狼さんの一人称を少し入れたり、……を・・・に変えたり。
もし嫌であれば感想でお聞かせ下さい。
葦名同窓会
最初に少しフォントまとめ。
49番 祝詞とか
薄井狼牙
348番 おどろおどろしいやつ
薄井狼牙
520番 技、忍具など
薄井狼牙
本編です↓
「・・・」
本当に着いてしまった。
確かに本物だろう。
心中ではない筈。
かつての如く床に横たえられた体を起こし、外に出る。
其処に広がるのは、
雪が降り積もり、遠くには葦名城が見える。
そして・・・
「其処許、懐かしいな。息災だったか」
「・・・お前は」
少し嬉しそうな様子で話しかけてきたのは、死なず半兵衛だった。
◇
「・・・どうして此処に?」
「ふむ、どうしたものか・・・ならばまずは我らについて語ろう」
葦名は滅び、兵は例外なく殺された。
装備が同じであれば内府の兵を余裕で殺せる葦名の兵だ。
内府の選択も理解できる。
民草は内府の統治に従わせる為、強制的に葦名から連れ出し一生を送らせた。
そして葦名は人一人いない無人の土地となった。
さて、九郎は生前葦名を訪れ、様々なことをした。
薄井家の為の呪具だったり、墓参りだったり。
そして最後に、とある大きな事を為した。
「それは・・・?」
「葦名の黄泉返り、であるよ」
曰く、何らかの力を使い、葦名を常人が立ち入る事が出来ない領域とした。
更に、
と言っても、魂が強固に残っていた強者ぐらいしか返らなかったが。
「・・・」
その言葉に、狼の眉間の皺は深くなる。
「其処許がどう思うか分からぬが、御子様が実行したのは確か」
「・・・何故だ」
「・・・御子様自身が伝えてくださったのよ」
葦名と言う土地の価値。
それは狼が思うよりもずっと高い。
それを守る為に強者を呼び覚ました。
侵害されるのを防ぐ為には十分あり得る手段だろう。
だが、少し狼は複雑だった。
「・・・この事を知っているのは」
「一心様や弦一郎様ぐらいではないか?」
「・・・一心様が」
一心様はともかくとして、弦一郎殿・・・
やはりとは思っていたが、黄泉返るとは・・・
少し恐ろしいまである。
「葦名城にいらっしゃる。一度行ってみると良い」
「承知」
◇
その後穴山や小太郎、黒傘とも再会し、世間話を交わす。
仏師殿が居ない事は少し残念だったが、そろそろ城に向かうとしよう。
再び鬼仏に対座し、葦名城に向かった。
目を開ける。
其処は何度も強敵と戦った天守閣。
もはや馴染み深いまである。
さて、葦名城には飛ぶ事が出来たようだ。
何故か仙峯寺や水生村には飛ぶ事が出来ず、城下と葦名城にしか行けない。
(後々調べるか・・・)
ふと上階に気配を感じる。
一心様ではないようだ。
気配が違う。
しかし、何処か覚えがある様な・・・
上にあるのは御子の間。
階段を静かに駆け上り、刀に手を添える。
本棚の前に人影。
気配を極限まで薄くし、近づく。
もし敵ではなかった時を考えれば、月隠は少々不適切だ。
忍殺出来る少し手前の位置まで近づいた所で、目の前の人物は気づいたのか振り返る。
「おい、其処の・・・貴様か」
膝を突き、頭を下げる。
今はもう敵ではないのだ。
「・・・弦一郎殿」
「久しいな、御子の忍び」
変若水の澱を手に入れる前の、葦名弦一郎だった。
目は黒く、理性をたたえた輝きを持っている。
「・・・御子より聞いたぞ。貴様、無事に目的を達成した様だな」
「・・・葦名は」
「芳しくない。御子により蘇ったこの国は、再び斜陽にある。腹立たしいものだ」
「変若水は・・・」
「得ることも叶わん。自由な土地は葦名城と城下のみ。仙峯寺はおろか、平田屋敷にも行けんわ」
「・・・何者だ?」
「知らん。ただ、敵の多くが赤目、しかし炎が効かん。どんな絡繰だ?」
「・・・一心様は」
「水手曲輪だ。既に老人だと言うのに・・・いや、今は異なるか」
「・・・?」
「行ってみれば分かる。ではな、俺はもう少し調べる事がある」
そう言って弦一郎殿は本棚に向き直った。
恐らく彼は、もしもの為に城に残されている。
本人は自ら葦名を取り戻したいに違いない。
だからこそ、今は必死に調べる事で抑えているのだろう。
狼は無言で下がり、城を出て向かう。
左手は生身である為、地面を走るしかない。
少し進めば、嘗てよりも精強に見える兵が巡回していた。
そのまま行くのは少し拙い。
狼は物陰に隠れ、坐禅を組む。
灯る色は空の様。
【御霊降ろし】
敵対をするつもりは無いが、黙って殺されるつもりも無い。
隠れて進むとしよう。
たどり着いたのはススキの野原。
何度も何度も死んで強敵を討ち破り、不死を断った因縁の場所。
少し進むと・・・
ザンッ!ゾンッ!
奥から飛んでくる2連の衝撃波。
直様刀を抜き、弾く。
ギィインッ!ガァィインッ!
弾いたものの二の太刀で吹っ飛ばされ、刀を地面に突き立て転倒を防ぐ。
こんな事が出来るのは一人しかいない。
「おう、隻狼よ!久方ぶりじゃな!」
「一心様・・・」
かつて自分が斬った、全盛期の剣聖がそこにいた。
◇
「出会い頭に竜閃とは・・・」
「お主なら弾けるじゃろう?」
「・・・はっ」
「カカカッ、まあ良い。隻狼よ、戻ろうぞ」
一心と狼は歩きながら情報を交換する。
「・・・残兵は?」
「全て斬ったわ。水手曲輪に生じるモノ共は少し柔すぎる」
「生じる・・・」
「原理は知らぬが、何処となく怨嗟に似ておる。怨みや怒り、悲しみの権化の様じゃった。修羅に比べたら矮小にも程があるがな」
(呪霊か・・・?いや、葦名は隔絶された領域。此処に呪霊は出ない筈・・・)
呪霊が生じる原因となる悪感情。
葦名では怨嗟として人々に降り積もる。
呪霊は滅多に生じることはない。
首無しや七面武者。
彼らを呪霊と呼ぶのは少し抵抗がある。
破戒僧や獅子猿。
あれらは蟲憑きだ。生身の肉体を持っている。
葦名由来ではないだろう。
さて、少し進んでいると、とあるものが目に入った。
「あれは・・・」
「行ってみると良い。儂は此処で待っておる」
「これは・・・墓か」
石が積み重ねられたものではなく、大きい石が一つ立っている。
側には一本の刀。
誰のものかなど考えなくても分かる。
狼は無言で膝をつき、数秒頭を下げる。
そしてその刀を持って立ち上がり、一心の元に戻った。
「もう良いのか?」
「・・・はっ」
◇
二人が去ったススキの野原。
静かに風が吹き、その風景は先程までの戦いの空気を感じられない程。
その片隅にある墓。
先程まで置いていた刀は無くなり、何処か寂しくなったが、これが本来あるべき姿なのだろう。
墓石にはこう刻まれていた。
『我が生涯の忍び、此処に眠る』
一振りの刀は持つべき主人の元へ戻り、再び楔となった。
成長した一匹の逸れ狼は、唯一の主から贈り物を受け取り、再び戦火に身を投じる事になるだろう。
その結末は、誰にも分からない。
第二章 葦名編
続く・・・
第二章スタート!
という訳で此処までお付き合い頂き有難う御座います。
此処からは高専・・・の前にちょこっと葦名。
久しぶりの再会や、新しい出会い。
狼さんの無口が一層際立ちますね。
上層部には薄井家による痛い目を盛大に見てもらおうと思います。
ではまた後日、投稿をお楽しみに!