この運命さえ喰らい尽くせ   作:海波 犬夜

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虎の威を借る狐

散開して数分、戦場では、いろいろな動きが起こっていた。

俺は初め、洞窟で捕食したコウモリの翼を使って空から偵察しつつ戦場の様子を確認する予定だったので、予定通り翼を出し空から眺めているとガビルが引き連れてたであろうリザードマン達が密集し、その輪の中心には多くのゴブリンがいた。

 

「何やってんだ?」

 

『恐らく、リザードマンがオークを撹乱し、そのすきにゴブリンに仕留めさせる作戦だったのではないかと。』

 

「だが、オークの動きがなんだか素早くないか?」

 

『リザードマンが飢餓者の影響下にあるオークに捕食され、沼地での機動力を奪われたため、あのような状態になったのかと推察します』

 

「なるほどな...ただ、ガビルのやつならてっきりゴブリンくらい見捨てると思ったのに...先導者としては優れてるのかもな」

 

街に来た時は自分勝手なやつって印象だったのに...

調子に乗らなければなかなかいい感じなのか?

俺がそう考えていると、気がつけばガビルは何やら強そうなオークと一騎打ちになっていた

 

「あれは不味いな。ガビルじゃ勝てないぞ」

 

そう思っているうちにもじわじわとガビルが追い詰められ始め、そしてとうとう槍を手放し地に伏した

そこまで来ると、リザードマン達のガビルコールもなくなり、みなが絶望の表情を浮かべる

そして、オークの振り上げた斧がガビルの首を跳ねるその時

 

ガギンッ!!!

と、俺の位置まで響く金属音を鳴らしてガビルに迫る刃を弾き返した者がいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「き、貴殿は...あの村の真の主殿では無いか!!」

 

「(何言ってるっすか...この人...)」

 

「も、もしや、吾輩を助けに...!?」

 

驚くガビルを放置し、ゴブタは目の前のオークジェネラルから目を離さない。

変わってガビルのといに答えたのはランガだった

 

「あれは、ゴブリンライダーの副隊長ゴブタだ」

 

「貴殿は牙狼族の族長殿!!」

 

「我はランガ。牙狼族だったのはもはや昔、今は嵐牙族だ」

 

「ど、どのようにしてここに...」

 

「影移動だ...学ばんのか貴様...」

 

ガビルはどうやら前回の失敗から何の学んでいないようで、ランガ達の出現に驚いていた。

だが、突如現れた新たな獲物に驚いたのはガビルだけではなかった。

さらに面倒なことに食事をお預けされ激高しているのだから、話が通じない

 

「何処の馬の骨かは知らんが、リムルなどと言う木っ端魔物の配下の矮小なゴブリンに犬畜生なぞ恐るるに足らずよ!!そこの無様なトカゲ諸共我らの糧になるがいい!!」

 

ただ、いくら激高していたとはいえ、目の前の

オークジェネラルは喧嘩を売る相手を間違えた。

なんせ、目の前にいる2人はゴブリンライダーの副隊長に嵐牙族の現族長なのだから

 

「木っ端って...!!」

 

「ならば見せてやろう...カ"ァ"ウ"ゥ"ゥ"」

 

そのランガの一言で、戦場は暴風に荒れ狂うこととなる

 

 

 

 

な、なんだこれ...

俺たちが優勢に動けるようになり、オークロードを探していた俺は突如現れた無数の竜巻を遠目で眺めていた

 

だ、大賢者さん...なにこれ...

 

『解、個体名:ランガの広範囲攻撃、黒雷嵐(デスストーム)です』

 

ランガが巻き起こしたらしい無数の巨大な竜巻はオークたちを上空へ巻き上げると同時にその竜巻を撫でるように走る黒稲妻でオークたちを焼き払っている

まさに災害。頼もしいことこの上ないが、これが敵にいたらと思うと恐ろしくて仕方ないな...

 

そう思っていた俺に、メイルの思念伝達が入った

 

「り、リムル!?なにあの竜巻!!」

 

「あぁ...なんでもランガの技らしいから気にするな」

 

「えぇ...?」

 

「その反応はよくわかる」

 

そりゃあんな竜巻が起きたら驚くわな...

でもお前も大概だからな、メイル...

俺は、竜巻の下の方を埋め尽くす黒い炎を眺めながらそう呟いた

 

 

 

 

 

 

──ランガの黒雷嵐(デスストーム)が放たれる少し前

 

「ベニマル!!」

 

僕とソウエイは仕事を終えて約束通りベニマルの所に来ていた

 

「メイル様、ご無事で何よりです」

 

「当然でしょ、リムルと一緒にいるにはこの程度じゃへこたれられないもん!!それでね、ベニマルに少しお願いがあってさ」

 

「俺に...ですか?」

 

「うん。この中の先端、銃口に黒炎を灯して欲しいんだ」

 

「え...大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫。これも作戦だよ!!」

 

そこまで言うとベニマルは渋々と言った感じで銃口に黒炎を灯し、少し僕から離れた。

これはオーク達を見て思いついたことだ。

1人じゃなく、みんなだからできる技...

 

「行くよ!!【死之旋風弾(デス・ウィンディ)】!!」

 

僕の魔素弾とソウエイの繰糸妖縛陣(そうしようばくじん)、そしてベニマルの黒炎獄(ヘルフレア)の合わせ技!!

魔素弾が消えるまで黒炎が燃え尽きることなく進み続け、当たらなかった獲物にもソウエイの糸が軽く触れれば黒炎獄(ヘルフレア)と同程度に熱せられた糸で切られるまさに通り過ぎたら終わりの死の風!!

 

「暴れるって言ったんだもん。もう誰一人だって食べさせてあげないから!!」

 

そう言うと、僕は次にショットガンの銃口に黒炎を纏わせた

 

「これは特殊弾だよ!!たっぷり召し上がれ!!」

 

前方斜め上空にショットガンを放つと、狙ったかのように巨大な炎弾が発射され、まるで小隕石が降り注ぐようにオーク達に降り注ぐ。しかし、熱量が熱量。

当然防ぐ術はなくただ焼かれるのを待つのみのオークが大半だ

そして地面は黒い炎に包まれた

 

「これが対大群戦に向けて作った僕の奥の手ッ!!

名付けるなら【緋色流星雨(スカーレット・メテオシャワー)】ッ!!

数で攻めたのが仇になったね!!」

 

 

 

 

 

「す、凄まじいな...」

 

「ふっ、さすがはメイル様だ。あれだけ多くの武器や技を組み合わせるとは、俺たちも精進せねばなるまい」

 

ソウエイはそういうが、俺には蹂躙するメイル様が異常に見えてしまう

普段は穏やかで子供の魔物にすら負けてしまうメイル様が戦場で、それもこんなに不利な条件なのに今のメイル様は一方的だ

まるでこうなることがわかっていたように...

 

「本当にこれがなんのスキルも持たない者の戦果か...?」

 

「何を言う。メイル様とて我らの主の弟君だぞ。

我らを疑わぬからこそ見せれる弱さもあるのだろう」

 

「それにしたってな...」

 

「ほらベニマル!!守ってくれるんでしょ!!

じゃんじゃん行くよ!!」

 

ソウエイと話してるのを気にも止めず、俺を引っ張って戦場を進むメイル様はいつものわがままは健在なご様子

ただ、俺を引くその腕が僅かに震えるのを俺たちは見逃がさなかった。

 

「メイル様、移動など俺たちにお任せ下さい。

ベニマル、メイル様を背にお乗せしろ」

 

「わかった」

 

「え、ちょ...」

 

ひょいっとメイル様を持ち上げた俺はそのままソウエイの背にメイル様を乗っけると前方より迫ってきたオークを斬り伏せ、すぐメイル様に向き直った

 

「メイル様、我らを気にしてわざわざ無理をなさらずとも良いのです。

あなた方が居てくれるだけで俺たちは──」

 

そこまで言った時、遥か上空から無数の竜巻が降り注ぎ、オーク軍の大半を空へと打ち上げ始めた─

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の天変地異に僕らは一瞬動きを止める

 

「なに!?」

 

「...あれって...」

 

『告、あれは...』

 

突然の出来事に驚いてるのは僕だけのようで、

ベニマルは落ち着いて竜巻を眺めていて、お姉ちゃんは何か言いかけてるけど、僕は真っ先のリムルに連絡をとっていた

 

「り、リムル!?なにあの竜巻!!...へ?ランガの広範囲攻撃?気にしないでいい?...らしいよ!」

 

「そうでしたか。てっきりオーク側の奥の手かと」

 

「ね。でも違ったみたい。」

 

『告、連絡を無視しないでください』

 

あ、ごめんねお姉ちゃん。

焦って聞こえてなかった。次からは気をつける

 

『はい、気をつけてください』

 

お姉ちゃんに怒られながらも僕らが味方の広範囲すぎる攻撃を見て安堵していると、敵の頭数が減ってきたおかげかリムルから見つけたとの連絡がきた

 

「2人とも...」

 

「わかってます、問題ありません。

メイル様こそ、無理をなさらないでください。

自らの手で命を奪うのは生半可な苦痛では無いでしょう。あとは我らにお任せ下さい」

 

リムルと集合する為に戦場を駆ける2人は、背に乗る僕にそう言葉を投げかけてくれる。

...実際、オークを初めて殺した洞窟内から、ずっとみんなもこうなるかもという恐怖と、オークを手にかけた事実に手の震えが止まらない。

元々僕は日本に住んでただけの学生だ。

命を奪うなんて、子供の頃虫を殺したくらいだろう

でも、今回は物言わぬ虫じゃない。

今すぐにこんなことやめて、リムルの腕の中でこの震えを恐怖を消してしまいたいと思っていた

でも...

 

「...ダメだよ。どんな事にも責任は伴うものなんだよ。それを覚悟して僕はここまで来て引き金を引いた...手を血で汚す覚悟は出来てる。だから、甘やかさないで。この戦いが終わるまでは僕も狩人(せんし)なんだから」

 

「...失礼しました。我らの主を甘くみていたようで、影としてお恥ずかしい限りです。

メイル様はご自身の前に立つ敵だけを撃ち抜いてください。後ろ左右は我らが必ず」

 

ソウエイが一切僕に目を向けずにそう言ってくれる

それは僕の進む道の話なのか

これから起こるであろう戦闘のことなのか。

それはわからないけど、僕は少なくとももう前以外を見る必要は無いことだけはわかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──あれが、オークロード...」

 

戦場を駆け抜け、リムルと合流する...前にチラリとオークロードが見えた。

周りのオークよりも2倍近く大きく、巨大なオーラを纏っている。とはいえ、いくら大きいと言っても今はまだリムルやベニマルたちの方が大きい。

これ以上成長する前に討伐した方がいい

オークの数と戦力を見て、僕らはそう考えた。

せめて僕らが引導を...

そう考えているとき、オークロードのまるで周り全てを餌としてか思っていない生気のない瞳と目が合った。

膨大な食欲の奥...そこに僕は別のものが見えた気がした

ただ、そんな事を考えてる暇はなかった

 

オークロードと僕らのちょうど真ん中に、仮面をつけ、シルクハットを被った紳士風な魔人が降ってきたからだ

 

「貴様ら...このゲルミュッド様の計画を邪魔しおって!!」

 

「ゲルミュッド...?その名前って...!!」

 

『告、ゲルミュッドとは...』

 

大丈夫。覚えてるよ。

そう、あれはまだゴブリン村のみんなに名前が無い頃の話。

なんでも、リグルにはお兄さんがおり、そのお兄さんは突然村を訪れた魔人に見込みがあると名づけをされたらしい

その魔人こそゲルミュッド。目の前の魔人だ。

残念ながら名付けされたリグルのお兄さんは牙狼族が攻めてくるという情報を持ち帰った際に共に情報を探りに行ったゴブリンの仲間たちと帰らぬ人となってしまったが、その意思は弟であるリグルに受け継がれていた。いい魔人さんだと思っていたけど...

 

「この豚が!!貴様が早く魔王となって居れば俺がわざわざ来る必要もなかったのに...!!」

 

...その考えは、そうそうに捨てた方が良かったかも

 

「おぉ!!これはゲルミュッド様!!」

 

と突然、ガビルが声を上げゲルミュッドに駆け寄りなにか話しかけている

知り合いだったのかな...?ん?ガビルってネームド...まさか、ゲルミュッドが名付け親?

 

そう思っていると、突然ゲルミュッドがガビルを見て話し始めた

 

「ガビルか...貴様もさっさとオークロードに食われればいいものを...」

 

「な...!?」

 

「だが丁度いい...オークロードよッ!!このトカゲを喰らい、魔王へと進化するのだ!!」

 

「な、なぜですかゲルミュッド様!!吾輩は見込みがあると...いつか部下にしてくださると言ってくれたではありませんか!!」

 

...話を聞く限り、体のいい言葉で唆していたらしい。

こんな奴に騙されるなんて、ガビルも馬鹿だね...でも、ちゃんとそいつは懲らしめてあげるから

 

僕が心の中でそう決めた時、オークロードはゆっくりと動き出した。

すぐさまグロックで牽制を...と思ったけど、どうやら攻撃する気は無いみたい

なんか話して...

 

「魔王になるとは...どういうことか?」

 

「チッ!!この愚図が!!お前が豚頭魔王(オークディザスター)となり、このジュラの大森林をお前が支配するのだ!!」

 

どうやらオークロードの方は何も知らなかったみたい...

このまま仲間割れでもしてくれないかな...

 

「メイル、あいつ...」

 

「うん。何も話してなかったみたいだね。」

 

「どうする?捕まえて情報でも吐かせるか」

 

「それはいいかも。ただ成り上がりたいだけの通りすがり魔人って可能性もあるかもだけど...危険分子ではあるし」

 

「そうだな。なら今すぐに...なっ!?」

 

リムルが動こうとしたのも束の間、ガビルに対しゲルミュッドは魔力弾をぶつけようとした。

だが、それは既のところでガビルの部下たちがガビルを庇い何とかダメージを分散させ瀕死ではあるが生き残ったようだ

よかった...って、まずい!!また魔力弾を...!!

そう思い僕が引き金を引くのと、リムルがゲルミュッドとガビルの間に割って入り、ガビルを庇ったのは同時だった

 

「なんだ、俺が捕食するまでもなかったな」

 

「そっちこそ。わざわざゲルミュッドの腕撃ち抜くまでもなかったよ」

 

「ぐぅ....!!!!貴様ら、この俺を誰だと...!!」

 

そこまで言うと、リムルがゲルミュッドを拘束し、殴りつけ始めた。

 

「貴様らァ!!終わるぞ!!あのお方が貴様らを許さんぞ!!」

 

「そのお方の話、詳しく話してくれよ」

 

「僕ら、その人に用があるかも知れないからさ」

 

「や、やめろ...!!ぐあっ!?」

 

逃げようとするゲルミュッドの右足の腱を撃ち抜き、動けなくすると、情けなくゲルミュッドはオークロードに助けるように言い出した

 

はぁ...情報も話さないし、いつまでもリムルをバカにするみたいでムカつくし...そろそろ楽にしてあげるか

 

「リムル」

 

「あぁ、そろそろいいか。」

 

「ん。ありがとう」

 

僕がゲルミュッドの頭に狙いを定めると、オークロードが動き出した。すると虎の威を借る狐と言わんばかりにゲルミュッドが高笑いを始めた...だが

 

ザシュッ!!

 

...オークロードに振られた肉切包丁(ミートクラッシャー)によって切られたのがゲルミュッド本人であったのは、死ぬその瞬間まできっと分からなかっただろう...





はい。あとがきです
今回はオリジナル技を初めて出しました!!
やっと出せたよ〜...!!
実は前から考えてはいたのですが、なかなか出す機会がなかったので消化不良でしたが何とか出せました!!
え?名前がダサい?ご愛嬌です。

さて次回から本格的なvs魔王ゲルド戦です
お楽しみに!!
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