葦名廻戦   作:朝槿

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昔行ったとある和食屋を思い出して書きました。
特に気に入った数品を選びました。
良い所は米も美味しいんですよね。
又今度行きたくなりました。
まあ、高いから無理なんですけどね。


歓迎会

件の任務の数日後。

狼は高専内の医務室で目を覚ました。

 

「・・・」

 

夢の中で影と対話し、盛大に叱られた。

物凄く心配していた様で、余りの怒り様に呆けていたら、更に怒られてしまった。

そのお陰で何故かは把握したが、先日は何処か可笑しかった。

御霊降ろしの重ねがけは、過去一番の無茶だろう。

 

(あの炎・・・)

 

寝起きで怠く、少し空腹だが、体は万全な状態。

しかし、左手が少々疼く。

まるで燃えているように。

 

「起きてた?」

 

左手を見つめていた狼に声がかかる。

振り向くと、林檎を切っている硝子がいた。

 

「皮は?」

 

「?」

 

「いや林檎の」

 

「・・・そのままで良い」

 

林檎の皮には栄養分が多く含まれているらしい。

それに皮の食感も嫌いではなかった。

 

シャク、シャク。

 

林檎を食べる音が医務室に響く。

 

(甘い・・・)

 

味覚は真っ当なようだ。

かつて修羅へと堕ちた時、何を食べても味覚は狂っていた。

肉を食べれば甘く、木の実は塩辛い。

川の水は苦く、魚は酸っぱかった。

 

そんな事を考えながら林檎を食べていると、いくつかの足音が聞こえた。

数秒後、息を切らした悟と傑が部屋に滑り込んできた。

 

「すまない硝子、匿ってくれ」

 

「夜蛾センに追われてるんだよ・・・って狼牙起きてる!?」

 

入ってきた二人はまずベットを見て、次に硝子を確認し、そしてベットを二度見した。

 

「・・・ああ」

 

「おはよう。久しぶりだね」

 

「何で言ってくれねーんだよ」

 

「いやさっき目覚めたばっかだし。寝起きにバカの大声はキツいでしょ」

 

「助かる」

 

「え、それどう言う・・・」

 

「悟」

 

ぎくっ。

 

「ガッデム!」

 

ゴンッ!

 

凄まじい拳骨。

拝み連拳に匹敵する衝撃が悟の脳天に振り下ろされた。

 

床に倒れ伏す悟。

傑はいつの間にかベットの反対側に隠れていた。

 

「硝子、傑は知らないか?」

 

「知りませーん」

 

「そうか。・・・薄井、大丈夫か」

 

「はい」

 

「すまなかったな。ちゃんと等級を伝えられなくて」

 

「・・・いえ」

 

今回の気絶は夜蛾の所為ではない。

あのままでも十分に祓えた。

が、黒い炎に触れたせいで全てが狂った。

欲をかいて忍殺を取りに行った狼の責任だ。

 

そう伝える。

 

「そうか。まずはちゃんと休め。任務はしっかり成功だ」

 

そう言って夜蛾は去っていった。

それと同時に悟と傑は動き出す。

 

「硝子、礼を言うよ」

 

「1カートン」

 

「それは高くないかい!?」

 

「イテテ・・・狼牙、動ける?」

 

「ああ。少し慣らしはいるが、任務には十分・・・」

 

「違ぇよ!」

 

「この前出来なかった歓迎会を今夜しようと思っててね」

 

「あの補助監督さんが良い店を教えてくれたよ」

 

「・・・有難い」

 

気にしないといけない事は山の様にある。

だが今は少し、休んでも良いだろう。

影も言っていた。

 

 

 

 

「かんぱ〜い!」

 

数時間後、とある店で四人の学生は歓迎会を始めていた。

 

「「「乾杯」」」

 

「おいおい、三人ともテンション低くな〜い?」

 

「悟の所為だよ。何で夕食前にクレープ食べようとするんだ・・・」

 

「テンション上げるとお酒飲みたくなるから自制中」

 

「素だ」

 

区分としては居酒屋だが、少々豪華な一品料理が食べれる和食店。

メニューの料理はどれも一千円を超えている。

四人はそれぞれ気になる一品を頼み始めた。

 

 

「!!これ美味」

 

悟が頼んだのは大根の出汁餡掛け。

餡は中華料理の様に甘くなく、出汁が仄かに感じられる。

それが大根に丁度良い。

厚揚げ豆腐には更に染み込んでいて、噛めば噛む程旨味が滲み出る。

高価なモノを食べ慣れた悟でもお気に召すほどだ。

 

 

「・・・お酒欲しい」

 

硝子が選んだのはポテトサラダ。

芋は大きく、野菜がたくさん入っている。

幾ら食べても箸は止まらない。

少しピリッとする辛味も丁度良い。

燻製され凝縮された旨味に、硝子は思わず酒を求めた。

手は注文ボタンへと伸びるが、間一髪で悟に奪われた。

 

 

「やっぱり肉は美味しいね」

 

傑は鶏肉の塩焼きを頼んだ。

鶏肉を塩で焼いただけ。

だが、そのシンプルさが鶏肉のジューシーさを如実に伝える。

添えられた胡椒がこれまた合う。

身に詰まった肉汁に体は米を欲し、手は注文ボタンを探ったが、悟が回収していた所為で届かなかった。

 

 

「・・・」

 

狼は無言で食べ進める。

和食屋ではあるがそれだけではない。

狼が惹かれたのは鶏と茸のグラタン。

洋風料理だが、何処か和風を感じる風味は格別だ。

交互に訪れる食感と旨味には、思わず狼の顔も緩む。

これまた米を欲するが、無下限によって守られた注文ボタンは遠かった。

 

 

「悟?注文ボタンをこちらに渡して貰おうか」

 

「硝子から守ってんだよ!隙あれば酒頼むぞコイツ!」

 

「分かった。だが先ずは米を頼んで貰おうか」

 

「・・・四人前か?傑」

 

「そうだね」

 

「俺らは食べないけど!?」

 

「一人二人前だけど?」

 

傑と狼は不思議そうな顔になる。

当たり前の様に食べるつもりだ。

 

「今度はグラタンを頼もうかな」

 

「・・・では鶏肉を」

 

「もう全部頼んでやるよ!」

 

「日本酒」

 

「「「それは駄目だ」」」

 

 

 

 

天国の様な時間もいつかは終わり告げる。

つまり、満腹だ。

 

元々少食の硝子が一番に、先にクレープを食べた悟が二番、久しぶりの食事の狼は三番に満腹に達した。

そして傑は上手い事食べ終え、満足そうに店を出た。

ちなみに会計は万を余裕で超えていた。

少し軽くなった財布を持つ悟は、どこか悲しい目をしていたと言う。

 

建物を壊すのが悪い。

 

 

さて、四人は何故か件の屋敷に来ていた。

明日取り壊しと言う事で、狼が来たいと言ったのだ。

 

「何で今来たのさ」

 

「忘れ物?」

 

「・・・いや、違う」

 

屋敷内にこっそり入り、地下室へと向かう四人。

階段を降り切った狼は、悟に頼む。

 

「床を」

 

「りょーかい」

 

壊された床下には、ひとつの墓があった。

 

「!!」

 

身構えた傑を悟は押し留め、外に連れ出した。

それを後目に狼はその墓に向かって正座する。

そして術式を発動させた。

 

 

【神ふぶき】

 

 

桜の花びらにも見える神ふぶき。

それを墓に振りかける。

 

墓は紅紫に光り、何かが薄らと消えて行く。

それを見届け、狼は立ち上がった。

 

「もう良いの?」

 

「ああ」

 

「んじゃ、行こっか」

 

そう言って、狼と硝子は先に出ていた二人の方へと歩いて行った。

 

 

 

 

四人が去った墓。

墓石に振り掛けられた紫色の神ふぶき。

消えるまでの一瞬、それは白く光り輝いた。

 

 

 

 

翌日、体と術式を慣らしていた狼は、神ふぶきがいつも異なっていることに気づく。

紫の光だったソレは、薄紅色の炎となっていた。




必要だったか分からない神ふぶきの強化です。
左腕を焼いた炎によって、狼さんも多少は事情を把握しています。
戦国の怨嗟とは違いますが、似ている苦しみです。
共感・・・いや、どちらかと言うと忍びの慈悲でしょう。
せめてもの供え。
それに対しての返礼が、神ふぶきを更に強力で清浄なものとしました。


この前言った他の小説を調整しようと思っているので、少し次の投稿は開くと思います。
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