この運命さえ喰らい尽くせ   作:海波 犬夜

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最強魔王の手加減

 

カリュブディスの討伐作戦が開始されて数時間。

僕らは、ひたすらに攻撃を続けていた

 

「くっそ...中々落ちてこねぇな...」

 

「うん...僕の方もそろそろ弾が...魔素弾を作るにも、弾速を落とさないようにサポートしてたせいでもう何発も作れないよ...」

 

「みんなもそろそろ限界だ...どうするか...一か八か、俺の捕食にかけるか...?」

 

「僕も、全力で残った魔素全部使えば飢餓之王(ゲルド)の腐食弾を打てそう...試す?そのあと僕多分動けないけど...」

 

うーん...試す価値はありそうだけど、リスクも大きいよなぁ...

僕が倒れたらあのレーザーは相殺できないし...

あの鱗の攻撃も、目が見えないからほぼ意味をなさないから今まで負傷者は少数だったけど...見えるようになったら...

 

「そうだな...一か八か...これでダメならミリムに...」

 

リムルが言いかけると、カリュブディスから声が聞こえた

意識がない筈のカリュブディスから声がする時点でおかしいが、そんなことより僕らはその声に聞き覚えがあった

 

「グッ...がァ...おのれ...魔王...み、ミリムめぇ...!!」

 

ミリム?というかこの声って...

 

『解、以前街に訪れた獣人、個体名フォビオかと』

 

やっぱり!!...にしてもなんで?食べられちゃったとか?

 

『いや、それにしては様子がおかしい。オレと同じ様になにかの駒にされたと考えるのが妥当だろう。』

 

ふむふむ...なるほど。

とはいえ、フォビオさんを助けることはできるかどうか...

 

「り、リムルどう思う?」

 

「...なぁ、あいつ今ミリムって言ったよな」

 

僕が聞いたはずなのに、リムルからは質問が帰ってきた

 

「え...うん、確かに魔王ミリムめ〜って言ってた」

 

「...ならさ、俺たちに用事ないよな?」

 

「ないね...あっ!!!」

 

「...ミリムの客なら、ミリムが相手するのが当然だよな?」

 

「そっか!!そうだね!!」

 

バッとミリムを見るとなんと寝てる!!

あんだけ銃声なってたのに!?

というか戦場で寝るとか命知らずというか...

肝っ玉が座ってるというか...

 

「「ミリム!!」」

 

「ぅひっ!?」

 

思念伝達で呼びかけると、ミリムは直ぐに飛び起きてくれた

よしよし!!あとは状況を伝えればいいだけ!!

 

「お前、今寝てなかったか?」

 

「ね、寝てないのだ!!ずっとお前たちの戦闘を手に汗握りながら見守っていたぞ!!」

 

「ほんとかよ...まぁいい。

実はな?あいつ、本当はお前の客だったみたいでさ」

 

そういうと、ミリムは驚きと同時に嬉しそうに飛び上がり、リムルのそばにたどり着くと...

 

「ほ、ホントなのだ!?ワタシの客と言うことは私が相手をしてもいいということだぞ!?」

 

「あぁ、なんか悪いな。足止めしちゃったみたいで」

 

「構わないのだ!!心配いらないぞマブダチ!!」

 

最初の時点からずっと私ワタシも戦いたい!!

と駄々を捏ねてたからなぁ...やっと戦えると理解して嬉しそう

僕も疲れたし、みんなに撤退命令出して休もう

 

「みんな〜!!今すぐその場から離れて〜!!」

 

「め、メイル様...!?しかし...!!」

 

「カリュブディスは実はミリムのお客さんだったから、ここからはミリムが相手するって!!

そのままだと危ないから、ゆっくりでいいからその場から撤退!!

そのあとミリムの攻撃の衝撃に備えて!!」

 

「...了解しました!!全員聞こえたな!!撤退だ!!今すぐ後退しろ!!」

 

うんうん。ちゃんとみんな聞こえてたみたいだけど、念の為ベニマルが指示出してくれてるね

これでみんな撤退するはずだし、巻き込み事故はおこんないでしょ

 

「2人共、みんなは避難させたからいつでもいいよ!!」

 

「サンキューメイル!!ミリムいけるか?」

 

「おう!!ふふふ、最近覚えた手加減を見せてやるのだ!!では行ってくるのだ!!」

 

簡単な会話を終え、ミリムはカリュブディスの横へ飛んでった

手加減...手加減かぁ...どうなるかな...

 

 

 

 

 

「これが、手加減というものだ〜!!!竜星拡散爆(ドラゴ・バスター)!!」

 

とんでもない爆発&衝撃波でカリュブディスは正しくチリにされたわけだけど、手加減って一体...

最強の魔王には手加減も全力になるのか...

と思ってたその時、黒焦げになっているが本体の黒豹牙フォビオがカリュブディスの残骸と共に落ちてきた。

どうやら本当に手加減してたみたい

その証拠に、フォビオは黒焦げにこそなってはいるが、その体に外傷はなかった。

 

「よっと!!」

 

「リムル気をつけて!!また再生するかも...」

 

フォビオをキャッチしたリムルにそう伝えるが、さすがのリムルも今回はわかってた

わかってた上でとんでもないことを言い出したのだ

 

「わかってる。だから、今から手術してこいつとカリュブディスの魔核を切り離す」

 

「はぁ!?」

 

何言ってんのこのお兄ちゃんは!!

そんなこと出来たら誰も倒そうとしてないっての!!

そもそも、融合してるのにどう切り離すって...

...まさか

 

「大丈夫だって。大賢者の解析鑑定と俺の進化した暴食者(グラトニー)なら全部切り離せる。最悪の場合は、俺の指示で首を飛ばすけどな..」

 

やっぱり!!もう!!なんでそういつもいつもイバラの道を歩くかな!?

もし仮に切り離しが成功したとして、リムルが飲まれる可能性もあるのわかってる?!

 

「ダメだって!!下手に刺激してリムルが今度取り込まれたらどうするのさ!?」

 

「そんときは...近隣諸国を頼って俺を倒せ。

酷な話だが、俺を倒せるとしたら魔王ゲルドを宿してるお前くらいしか...」

 

「そんなことになったら僕後追いするから!!」

 

「えぇ!?」

 

「だから絶対成功させて!!」

 

こうでも言っとけばいやでも成功するでしょ!!

後追いされたくなかったら死んでも成功させてよね!!

 

「...し、死ぬほど頑張る...」

 

 

 

 

そして、手術が始まり数分

難攻不落のカリュブディスの魔核を何とかリムルは切り離し、自身の胃袋に封印&処理

何とかカリュブディスの本体魔核は消滅させるに至ったのだった

 

 

 

 

ふぅ...何とか成功したみたい...

全く、このお兄ちゃんは後でお説教だな!!

毎度毎度僕には危ないことするなって言うくせに自分は危ないことばっかり!!今日ばっかりは許さないから!!

 

「ふぃ〜...何とか兄弟揃って心中は免れた...」

 

「わーっはっは!!ワタシは成功するとわかっていたぞ!!」

 

「ありがとうよ...あとはこいつが起きたらなんでこんなことしたか聞くか」

 

なんて、数時間に及ぶ激戦も終わりやっと落ち着き始めた頃。

ようやく今回の原因である黒豹牙フォビオが目を覚ました

 

「...う...ここは...」

 

瞬間、僕はライフルを迷いなくフォビオの頭に擦り付ける

 

「ちょ、メイル!?」

 

「お目覚めですか?フォビオ様」

 

「...はっ!?も、申し訳ございませんでした!!お、俺は...!!!」

 

「前回のリムルやみんなへの侮辱に続き、街への侵略、ミリムへの狼藉...あなたどこまで...」

 

そこまで言うと、リムルが手で制してきた

 

「今回の件、一体何があった」

 

「そ、それは...」

 

そこまで言うと、少し口ごもったが話そうとした時、トレイ二ーさんが食い気味に質問を持ってきた

 

「なぜ、カリュブディスの封印場所を知っていたんですか?あれは、かなり厳重に封印されていたはずです」

 

「どうなんだ?」

 

一瞬戸惑うような表情を見せたフォビオにリムルが再び問い返すと、フォビオは口を開き話し始めた

 

「...森もなかで、中庸道化連(ちゅうようどうけれん)とかいう連中と出会って...アングリーピエロのフットマンと、ティアドロップのティアとかいう2人組に唆されて、封印場所に...」

 

フットマンにティア...聞いたことないな...

そういえば、前にトレイニーさんがあのゲルミュッドとピエロが一緒にいたって言ってたな...

ってことはその一味...?

中庸道化連...少し調べた方が...

 

中庸道化連(ちゅうようどうけれん)...そういえば、吾輩に伝言を届けてくれたラプラス殿も中庸道化連だと言ってましたな」

 

「ガビルも会ったことあるの?」

 

「はい、蜥蜴人族(リザードマン)の支配領域に帰る前に...」

 

「...話が繋がってきたな。おそらく、大鬼族(オーガ)の里を襲った仮面の魔人ってのはこのフットマンで間違いないだろう」

 

「うん...少し調べないとね...」

 

あの豚頭族(オーク)の軍勢の中にいただけでもおかしな話だ。

生半可な力なら逆に豚頭族(オーク)に食われてただろうし、少なくともトレイニーさんと同格くらいには思っておいた方が良さそう

 

「...とりあえず、話はわかった。じゃあ、気をつけて帰れよ」

 

そういうと、リムルはフォビオから視線を外し魔国連邦(テンペスト)に帰ろうとしたのだが

 

「え!?ちょ、ちょっと待ってくれ!!俺は許されないだろう!?」

 

「え?いや...別に話を聞けばお前は唆されただけだしな。死者もいないし、なんもないよ」

 

「だが...せめてこの命を取って貰えないか...?!」

 

「別にお前の命なんていらんよ。ミリムもそれでいいか?」

 

「うむ!!そもそもワタシはなにもされて居ないからな!!許してやるのだ!!...カリオンもそれでいいだろう?」

 

ミリムが声をかけると、近くの木陰から金髪の少し怖い人がでてきた

筋骨隆々...リグルドといい勝負しそう...

 

「チッ、完全に気配を消してたと思ったんだが...気づかれてたか」

 

「ワタシにはお見通しなのだ!!」

 

「か、カリオン様!!」

 

ミリムと少し問答していたカリオンに、フォビオは慌てて頭を下げた

そんなフォビオにカリオンは鉄拳をひとつまみ

フォビオは地面に埋まった

 

「魔王カリオン...」

 

「うちの部下が迷惑をかけたな。リムルとか言ったか、それに、その弟よ。今回の件、借りにしておく。何かあったら俺様を頼ってくれ」

 

豪快な男...といった印象だが、僕には別の件で話があった

正直、今回の件はどうでもいい。

対処はできたし、本当にダメそうならミリムを頼っただけだったからね

そんなことより、僕はもっと魔王カリオンに聞きたいことがあった

 

「...魔王カリオン様、1つ...いえ2つほど質問よろしいでしょうか?」

 

「メイル?」

 

「あぁ、構わねぇぜ。」

 

「では、一体部下にどんな教育をなさっているかご教授いただけますか?それと、使者としてどのような振る舞いをしろとご指導なさっているのでしょうか?」

 

「ちょ、メイル?メイルさん?」

 

「教育?俺様は教育係じゃねぇが、強くあれとみなには示しているし、使者なら相手を支配するんじゃなくしっかり見極めろと言ってるが?」

 

「...すみません、貴方の部下の黒豹牙フォビオ様を半殺しにしても..」

 

「ちょーっと待て!!何言ってんだメイル!!」

 

あ、リムルがとうとう割って入ってきた

仕方なく無い?勉強できないとかじゃなくて命令聞けない子でしょ?

んで命令違反でうちの兄と部下たち侮辱して挙句侵略行為でしょ?許せないんだけど

 

「えと...何かあったのか?」

 

聞き返されたのでリムルの手を口からどけ、話を続ける

 

「いえ、初めて我が国魔国連邦(テンペスト)に黒豹牙フォビオ様が訪れた際に、"この街はいい国だな?獣王カリオン様が支配するのにふさわしいと思わないか?"とかいって否定したうちの幹部をいきなり殴りつけ大怪我をおわせたり、時間を割いて急な面会に立ち会ってくれた僕...いえ、私の兄であるリムルに対し下等なスライムと侮辱をいただき、そのうえでうちの部下に向かって"お前らはこんな下等な魔物に従っているのか?雑魚ばかりだと大変だな"等とご指摘いただきまして。それに加えて今回の侵略行為...そちらのお礼をさせていただきたいなと思った次第でございます」

 

「...うちの部下が申し訳ない」

 

ふぇ?

突然意外なことが起こった

魔王カリオンが僕らに頭を下げたのだ

てっきりこれ(黒豹牙フォビオ)の上司だから

"弱者が強者に従うのは当然だろ?"とか言い出すかと思ったけど、借りにしてくれたりするあたり、ちゃんと良い上司だったみたい

 

「いえいえ、カリオン様には非などありません。それだけ部下に慕われている証拠です。ただ少し、えぇほんの少し兄を侮辱され部下を侮辱された僕のこの気持ちはどうすればいいのかご教授願いたいだけです」

 

「め、メイル!?この後シュナの茶菓子でも食おう?!今夜は1日中一緒にいるからさ!!な?!だからそろそろやめよう!?」

 

「別に怒ってないって、ただ」

 

「それは怒ってるって言うんだって!!」

 

「...フォビオのバカの教育はしっかりしとく。そんでもって、謹慎期間が済んだら好きなだけこき使ってやってくれ。本当にすまなかった」

 

「いえ...恐れながら今しがた魔王カリオン様直々に謝罪を頂けましたし、私にも頂けない点がございましたので。ここらで手打ちに致しましょう。私に対する借りはこれでチャラと言うことで。」

 

「...あぁ。ありがとうよ」

 

少し言い過ぎた感もあるけど、今回の件は僕もかなり頭に来てたし、いいでしょ

全く、定期的にうちのお兄ちゃんをバカにする連中は何とかならないもんかな..

 

そしてそのあと、僕が下がったことでカリオンとリムルの話し合いになり、僕たちの国、ジュラテンペスト連邦国と魔王カリオンの治める国、獣王国ユーラザリアとの国交が結ばれた。

 

 

 

 

そしてその夜

 

「で、なんであんな無茶したの?」

 

「い、嫌だって助けないとカリオンに目をつけられるかなと...」

 

「嘘でしょ?エゴだよね?ねぇリムルなんで目を見て話さないの?」

 

「メイルちゃん怖い!!お兄ちゃん怖い!!」

 

「ほら今日は1日一緒にいてくれるんでしょ?まだまだ夜は長いよ?」

 

「そういう意味で一緒にいたかったわけじゃない〜!!」

 

...僕とリムルは、約束通りリムルの新しい家である庵で長い夜を過ごした

いやらしい意味ではなく、丸1晩のお説教でだ

 

「許して〜!!」

 

「許されたかったら二度としないって誓ってね」





あとがきです
今回、今後の展開についてご説明させていただきます
実は...このお話は、この後の襲撃編が終了致しました時点で終了となります。
理由は多々ありますが、決して俺の気分で打ち切りなどではありません。
ただ、後々のストーリーを簡略化しつつ書くことが難しいという理由です。
とはいえ、物語として区切りよくリムルが魔王になる所までは描こうと思う決めていましたのでそこまで書かせていただきます。
それと、今まで書いてこなかった日常回なども気分次第で投稿したいと思っています
少なくとも週に1本は投稿出来ればと考えていますので、気長にご覧いただけると嬉しいです。
残りの話数はおそらく10話〜20話となると思います。
ただ、最後までメイルくんのテンペストでの日々をお楽しみください

次回もお楽しみに!!
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