TALES OF XILLIA -新たな主人公- 作:ハクハクモン
トラメス暦2289年ーーー
リーゼ・マクシア
二・アケリア
ボアの群れを率いたブルータルを倒してから早くも一年が過ぎた。俺はあの後、ミラからの提案で二・アケリアで暮らしていた。ミラ曰く、「村を守る為に力を貸してほしい」とのことだった。
それからは魔物相手の戦いはあったものの、ブルータルのような強いやつはいなかった。まあそんなホイホイいられても困るが……
「よお、シオン」
「うん?」
声をかけられたので振り向くと、一年前にキジル海瀑まで追ってきたあの青年がいた
「相変わらずぼーっとしてるな。とてもあのでかい魔物を倒したやつとは思えないよ」
「考え事をしてただけ。それにあの時はがむしゃらだったからな。火事場の馬鹿力ってやつだ」
「……だけどそのお前のおかげで皆助かったんだ。皆も少なからず、感謝してると思うぜ」
ーーブルータルを倒した後、ミラは村の人たちに俺を二・アケリアに住まわせたい旨を告げた。これから先、同じような魔物が攻めてこないとも限らない。ましてや自分自身の力不足で今度は死者がでる可能性もある。だからそれを補う意味でも彼を受け入れたい、と。
村の人たちはミラの言うことをすぐに聞き入れた。何より自分たちも助けられたという結果があった為に拒否することができなかったのかもしれないが……
「……それなら頑張った甲斐があったな」
「はは…。そういやもう一年経つけど、ここにはもう慣れたか?やっぱり他と比べると田舎だからな」
「ああ。最初は質素な生活に物足りなさを感じてたけど、今はここの暮らしもいいものだと思ってる」
「そうか……」
そんな話をしていると、二・アケリア参道の方からマクスウェルの巫子ーーイバルが戻ってきた。イバルはこっちに気がつくと走って近づいてきた
「シオン、ミラ様がお呼びだ。すぐに社へ行ってくれ」
「ミラが…?」
はて、ミラが呼んでくるとは珍しい。というのもあれからミラはそれまで通り社で瞑想をする毎日で、時々村に来ることはあっても一言二言交わすぐらいしかなかったのだ
「ミラ様から呼び出しを受けるなんて…何かやったのかシオン?」
「わからん。目立つようなことはしてないつもりだが…」
「とにかく行ってこい。ミラ様をあまりお待たせさせるな」
自分としても呼ばれる理由は知りたいところなので、ひとまずミラの元へ向かうことにした。しかし、いったいどんな理由で呼んでいるのか……
ミラの社
俺はイバルから伝えられた通り社へとやってきた。
社の雰囲気は一年前に通りかかった時と変わっていなかった。木々の中にひっそりと佇むそれは外観の飾り気はあまりないものの、どこか厳かな雰囲気を醸し出していた
「ミラ様。シオンをお連れしました」
社の入り口の前に立ったイバルが報告するとーー
「……うむ。入ってくれ」
社の中からミラの声が聞こえた。イバルはそれを聞くと扉を開けて中に入って行ったので、俺も後を追うように入った
「来たか」
ミラは瞑想を解くと立ち上がり、こちらへと歩み寄った
「ご苦労だったイバル。私はシオンに話があるから、お前は村に戻れ」
「…わかりました」
イバルはこっちを一瞥すると言われた通りに外へと出て行った
「さて…話をする前にシオン、君に聞きたいことがあるのだがいいだろうか?」
イバルが退出すると、ミラは一年前の時と同じ真剣な表情になった。いったい何が聞きたいのか……
「……何が聞きたいんだ?」
「君は私のことをどれほど知っている?」
「四大精霊を従える精霊の主、『マクスウェル』…だろ?」
「ふむ…それは村のやつから聞いて知ったのか?」
「……そうだけど?」
ミラの真意は分からないが、当たり障りのないように答えた。疑われるようなことはしていない…と思う。するとミラは目つきを険しくするなりーー
「…できれば正直に答えてほしい。村を救ってくれた君に剣を向けたくはない」
釘を刺されると同時にピリッと空気が張り詰めるのを感じた。それだけではなく、自分を囲うように四つの光が現れていた
「貴方はミラを救ってくれた恩人です。ですが……」
ウンディーネーー
「間者であるならば見過ごすことはできん」
イフリートーー
「言っとくけど逃げようとしても無駄だからね!ま、逃げるなら問答無用で切り刻むけど」
シルフーー
「…だから、嘘つかないでほしいでし。お願いでし」
ノームーー
それぞれが具象化し、俺に思い思いの視線を向けてきた。正面にいるミラは変わらず鋭い目で俺を捉えている。どこからどう見ても逃げることはできそうにないのは明らかだった
「はぁ……わかったよ」
俺は観念したように溜息を吐き、両手を挙げて抵抗しないことを表明した
「では聞くとしよう。君は……アルクノアの人間か?」
アルクノアーー確か自分たちが元いた世界に帰る為にマクスウェルの抹殺を企む組織…だったか。彼らが扱う
「いや。俺はアルクノアじゃないし、そもそも黒匣すら持ってないんだが」
「ああ。黒匣をもっていないことは霊山で会った時に分かっている」
「だけどイフリートが言ったようにアルクノアの間者である可能性も捨てきれないんだよね」
「私としては、そんなことはないと思っていますが…」
俺がアルクノアではないことを言うと、シルフは未だ疑いの目を向け、ウンディーネはどちらとも判断できず。イフリートは何も言わずただ俺を見下ろすのみ、ノームは俯いて何を言うべきか悩んでいる様子だった
「…じゃあどうすれば納得してもらえるんだ?生憎だけど、俺は皆を満足に納得させられるような口は持ち合わせてないんだけど」
このままだと不味い空気になりそうなので、解決案を求めてみた。四大精霊は何も言わずミラへ視線を向けた。ミラは目を閉じて思考を巡らせた
「そうか……。ならばシオン、君には私たちと共にアルクノアと戦ってもらうとしよう」
「ミラ⁉︎」
「ちょ、本気⁉︎」
「ほう…」
「やったでしー♪」
ミラの言葉に、精霊たちは様々な反応を示した。何より俺自身も少し驚いていた
「君の強さは一年前の戦いである程度は分かった。君が私たちに協力してくれるなら十分に心強い」
「で、でもミラ!こいつ本当にアルクノアかもしれないよ⁈もしそうだったらーーーー!」
「なに、本当にそうならば処理すればいいだけだ」
「シルフ。ミラが決めたことだ、我らはそれに従わねばならん」
「そうですね。主が定めたことは絶対ですから」
ミラは詰め寄るシルフを説得し、イフリートとウンディーネはシルフを諌めていた。俺はミラの判断を聞いて安心して息をついた
「え〜と、ひとまず分かってくれた…ってことでいいのか?」
「今は、な」
ミラは俺の台詞に短く答えた。だがその目は先ほどまでのような鋭さはなくなっていた
「これからはシオンしゃんも一緒でし♪よろしくでしー」
「ああ…よろしくな、ノーム」
気付けばノームが隣で全身を使って嬉しそうに揺れていた。しかしノームって可愛いな…
「シオン、これからよろしく頼むよ」
「ああ。…しかしそうなら鍛錬しとかないとな。今のままじゃミラの足を引っ張らないとも限らないし…」
まだ原作のストーリーが始まるまで時間はあるので、それを鍛錬に当てようと呟くと、ミラが反応した
「ほう、やはり今より強くなりたいか。ならちょうどいい方法があるぞ」
「……へえ、それは是非とも聞かせてほしいな」
「なに、命の危険はないさ。お前たち」
そう言うと四大精霊は自身の前にマナの塊を作り出し、それらを俺の腕を軸に複合させてひとつの腕輪を形成した。
それぞれの属性を連想させる色がバランス良く配色された立派な腕輪だ
「これは…腕輪か?」
「君の鍛錬を手助けするものだよ。それは戦闘で発生したマナを吸収することでそれぞれの属性に近い能力を伸ばしやすくするんだ。例えば火は力、水は反射神経、といった具合にな」
なんだか途轍もなく嫌な予感しかしない……
「だが並の魔物相手では微々たるものしか得られん。四大たちが相手ならば十分に強くなれるはずだ。悪い話ではないと思うぞ?」
「強くなる前に死にそうなんだが…。だけど足手まといになるよりはマシなのか…?」
俺は頭を抱えて悩み始めた。さすがに四大精霊が相手になると下手すれば命を落としかねない。まだ始まってすらいない状況でそれだけは勘弁してほしいところなんだが…
「では早速始めるとしようか。外に出るぞ」
「え⁉︎ちょ、まだ心の準備が……!」
さっさと外に出て行くミラとシルフ、イフリート、ウンディーネ。ノームは俺に向かってーー
「大丈夫でし。きっと手加減してくれるでしよ」
微妙な慰めの言葉を投げかけた。俺は今日が命日にならないことを祈り、ミラの後を追って外に出た
◇◆◇◆◇◆◇
トラメス暦2291年
二・アケリア
あれからさらに二年の月日が流れた。村には目立った変化もなく、ゆったりとした時間のなかを生き続けていた。慣れた様子で動物たちを放牧する青年や、立ち話に花を咲かせる老人たちなど、三年前と全く変わっていない。
いたってどこにでもありそうな村だ
「はーっ、はーっ」
そんな村の一角ーーー村長の家の前ではイバルが村内に祀られている四つの石ーーー世精石のうちひとつを入念に磨いていた。
「っと、これで良し!さて次だ」
磨き終わった世精石を戻し、祠を軽く掃除してイバルは満足そうにしていた。そして次へ向かおうとしたところに、二人の男から声をかけられた
「今日も精がでるな、イバル」
「まったく、尊敬しちまうな」
「当たり前だ、俺はミラ様の巫子だぞ!身の回りのお世話や村を守るだけではなく、あの方と関わりのある物の手入れをするのも立派な務めだ!」
イバルは自信満々に己の役職を語った。二人の男はやれやれ、といった仕草でイバルの言葉を聞き流した
「まあやる気に溢れてるのはいいことだな」
「あまり根を詰め過ぎないようにな。ただでさえお前はミラ様のこととなると、熱くなっちまうからなぁ…」
「ふん、ミラ様に御仕えするのは俺にとってはこの上ない名誉だ!熱くならずしてどうしろというのだ!そもそもーー」
男の言葉に、イバルは余計に熱く語りだしてしまった。もうひとりの男は話題を変えるべく、イバルの台詞を遮る形で本来の用件を切りだした
「あ〜…イバル?話の途中悪いんだが、シオンがどこにいるか知ってるか?」
「ーーん、シオン?あいつなら今日もミラ様のところだ」
「そうか。商人がシオン宛ての物を持ってきたから、渡そうと探してたんだが…」
イバルは男が持っているものに視線を向けた。それは小さく薄い箱で、片手で簡単に持ち運べるようなものだった。
イバルはその中身が何なのか、知りたい衝動に駆られたがすぐに頭を振り衝動を追い払った
「…それは俺が預かっておこう。あいつが来たら俺のほうで渡しておく」
「そうか?じゃあ、頼むよ」
男はイバルに小箱を渡すと、もうひとりの男と共にそれぞれの場所に行ってしまった。イバルは再度小箱を見つめるとーー
「軽いな…本当に中身入ってるのか?」
小箱に耳を当てたり振ったりなど、やはり衝動を我慢しきることができなかった
ミラの社
「も…もう動けん…!」
社前にて力無く仰向けに倒れた俺はたまらず小さい叫びをあげた。少し離れたところでは相手をしていたイフリートが腕組みをしており、ミラとそれ以外の精霊たちは様々な反応を見せていた
「何を言っている。この一年の様子からして、君はまだ続けられるはずだ」
「そうだそうだ。そもそも鍛錬したいって言ったから手伝ってやってるんだから、感謝くらいしてほしいものだね!」
ミラとシルフから有難いお言葉を聞きながらこの一年を思い返す。
四大たちから例の腕輪を貰ったその日に四大精霊を相手とした鍛錬ーー地獄が始まった。正直な話、最初の一月ほどはその鍛錬した記憶が全く思い出せないくらいだった。人間は本当に辛いことがあった時、記憶を封じ込めるーーみたいなことを聞いたことがあるけど、まさにそれだったんじゃないかと思っている。
一年経った今ではある程度慣れてきて、記憶も飛ぶことはなくなっていた。しかしこの疲労は相変わらず重いものだ
「ん〜、でもシオンしゃんは十分凄いと思うでしよ。ちゃんと生きてるでし」
「そうですね。一対一で手加減しているとはいえ、我々の力は人を殺める可能性が無くなることはありません。…ですが、シオンは少しずつではありますが順応していっています。この調子ならばあと二年ほどで人間の枠から外れるのではないかと♪」
やっぱり少しでも褒められると嬉しくなるものだ。うん、ノームとはもっと仲良くなりたいな…
「……いつまで寝転がっているつもりだ?まだ鍛錬は終わっておらんぞ」
イフリートが若干急かすように言ってくる。俺は鉛のように重い体をなんとか起こし、イフリートに対して構え直す
「いくぞ…!」
イフリートの剛撃が振るわれると同時に、この一年で最大の轟音が二・アケリアにまで響いたという
次の日ーー
俺は昨日イバルが預かってくれていたものを持って、社へと来ていた。持っている小箱の中にあるものをミラに渡すためだ。こういうものには滅法疎いので、霊山で偶然拾った綺麗透き通った石を商人に渡して加工してもらったのだ。加工に手間がかかったらしく、その分値段は張ったがな……
「シオン?どうしたのだ、今日は鍛錬はない筈だぞ?」
社の扉が開いてミラとウンディーネを連れて出てくるなり、疑問を投げかけてきた
「ああ、えっと……」
「?」
なかなか言葉をだせない俺ときょとんとするミラ。あぁもう…!こういう時に尻込みする自分が情けないったらないな…
「……ミラ、私は少しばかり外します。終わったら呼んでください」
するとウンディーネがいなくなってしまった。もしかしてこっちの考えてることがバレた…のか?
「む…ウンディーネのやつ、要らぬ気遣いを…。それでシオン、私に何か用か?」
ミラはいつもと変わらない柔らかい表情で聞いてくる。俺は顔が熱くなるのを必死で抑えつつ、目的を果たすために彼女の前へと歩いていく
「ああ…と、これを…渡したくてさ」
「ふむ、これは?」
「まあ…感謝の気持ちみたいなものだ。俺を村に住めるようにしてくれたり、今も鍛錬に手を貸してくれたりとか。何かしらの形で感謝したくてな」
「いや。村に住むことに関してはシオンが村を救ってくれたようなものだったからな。鍛錬も、君が私の使命を果たすための助力になるかもしれないと判断したからだ」
俺が小箱を送る理由を話すと、ミラは俺に対する自身の考えを教えてくれた。まあここまでは大体分かっていたことだ
「だから、それを受け取る理由が私にはない」
この返答も予想できた。予想できていたから、ダメージはそれほど大きくはない。だが確実にダメージを受けた。悟られないように振る舞おうとするが、恐らく傍からみればショックを受けていると見て取れるだろう
「そうか……。悪かった、いきなりこんなこと……?」
そう言って小箱を引っ込めようとしたが、ミラの手が小箱を優しく掴んだ
「だが、人間は物に自分の気持ちを込めて相手に送る、という風習があるのを聞いたことがある。さすがに相手の気持ちを無碍にできるほど薄情ではないさ。だから…ありがたく受け取らせてもらうよ」
なんというか、やっぱり『ミラ』なんだなと思った。マクスウェルとしての使命を貫く今の彼女のなかにも、未来の彼女の片鱗が確かにある。それが分かっただけでも送った甲斐があったというものだ
「開けてもいいだろうか?」
その言葉に俺は頷き返す。ミラは小箱を開け、その中身を取り出してまじまじと見つめた
「これは……ペンダント、か?」
「ミラは指輪とかしなさそうだし、動いたりする際にあまり邪魔にならなそうものを選んだつもりなんだけど…」
「なるほど、確かにこれなら身につけることができるな。早速つけてみるとしよう」
ミラはペンダントを取り出すと慣れたような器用さで身につけた。彼女の胸元に落ち着いたペンダントは、華やかとは言えない簡単な作りではあるが透き通った無色透明の石が己の存在を控えめにアピールしていた
「……どうだろうか?」
「…よかった。よく似合ってるよ」
「そ、そうか…」
当たり障りのない、ありきたりな感想を辛うじてひり出すと、ミラは少し照れたような顔を見せてくれた。うん、この照れてるところを見せられたらもうどんなことでもできる気がするな
「シオンの想い…確かに受け取った。ではこちらもシオンの想いに答えてやらねばなるまい」
「え…?」
「今日の鍛錬はなしだと言ったが、お前のことを想って、私が特別に鍛錬の相手をしてやろう!」
「はいいい⁉︎」
ミラは得物を突きつけ、こちらを見据えた。途端、その後ろに四大精霊たちが現れた!心なしか、シルフがすごいヤる気に満ち溢れているような…
「さあ、いくぞシオン‼︎」
「ちょま、アッーーーー!!!!」
ーーーーその日、俺は備蓄していたライフボトルを全て飲み干したのだった……
話数を重ねるごとに増える文字数…
はたしてこれでいいのか…
そしてやっとこさ原作をプレイできます
でもその前に主人公についての情報をあげておきます