影の術式についてですが、彼も結構成長しました。
心象世界に情報を具現化。
わかりやすく言うならば、流れ込んできた情報を本にして保管できる。
必要な時はそれを読めばいいので、幾分かマシになった。
だけど、流れてくる時の苦痛は変わらないので、どうにかしたいと思ってる。
影ですが、葦名入りを果たした時に、葦名全域に漂う竜胤の残り香的なものに感化され、術式が軽く暴走。
一気に流れ込んできました。
そして一つ不可解な事に気づきます。
この情報を含めて、葦名関係の情報って結構抜けが多くね?と言う事に。
まるで・・・“誰かの視点である様な”。
「おまえさん、成し遂げたんだな」
「・・・ああ」
再会した二人は、五重塔の横に腰を下ろす。
「・・・」
狼は黙って促した。
「・・・儂は、忍びだった。そして、一心様の、忍びじゃった。儂の名を下さった、何よりも大切なお方じゃ」
仏師は語り出す。
「葦名に伝わる、様々な逸話。その一つ、不死斬り。仙峯寺にある五重塔に、それが収められている。それを、儂は知った」
「・・・何故?」
「任務で仙峯寺の調査をした時、知った。一心様の強さの為に、儂はあの刀を獲った」
「・・・」
「そして、斬った。切れ味が良い、そう思った」
「斬り続けた。次第に、相手を殺す、快感が身を包んだ」
「斬り続けた。儂はもう、忍びでは無くなった。殺しの意味を、捨ててしまった」
「そして、修羅と成り果てる寸前、一心様が斬ってくださった」
「・・・そうか」
「それを機に、不死斬りは一心様が預かり、儂は忍びを辞めた」
話し終えた彼は、斬り落とされた左手を出す。
「お陰で、修羅にはならなかった。そして仏様を彫り続けた。だが、一向に優しい顔の仏様は彫れん。今でもだ」
「これも、自業なのじゃろうな」
話し終えた仏師は立ち上がる。
「・・・行くのか」
「ああ・・・おまえさん、有難うよ」
その言葉を最後に、何処かへと去っていった。
◇
「や、昨日ぶりだね。その様子だと・・・分かったみたいだね」
「ああ」
聞くと、影はわざと自分で話さず、仏師殿と自分の会話を求めていたらしい。
「ごめんね。僕はあの方の心中まで捉えることは出来ないし、何より他人が話すべきではないと思ったから」
「俺こそ、礼を言う」
「うん。・・・それじゃ、続きと行こうか」
◇
前回は・・・ああ、そうだったね。
京の水、及び変若水についてだった。
さて、此処で葦名、つまり下界はどうだったか。
この時代は大した社会制度は出来ていない。
その土地その土地で色々と文化があったんだ。
そして狼さんも馴染み深い儀式・・・いや、手段と言ったほうがいいかな。
それが、輿入れの儀。
仙郷と下界には大きな隔たりがある。
しかし京人、つまり源の香気を纏う者は無条件で行き来できた。
輿入れによってね。
さ、少し飛ぶよ。
時は進んで平安時代初期。
上界である仙郷から降り、葦名や、京都まで行った京人。
彼らは其処で建築を学んだのか、仙郷に再現しようとした。
その試みは見事に成功し、今では見られないけど、美しい都が出来たって訳。
そして下界では、葦名の民も仙郷へ渡る様になった。
どうやって?
狼さんは体験したことあるよ。
そう、香気の偽装。
まあ、もれなく全員京の水飲んで都人になったから、真実は分からないんだけどね。
此処で余談。
実は輿入れによって源の宮に来た新人が困る事が一つある。
環境の違い?そんなの気にする奴なら来ないさ。
京の水の禁断症状?
この時点ではほぼないに等しい。
それは、謁見。
神域から流れ出でる水によって、神域及び内裏への謁見は叶わぬ状態。
其処で水生の初代は、輿入れする人にとある術を教えた。
【水生の呼吸術】
『水生の御初代は、輿入れが決まった者にのみ、密かにこの秘術を授けた
輿入れ望まば、水生の息
これなくば、神なる竜とは見えられぬ』
と言うわけで、この時代で一層水との付き合いを深めていったのさ。
◇
双方一度休憩を取る。
影は片手に手帳を持ち、ずっとそれを読んでたので首を回し、固まっていた狼は肩を回した。
「はぁ〜・・・」
心なしか、と言うか一目見てわかる程疲れている影。
「休むか?」
次回に回そうと提案するが、影はそれを断る。
「いや、続けるよ」
◇
・・・ああ、そうだ。
輿入れの習慣についてだったね。
この時かな、仙峯上人が仙郷に渡ったのは。
桜竜との謁見を経て、彼はぬしの色鯉の肉を授かった。
此処にも神々の立場の差が大きく現れてるね。
さて、この肉が全ての元凶だ。
神の力は、人には余りにも大き過ぎる。
僕の力の様に、耐えきれなくなってしまうからね。
血肉などなおさら。
幸運な事に、上人は食べなかった。
彼は真面目な僧侶だ、戒律を破る訳がない。
しかし、ある尼僧が食べてしまった。
誰かわかるかい?
そ、破門された破戒僧さ。
そして上人は、彼女の不死を知り、食べてしまった。
彼は口にしてしまった後に、蟲によって齎されたものだと気づいてしまったのだ。
彼は仏道から離れ、死なずへと、呑み込まれていった。
なんと哀れな事だろうか。
・・・話を続けよう。
時は経ち、数百年後。
源の宮は新たな転機を迎えた。
そう、淤加美一族の到来だ。
こっちは予想通りみたいだね。
彼女らの発端はぬしの白蛇。
落ち谷衆はもともと淤加美一族だ。
さて、武力でのしあがった彼らは、源の宮の覇権を手にする。
しかしそんな彼女らにも恐れるものがあった。
それこそ、かつての神、白蛇だ。
アレからしたら、自分を捨てて他の神に乗り移った裏切者。
粛清に動いてもおかしくない、と彼女らは考えたんだろう。
そして彼女らは、葦名に攻め入った。
白蛇を潰しにいったか、はたまた葦名を征服したかったのか、心中までは分からない。
時は平安中期。
貴族たちは武士を雇い、互いの戦力を持って地位争いをしていた時代だ。
それは葦名では少し異なり、葦名衆は自分達で戦力となっていた。
彼らは無事、攻め入った淤加美一族及び源の宮勢力を追い返した。
そして門番に破門にされていた破戒僧を。
煽てたのかな?
そのまま時は過ぎ、次なる騒乱は戦国に巻き起こる。
◇
「少し落ち着いた・・・葦名に来てから絶え間なく情報が流れてきててね。喋って整理しなければパンクしてしまいそうだよ」
「・・・今回の話だけを見ると、悪いのは全て源の宮と?」
「あながち間違ってない。と言うかいつの時代も強大なものに人は縋りたくなるからね」
「・・・そうだな」
狼は思わず実感込めて頷く。
かつて戦ってきた敵は、竜胤と言う大きな力を求めていたからだ。
「・・・よし、整理できた。じゃあ、次は戦国時代だよ」
◇
戦国時代初期、下界の葦名は波乱万丈だった。
絶対的だった葦名衆は国を奪われ、田村主膳は国を征服した。
そしてこれからの話で二番目に重要な立ち位置にいる、仙峯寺について話そう。
彼らは死なずに魅入られ、その門を固く閉ざした。
が、実はそれもまだ最近の事。
死なずに憑かれたのはほんの一握りだけ。
少なくとも戦国が始まるまでは、門戸を外に開いていた。
しかし、田村の国取りによって情勢が一変する。
中立・・・いや、不干渉の立場を取っていた仙峯寺は、田村率いる新勢力に接近される。
要は、「お前らどっちの立場につくんや?」状態である。
葦名を二分している勢力。
田村と一心。
どちらにつくかで仙峯寺は大荒れ。
ただ一つ言えるのは、どちらにも義理立てする気はなかった、と言うことだけだろうね。
そして此処からが山場。
一心様の生涯について、此処に載っている事を語るよ。
またもやリスペクト過多ですいません。
一旦整理をば。
縄文:隕石降ってきた!隕鉄に神々が引き寄せられた!葦名すごい土地になった!(白蛇、色鯉誕生)
弥生:桜竜きた!岩に取り憑いた!神溶けた!水凄え不死になる!(京の水信仰の始まり)
平安初期:源の宮できた!輿入れで人たくさん行き来出来る!仙峯上人来た!あ、肉食べた。(仙峯寺崩壊の序章・・・の前章)
平安中期:淤加美一族きた!一瞬で最強!葦名行けるっしょ!無理でした。(源の宮と葦名の交流が消えた)
戦国初期:田村葦名奪取!仙峯寺パニック。(?)道玄離反して一心側に。(完全なる仙峯寺の瓦解)
いかんせん、考察をそのまま載せると書きたい設定に合わないから、自分の形に修正するのめっちゃ難しい。
頑張るぞ!