葦名廻戦   作:朝槿

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前回の補足

影の最大のデメリットはオーバーヒートなんですよ。途轍もない密度の呪力に途轍もないリターン。
残念ながら影の体は耐えれませんでした。
でも狼さん、何より体内に関しては他の術師の何倍もの適性と慣れがあります。
逆に狼さんのデメリットである知識や経験、索敵。
プロの忍びですが、術式で隠れられたら見つけるのには一苦労かかります。(無理ではない)
彼初見に弱いですから。
なので、戦闘の狼とサポートの影は相性がとても良いんですね。


邂逅

唯一の方法がゴリ押し。

そう知った狼は呆れてため息をつく。

 

「……他は?」

 

「ない。……第一隠れてるのが悪いんだよ!何で竜胤授けたのに身を隠すのさ!」

 

勝手に竜胤を授け、姿をくらまし情報は一切ない。

流石の影もキレる。

 

「知らぬ。……だが、怪しい」

 

「そうだね……取り敢えず、日本から探す事にするよ」

 

此処で一つ問題が。

 

「……連絡は?」

 

「……あ。無理ですね、はい」

 

流石に日本全土一斉調査は負担が大きいらしく、数年はかかるそうだ。

そしてその間、狼は影と接触する事が出来なくなる。

 

「う〜ん……僕は大丈夫だから、狼さんには【真眼】を預けるよ」

 

「神眼とは何が違う?」

 

「こっちは事象限定。あらゆる情報の大半を視認できる様になる。まあ負担が大きいから使い所は間違えない様に」

 

「‥…承知した」

 

「後は……」

 

影は顳顬をトントンと叩きながら思考する。

 

「そうだ!これからの目標なんだけど、取り敢えず強くなること。で、高校生になる迄はできるだけ力は隠しておいて方が良い。正確には高専に入学するまでは」

 

「……何故だ?」

 

「敵は少ない方がいい。それに、忍びが大々的に動くのも違くない?」

 

「……確かに」

 

若干こじつけの様な気もするが……

狼は気にしない事にした。

 

 

 

 

「ん?……ああ、そろそろ時間だね」

 

狼とこれからについて話していた影だったが、何かに気づく。

 

「目覚めの時間だよ。向こうは頼んだからね、相棒」

 

「……相棒……」

 

突然そう言われ、目を瞬かせる狼。

 

「ありゃ、嫌だった?」

 

前世では、主人と従者、義父と息子、師と弟子、敵と敵でしか無かった。

友人は愚か、まともに話せる人は悉く死んでしまう。

今までそんな風に呼ばれたことは無かったのだ。

しかし……

 

「いや……悪くない」

 

不思議と嫌悪感は湧かなかった。

 

「それは良かった」

 

影も、そんな狼を見て、ニヤリと笑った。

 

 

 


 

 

 

目が覚める。

 

「此処は……病室、だったか」

 

体を起こした狼は、掌を掲げ見つめる。

 

前世で何回も繰り返した苦難。

自らの主人の為、命を賭けた人生だったが、今世は違う。

主人はもうこの世にいない。

それなのに自分だけ生きている。

 

「九郎様は何と言うだろうか……」

 

ああ、そんな事深く考えなくても分かる。

彼なら、自分の主人なら、『精一杯生きよ!』と笑って言うだろう。

 

そしてもう一人の自分。

彼の為にも、竜胤は断たねばならぬ。

 

『頼んだよ、相棒』

 

狼は拳を握り締め、呟く。

 

「任された」

 

今此処に、竜胤を断つと、狼は再び主人に誓った。

 

 

 


 

 

 

数日後。

 

無事に退院した狼は、術式の暴走で性格が変わったと言う事で事を納めた。

嘘をついている様で若干申し訳ないが、仕方がない事だろう。

 

自宅という名の屋敷に帰った狼だが、その豪勢さに面食らったり、家人の反応から影を誇らしく思ったりと、忙しい1日だった。

両親は共に仕事があり、一緒に祝えない事に申し訳なさそうにしていたが、狼には仕事を中断してまで自分を迎えに来てくれただけで充分だった。

 

そんなこんなで慣れない歓待を受け、自室についた狼はやっとの事で一息つく。

 

「……本か」

 

広く豪勢な(前世比)自室で慣れない物に触れ、少し興奮していた狼だが、一旦落ち着いて本棚を漁る。

 

「……これは……」

 

若干呆れた声色の狼。

影は7歳、それも術式発現前であり、大人の様な智慧はまだ得ていなかった筈だが、本棚には様々な種類の事典や学術書がぎっしりと詰め込まれている。

一般の書店に売っているものだけではなく、呪術師関連の物もある。

記憶から見るに、影は一般の方は全て読んだ様だ。

 

天才とはこう言う事を言うのだろうか、と思うと同時に、自分が読まなければいけない事に気づき気を重くする。

何とか自分を奮い立たせ、端から読み始める狼だった。

 

 

 

 

数時間後。

 

拳程もある分厚さの巻物を一つ読み終えた狼は、思わず地面に突っ伏す。

超人的な脳を持つこの体だから良いものを、普通の5歳児には文字が入ってこないだろう。

 

--仙峯寺の両刃使いより厳しい戦いだった……

 

頭を休めようと目を閉じていると、廊下より何かの気配と足音を察知する。

それと同時に、その正体に違和感を覚えた。

 

--何だ……この違和感は?

 

気配は殺されているのに、足音は大きい。

まるでわざと鳴らしているかの様なチグハグさ。

 

身構えた狼だったが、扉より入ってきた者の姿を見て固まる。

 

「おお、狼牙よ!帰ったか!大丈夫か?」

 

「!?」

 

「ふむ、どうした?」

 

何故こんな所に居るのだろうか。

 

「………義父上…!?」

 

目の前に立つ男。

少し出立ちは異なるものの、間違いなく自分を育てた義父、梟だった。




遂に梟さん登場!


補足:これからの目標

・影が竜胤関係の手掛かりを見つけるのを待つ。
・鍛錬をすること。(まずは前世を目標に)
・知見を広げる。
《星核呪界》による知識は全て影が扱っているので、実際は前世+呪力に関する知識(基礎中の基礎)しかない。
最初に共有された知識は、同意の上で殆どを記憶から消した。

狼さんは自分以外に知り合い、それも梟パパがいる事にビビってます。
これ最悪他の人も来てるくね?(意訳)みたいな。
梟パパの方は、狼似の甥が気絶したことに心配して見に来たら、なんか狼になってる〜!って言う事で驚いてますね。

呪術書ですけど、まあ教科書みたいなものです。
簡単なコツ的なものが載っています。
普通は使わないんですけど、影くん暇だったんで読もうと思ってた。
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