どうも、朝槿です。
何度も言っておきますが、前回の設定が絶対です。
何か違和感があれば感想欄で質問してください。
「此処が……」
京都の禪院家の門前に、狼は立っていた。
長時間の乗車のせいで固まった体をほぐし、思考を切り替える。
ただの交換留学だと気を抜いてはいけない。
何をされるか分からないからだ。
「……行くか」
覚悟を新たにし、狼は屋敷へと踏み出した。
◇
屋敷に入って数分後、狼は既に屋敷の内情を把握せざるを得なかった。
(“魔境”か……)
昨日悟は、『禪院は魔境。潰してやろっかなぁ?ホント考えるだけで吐き気するわ。オッエー!』と言っていた。
強ち間違えではないようだ。
途中で絡まれるのも面倒なので、気配を消して当主の部屋に向かう狼。
入ろうとした狼だが、何かに気づきため息をつく。
(……よし)
ガラッ……と襖を開ける。
其処にいたのは、はだけた和服を身につけ、酒を右手に持った老人。
禪院家当主、直毘人だ。
「来たか」
大分飲んでいるようで、1m以上離れた狼にも酒精の香りが漂っている。
「……本日より世話になる、薄井狼牙と申します」
一応目上の人間なので、片膝をつき頭を下げる。
「おう!世話になって行け。儂は歓迎するぞ」
定例会とは違い、上機嫌なようだ。
呵々大笑とする姿は当主の風格を確かに感じさせる。
が、禪院家の人間である事は確かなようだ。
「だが、コイツらは如何かな?」
その言葉と共に、部屋の3方向から一斉に人が襲いかかってきた。
目の前の小僧は片膝をつき、頭を下げている。
直ぐには動けまい。完璧な奇襲だ。
その場にいる誰もがそう思った。
しかし。
「フッ……!」
一瞬にして刀を抜き放ち、直毘人の襟を掴み裏に回る。
そして首に刃を当てた。
「なっ……!」
襲いかかってきた男達……禪院扇や禪院甚一、禪院信朗は思わず動きを止める。
「ふむ……儂を殺すつもりか?」
薄皮一枚の近さまで刀を添えられた直毘人だが、緊張はしていない様だ。
「………」
「だんまりか?……良い、退け」
「……!しかし……」
「殺されたとして、好都合だろう?」
それでも留まろうとした信朗を連れて、扇と甚一は此方を睨みつけながら部屋を出て行った。
「………」
狼はそれを見届け、辺りに伏兵がない事を確認して刀を下ろした。
「ふむ、助かる。では、部屋を案内しよう」
「……何も、言わぬのか」
「この家は実力主義だからな、自らの地位を守りたければ力を示せ。彼奴らはまだ納得しておらん」
「……分かった」
狼は一応頭を下げ、部屋を出る。
そのまま屋敷の奥へと案内されていった。
◇
「無様やなぁ。パパは」
一連の出来事を影から見ていた一人の男。
「あんなザコに負けるとか、俺やったら恥ずかしくて生きて行けんて」
金髪に狐の様な吊り目、顔は薄ら笑い。
「ま、俺が負けるわけないんやけどな。
禪院直哉の顔には、他人を陥れる悪意が浮かんでいた。
翌日。
狼は早朝に屋敷を抜け出し、朝食を外で食べ、誰にも見つからず自室に帰ってきた。
何故そんな面倒な事をしているのかと言うと、夕食に薬が盛られていたからである。
狼には効かなかったが、これからどんなモノが盛られるかわからないので、朝食は外で取る事にした。
食事は強制ではないので、何も言われる事がないのは幸いだろう。
さて、暇だ。
鍛錬をして無駄に手の内を晒す気もないので、毎度の如く縁側に腰掛けて庭を眺めている狼。
前世ではこう言う時間はなかった。
自然など身に染みて恐ろしいモノだと知っている為、庭になど興味はなかった。
触れる機会もない。
しかし、今世のものは中々趣深い。
内情に似合わず美しいものだな、と考える狼だった。
ふと近寄ってくる気配を感じる。
「おいお前」
振り向くと、其処にいたのは禪院甚一だった。
「……甚一殿。如何用で?」
「扇がお前を呼んでいる」
扇に使われた事が甚だ不快である様で、最低限伝えるとさっさと去っていった。
「……行くべきか?」
実力主義と言う特色から、恐らく闘いになるだろう。
面倒だが、行かぬわけにもいかない。
「……行くか」
もう少し眺めていたかった、と庭を後にした。
◇
「来たか」
禪院家の修練場にやってきた狼。
予想通り、扇は刀を持って待っていた。
周りには…… 躯倶留隊か。
見せ物のように取り囲んでいる。
いや、実際彼らにとっては見せ物なのだろう。
「………」
狼は刀を抜き、構える。
どちらとも無く、闘いは始まった。
◇
「まずは小手調べだ」
そう言って扇は斬りかかってきた。
勿論弾くが、中々に強い衝撃だ。
(力……いや速さか)
純粋な力ではなく、速さを元にした剣戟。
弱くはないが……
(……強くも無い)
今の狼ならば容易く弾ける。
まだ本気を出していない事もあるだろうが、些か予想は外れだ。
######
「アイツずっと守ってばかりいるぞ」
「やっぱり大した事ないんじゃね?」
「俺たちでも勝てそうだよな」
周りは戦闘の情勢に飽き始めていたが、一方扇の心中は焦りに満ちていた。
(何だ此奴は……!)
幾ら斬りかかろうと全て防がれる。
いや、違う。
これは防がれているのではない、
(何故、何故そんな事が出来る……!)
一介の剣士だからこそ分かる弾きの特異さ。
相手の斬撃に合わせ、自らの刀を合わせる。
一瞬でもズレれば忽ち斬られてしまう。
力の込め方を仕損じれば、体勢は崩れ、これまた斬られてしまうだろう。
それを目の前の男は十全にこなしている。
自らよりも圧倒的に若いこの男が……!
扇は刀を鞘に納め、構える。
(これなら防げまい!)
扇は怒りを込めて、全力で居合を放った。
キィィインッ!
「な、なん、だと……」
一拍。
響くのは完璧な弾きの音。
扇の全力の居合を、狼は弾いてみせた。
一生にわたって鍛え上げた居合を、弾かれた。
弾かれた事に対する衝撃、自らの人生とも言える一撃が敗れた事への怒り、そして負けてしまうと言う恐れ。
ソレは、辛うじて残っていた扇の冷静さを奪った。
「術式解放……!!」
【焦眉之赳】
扇は刀身に炎を纏わせ、此方を睨みつけた。
「一片残らず、焼き殺してくれる!!」
人生全てを費やした、自分と言う人間を象徴する一撃。
それを完璧に弾かれた時点で、扇は負けました。
しかし、彼は術式を使いました。
彼にとっては、剣士としての誇りよりも、負ける事への恐怖が大きかったんでしょうね。
焦眉之赳(しょうびのきゅう)
名前めっちゃ好きなんですけど、炎の上位互換が普通にいるので(術式が)可哀想。
オリキャラ作るか……?