この運命さえ喰らい尽くせ   作:海波 犬夜

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その身尽きてもその魂は死なず

 

「...んぅ...」

 

柔らかいベッドの上で、暖かい陽光に照らされ、私は目を覚ました

 

「朝...」

 

そういえば、今日は出発の日だ。

スライムさんたちの街に1晩泊めてもらい、今日は冒険者の子たちはブルムンドへ戻り私はもっと森の奥へ進む。

 

「着替えを...ぐッ!?」

 

突然、胸を引き裂かれるような苦しみが私を支配する

ダメ、ダメだ。ここには彼女...エレンちゃんがいる...!!

仮面...仮面を...!!

 

「ッ...!!はっ..!!はっ...!!」

 

何とか抗魔の仮面を手に取り、身につける

もう少しで、彼女ごと辺り一面妬いてしまう所だった

そうして私は、仮面をつけたまま準備を始める。

もう、痛みも苦しみもなかった

 

気がつけば、時間がたっていたようでエレンちゃんも起きた

髪をとかしながらエレンちゃんは

 

「シズさん、このまま一緒にブルムンドに帰りません?」

 

と、私を誘ってくれた

 

「ごめんなさい。私は帰る気はないの。」

 

「そっかァ、残念だけどいつかまた会えたら一緒にお茶しましょう」

 

「...そうね」

 

なんて優しい子なんだろう。

嘘をつくのは心が痛いが、この子が早く私を忘れてくれることを祈ろう

 

そう思いながら、私たちは準備を終え、街の入口へ向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───街の入口

 

「ったく女は準備がおっせぇな〜」

 

「まぁ、まぁ、カバルの旦那。急ぐ旅でもないんでやすから」

 

「そうだよ、美人さん2人なんだし準備に時間かかるのは仕方ないよ!!」

 

口ではこんなこと言ってるが、待ってるあたりこいつらもいいヤツらだな

にしてもメイル、お前もあの二人に負けないくらい美人の部類だぞ?

俺たちは街の入口でシズさんたちの到着を待っていた。

せめて俺たちだけでも送ろうと思い、来ていたのだ。

リグルド達は残念だが仕事があって来れないからな。

 

「おまたせ〜」

 

「おっせぇぞ2人とも!!」

 

そうこうしてるうちに、シズさんとエレンも集合場所に到着した。

名残惜しいが、愉快な冒険者たちとはここでお別れだ。

 

「皆さん、是非また来てくださいね!!」

 

「おう!!今度はもっと強い冒険者になってな!!」

 

「ふふ、期待してます♪」

 

なんて、カバルとメイルは仲良くなって軽口を叩きあってる時だった

 

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!

 

突然、シズさんが苦しみ出し、声を上げた

常につけていた仮面には、まるで涙の後のようにヒビが入り、シズさんは業火に包まれた

 

「シズさんッ!!」

 

「シズ...まさか、爆炎の支配者、シズエ・イザワ!?」

 

「そ、それって何年も昔に引退したギルドの英雄!?」

 

どうやらカバル達は何か知ってるらしい。

ただそれよりも...

 

「メイル!!リグルド達と住民を避難させろ!!」

 

「で、でも...!!」

 

「シズさんなら俺が何とかする!!早く行け!!戦闘能力がないお前を守りながらはさすがに自信が無い!!」

 

キツい言い方だが、事実メイルに戦闘能力はない。

そもそもとして、メイルの持ってるスキルは自己再生と見守者だけなのだ。

だから、こんな場所にいては丸焼きに...いや、灰も残らなそうだ

 

「早く行け!!」

 

「...必ず勝ってねっ....!!!」

 

「あぁ、任せとけ」

 

走り去るメイルに向かって放たれた爆炎を捕食者で喰らい、ランガと共に地をかける

 

「おい、お前らも早く避難しろ!!」

 

イフリートは自分以外にも2体のサラマンダーを召喚し、操っていた。そのサラマンダーはエレン達が抑えていた

 

「バカにしないで下さいよ!!こっちだってね!!命かけて冒険者やってんですよ!!」

 

「何より、シズさんは俺たちの仲間だ!!」

 

「仲間置いて逃げたとあっちゃぁ、冒険者もう名乗れやせんからね!!」

 

...本当に、いいヤツらだな

 

「わかった!!サラマンダー一体は頼むぞ!!」

 

「「「おう!!」」」

 

シズさんの姿が変わった、あれは一体何だ

 

『個体名:シズエ・イザワは、上位精霊イフリートと契約を結んでいるものと推測します』

 

上位精霊?つまり、そのイフリートとかいうのに乗っ取られたのか?

 

『その可能性が高いかと』

 

どうすればいい!!水刃をさっきから飛ばしてるが、あいつのまわりは熱すぎて届く前に蒸発しちまう!!

胃袋の中の水全部ぶっかければいいか!?

 

『その場合ですと、上位精霊イフリートとイフリートの召喚した魔物の熱により半径2〜5キロにわたり水蒸気爆発で跡形もなく吹き飛ぶでしょう』

 

ダメじゃねぇか!!ならどうすればいい!!

 

『解、サラマンダーやイフリートは魔素によって顕現しているため、物理攻撃は効き目があまりありません。そのため、魔法による攻撃を推奨します』

 

魔法..!?

 

「アイシクルランス!!」

 

ん!?俺の水刃は届かなかったのに、エレンの氷はサラマンダーに届いてる...!!それなら!!

 

「エレン!!その氷、俺に向けて打ってくれ!!」

 

「えぇ!?大丈夫なんですか!?」

 

「時間が無い!!早く!!」

 

「...えぇい!!どうなっても知りませんからね!!アイシクル...ランス!!」

 

大賢者!!捕食して解析鑑定!!

 

『解、アイシクルランスの取得...成功しました』

 

よし...!!

そうして俺はランガにサラマンダーの上を飛び越える様命令し...

 

「アイシクルショット!!」

 

大量のアイシクルランス...もといアイシクルショットでサラマンダーを葬った

だが

 

「まずい!!」

 

カバル達が相手をしていたサラマンダーは勝ち目がないと判断してか、自爆。

それに巻き込まれたエレン達も酷いやけどを追った

このままでは、死ぬ

だが、シズさんの仲間をよりにもよってシズさんの手で殺させる訳には行かない

 

「ランガ!!3人をみんなの所まで避難させろ!!すぐに回復薬ぶっかければ助かるはずだ!!」

 

「しかし!!」

 

「命令だ!!行け!!」

 

「...ご武運を!!我が主!!」

 

...これで、ようやく1体1だな

 

 

 

 

 

 

戦闘が始まり数分。僕らは、街が見える丘の上にみんなを非難させていた

 

「め、メイル様...!!リムル様は...!!」

 

「大丈夫、落ち着いてリグルド。

リムルは強い。絶対負けないよ」

 

不安そうなリグルドを宥めるが、実際僕の心境も穏やかじゃない。

なんで自分には力がないのか、こういう時、リムルに頼りっぱなしな自分が情けない。

 

そんなことを考えていた時戦場から、ランガが向かってくるのが見えた

背中には、ぐったりとした3人を乗せている

 

「リグルド!!ポーション用意!!今すぐ!!」

 

「は、はい!!」

 

「メイル様!!申し訳ございません、我が着いていながら、この者達は...」

 

「今はいい!!とにかく手当を!!」

 

「メイル様、ポーションです!!」

 

リグルドが持ってきたポーションをカバル達に振りかける

これは僕らが洞窟にいた時リムルが集めていたヒポクテ草という草が原料の完全回復薬(フルポーション)。一滴でも足らせばちぎれた手足だって蘇る。

やけどにも効いてよ...!!

念じるようにポーションをふりかけるとみるみる火傷が治った。

だが、安心できない。なんせ戦場には今、機動力を失ったリムルがただ1人イフリートを相手しているのだから...

 

 

 

 

 

 

 

 

ランガたちを逃がし、俺はただ1人イフリートと対峙していた

 

「ようやく一対一だな。さっさとシズさんを返してもらおうか」

 

俺が話しかけるも、徹底無視。それ所か、イフリートの隣に火球が出たかと思えばそれは人の形をしていき、俺を囲むようにイフリートの円陣ができた。

 

「喰らえ!!アイシクルショット!!」

 

俺は全方位にアイシクルショットを放つ。本体に当たらなければ、シズさんは大丈夫なはずだ

 

だが、その油断が命取りだった

 

突然、足元に魔法陣が現れた

こんな状況じゃなければかっけぇとはしゃいだだろう

だが、その魔法陣は俺の命を刈り取るための陣何だから、はしゃげるわけが無い。

 

「ぐあああぁぁぁぁぁ!!」

 

魔法陣からは巨大な火柱が上り、その火柱は俺を跡形もなく溶かす...

 

うああぁぁぁぁ!!こんな事ならカッコつけずに逃げればよかった!!

スライムに転生したのに最後が焼死なんて!!

もっと可愛い弟を愛でてから死にたかった!!

...って、なんかおかしくない?全然ダメージ入らないんだけど...

 

『解、熱変動耐性でダメージは自動的に無効化されています』

 

え...

 

『はぁ...』

 

ちょ、今大賢者さん呆れてなかった!?

...まぁいい。

 

計画通りだ!!

 

 

スライムを焼き殺し、次の戦場へ赴こうとするイフリートを鋼糸が拘束する

驚くイフリートが後ろを見れば、火柱からスライムが現れた

だが、そこは戦闘特化の火の上位精霊。

すぐさま火球を放ち、消し炭に...

 

「残念だったな。俺に炎は効かないんだ。」

 

ならばこの糸を...!!

 

「シズさんは返してもらうぞ。捕食者!!」

 

...そして、決着は着いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──どこだ、ここは

気がつけば、俺はくらい闇の中にいた

どうやらあのスライムの固有空間らしい

たかがスライムの固有空間なぞすぐに破壊し

また現世に蘇ってやろう。

そして俺は火を放ったが壁がない。

そんな時

 

「フッフッフ、貴様ごときではこの空間は破れはせん。

リムルは我の盟友ぞ!!」

 

貴方様は...!?!?

 

「さぁ、暴れ足りないのならかかってこい。いくらでも相手になってやる...ククク、クハハ、クァーッハッハッハ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───あの戦いから1週間。

シズさんは、未だに目を覚まさない

メイルは、1週間寝ずにシズさんの看病を続けている

 

「め、メイル..心配なのはわかるが、そろそろ休まないと...」

 

「...大丈夫、みんなが戦ってる時何も出来なかったんだもん。せめて、これくらいは...」

 

危ない!!

ふらつくメイルをスライムボディで受け止め、

椅子に座らせる

 

「それ見ろ、限界だろ...無理するな。シズさんが起きればお前に連絡を...」

 

「...スライムさん...」

 

「「シズさん!?」」

 

メイルを休ませようと説得してるとメイルを心配するかのようにシズさんは目を覚ました

 

「シズさん...!!大丈夫...!?どこか痛かったりしない...!?」

 

「...えぇ、大丈夫。小鬼さん、ずっといてくれたの..?」

 

「ごめ、ごめんなさい...僕...シズさんが苦しんでる時...何も...でぎなくで...!!だから...せめて看病をっで...!!」

 

声をうわずらせながら、メイルはシズさんに頭を下げている。

...こんな時、どんな言葉をかけてやれば...

 

「...君は、優しいね」

 

シズさんの手がメイルの頭を優しく撫で、ポロポロこぼれる宝石のような涙に雫をすくい上げる

 

「ねぇ、小鬼さん、スライムさん」

 

「ぐすっ...なぁに...?」

 

「名前、教えてくれないかな...」

 

「え...名前なら...」

 

「前世の...ホントの名前」

 

「...俺は、悟。三上 悟(みかみ さとる)

 

「僕は...優愛。斉穏寺 優愛(さいおんじ ゆあ)。」

 

「私は静江...伊沢 静江(いざわ しずえ)。」

 

「シズさん...またいっぱい街を散歩しよう...?

まだ、街は作り始めたばかりだよ...まだ...見せたいものが...!!」

 

「...そう出来たら、どれほどよかったか...

私ね、見た目酷若くないんだ...200年くらい前にレオン=クロムウェルって男に召喚されたの...」

 

それから、たくさんの話を聞いた。

イフリートを体に宿したこと。

友達を焼いてしまったこと。

勇者に助けられたこと。

その勇者は行方知れずになってしまったこと。

教師をしていたこと。

その教え子たちが心残りということ。

そのレオンという男に、自分のことを伝えて欲しいこと

 

「ありがとう二人とも...私はまた、大切な人たちを焼いちゃうところだった...あの3人にも、ありがとうって伝えて...ちょっと破天荒だけど...とってもいい子たち...」

 

「シズさん...」

 

「あぁ、エレンたちには伝えとく...それと...約束するよ。そのレオンクロムウェルってやつにきっちり言っとく!!なんなら、ぶん殴ってやる!!だから、ゆっくり休んでくれ」

 

「...僕は...弱いから...約束、できない...今も、シズさんを助けられない...ごめん...ごめんなさい...」

 

「...小鬼さん、本当に君は優しいね...優しい君が傷つきませんように...どうか、その先に幸せな未来がありますように...」

 

シズさんの綺麗な手は、枯れ木のように細くなり、美しかった黒髪は白く色を失っていく...

 

「最後に...スライムさん...君の中で、眠らせてくれないかな...この世界に取り込まれるのだけは、嫌だから...」

 

「...いいよ。」

 

「...」

 

返事は、なかった

眠れ運命の人よ。せめて、俺の中で覚めない幸せな夢を...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───テントの外

「おや、カバル殿。皆様もシズ殿のお見舞いですかな?」

 

「リグルドさん、まぁ、そんなところだ。リグルドさんもか?」

 

「えぇ。シズ殿のお召し物が完成したのでそれを」

 

「なら一緒に行くか」

 

「着替えは見ちゃダメだよ?」

 

「カバルの旦那...」

 

「勝手に変な風にとらえんな!!」

 

「リムル様、失礼します。シズ殿のお召し物を...」

 

部屋の中に入ったリグルドが見たのは、すすり泣くメイルと、部屋の中央に立つ、青みがかった銀髪の少女だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「り、リムルの旦那ぁ!?」

 

「うっそぉ...」

 

「人型にもなれたでやすか...」

 

「嘘に聞こえるかもだけど本当だよ。ほれ」

 

俺は、3人の目の前でスライムに戻る

 

「なんだか、ちっこいシズさんみたいだったよな...」

 

「リムルさん...シズさんを食べたの...?」

 

「...それが、シズさんの願いだったからな」

 

「...そっか...」

 

まぁ、エレンには思うところもあるだろう。

このパーティは女性がエレン1人だからな。

姉のように思っていたのではないだろうか

 

「ところで...メイルの坊ちゃんは大丈夫でやすか...?」

 

「...今はそっとしておいてやってくれ。

そりゃ、仲良くなった人が突然亡くなったんだ。無理もない」

 

「...リムル...」

 

突然、泣いていたメイルが俺を抱き上げる

 

「...どうした?」

 

「...ううん...もういいの...大丈夫。泣かない...泣いてばかりじゃシズさん、心配して眠れないもん...でも...まだ寂しいから...しばらく抱っこしてていい...?」

 

「...なら、こっちの方が寂しくないか?」

 

そう言って、俺はまた人型になる。

メイルなりに、シズさんの死を乗り越えようとしてるんだろう。

なら、せめて支えてあげるのが兄としての役割だ。

 

「...うん...」

 

「...あぁ〜...旦那、俺達も頼みがあるんだが...いいか?」

 

「このままでいいならいいが...」

 

「そのままがいいんだ。」

 

「...?」

 

俺が頭にハテナを浮かべていると突然カバル達が頭を下げた

 

「「「シズさん、ありがとうございました!!!」」」

 

「俺、あなたに心配されないリーダーになります!!」

 

「貴方と旅した日々は、生涯の宝にしやす!!」

 

「お姉ちゃんみたいって思ってました...!!絶対、忘れません...!!」

 

メイルには一時的に後ろに回ってもらっていたので突然エレンが抱きついて来たのは驚いたが、受け止められた。

最後にシズさんと一緒に冒険した奴らがこいつらで本当によかった。

 

「...それにしても、お前らボロボロだな」

 

まぁ、サラマンダーとの戦いでほぼ燃えてたし当然だけど...どうせだし、プレゼントをやるか

 

 

 

 

 

 

 

「う、うっそ〜...!!...こんなの貰っていいんですか...!?」

 

「あぁ。うちの鍛冶師たちのお手製だ」

 

「鍛冶師?」

 

「紹介しよう。カイジン、ガルム、ドルド、ミルドだ」

 

「「「えええぇぇぇぇぇ?!?!?」」」

 

どうやら、カイジンたちの名前はかなり有名だったらしい

これだけ喜んで貰えると、プレゼントした甲斐があったな!!

 

そして、散々騒いだあとエレン達はブルムンド王国に帰っていった。

シズさんの死の悲しみを吹き飛ばすように、笑顔で。

 

そして、街を一望できる丘の上にシズさんの墓を作った。

墓の場所は、メイルの案だ。

「シズさん、街を見て回ってた時すごく楽しそうだったから...あの場所がいいかなって」

とは、メイルの言葉である。

 

まだまだ、やることは山積みだ

 

「リムル、置いてっちゃうよ?」

 

「あぁ。今行くよ。」

 

俺の名はリムル=テンペスト。

1人の少女の姿を受け継いだ1匹のスライムである。

そして、俺の可愛い弟、メイル=テンペスト。

少女と同じ優しい心と綺麗な魂を持ち、受け継いだ1人の小鬼である。




シズさんのお話は長くなりがちですね...
メイルがこの一件で精神的にも強くなるといいなぁ...

ちなみに、メイルの前世斉穏寺 優愛くんですがちゃんと男の子ですよ。
女の子でしたとかないのでご安心を
みんな正直メイルの前世のくだり長々されても嫌だろうなぁと思ったのでこういう形で小出しにしかしません
まぁ、いずれ設定集みたいな番外編作るかもなのでもし気になる方はその時をお楽しみに。
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