葦名廻戦   作:朝槿

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今回少し文体を変えました。
狼さんの一人称を少し入れたり、……を・・・に変えたり。
もし嫌であれば感想でお聞かせ下さい。


葦名追憶の旅
葦名同窓会


最初に少しフォントまとめ。

 

49番 祝詞とか

薄井狼牙

 

348番 おどろおどろしいやつ

薄井狼牙

 

520番 技、忍具など

薄井狼牙

 

本編です↓


 

 

「・・・」

 

本当に着いてしまった。

確かに本物だろう。

心中ではない筈。

 

かつての如く床に横たえられた体を起こし、外に出る。

其処に広がるのは、()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

雪が降り積もり、遠くには葦名城が見える。

そして・・・

 

「其処許、懐かしいな。息災だったか」

 

「・・・お前は」

 

少し嬉しそうな様子で話しかけてきたのは、死なず半兵衛だった。

 

 

 

 

「・・・どうして此処に?」

 

「ふむ、どうしたものか・・・ならばまずは我らについて語ろう」

 

葦名は滅び、兵は例外なく殺された。

装備が同じであれば内府の兵を余裕で殺せる葦名の兵だ。

内府の選択も理解できる。

民草は内府の統治に従わせる為、強制的に葦名から連れ出し一生を送らせた。

 

そして葦名は人一人いない無人の土地となった。

さて、九郎は生前葦名を訪れ、様々なことをした。

薄井家の為の呪具だったり、墓参りだったり。

そして最後に、とある大きな事を為した。

 

「それは・・・?」

 

「葦名の黄泉返り、であるよ」

 

曰く、何らかの力を使い、葦名を常人が立ち入る事が出来ない領域とした。

更に、()()()()()()()()()()()()()()

と言っても、魂が強固に残っていた強者ぐらいしか返らなかったが。

 

「・・・」

 

その言葉に、狼の眉間の皺は深くなる。

 

「其処許がどう思うか分からぬが、御子様が実行したのは確か」

 

「・・・何故だ」

 

「・・・御子様自身が伝えてくださったのよ」

 

葦名と言う土地の価値。

それは狼が思うよりもずっと高い。

それを守る為に強者を呼び覚ました。

侵害されるのを防ぐ為には十分あり得る手段だろう。

だが、少し狼は複雑だった。

 

「・・・この事を知っているのは」

 

「一心様や弦一郎様ぐらいではないか?」

 

「・・・一心様が」

 

一心様はともかくとして、弦一郎殿・・・

やはりとは思っていたが、黄泉返るとは・・・

少し恐ろしいまである。

 

「葦名城にいらっしゃる。一度行ってみると良い」

 

「承知」

 

 

 

 

その後穴山や小太郎、黒傘とも再会し、世間話を交わす。

仏師殿が居ない事は少し残念だったが、そろそろ城に向かうとしよう。

 

再び鬼仏に対座し、葦名城に向かった。

 

 

鬼仏・天守望楼

 

 

目を開ける。

其処は何度も強敵と戦った天守閣。

もはや馴染み深いまである。

 

さて、葦名城には飛ぶ事が出来たようだ。

何故か仙峯寺や水生村には飛ぶ事が出来ず、城下と葦名城にしか行けない。

 

(後々調べるか・・・)

 

ふと上階に気配を感じる。

一心様ではないようだ。

気配が違う。

しかし、何処か覚えがある様な・・・

 

上にあるのは御子の間。

階段を静かに駆け上り、刀に手を添える。

本棚の前に人影。

 

気配を極限まで薄くし、近づく。

もし敵ではなかった時を考えれば、月隠は少々不適切だ。

 

忍殺出来る少し手前の位置まで近づいた所で、目の前の人物は気づいたのか振り返る。

 

「おい、其処の・・・貴様か」

 

膝を突き、頭を下げる。

今はもう敵ではないのだ。

 

「・・・弦一郎殿」

 

「久しいな、御子の忍び」

 

変若水の澱を手に入れる前の、葦名弦一郎だった。

目は黒く、理性をたたえた輝きを持っている。

 

「・・・御子より聞いたぞ。貴様、無事に目的を達成した様だな」

 

「・・・葦名は」

 

「芳しくない。御子により蘇ったこの国は、再び斜陽にある。腹立たしいものだ」

 

「変若水は・・・」

 

「得ることも叶わん。自由な土地は葦名城と城下のみ。仙峯寺はおろか、平田屋敷にも行けんわ」

 

「・・・何者だ?」

 

「知らん。ただ、敵の多くが赤目、しかし炎が効かん。どんな絡繰だ?」

 

「・・・一心様は」

 

「水手曲輪だ。既に老人だと言うのに・・・いや、今は異なるか」

 

「・・・?」

 

「行ってみれば分かる。ではな、俺はもう少し調べる事がある」

 

そう言って弦一郎殿は本棚に向き直った。

恐らく彼は、もしもの為に城に残されている。

本人は自ら葦名を取り戻したいに違いない。

だからこそ、今は必死に調べる事で抑えているのだろう。

 

 

狼は無言で下がり、城を出て向かう。

左手は生身である為、地面を走るしかない。

少し進めば、嘗てよりも精強に見える兵が巡回していた。

そのまま行くのは少し拙い。

 

狼は物陰に隠れ、坐禅を組む。

灯る色は空の様。

 

【御霊降ろし】

月隠

 

 

敵対をするつもりは無いが、黙って殺されるつもりも無い。

隠れて進むとしよう。

 

 

たどり着いたのはススキの野原。

何度も何度も死んで強敵を討ち破り、不死を断った因縁の場所。

少し進むと・・・

 

ザンッ!ゾンッ!

 

奥から飛んでくる2連の衝撃波。

直様刀を抜き、弾く。

 

ギィインッ!ガァィインッ!

 

弾いたものの二の太刀で吹っ飛ばされ、刀を地面に突き立て転倒を防ぐ。

こんな事が出来るのは一人しかいない。

 

「おう、隻狼よ!久方ぶりじゃな!」

 

「一心様・・・」

 

かつて自分が斬った、全盛期の剣聖がそこにいた。

 

 

 

 

「出会い頭に竜閃とは・・・」

 

「お主なら弾けるじゃろう?」

 

「・・・はっ」

 

「カカカッ、まあ良い。隻狼よ、戻ろうぞ」

 

一心と狼は歩きながら情報を交換する。

 

「・・・残兵は?」

 

「全て斬ったわ。水手曲輪に生じるモノ共は少し柔すぎる」

 

「生じる・・・」

 

「原理は知らぬが、何処となく怨嗟に似ておる。怨みや怒り、悲しみの権化の様じゃった。修羅に比べたら矮小にも程があるがな」

 

(呪霊か・・・?いや、葦名は隔絶された領域。此処に呪霊は出ない筈・・・)

 

呪霊が生じる原因となる悪感情。

葦名では怨嗟として人々に降り積もる。

呪霊は滅多に生じることはない。

 

首無しや七面武者。

彼らを呪霊と呼ぶのは少し抵抗がある。

破戒僧や獅子猿。

あれらは蟲憑きだ。生身の肉体を持っている。

 

葦名由来ではないだろう。

 

 

さて、少し進んでいると、とあるものが目に入った。

 

「あれは・・・」

 

「行ってみると良い。儂は此処で待っておる」

 

 

「これは・・・墓か」

 

石が積み重ねられたものではなく、大きい石が一つ立っている。

側には一本の刀。

誰のものかなど考えなくても分かる。

狼は無言で膝をつき、数秒頭を下げる。

 

そしてその刀を持って立ち上がり、一心の元に戻った。

 

「もう良いのか?」

 

「・・・はっ」

 

 

 

 

二人が去ったススキの野原。

静かに風が吹き、その風景は先程までの戦いの空気を感じられない程。

その片隅にある墓。

先程まで置いていた刀は無くなり、何処か寂しくなったが、これが本来あるべき姿なのだろう。

 

墓石にはこう刻まれていた。

 

『我が生涯の忍び、此処に眠る』

 

 

 


 

 

 

一振りの刀は持つべき主人の元へ戻り、再び楔となった。

成長した一匹の逸れ狼は、唯一の主から贈り物を受け取り、再び戦火に身を投じる事になるだろう。

 

その結末は、誰にも分からない。

 

 

 

第二章 葦名編

続く・・・




第二章スタート!
という訳で此処までお付き合い頂き有難う御座います。
此処からは高専・・・の前にちょこっと葦名。
久しぶりの再会や、新しい出会い。
狼さんの無口が一層際立ちますね。
上層部には薄井家による痛い目を盛大に見てもらおうと思います。

ではまた後日、投稿をお楽しみに!
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