この運命さえ喰らい尽くせ   作:海波 犬夜

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vs牙狼族

リムルに戦闘許可を(無理やり)貰い、今、僕はゴブリン達に村の防衛の為の柵作りを命じ、それのお手伝い中だ

 

「みんな、無理して倒れたら意味が無いから、キツくなったらすぐに村の中で休んでね!!」

 

「そ、そんな訳には!!メイル様が手伝って下さっているのです!!我らだけ休むなど...!!」

 

「僕も疲れたら休むよ。牙狼族は強いんでしょ?なら、今無理したら勝てるものも勝てなくなっちゃう。だから、無理しないで欲しいんだ。」

 

村長の息子さんは真面目だなぁ...

僕も頑張らないとね!!戦闘面じゃ役に立てないかもだけど、その分防衛網作りくらい...!!

そう決意を新たに村の柵づくりを再開する僕に、鼻の大きなゴブリンが質問してくる

 

「なんでメイル様はそんなにオイラたちの事を気遣ってくれるんスか?ほかの魔人様方はオイラ達を見下したりはするけど気遣ってなんてくれないっすよ?」

 

「え...なんでって...おかしなこと言うね。

君達はこの戦いが終わったら僕たち...まぁ、厳密にはリムルに忠誠を捧げるんでしょ?

ってことは、僕らはもう仲間なんだから、気遣うし手伝うし心配するよ?」

 

これからきっとリムルの周りには沢山の人が集まってくる。弟として、リムルの隣にいて恥ずかしくない様にならないといけない。

その為には、リムルを屍の上に立たせる訳にはいかないんだ。

だから、みんな守る。たとえ、この身に代えても

 

「...」

 

「...どうかした?僕おかしなこと言っちゃったかな?」

 

「あ!!いや!!えっと...!!//め、メイル様はその...あんまりそういう事を口に出さない方がいいと思うっす!!//

優しいのはいい事っすけど...色んな人が困るっす!!//」

 

「そ、そうかな..?ま、まぁ、そう言うなら人前では控えるようにするよ」

 

お姉ちゃん、僕、変なこと言ったかな?

 

『.....』

 

あ、あれ?お姉ちゃん?見守る者さん?

 

『解』

 

あ、良かったちゃんと居た

なんでお姉ちゃんで反応しなかったの?

 

『問、お姉ちゃんとは誰でしょうか』

 

え、見守る者さんのことだよ

 

『否、私は見守者です』

 

あ、あれ、お姉ちゃん呼びはダメだったかな?

 

『スキルは名付け対象ではありません』

 

名付け対象...?それって...

 

「おい、メイル。柵作りは順調か?」

 

気になるところだったが、リムルに呼ばれてしまった

また後で教えてね。見守る者さん

 

「うん。順調だよ!!みんなのおかげで立派な木造のさくが出来たところだよ!!」

 

「ドヤ顔で見せてる所悪いが、スカスカの柵だぞ」

 

「これでも頑張って作ったの!!」

 

もぉ〜...!!と怒る僕と対照的に悪い悪い。と軽く流すリムル。お互い、緊張は無いようで何よりだ

その後、柵の点検ついでにリムルに補強をしてもらい、この日の作業を終え、もし牙狼族が来ても大丈夫なようにみんなに作戦を伝え、その日は解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────その日の深夜

月明かりが綺麗に照らす森の中の草原。

その草原の片隅にある森の入口の闇の中、

鋭い瞳孔をギロりと覗かせ、牙狼族の集会は始まった

 

「誇り高き我が同胞たちよ!!

僅かひと月ほど前ジュラの森の守護者たる暴風竜ヴェルドラは消滅した!!

今こそ我ら牙狼族がこのジュラの大森林の頂点に立ち、大鬼族(オーガ)蜥蜴人族(リザードマン)をその地位から引きずり下ろすのだ!!」

 

ウォォォォォ〜ン!!

 

「まず手始めに、薄汚いゴブリンの村を蹂躙し、ジュラの森への足がかりとする!!進軍せよ!!」

 

ウォォォォォォ〜ン!!

 

宵闇の中を風のように駆ける

駆けて、駆けて、駆けて...

そして、獲物をその瞳に移るのは、獲物の鮮血...ではなく

 

「1度だけ言う!!今立ち去るなら何もしない!!さっさとここから去れ!!」

 

「なんだあれは..!!スライム..!?」

 

「親父殿、あれは、昼間我と同胞数匹が目撃したスライムです。異様なオーラを放っていた異質な存在...一旦引いた方が...」

 

「下等なスライム風情が...!!我ら誇り高き牙狼族に指図するなど...図に乗るなァッ!!」

 

「親父殿ッ!!」

 

牙狼族の長が駆け出した。

柵の周りには洞窟で手に入れた蜘蛛のスキル【鋼糸(こうし)】が張り巡らされ、触れるだけで身を切る。

既に何匹かの牙狼族はその鋼糸に身を切られ、突破しようと速度を落とした牙狼族は弓矢で射られていた。

何とか突破した者もいたが、柵で動きが止まったところをゴブリンに棍棒で殴り殺されている。

だが、そこは牙狼族の長。

その自慢の牙で鋼糸を噛み切り、一切速度を落とすことなく殺意をそのままに俺に向かってくる

そして、その爪が俺を2つにしようと飛び上がった

だが...

 

「なっ..!?」

 

「残念だったな。鋼糸以外にも作はあったんだ。

スキル【粘糸(ねんし)】だ。」

 

スキル粘糸、鋼糸と同じように蜘蛛から手に入れたスキルだが、鋼糸が鉄のように硬い糸なら粘糸は取り餅のように相手を絡め取る糸だ

その粘糸にて牙狼族の長は動きを封じられた。

とはいえ、こんなの一瞬の時間稼ぎにしかならないだろう。

だが、この一瞬が、戦場では命運を分ける

 

「スキル...【水刃(すいじん)】!!!」

 

ドサッと鈍い音が静まり返った辺りに響き、

続くように粘糸の切れる音が響き渡った。

水刃によって首を切り落とされた牙狼族の長。

残酷だが、これを利用させてもらおう

 

「聞け!!牙狼族よ!!お前たちの長は死んだ!!お前たちに選択を与えてやる!!服従か!!死か!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが始まってから、僕は後方から弓を使っていたけど、リムルの戦いっぷりももちろん見ていた。

かっこいいなぁ...と思ってみていたが、選択肢を出したあたりでリムルがミスを犯してることに気がついた

 

服従か死かって...選択肢に逃げるが無いんだけど!!

これって絶対言いすぎたよね!!

調子に乗って言い過ぎちゃったパターンだよね!!

 

全く...普段かっこいいのに肝心なところでポカしちゃうお兄ちゃんには困ったものである。

仕方がない。少しばかり僕が助け舟をだそう

 

「牙狼族達よ!!我が兄はこの村を守護すると決定した!!

そして、僕...私は弟として兄に血で汚させたくは無い!!

今、我が兄リムルに従えぬという者は私の権限で今回だけは見逃してやる!!即この場から去るがいい!!」

 

リムル〜!!気づいて!!助け舟だよ!!

僕の必死のアドリブが通じたのか、リムルは目の前に転がった牙狼族の長を捕食し、その姿に擬態した

 

「くっくっく...牙狼族よ。俺の弟に感謝せよ!!

弟に免じて、今回だけは見逃してやる。我に従えぬと言うのならこの場を去るがいい!!」

 

そう高らかに宣言し、リムルは牙狼族の固有スキル【威圧(いあつ)】を混ぜた雄叫びを上げた

だが、牙狼族が逃げることは無かった

僕とリムルがま、まさか、長の敵討ちとかって捨て身できたりしないよな(ね)....と思ったが牙狼族たちはその場に伏せ

 

 

「「「我ら一同、貴方様に従います!!」」」

 

「ぁえ..?」

 

「い、いいの...?」

 

「「「はいっ!!」」」

 

なんと、逃げるものは一匹もおらず、全員...いや、全匹がリムルの軍門に下った

 

「か、勝ったのですか...?」

 

「あぁ〜...そのようだな。」

 

村長の心配そうな声と裏腹にリムルは困惑気味な声で答えたが、“勝った”という事実に変わりはなく、

僕らが来てから一番の大歓声が、夜風に乗ってジュラの森に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────翌日

ゴブリンの村を牙狼族の襲撃から守った僕らだったが、

次の朝を迎えても、問題は山積みだった。

何より、ただでさえゴブリンの食料も足りてない中、戦いで数が減ったとはいえ80匹近い牙狼族が生き残っているのだ。

自我がある以上、同族、ましてや昨日まで共に戦ってきた者を食べようとは思わないだろう。

その為、僕らは朝早くにもかかわらず、みんなを集めて集会を始めた

そんな時、ふと思ったことを僕はこぼしていた

 

「そういえば、この村の人達って誰も名前聞いてなかったね」

 

「そういえばそうだな。村長、そういえばお前の名前はなんて言うんだ?」

 

「普通魔物は名前を持ちません...なので我々の中に名持ちはおりませぬ...」

 

「それって不便じゃないか?」

 

「意思疎通はできますので...」

 

「でも、僕らから呼びかける時とかが少し大変だね...」

 

「そうだな...なら、俺がお前たちに名前をつけようと思うがいいか?」

 

「よ、よろしいのですか!?」

 

「え...お、おう。名前くらいなら...」

 

その瞬間、村の広場では昨夜よりも大きな歓声が沸いた。

リムルに名前を貰えるのがそんなに嬉しいのだろうか。

戦国時代では、主から名を貰う習慣があったみたいだしそんな感じかな?

と、この時の僕は考えていた。

そして、急遽予定を変更してリムルによる名付けが行われた

 

───そして、ゴブリンの名付けが終わり、牙狼族の長の息子に名前をつけた瞬間、リムルはスライムの形を保てなくなり、ドロリと溶けてしまった

 

「り、リムル様!?」

 

村長が叫ぶがリムルから返事は無い。

 

み、見守る者さん!!どうなってるの!?

 

『解、名付けには魔素を多く消費する為、魔素を使いすぎ低位活動状態(スリープモード)になったようです』

 

そ、そうなんだ...死んだりしないよね?

 

『問題ありません。魔素が回復次第意識も回復します』

 

そっか。なら安心だ。とりあえずみんなを落ち着かせないとね。

 

「みんな、大丈夫。リムルは少し寝てるだけだよ。

悪いけど、リムルを寝かせる場所を用意してもらってもいいかな?」

 

「も、もちろんです...!!すぐに御用...ぃ...か、体が...」

 

え!?こ、今度は何!?

 

『名付けにより、魔物たちの進化が始まりました。

低位活動状態(スリープモード)に移行するものと推測します』

 

あぁ、なんだ。そういうことか。

なら、僕がちゃんと見ておかないとね

 

「みんな、これから進化するんだよ。

リムルの事は僕に任せてみんなゆっくり眠って」

 

「め...メイル...さ...ま...ぁ....」

 

村長が申し訳なさそうに呟きながら眠りについた。

それと同時に、ゴブリンも牙狼族も次々眠りにつく

これは朝まで起きなさそうだ。

仕方ない。暫くは僕が周りを警戒しよう

そうして、お姉ちゃんに頼んで警戒範囲に村を入れ、

みんなが起きるその時を静かに待つのだった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────そして数日後

 

...完全復活ッ!!

いやぁ、低位活動状態(スリープモード)になった時は焦ったけど何とか戻れてよかった〜...!!

全く、大賢者も教えてくれよな!!

 

『解、申し訳ありません』

 

まぁ、今回は俺の不注意だし仕方ない。

ともかく、3日も寝てたんだ。

3日ぶりに可愛い弟の顔が見たい

そんなことを考えていると、俺の寝ていた家の入口(布がかかってるだけ)から誰か入ってきた

 

「まぁ!!リムル様!!お目覚めになられたのですね!!お元気そうでなによりです!!」

 

「あ、あぁ、どうも...」

 

「今、リグルド村長を呼んできますね!!」

 

そう言い残すと、彼女は去っていった

...ただ、あんな綺麗なゴブリン...?いや人...?

ともかく、あんな美人この村にいたか...?

俺が考えていると

 

「リムル様!!お目覚めになられましたか!!」

 

「おぉ!!リグルド!!さっきの美人っていった、いいいぃぃ!?!?」

 

そこには、白髪の筋骨隆々のゴブリン...いや人がたっていた

 

「誰!?!?」

 

「リグルドです!!」

 

「いや嘘つけ!!リグルドって言ったらもっとこう...ヨボヨボの爺さんだったろ!!身長も120cmくらいだったろ!!

お前明らかに180超えてるし!!骨格から違うし!!そもそも若返ってるし!!」

 

「当然です!!名前を頂きましたから!!」

 

そ、そういえば名前を貰う時やけに喜んでいたな..!!

そういうことだったのか...!!

驚いていたのもつかの間、またも人...いや、オオカミが入ってきた

 

「我が主よ!!ご回復したようで何よりにございます!!」

 

「え...えと...嵐牙(ランガ)だよね...?」

 

ランガとは、最後に俺が名付けた牙狼族の長の息子だ。

随分と毛並みがもふもふになっている

犬派じゃないけど、後でモフらせてもらおう

 

「はい!!我も主より名前を頂き、進化いたしました!!もはや我らは牙狼族ではありません!!嵐牙族です!!」

 

「そ、そうなのか...良かったな!!」

 

「はいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカーン!!

 

ん?

な、なにあれ!?竜巻!?

って思ったらすぐ納まった...って飛ばされてるのリムルじゃない!?

やっと色々片付いたと思ったが、どうやらまだやることは山積みみたい...

 

こうして、これからの数日に肩を落としながら、

リムルを追いかけるランガの様子を可愛いなぁ〜...と眺める僕であった...




次回はルール決めたり
少し前に話に触れたり
遠出の話をだします
次回をお楽しみに。
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