新たな来訪者
僕が作ったブローチをリムルに渡して
褒められていた時、森のはずれからリムルと僕の名前を呼びながらリグルドが走ってきた。
リムルがドワルゴンに行く前はゴブリンロードというまとめ役でしか無かったリグルドだったが、住人の数も増え移住してきたゴブリン村の村長達を新たにゴブリンロードに任命し、リグルドはさらに上のゴブリンキングに昇級したんだけど...
なんだか、今まで以上に体つきが立派な気が...
二の腕なんて僕の腰周りくらいある...
まぁ、ともかくリグルドに話を聞いてみると森で不審な人物を見つけたとの事だった
なんでも人間の冒険者らしい。
「人間の冒険者!!会ってみたい!!」
メイルはこういってるけど...大丈夫か?その人間って
俺は元は社会人だ。良くも悪くも、人間の裏表は知ってる。
純粋なメイルにはそんなの知って欲しくは無いし、
こいつを傷つけたくは無い...
「う〜ん...危ないかもしれないから、まずは俺が様子を見に行くよ。リグルド達は一旦近くでの作業だけ止めて、メイルを見ていてくれ」
「はっ!!了解しました!!」
「リムル1人で大丈夫?」
「俺にはお守りも出来たことだしな!!問題ない!!
何も無かったらお前にも会わせるから待っててくれ」
「わかった!!じゃあ村の方は任せて!!」
元気いっぱいに宣言するメイルに無い背中を押されて俺は村から件の人間たちの元に向かった
向かって最初に思ったことは大丈夫か?こいつら...だった
いきなり走ってきたので何事かと思ったら、真っ赤でバカでかい蟻に追われてた。
何か言ってたので聞いてみたら巣穴に剣を突き立てたらしい
馬鹿なのかな?
そう考えるのも束の間、1人のお姉さんが立ち止まったかと思うと腰から剣を引き抜き、刀身に炎を纏わせてアリを次々と倒してしまった
なんだかんだ、人間が魔法を使うところを初めて見たな...あれくらい普通なのかな?とか思っていると、仕留め損ねた蟻がそのお姉さんに襲いかかった。
「危ない!!」
すかさず俺は新しく手に入れた【
「黒稲妻、やっぱり危険すぎるな...こいつも封印だな...」
試し打ちしてわかったのは、新たに手に入れた【
今回は上手くいったが、下手すれば味方にも被害が出るかもしれない。
今後の使用は控えよう
ともかくだ、まずはこの人たちの相手だな
「「「スライム...?」」」
「スライムで悪いか?」
困惑声を上げる冒険者たちを少し強めに諌め、お姉さんを助けた際にお姉さんの顔から外れた仮面を返す
「ほれ、そこのお姉さんのだろ?すまなかったな。怪我はないか?」
そう言って仮面を渡すと、お姉さんは優しく微笑んで
「えぇ、ありがとう」
と、お礼を言ってくれた。
そして、俺はこのお姉さんの顔に見覚えがあった。
随分と早く出会えたなぁ〜運命の人...
リムルを送ってから、僕は村の防衛をしてた子達を1度村に帰ってこさせ、リムルの向かった方向の注意をさせていた。
ある程度の魔物なら相手にならないし、何かあってもあの方向ならリムルが居る。
最悪逃げるってなった時に彼らが足になってくれるだろうくらいに考えて配置した。
正直、リムルでどうしようもないなら全員逃げるしかないので戦力的な期待は持てなかったんだ...
「リムル遅いね...なんかさっき雷落ちたみたいな音もしたし、無事だといいけど...」
「ご心配なのは分かりますが、リムル様であれば問題はありませんでしょう!!もう時期ご帰還されるでしょうから、メイル様はごゆっくりしていてください!!ブローチ作りでここ3日間休まれていないでしょう?」
リグルドに言われ、確かにそうだけど...と口篭る僕。
そんな時、警備兵の1人にリムルが無事に帰ってきたとの報告が来て、胸をなで下ろした
「それで、リムルは?」
「リムル様でしたらこちらに」
警備兵の乗る嵐牙族の背を見ると毛に埋まるようにリムルが乗ってた
「おかえりリムル。どうだった?」
「いいヤツらだったぞ。後で会いに行こうな!!」
「ほんと!?うん!!会いに行く!!」
「...お前が誘拐されないかお兄ちゃんは心配だよ...」
「ふぇ?」
リムルに何か言われたが、浮かれている僕の耳には入らなかったらしい。
聞き返すとリムルは恥ずかしいような拗ねたような口調でなんでもないよと言った
なんだったんだろ?
そして数分後、僕は念の為人前に出る用の服に着替え、リムルを抱えてその冒険者さんたちのテントに向かった
「ちょっと!!それ私が育ててたお肉なんですけど!!」
「お前今俺の場所からもとっただろ!!」
「2人とも見苦しいでやすね。取られたくなかったら、自分の肉から目を離さないことでやすよ!!」
なにか様子がおかしい。
とてもいい匂いがする...それとなにか騒がしい
「申し訳ありません...腹が減ったというものですから、食事を...」
「おぉ、人に親切にするのはいいことだぞ!!」
「うんうん!!何より、元々ゴブリンだったみんなが自分で考えてしてくれたんだから嬉しいよ!!」
「はっ!!ありがとうございます!!今後も精進したいと思います!!」
リグルドって、ゴブリンだったとは思えないくらい言葉使いは丁寧だし、物覚えも早くて凄いよね...
僕も少しは見習わなくっちゃ!!
そう思いつつも、今は目の前のわくわくの方が大きく、僕たちはリグルドに続いてテントの中に入った
「お客人、大したもてなしもできませぬが、楽しんで頂けておりますかな?」
中に入ると、頬にお肉をいっぱい詰めた冒険者さんたちがいた。どっかで見たような...
『解、封印の洞窟から出た際に出くわした冒険者であるかと』
あ、確かに!!さすがお姉ちゃん。僕がうろ覚えでもすぐに教えてくれる。ありがとう
「改めて、紹介しよう。こちらが、我らが主。スライムのリムル様と小鬼のメイル様であ〜る!!」
「「「スライムが主!?」」」
もぐもぐと頬に入ったものを飲み込み、同時に3人の声が上がる。1人だけは仮面をつけてご飯を食べっぱなし。マイペースなお姉さんだね
「主で悪いか?」
「リムル、そんな言い方失礼だよ。兄の非礼をお詫びします。初めまして冒険者の皆さん。この村の主であるリムルの弟のメイルと申します。」
「こ、これはご丁寧に..!!まさか、こんなところでゴブリンが村を作っていたとは...助けてくださりありがとうございました。それにこんな美味い食事まで...。俺はカバル。一応、このパーティのリーダーをしてる。こっちは...」
カバルさんが金髪の女の人の方を指さす。
「エレンで〜す!!お肉とっても美味しいです!!」
「ギドと申します。助けていただきありがとうございやした。」
「それと、行く方向が一緒だってんで臨時メンバーの...」
「...シズ」
マイペースなお姉さんはシズさんって言うんだ。
正座もしてるし、箸の使い方も綺麗だし、もしかしたら、日本人かな..?後で聞いてみよう
「それで、ここには何をしに来たんだ?」
挨拶もそこそこに、リムルは話を切り出した。
カバル達はご飯のお礼か、はたまた僕らを信じてくれたのか、人を疑うことを知らないのか。
質問に次々と答えてくれた。
彼らはブルムンド王国という国からギルドマスターの言いつけで来ていて
暴風流ヴェルドラの消滅により森に異変が出ていないかの調査中だったらしい。
国の上層部も大変だなぁ〜...
「なぁ、俺たちがここに街を作ったりするのって不味かったりするか?」
「「「う〜ん...」」」
「大丈夫じゃないか...?別にギルドとかでそういう話は出たことは無いし」
「そうか!!ならこのまま続けるとするよ」
「それは構わないと思うが...」
と、言葉を濁したあとカバルさんたちは僕に視線を向けてくる
「..?僕がどうかしました?」
「い、いや...メイルさんは危ないんじゃないかってな...」
「メイルが?どういうことだ?」
僕が危ないと聞いてか、リムルもすぐに聞き返してた。
カバルさんたちの話だと、この世界には貴族制度があるように、奴隷制度もあるみたいだ。
とはいえ、表向きは重罪。裏のつながりなどがある貴族が連れてるものなのだが、その人さらいのような連中が攫うのは人だけでなく、見た目が良かったり、強かったりする魔物も攫っては売り払うらしい。
「なるほど...それは警戒しないとな...」
「そう言っても、僕はそんなに強くないですし、見た目も良くないので対象にはなりませんよ」
苦笑するメイルだが、こいつは自分の姿を見たことがないのだろうか?
肩までかかる綺麗な真紅色の髪。
見るものを引き込むエメラルド色の瞳
6〜7歳くらいの小柄な身長に加え、華奢な手足、男とは思えないくらいの丸みを帯びた体つき
若干のタレ目はメイルの優しさと穏やかさを示すように優しい瞳をさらに際立たせ、薄く赤らむ頬と唇はそういう趣味の人が見れば卒倒ものだろう
実は子鬼じゃなくてエルフなんだっ!!と言われればやっぱりか...と答えるくらいにはその可愛さは際立っている。
しかし、メイルにその自覚はなく、天真爛漫、自由奔放であり、仲が良い相手ならば満面の笑みを魅せる。
まさに立てば
加えて笑顔はまさに陽光に輝く
誘拐犯なら見逃しはしないだろう。
奴隷になどなればどの様な末路を辿るかなんて明白だった
「メイル専用の護衛を用意する必要があるな...」
「リムル?」
「そうですよ!!いくら弟とはいえ、女の子に護衛もなしで森を歩かせるなんて危険すぎます!!」
「あの僕男だよ?」
「よし、それについてはこの件が片付いたら探すとしよう!!とりあえず今はリグルド、メイルから目を離すなよ!!」
「はっ!!もちろんです!!」
よし、リグルドは見た目だけならとんでもない強面な強者...所か、普通にAランクに匹敵する魔物なのだ。
気づいたら弱々しいDランクの老ゴブリンから逞しいAランクのゴブリンキングまで上り詰めるとはとんでもないやつである。
だが、今は心強い。メイルのそばにいればそうそう連れ去られることも、当然ナンパなんて有り得ないだろう。
「...リグルド、僕、男だよね...?」
「メイル様はとてもお美しいご尊顔ですからな!!リムル様も弟君であるメイル様が大事であり心配なのでしょう。これも愛情の裏返しなのでしょうな。」
「そうかなぁ...なら、リムルが心配しないくらい強くならないとだね」
「はっはっは!!メイル様は既にお強くいらっしゃいますのにまだ上を目指されるとは、良き向上心ですな!!応援しております!!」
なんかメイルが話しているが、可愛い弟の決心を揺るがせるものでも無い。今のは聞かなかったことにしよう。
...ただ、危ないことはしないで欲しいなぁ...
そして、カバル達が来て数時間が経過し、俺は街を見渡せる近くの丘の上でシズさんの姿を見つけた
「シズさん、俺たちの街、気に入ってくれたかな?」
「えぇ、とっても。」
「そっか!!良かったぁ!!シズさんがいいなら、好きなだけここに...!!」
そこまで言うと、シズさんは首を横に振った
「狼さん」
「我の名はランガ。我が主であるリムル様より授かった名だ」
「ランガさん、少し、スライムさんと2人にしてもらっていいかな?」
「...わかった。ただ1つ、我にさんはいらん」
「ふふっ、わかった。じゃあ終わったら呼ぶねランガ」
そういうと、ランガは俺の影に入っていった。
嵐牙族の固有スキル【
「わわっ...」
突然シズさんに抱き上げられた
この姿になってから、よく女の人に抱かれるなぁ〜...いやぁ〜役得だね!!
「スライムさん、スライムさんって、転生者なの?」
「あぁ。やっぱり、シズさんも...?」
「うん。ずっと昔に召喚されたの。スライムさんは、どうしてこっちに?」
「いや〜向こうで刺されて死んじゃってさ〜。目が覚めたら、こんな素敵な姿に!!シズさんは?」
「...私は...空から、沢山爆弾がふってきて...お母さんと逃げてたんだけど、炎に巻かれて...」
空襲か...
「そっか...お母さんは...?」
「...」
「ごめん。悪いこと聞いた」
「いいの...ねぇ、スライムさんは、この世界が好き?」
「あぁ、大好きだ!!たくさんの仲間にも、可愛い弟にも会えたからな!!」
「...私も、色々知らなければ、好きになれたかな...」
「シズさん...?」
暗い顔をする彼女に、一体どんな言葉をかけてあげればいいだろう......そうだ!!
大賢者、俺の記憶を思念伝達でシズさんに見せることはできるか?
『可能です』
じゃあやってくれ!!
『了、思念伝達にて、マスターの思念を映し出します』
「..!?なに..?!」
「まぁ、見てなって!!」
そこには普通のワンルームが移り、視点はパソコンへ...
そこには、エルフの脱がされていく姿が
「エルフさん?」
「わああああぁぁぁぁ!!!違う!!そうじゃない!!」
「こっちこっち!!」
俺は慌てて景色を切替える
「綺麗だったよ?」
「ほんとに見せたいのはこっちだから!!」
そうして、俺は焼け野原の東京から、現在の東京ができるまでを記憶の限りパノラマのように見せて行った
「...凄い...!!絵はがきで見た、パリの摩天楼のよう...!!」
「戦争が終わって、平和になったんだ!!技術も発展した!!今の日本は本当に平和で綺麗な国だよ!!」
シズさんは、幼い女の子のように光り輝く瞳で東京の景色を眺めていた。
あぁ、本当なら、空襲が無ければ、この世界に呼び出されなければ、彼女は、お母さんと一緒にこの瞳が綺麗なまま眠れただろうに...
そう思いながらも、俺は綺麗な景色を流し続ける。
せめて、今だけは綺麗な景色で彼女の乾いてしまった心に喜びという名の水を少しでも多く飲ませたかったから...
シズさんのお話はいつ見ても涙が出てしまうほど美しく悲しいお話ですよね。
転スラでトップ3に入るレベルで中の人の好きな話です
さて、次回は今回よりも長くなる可能性がありますので
のんびり読んでくださると嬉しいです。
それと、今回細かなメイルの見た目を書かせていただきました。
イメージと違ったらすみませんが、メイルの見た目はこんな感じでずっと考えていました
可愛いなぁと思っていただければ幸いです