この運命さえ喰らい尽くせ   作:海波 犬夜

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心から笑っていられる

 

街を出た僕らは、途中で休憩を取りながら真っ直ぐにシス湖をめざしていた

水や食料はリムルの胃袋に入れておき、休憩の時にリムルから貰うという感じでできるだけ荷物は少なくしているのだ。

ちなみに、火炎瓶も同様。

そんな中で新たな発見があった

なんでも、僕とリムルが出会った洞窟の地底湖の水はヴェルドラの魔素を浴び続けたせいか魔物が飲むと疲労回復効果が見込めるみたい

その効果のおかげもあって、僕らは予定よりも早くシス湖周辺にたどり着いた。

この速度なら、万が一撤退戦になったとしても逃げ切れると思う。

そして、シス湖周辺にたどり着き、一度拠点を設置しようとしていた時だった

 

「リムル様、メイル様、少しよろしいでしょうか」

 

「ん?どうした?」

 

「何かあったの?」

 

「実は、偵察中にオークに襲われているリザードマンを発見いたしまして。いかがいたしましょう」

 

「いかがいたしましょうって...助けない訳には行かないだろう」

 

「ソウエイ、すぐに助けてあげて!!オークは倒せないようなら逃げてもいいから!!命大事に!!」

 

「はっ、承知いたしました」

 

ソウエイとの思念伝達による通信を終えると、僕とリムルはみんなの指示を出す

内容は当然、リザードマンの救助及びソウエイとの合流

 

「みんな聞いて〜!!」

 

「ソウエイから連絡が入った!!少し厄介なことが起こったらしい!!今すぐにソウエイに合流するぞ!!」

 

「「はっ!!」」「了解っす!!」

 

「みんなやる気十分だね...じゃあここからはいつ何が起こるかわからないから気を引き締めて!!」

 

僕が号令をかけるとみんなの顔付きが変わった。

中には、真剣に祈っている子もいる。

まぁ、いつ死ぬか分からない戦場にいるんだし普通だよね

それにしても、ソウエイとの距離はそんなに離れていない。

ここはシス湖から多少離れているのにオークに襲われてるってことは、別働隊がいるのかな...

そういえば、オーガの里を襲ったのも別働隊って話だったっけ...そう考えたら、今のオークはとんでもなく強いのかもしれない。僕もうかうかしてらんないや...

 

「メイル、大丈夫か?そんなに緊張するな。お前らは俺が守ってみせるよ」

 

「リムル...」

 

不安な顔でもしていただろうか?

リムルが僕に向かって笑顔で励ましてくる

そんなリムルの胸には、いつか送ったブローチが輝いている

そうだ、1人じゃない。

僕には、みんながいる

そう考えるとふっと体が軽くなった気がした

そうだよね。僕が勝利を気にする必要は無いんだ

時間さえ稼げば、リムルが絶対勝ってくれる

 

「...そうだよね!!まだ見てもないオークに緊張するなんて、初陣はドキドキだね!!」

 

「そうだろ?俺も初陣は内心ドキドキだったよ。

とはいえ、1番初めにあったのはあのヴェルドラだからな!!あれに比べりゃオークなんて可愛いもんだぞ!」

 

「ふふ、そうだねっ...!!確かにヴェルドラに比べれば怖くないや。それに、みんなも居るしね」

 

「あぁ。ソウエイに合流したら、リザードマン達も仲間になるかもしれない。そしたら俺たちの数は600くらいか?そうなれば1人100人くらい倒せば勝てる!!」

 

「うん、一気に絶望的になったよ...」

 

なんてことを言うんだこの兄は...

現実的に考えて100人撃破とか無理に決まって...

あいやでもどうだろう?

リムルの黒稲妻とかフレアサークル、

ベニマルのオーガフレイム

僕の火炎瓶...結構広範囲技多いし、この3人だけでも万削れる可能性はあるか...ならわんちゃん...?

そんなことを考えていたら、と行くから断末魔が聞こえ、その少しあとにソウエイの姿が見えた

 

「ソウエイ!!怪我は無い?」

 

「俺は問題ありません。しかし...」

 

ソウエイはそう言うと、支えているリザードマンを僕らに見せる

これはひどい...かなり深い傷だ...

普通なら助からない。でも、こっちにはリムルのフルポーションがある。たとえ体が真っ二つだろうと、息さえあれば復活できるのである

 

「リムル、回復薬!!」

 

「大丈夫だ、今飲ませる」

 

「んっ...くっ...ゲホッゲホッ!!」

 

リムルが回復薬を飲ませるも、リザードマンはそれを飲み込まずに吐き出そうとしている

このままじゃ死んじゃう。早く飲んでよ...

僕が何も理解できず焦っていると、リムルは優しくリザードマンに語り掛けた

 

「安心しろ、回復薬だ」

 

リムルの声が聞こえたのか、リザードマンは薬を素直に飲み干した。そして数瞬の後に身体中にあった切り傷が全て癒え、リザードマンは驚いたように起き上がった

 

「傷が...!!致命傷だと思ったのに...」

 

「大丈夫?」

 

「あ、貴方様は使者できてくださった...」

 

「名乗ってなかったっけ?僕はメイル=テンペスト。

そしてこっちが僕の兄のリムル=テンペスト」

 

「リムル...っ!!お、お願いがございます!!我が父であるリザードマンの首領と、兄たるガビルをどうかお救い下さい!!」

 

「兄...?ガビルの妹さんなのか?何があった」

 

「...兄ガビルが謀反を起こし、首領を幽閉したのです...兄は、自身の力のみでオークロードを討伐しようとしておりますが、力差は歴然...もう私には、多くの魔人の皆様を従える貴方様の庇護に縋るしかなく....!!!」

 

「...そうは言ってもな...俺たちの間で同盟はまだ成立してない。助けてやりたいが...どうするか...」

 

「ねぇ、妹さん。貴方は首領の娘さんなんだよね?」

 

「メイル?」

 

「リムル、少し任せて。どう?あってる?」

 

「は、はい...」

 

「...リムル、首領はいないけど、首領代理なら見つけたよ」

 

これなら、同盟を締結できると言葉を続ける。

だが、当然ながらこれは僕のエゴだ

助けたいと思って助けられたら苦労は無いんだから

だから、ここからは僕だけじゃどうしようもない

みんなの力が必要だ。そのためには...

 

「リムル...だめかな...?」

 

「...そんな心配そうな声を出すなよ...わかった。君を首領代理と認める。同盟を締結するのに、異論はないか?」

 

「あ、ありません...どうか我らをお救い下さい...!!」

 

「わかった。同盟は締結だ。ソウエイ、メイルと一緒に首領の所まで影移動はできるか」

 

「問題ありません。」

 

「よし、では首領の救出を命じる。メイルと娘さんを連れて行け」

 

「はっ!!」

 

「ランガ、ゴブタ達を連れてガビルのところまで影移動できるか?」

 

「もちろんです!!我が主よ!!」

 

「ならお前達にはガビルの救出を命じる。誰も死なずに帰ってこい」

 

「「「はっ!!」」」

 

「ベニマル、ハクロウ、シオン。お前らは好きに暴れて構わない。ただし、味方に被害は出すなよ!!」

 

「勿論です」

 

「久々に本気で暴れるとするかのぉ」

 

「リムル様行ってまいります!!」

 

「リムル、また後でね...!!」

 

「おう!!俺も上から見てるから、好きなだけ暴れろよ!!

じゃあ全員作戦開始!!」

 

リムルの一声で鬼人たちは森を駆け抜け、ランガ達はガビルを既の所で救出し、僕らはリザードマンの洞窟に潜入した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───リザードマンの洞窟

 

「...娘よ...何としても生き延びるのだ...我ら誇り高きリザードマンの血を絶やしてはならぬ...」

 

首領は理解していた。

既に洞窟の外で戦闘が始まり、オーク、リザードマン共に犠牲が出始め、それは外だけに収まらず洞窟内にまで迫っていることを

そして、その血の香りがすぐそばまで迫っていることを..

 

「首領...」

 

「狼狽えるでない。女子供は1番奥の通路から外へ逃げよ。残った若い門兵には悪いが、ここを抜けられれば女子供は嬲られ喰らわれる。我らがなんとしてでも、あの者達が逃げる時間を稼ぐのだ!!」

 

「同盟の返事も出来ずじまいとは情けない...

せめて私が、あの豚共を少しでも...!!」

 

「キャアアァァァー!!」

 

「何事だ!!」

 

「奥の通路からです!!」

 

「まさか、回り込まれたか!!」

 

リザードマンの戦士たちが口々に言葉をこぼす。

しかし、もはやそんな猶予は残ってはいなかった

 

「前からも来るぞ!!全員備えろ!!」

 

目の前の5つの通路からもオークが迫っていたのだ

首領にはもはや、希望はなかった

 

「すまぬ...もはやここから、誰も逃げることは出来ぬであろう...許せ...」

 

覚悟を決め、裏から来た特段大きなオーラを纏ったオークと首領は向き合いながら皆に謝罪する。

首領は最期にここで果てることを決めた...が、その未来が訪れることはなかった

 

バギューン!!!

静かに開戦のタイミングを図っていたオーク、リザードマンの間で大きな発砲音が響いた。

それは当然...

 

「先走らない様話して置いたはずですよ族長殿。

いきなり発砲してすみません、咄嗟だったもので...」

 

メイル=テンペストのM19による銃撃だった

 

「あ、貴方は...!!」

 

「数日ぶりですね族長殿。前回は名乗りもせず申し訳ありませんでした。改めまして、リムル=テンペストの弟、メイル=テンペストです。」

 

「そ、そんなことより今は目の前のオークを...!!」

 

「あぁ、彼なら既に死んでいますよ」

 

メイルがそう言うと同時に、これまで動かなかったオークは力無く地面に倒れた。

その大きな額に、小さな穴を開いて

 

「な、なんと...!!」

 

「通路側のオークも、たった今片付いたようですね」

 

「父上!!」

 

「おぉ...!!よくぞ戻った...!!お前がこの方たちを連れてきたお陰で、リザードマンは救われるやもしれん...!!」

 

「ソウエイ、洞窟内のオークを全部片付けたら、外に出て僕らも暴れるよ!!パパっと片付けちゃって!!」

 

「承知しました。直ちに」

 

そう言うと、素早く分身したソウエイは手から【粘鋼糸】を出し、通路に溜まったオーク達を細切れにしていく。

その様子を見るリザードマンたちは口をあんぐりさせ、有り得ないものでも見るような目でメイルやソウエイを見つめていた

 

「ソウエイ、まだまだ敵はいるけど大丈夫?」

 

「問題ありません。メイル様のお手を煩わせるまでもありませんので、しばらくお待ちください。」

 

「...なら、僕も少しだけやる事やっちゃうね」

 

そう言うと、メイルは目を閉じ震える手に静かに力を込め、魔素弾を生み出し始めた...

 

 

 

 

 

 

足りない。

洞窟に入ると同時に、僕は首領の目の前にいたオークを咄嗟に撃ち倒し、何とか首領に救出を間に合わせたのだが...

普通の弾丸では、オークの額に穴を開けることはできても貫通させることは出来なかった。

ただ、今のはただのオークのオーラじゃなかった。

ソウエイが戦ったって言うオークジェネラルってやつかな?

だとしても、オークジェネラルでこれならオークロードには効くかどうか分からない。だから、今のうちに魔素弾をいつもの威力のやつから強めの威力のやつまで作っておく。

せめて片目くらい潰せないと、誰かがやられるかもしれない...そう考えて弾を作り続ける

 

「メイル様、終わりました。洞窟内のオークは全て掃討が完了しました。リムル様の元へ向かいましょう」

 

と、不意にいつものソウエイの声が聞こえた

リムルやベニマルとは違った安心感を持つソウエイの声。

血の香りが鼻腔に鋭く刺さる洞窟内で

いつ誰か死ぬか分からない戦地であっても彼らの声は僕を安心させてくれる

 

「...うん。行こう。みんなのところ」

 

余裕のない僕の手を取るソウエイは怖くないのだろうか

強くなれば、この怖さも無くなるのだろうか

その思考は影に飲まれ、僕らは次の戦場へ移動する

 

「メイル様、焦りは禁物です。我らが着いている以上、誰も死なせはしません。...もう、二度と」

 

影移動の最中聞こえたソウエイの声

僕を安心させると同時に、自分へ釘を刺しているんだろう

...一度は里を滅ぼされ、そこから逃げるしかなかった彼なりに

大事な部下が、上司であるはずの僕を心配し、励ましてくれた。その部下も、失う恐怖に震えているのに

...まったく、僕はダメだな。リムルみたいに強くなれそうにないや。

だから僕は僕なりに...

 

「リラックスだよソウエイ。ソウエイは昔のソウエイじゃないでしょ。もうオーガじゃない。6人じゃない。

今はリムルも、ゴブリン達も、僕もいる。

みんなで勝とう!!二度と失わないように、誰も死なないように、みんなで勝とう!!」

 

「メイル様...」

 

「僕もみんなが死んじゃうかもって考えたら怖いけど...きっと勝てる!!1人なら怖くて動けないけど...怖いのもみんなで分け合ってるから、もう怯えない!!だからソウエイ、暴れよう!!」

 

「...はい」

 

()は笑う

恐怖に別れ(さよなら)を告げたから。

(みんな)が居てくれるから。

(あなた)が横にいてくれるから。

 

だから今は

心から、笑っていられる




はい。あとがきです
分かりづらいかもしれませんか、今回ずっとメイルは焦りと恐怖で怯えてました。
その証拠に「命大事に!!」だったり「逃げてもいいから!!」など、矢面にたったソウエイを心配するような発言をしてました。
ただ、最後に自分以外も恐怖と戦ってると理解してみんなと一緒と感じた為、1人じゃないと理解しもう何も怖くないとなりました

何書いてるのかよくわかんないですねぇ..
まぁ普通に仲間を失うのを恐れてたって感じです
次回もお楽しみに
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