸に抱いたままマッスグマの如く駆け出してしまった。下手したら列車の速度を上回る主人を、ルイは胸の中で不思議そうに見つめている。

「……相変わらずだな、アイツは」

 ソウマの溢した言葉も、小さくなったユウリの背中には届かなかった。

「俺はやっぱりチャンピオンリーグだな! その為にまずはジムバッジを集めねぇと!」

 気を取り直してと、ハルカが旅の目標を強く宣言する。その目標は、隣のソウマも一緒だった。

「ハルカならそう言うと思ったよ。しかしこの地方のジムは、誰でも挑戦できる訳じゃないぞ?」

「えっ?」

 コウジの発言に、ハルカの肝が揺れる。

「ガラル地方ではジムに挑戦するのに、ジムリーダーやリーグ運営といった特定の人物からの推薦状が必要なんだ。その推薦状が無ければ、ジムチャレンジは勿論、チャンピオンリーグに挑戦する事も出来ない」

「そっ、そんなぁ!」

「お前知らなかったのか? それぐらい調べとけよ」

 落胆するハルカを、ソウマが眼鏡の隙間から横目で覗く。

「俺は推薦状を書いてくれる人に宛てがあるからな。まずはその人に会いに行くつもりだ」

 事前にガラルのチャンピオンリーグについて調査していたソウマは、準備も万端のようだ。

「そうか。もし遠くに行くんだとしたら、アーマーガアの空飛ぶタクシーを使うと良い。あっという間に目的地に辿り着けるぞ」

「そうさせてもらうよ。それじゃあ」

 ソウマはそう別れを告げると、ユウリとは対照的にのんびり目的地へと歩き出した。隣のシューくんも、こちらに大きく手を振りながら歩いている。

 スティックを陽気に振り返すブロリーだったが、その主人は窮地に立たされていた。

「どうしよう……これじゃあチャンピオンリーグに挑戦できないじゃん……」

 冒険が始まる前に終わっているという絶望的な状況に、ハルカは頭を抱える。そんなハルカに、コウジがそっと助け舟を渡した。

「……もし宛てがないなら、ポケモン研究所に行ってみたらどうだ?」

「ポケモン研究所?」

 コウジの言葉に、ハルカが首を傾げる。

「あぁ。俺も行った事はないが、どうやらこの町にもポケモンの研究施設があるらしい。そこの博士なら、もしかしたらジムチャレンジの推薦状を渡す資格を持ってるかもしれない」

 ハルカがチャンピオンリーグに挑むには、誰かから推薦状を貰う他ないのだ。今のハルカの目的は、推薦状を書いてくれる人物探しである。

「……そうだよな。……よし!」

 こんなところで諦めて堪るかと、ハルカは両手で頬を叩いた。調子を取り戻したハルカに、コウジも口元を緩める。

 するとコウジの隣で静かに佇んでいたリチャードが、突然翼を大きくはためかせた。コウジがリチャードの背中に飛び乗ると、ふわりとリチャードの足が地面から離れる。

「俺も勿論チャンピオンリーグに挑戦する。次に会うのはエンジンシティで開かれるジムチャレンジの開会式だな」

 開会式で会おう。それはハルカのジムへの挑戦を信じて疑わない台詞だった。

「それじゃあまたな!」

「おぉ! 色々ありがとな!」

 勢い良く飛び上がったリチャードが、コウジを乗せて青空の彼方へ消えていく。あれだけ賑やかだった噴水広場が、今ではハルカとブロリーだけになっていた。

「……よし、そんじゃあ俺達も行くか!」

「あぁ!」

 気を新たにして、ハルカとブロリーはブラッシータウンを歩き出す。

 まずはこの町にあるというポケモン研究所へ。ここからハルカの、ガラルでの新たな冒険が幕を開けたのだった。

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