葦名廻戦   作:朝槿

14 / 28
弾きってめっちゃ難しそう。
どうも、朝槿です。
何度も言っておきますが、前回の設定が絶対です。
何か違和感があれば感想欄で質問してください。


禪院家

「此処が……」

 

京都の禪院家の門前に、狼は立っていた。

 

長時間の乗車のせいで固まった体をほぐし、思考を切り替える。

ただの交換留学だと気を抜いてはいけない。

何をされるか分からないからだ。

 

「……行くか」

 

覚悟を新たにし、狼は屋敷へと踏み出した。

 

 

 

 

屋敷に入って数分後、狼は既に屋敷の内情を把握せざるを得なかった。

 

(“魔境”か……)

 

昨日悟は、『禪院は魔境。潰してやろっかなぁ?ホント考えるだけで吐き気するわ。オッエー!』と言っていた。

強ち間違えではないようだ。

 

 

途中で絡まれるのも面倒なので、気配を消して当主の部屋に向かう狼。

入ろうとした狼だが、何かに気づきため息をつく。

 

(……よし)

 

ガラッ……と襖を開ける。

其処にいたのは、はだけた和服を身につけ、酒を右手に持った老人。

禪院家当主、直毘人だ。

 

「来たか」

 

大分飲んでいるようで、1m以上離れた狼にも酒精の香りが漂っている。

 

「……本日より世話になる、薄井狼牙と申します」

 

一応目上の人間なので、片膝をつき頭を下げる。

 

「おう!世話になって行け。儂は歓迎するぞ」

 

定例会とは違い、上機嫌なようだ。

呵々大笑とする姿は当主の風格を確かに感じさせる。

が、禪院家の人間である事は確かなようだ。

 

「だが、コイツらは如何かな?」

 

その言葉と共に、部屋の3方向から一斉に人が襲いかかってきた。

 

目の前の小僧は片膝をつき、頭を下げている。

直ぐには動けまい。完璧な奇襲だ。

その場にいる誰もがそう思った。

 

しかし。

 

「フッ……!」

 

一瞬にして刀を抜き放ち、直毘人の襟を掴み裏に回る。

そして首に刃を当てた。

 

「なっ……!」

 

襲いかかってきた男達……禪院扇や禪院甚一、禪院信朗は思わず動きを止める。

 

「ふむ……儂を殺すつもりか?」

 

薄皮一枚の近さまで刀を添えられた直毘人だが、緊張はしていない様だ。

 

「………」

 

「だんまりか?……良い、退け」

 

「……!しかし……」

 

「殺されたとして、好都合だろう?」

 

それでも留まろうとした信朗を連れて、扇と甚一は此方を睨みつけながら部屋を出て行った。

 

「………」

 

狼はそれを見届け、辺りに伏兵がない事を確認して刀を下ろした。

 

「ふむ、助かる。では、部屋を案内しよう」

 

「……何も、言わぬのか」

 

「この家は実力主義だからな、自らの地位を守りたければ力を示せ。彼奴らはまだ納得しておらん」

 

「……分かった」

 

狼は一応頭を下げ、部屋を出る。

そのまま屋敷の奥へと案内されていった。

 

 

 

 

「無様やなぁ。パパは」

 

一連の出来事を影から見ていた一人の男。

 

「あんなザコに負けるとか、俺やったら恥ずかしくて生きて行けんて」

 

金髪に狐の様な吊り目、顔は薄ら笑い。

 

「ま、俺が負けるわけないんやけどな。()()()()()の俺が!」

 

禪院直哉の顔には、他人を陥れる悪意が浮かんでいた。

 

 

 


 

 

 

翌日。

狼は早朝に屋敷を抜け出し、朝食を外で食べ、誰にも見つからず自室に帰ってきた。

何故そんな面倒な事をしているのかと言うと、夕食に薬が盛られていたからである。

狼には効かなかったが、これからどんなモノが盛られるかわからないので、朝食は外で取る事にした。

 

食事は強制ではないので、何も言われる事がないのは幸いだろう。

 

 

さて、暇だ。

鍛錬をして無駄に手の内を晒す気もないので、毎度の如く縁側に腰掛けて庭を眺めている狼。

 

前世ではこう言う時間はなかった。

自然など身に染みて恐ろしいモノだと知っている為、庭になど興味はなかった。

触れる機会もない。

しかし、今世のものは中々趣深い。

内情に似合わず美しいものだな、と考える狼だった。

 

ふと近寄ってくる気配を感じる。

 

「おいお前」

 

振り向くと、其処にいたのは禪院甚一だった。

 

「……甚一殿。如何用で?」

 

「扇がお前を呼んでいる」

 

扇に使われた事が甚だ不快である様で、最低限伝えるとさっさと去っていった。

 

「……行くべきか?」

 

実力主義と言う特色から、恐らく闘いになるだろう。

面倒だが、行かぬわけにもいかない。

 

「……行くか」

 

もう少し眺めていたかった、と庭を後にした。

 

 

 

 

「来たか」

 

禪院家の修練場にやってきた狼。

予想通り、扇は刀を持って待っていた。

周りには…… 躯倶留隊か。

 

見せ物のように取り囲んでいる。

いや、実際彼らにとっては見せ物なのだろう。

 

「………」

 

狼は刀を抜き、構える。

どちらとも無く、闘いは始まった。

 

 

 

 

「まずは小手調べだ」

 

そう言って扇は斬りかかってきた。

勿論弾くが、中々に強い衝撃だ。

 

(力……いや速さか)

 

純粋な力ではなく、速さを元にした剣戟。

弱くはないが……

 

(……強くも無い)

 

今の狼ならば容易く弾ける。

まだ本気を出していない事もあるだろうが、些か予想は外れだ。

 

 

######

 

 

「アイツずっと守ってばかりいるぞ」

「やっぱり大した事ないんじゃね?」

「俺たちでも勝てそうだよな」

 

周りは戦闘の情勢に飽き始めていたが、一方扇の心中は焦りに満ちていた。

 

(何だ此奴は……!)

 

幾ら斬りかかろうと全て防がれる。

いや、違う。

これは防がれているのではない、()()()()()()

 

(何故、何故そんな事が出来る……!)

 

一介の剣士だからこそ分かる弾きの特異さ。

相手の斬撃に合わせ、自らの刀を合わせる。

一瞬でもズレれば忽ち斬られてしまう。

力の込め方を仕損じれば、体勢は崩れ、これまた斬られてしまうだろう。

 

それを目の前の男は十全にこなしている。

自らよりも圧倒的に若いこの男が……!

 

扇は刀を鞘に納め、構える。

 

(これなら防げまい!)

 

扇は怒りを込めて、全力で居合を放った。

 

 

キィィインッ!

 

「な、なん、だと……」

 

一拍。

響くのは完璧な弾きの音。

扇の全力の居合を、狼は弾いてみせた。

 

一生にわたって鍛え上げた居合を、弾かれた。

弾かれた事に対する衝撃、自らの人生とも言える一撃が敗れた事への怒り、そして負けてしまうと言う恐れ。

 

ソレは、辛うじて残っていた扇の冷静さを奪った。

 

「術式解放……!!」

 

【焦眉之赳】

 

扇は刀身に炎を纏わせ、此方を睨みつけた。

 

「一片残らず、焼き殺してくれる!!」




人生全てを費やした、自分と言う人間を象徴する一撃。
それを完璧に弾かれた時点で、扇は負けました。
しかし、彼は術式を使いました。
彼にとっては、剣士としての誇りよりも、負ける事への恐怖が大きかったんでしょうね。

焦眉之赳(しょうびのきゅう)
名前めっちゃ好きなんですけど、炎の上位互換が普通にいるので(術式が)可哀想。
オリキャラ作るか……?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。