葦名廻戦   作:朝槿

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狼さん、影の体に憑依したと思っているのですが、実際は違います。
今は書きませんが、狼さんの術式に深く関わってきますので、待ってて下さい。

追記:10/21 少し修正。特殊タグの使い方が分からぬ(切実)
フォントとか多すぎ。


狼の武器

狼の夢の中、心象世界では、影が説明を始めようとしていた。

 

「狼さんの術式。僕が()()限りだと、後天的な天与呪縛方式、つまり僕と同じ様な感じだね」

 

代償があると遠回しに言われ、早速不安になってきた狼だったが、無言で続きを促す。

 

「自分で目覚めさせる……と言うのが今の君には出来ないから、僕が発動させるよ。準備、出来たかな?」

 

「……ああ、頼む」

 

その問いかけに狼は即時に承諾する。

影もそれに頷き、目を閉じた。

 

大日如来の名の元に、かの者の力を現し賜え

 

そう呟き、目を見開く。

 

術式順転 神眼

 

一瞬、体を何かがすり抜けて行った感覚。

そして余りにも微細だが、狼は何かに見られている様な感覚に陥る。

 

「……何をした?」

 

「ちょっと待っててね……よし!おしまい」

 

今度は更に不思議な感触。

体の中にもう一つ新たな臓器が生まれ、身体中に何かが巡っている様な感覚を、狼は味わった。

 

「どう?」

 

「……力が巡っている……?」

 

「やっぱり凄いね。知覚できるほど量あるんだ」

 

「何故……おい、目が…!」

 

影は手で隠しているが、よく見ると目から血が流れている。

 

「あ、大丈夫大丈夫。君と僕は同じ体を持っているから、君の中のスイッチを切り替えただけ。さ、やってみて!」

 

「少し休んでおけ……」

 

無理をした影を見て若干申し訳なく思うが、言われた通りに術式を起動させる。

 

血液ではない、体内に巡るもう一つの流れ。

呪力を認識しろ、回せ、使え。

 

「……血は巡り、竜胤は成る

 

 

「竜界・廻胤忍術」

 

 

頭に浮かぶ言葉。

口からするりと流れ出た。

 

御霊下ろし 阿攻

 

瞬間、体の奥底から力が湧き出で、体が傷みだす。

困惑する狼だったが、回復した影に話しかけられ、力を止めた。

 

「ふ〜ん、成程。前世の力を扱う事が出来る様だね。うん、強い。経験が力になってる」

 

「………」

 

狼がその言葉で思い出したのは、嘗ての最強。

全てを飲み込み、死ぬ間際まで磨いた剣術は恐るべきものだった。

 

「……やっぱり君も体内だけか……いや、逆に君にはこれで良いのかもしれないね」

 

「……?どう言う意味だ」

 

狼の問いに対し、影は指をさして告げる。

 

「君はもう既に一つの完成を迎えている。なら新たな要素はそれを強化する為に使うべきじゃないかい?」

 

「……そうか?」

 

「術式の内容から察するに、身体訓練と並行して行えるよ」

 

狼の何より武器はその技、力、そして経験だ。

それを更に強化するべきだと影は言う。

 

「影の言う通りかも知れぬ……」

 

「でしょ?」

 

同意を得られてご満悦な影を目にし、少し表情が緩んだ狼だった。

 

 

 

 

「良い?此処からはどういう風に生きて行くかの話だよ」

 

「ああ、頼む」

 

二人は床に座り、真剣な表情で話し合いを始める。

 

「まず君の現状だけど、体、術式、呪力は全て君のものだ。だけど、意識は()()()()()()()()

 

「……そうだな」

 

「才能はあるし、君は強い。全ては此処からどれだけ鍛え上げれるかだ。僕は普段心象世界に居るから、寝てる時にしか会えないと思うけど、ある程度なら話す事が出来る。どうしようもなかったら聞いて」

 

「承知した」

 

「そして副作用についてだけど……一切気にしなくていい」

 

「それは……何故だ?」

 

当然の疑問。

体外に放出出来ない、と言う縛りだけでなく、単純だが、途轍もなく危険な副作用もあった筈。

 

「元来僕の術式の縛りは()()()()()()()()()。これは君も同じ。こっちはこれから練習して行く中でどうにか出来る」

 

「其処で副作用。脳が焼き切れる程の知識は僕が受け持つ。大丈夫、君のお陰で脳は何倍も強化されたし、此処では大きな苦痛はしない」

 

「……ああ、わかった」

 

「次に呪力だけど、まあ出力は問題ないね。密度やばいし。体内で扱う事には君には一日どころでは無いアドバンテージがある。使う度に苦痛が走ると思うけど、其処は耐えてくれ」

 

「次に注意点。体内で回している分には感知出来ないけど、体内の呪力を感知出来る手段があるなら一発でバレる。

外からは呪力総量は普通に見えるけど、実際は途轍もない密度だから。

恐らくだけど、ひたすら回し続ける必要があると思う」

 

呪力を流す度に苦痛が走るが、周りから隠す為には呪力を四六中回し続けなくてはならない。

大きなストレスになるだろうが、

 

「承った」

 

狼は其れを受け入れた。

 

 

「………」

 

それを見た影は表情を暗くして、俯く。

 

「……どうした?」

 

「……本当にごめんね。不死断ちを成し遂げたと言うのに、君達を苦労させて。

僕の術式の所為で竜胤が目覚め、君を引き寄せてしまった」

 

「……こんな事なら……」

 

 

“産まれなければ良かったのに“

 

 

ガシッ!

 

そう言おうとした影を、狼は肩を掴んで止める。

驚いて顔を上げた影と目を合わせ、狼は告げる。

 

「……それ以上言うな」

 

「……ごめん」

 

暗い表情をしている影。

狼には、その表情がどうしても嘗ての主人に重なって見えてしまった。

 

「……お前の所為では無い。悪いのは完全に断ち切れなかった俺の所為だ」

 

「それは……」

 

せめて、目の前の少年にだけはこの様な顔をして欲しくない。

そう思い、狼は慣れないながらも必死に言葉を紡ぐ。

 

「……それでも自分の所為だと思いたいなら…」

 

「為すべき事を、為せ」

 

「……影になら、任せられる」

 

その言葉に、影の目には涙が浮かぶ。

狼には想像もできない。

大人を超えた知性を有しているが、まだ幼い、十にも満たない少年が孤独の中で戦っていた苦しみを。

自分が全てを尽くした行動に、彼は一人で辿り着いたのだ。

 

「……お前の行いは、決してあの時代の強者に負けはしない」

 

「……これからも頼む」

 

狼の言葉に目を見開き、涙を乱暴に拭う。

前を真っ直ぐに見据え、影は声を張り上げた。

 

「……うん!」

 

 

 

 

数分後、狼は似合わない言葉を言った事に、影は泣き出してしまった事に内心身悶えしていた。

 

「……お、狼さん?だ、大丈夫?」

 

「…………大丈夫だ、問題ない」

 

「その台詞、全然信用できないんだけど……」

 

 

少しして落ち着いた二人は話を再開させる。

 

「一つ大事な事を言い忘れてたんだけど、この竜胤、()()()()()()()()()()

 

「……他に御子がいると?」

 

「いや、僕には分からない。そもそも僕達だけなのか、それとも()()()()()()()()()()()()()()()

 

……怪しい。影の術式ならば並大抵のものは見通せる筈。

 

「……方法は?」

 

「あるには有る。だけど途轍もない時間と労力が掛かる」

 

影でさえあまり取りたくない手段。それは……

 

「世界全域を虱潰しに視まくる」

 

まさかのゴリ押しだった。




祝詞及び詠唱のフォント《font:49》

狼さん、影くんと出会った事で大分喋る様になりました。
そもそも影くん、今作一の功労者です。
彼が居なければ後々やばい事になるので。
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