葦名廻戦   作:朝槿

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此処で重要な設定を一つ。

前回書いた様に、影の持つ情報には抜けが多いです。
術式が発現した時に流れ込んできた現代日本の情報は、『副次的な要因です』。
簡単に言うと、副作用。
あれは本来の役割の時に一緒に流れ込んできたもの。

では、本来の術式の効果は何か?
此処でヒントを一つ。

本来得る情報は、弥生から平安中期までの源の宮の情報です。

さあ、聡明なみなさんは正体が分かったかも知れないですね。


葦名の歴史③

黒の不死斬り。

仏師殿が手に入れ、一心様が扱った妖刀。

その本来の役割は銘にも刻まれた、『開門』。

竜胤を供物にし、()()()()()()()

記憶に新しい、一心様の蘇り。

 

此処からは推測を交えて話すよ。

開門の歴史を。

 

 

 

 

不思議に思わなかったかい?

()()()()()()()()()()()()

これは記録に残ってないけど、恐らく源の宮の人物、それも外部から来た鍛治の一族だろう。

強力な神力が宿った隕鉄を使い、祭祀用に造られた二振りの刀は、竜胤を断てる刀となった。

 

時は過ぎ、平安末期。

源の宮を這いずり回っていた貴族達。

彼らの時は平安で終わってしまっている。

この時代に何か大きな出来事があったんだろうね。

それこそ、桜竜が暴走する様な。

 

全ての情報を出そう。

 

・仙郷の桜(常桜)は蟲に憑かれていた。

・桜竜は大きな傷を負っていた。

・不死斬りの名前。

・京の水の異変。

 

 

 

 

「仙郷の桜は、如実に桜竜の状態を表す。何故だか分かるかい?」

 

「・・・竜胤の御子の様な、繋がりを持っている?」

 

「ああ、一方的だけどね。そしてさっき言った大きな出来事とは・・・」

 

 

「戦争だよ」

 

 

「戦争・・・?」

 

「不思議に思わなかった?貴族の大半はあんな風体になって精気を求めてたのに、淤加美一族は元気に蹴鞠してた。この違いは何?」

 

「・・・敗者か、勝者か」

 

「その通り。封鎖された内裏には貴族が、其処以外には淤加美が。この戦争は勢力争いが発端になって起こったものなんだ」

 

「・・・桜竜と鯉か?」

 

「よくわかったね。負けたのは桜竜派。勝った淤加美は喜んで源の宮を支配した。だけど此処で問題が起こった。戦ったのは都人と淤加美だけじゃない。彼らが仕る、竜と鯉も戦った」

 

「・・・勝ったのは?」

 

「勿論竜。鯉と竜じゃ圧倒的な違いがありすぎる。だけど、鯉も一矢報いた。いや、報いてしまった」

 

「・・・傷つけたせいで、水質が狂った」

 

「そう。そのせいで、水に取り憑かれた都人はああなってしまったのさ」

 

「いくつか覚えている」

 

「インパクト凄かったもんね。流石の淤加美も焦ったのか、竜を奉る様になった。竜に捧げる舞はここから来たんだろう」

 

「不死斬りは?」

 

「今から話すよ。竜が狂った事によって、様々な弊害が生じた。京の水の異変、竜咳、そして、竜胤

 

「竜胤・・・」

 

「そして始まったのが、拝涙の儀。竜胤の御子と、その従者による、桜竜を鎮める儀式。それに不死斬りは使われた。拝涙は儀式に、開門は御子と従者の処理に」

 

「・・・処理、だと?」

 

「一度儀式を終わらせた御子は用済み。開門の供物として斬り殺し、従者の命を捧げる事で、新たな竜胤の御子を産み出す。・・・正直言って、胸糞悪い」

 

「拝涙によって得た桜竜の涙は、都人の為。竜胤は手段でしかないのさ」

 

 

 

 

此処で作者から纏めを。

 

・平安末期、桜竜派の都人と、色鯉派の淤加美の戦争が巻き起こった。

・都人対淤加美は、都人の敗北と追放によって幕を下ろし、桜竜と色鯉の争いは、桜竜が大きな傷を、色鯉が命を失うことで決着した。

・その後、傷を負った桜竜は暴走し、水質が大きく変化。飲んだ者の精気を奪う様に。

・京の水に依存した都人はその影響を大きく受け、淤加美は色鯉の為にも竜を鎮めようとした。

・竜咳が発生。葦名にて猛威をふるう。

・竜胤の御子が誕生。契りを結んだ従者と共に、拝涙の儀を始める。

 

竜咳、京の水は同様に、桜竜による精気の奪取によって起こった異常。

それを防ぐ為に拝涙の儀を始め、桜竜が奪った精気を返還した。

 

拝涙の儀

・竜胤の御子が誕生。

・従者を選び、不死の契りを結ぶ。

・不死斬り・拝涙を得る。

・仙郷に乗り込み、桜竜及び白木の翁と戦う。戦闘と言うより、竜に捧げる舞。(儀式的意味を多分に含む)

・涙を得て、源の宮に戻る。

・涙の力を貴族に返還。

・不死斬り・開門によって、御子が殺される。

・その血を浴びた刀で従者を斬り殺す。

・新たな竜胤の御子が産まれる。

 

新たな御子は、同時に前世の御子でもあります。

一度殺され黄泉に行った御子を、再び呼び戻す。

その繰り返し。

これが本当なら、腐ってます。

 

 

 

 

「それが続く事数百年。平安、鎌倉、室町と過ぎようと、それは変わらなかった。しかし室町時代末期、恐らく応仁の乱より少し前、不死斬りが下界へと落ちる。誰かが捨てたのか、それとも間違えたのか。それは分からない。ただ、その刀は仙峯寺に回収され、拝涙は本堂、そして奥の院に、開門は五重塔の不動明王像に収められた。そ片方は秘匿され、もう片方は怨嗟をその刀身に纏う様になったとさ」

 

「おしまい。・・・これが葦名の歴史。どうだった?」

 

「・・・九郎様の行いは、俺の今の目標は、どうなのだ?」

 

「正しい行いだと思う。少なくとも、葦名の人達と竜胤の御子にとっては」

 

「・・・そうか」

 

 

 


 

 

 

数日後、葦名城に戻った狼は、出立の準備をしていた。

 

「行くのか」

 

話しかけてきたのは弦一郎。

鎧も弓もつけず、ひたすら太刀を振っていたのを狼は覚えている。

 

「ああ」

 

「・・・為すべき事は、見つかったか?」

 

「・・・分からぬ」

 

「そうか」

 

静かな二人。

片方は為すべき事見失い、片方は為すべきことを為せないでいる。

そんな二人の背後から、声が掛かった。

 

「隻狼よ。儂らを外に連れて行けるか?」

 

「!?何故ご存知で・・・」

 

まだ誰にも現代日本の存在を伝えていない筈。

 

「御子からの言伝じゃよ」

 

隻狼、お主も何かが分かるやもしれぬぞ。

そう一心は告げる。

 

「・・・御意」

 

どうなるかは分からない。

ただ、変化が欲しい。

その一心で、狼は頷いた。

 

 




葦名編はこれにて一時終了です。
此処から高専編、懐玉編を入れ、再び葦名編に戻る予定です。

今回の章の目的は、葦名の設定を固めたかったのと、影の異変と真実、狼さんの迷いのきっかけです。
不死断ち及び人返りは、明らかに別ルートです。
本来のものが正しいかはさておき、それを歪めてしまいました。
そして今も実行しようとしています。
この歪みは、竜胤を断つことは本当に正しいのか。
狼さんは迷い始めました。

それが伝わっていれば、幸いです。
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