嘘なし設定
彼は葦名での一生を八周しました。
(苦難、厄憑については四周目にて行いました)
狼はナニカによって、人帰りルートに辿り着くまでひたすら人生を繰り返していたのです。
此処の順番はどうでもいいんですが、恐らく修羅、不死断ち、帰郷、修羅、修羅、不死断ち、不死断ち、人帰りみたいな。
体と記憶はリセットされ、魂のみが残りました。
まあ一度習得しているので、流派技は習得し直すの早かったですけどね。
ある程度規則性があるのは、直感でその選択肢を選ばなかったからです。
と言うわけで、狼さんは八周分の人生分、魂に怨嗟が積もっています。
影も怨嗟由来の呪力を持っているのですが、それは狼の魂に引っ張られた、と言うのが”一つの“要因です。
え?他にあるのかって?安心しろ、いつか話す。
ん?狼の魂は術式発現時に初めて定着したんじゃないのかって?それも待っててくれよ。
追記:10/16 「御霊降ろし、忍び義手、各種瓢箪」から忍び義手を除きました。まだ左手あるからね。
修羅。
自らがかつて堕ちた存在。
人を斬ることに、殺める事自体に悦びを見出してしまう存在。
それこそが修羅。
本来、敵を殺す事はあくまで手段であり、それを目的にする事は断じて赦されない。
九郎様より賜った楔丸の名や、忍びの掟にもそれが現れている。
『忍びは人を殺すが定めなれど、一握の慈悲だけは、捨ててはならぬ…』
その一握りの慈悲さえ捨て、際限もなく殺し続けた修羅……いや、自分だ。
しかし、自らの修羅を斬り、九郎様の人帰りを為し、仏師殿は介錯した。
何故今、我が身に怨嗟が降り積もっているのか。
考えるまでもない。
怨嗟の先。その炎は抑える事はできても、決して消える事はない。
再び産まれ、この世に戦の苦しみが、憎しみが…‥怨嗟が戻ってきた。
幾千、幾万と斬り続けた自分が、祓えると本当に思っていたのか?
自分の愚かさが余りにも許せなかった。
今自分にできる事は、自らが受け皿となるだけ。
溜まった怨嗟は晴らし続ける。呪霊は祓う。
そして再び、竜胤を断つ。
ああ、分かった。
「それが……俺の為すべき事だ」
呪力の本質は嫉妬、怒り、苦しみ、悲しみ、そして憎しみ。
悪い感情は全てを呪い、呪霊を産む。
ああ、どうしようもないのだ。
怨嗟の炎は再び日ノ本に降りかかった。
現代の悪感情よりも更に純粋で、危険で、過酷だ。
再び戦乱が巻き起こり、国は燃え上がるかもしれない。
だとしても、どうしようも、ないのだ。
中一になった狼は、学校に通いつつ任務を受ける。
そんな生活をしながら、更に過酷な鍛錬を積む様になった。
余裕があれば、時間は全て鍛錬に費やした。
その生活に次第に術式も成長して行き、現では術式と技を、夢の中ではかつての強者達と闘う。
透も桜も、梟でさえ狼には干渉できなかった。
睡眠、食事は十分にとり、成績は学年トップ。
止めたかった。
しかし彼らには出来なかった。
透は忙しくほぼ家には居られない。
桜が幾ら声を掛けようとも、狼は申し訳なさそうにしてはぐらかす。
梟には面と向かってこう告げた。
『為すべきことを、為すためです』
狼を止める事は出来ない。言ったところで、止まらないのだ。
狼は強くなり続け、しかし心は確かにすり減っていた。
◇
そんなある夜。
鍛錬を終え風呂に入り、軽く暗記科目を勉強して床に入った狼。
夢の中でいつも通り類稀な強者達と闘おうとする狼だったが、その手を誰かが掴む。
「そんなに急ぐ事もないよ?相棒」
振り返った狼の額を突いたのは、数年間一切姿を見せなかった相棒、影だった。
◇
「ふむ…‥怨嗟ね。とても厄介だ」
影に悩みを全て打ち明けた狼。
彼は悩んでいた。
怨嗟は決して晴れることは無い。
一時的に戦は終結し、葦名が滅び竜胤は断たれた。
しかし、再び竜胤は復活し、怨嗟は日ノ本に振り積もろうとしている。
「う〜ん……取り敢えず整理しよっか」
「現在僕たちが直面している問題。
一つ、竜胤。僕たちに竜胤を授けたナニカを見つけ出し、断つこと」
「二つ、怨嗟。恐らく狼さんの魂に積もり積もった怨嗟が現代に溢れ出した。これに関してはどうしようも無い。恐らく竜胤に関わる事だから、怨嗟の鬼みたいなのが現れたら出来るだけ狼さんが斬って」
「三つ、呪術界。上層部が腐ってて、薄井家がそれを嫌っているのは知っているよね?
でも狼さんは高専に入らないと行けないし、其処で必ず怨嗟についてバレる。秘匿死刑なんかなったら竜胤もバレてはい、おしまい」
「……どうすれば良いのだ……」
思わず狼は苦悶の声を洩らす。
「取り敢えず!取り敢えずだけど、竜胤を主目的に。そして怨嗟関係なんだけど、狼さん、呑まれてない?」
「大丈夫だ」
「……それはよかった」
(狼さん自身の感情が其処まで揺さぶられてないからね。予想通り。だけど……)
これからどの様な事態に直面して行くか、誰にも分からないのである。
しかし影には一つだけ言える事があった。
(恐らく強くなればなる程、怨嗟は身を焦がし、抑えきれなくなる。今はまだ黒閃も反転も経験してないけど、核心に触れれば……)
最悪、再び修羅になる。
そうすれば、誰にも殺されないだろう。
不死斬りの行方は分からず、恐らく回生のデメリットははるかに重い。
一瞬で修羅から漏れ出す怨嗟は伝播し、日ノ本は愚か、世界は戦火に包まれる。
影は其処まで読みきっていた。
「……先ずは強くなる事。せめて高校入学までに全盛期までは到達する必要がある。術式の発展はそれからでいい。
ひたすら呪力を回して、術式順転以外は自由に使える様に」
「承知した」
「後は……しっかり休め!」
影はそう狼を叱りつける。
「……休息はとっているが……」
「そうじゃない!……体は休めてても、心は休まってないよ。僕が一番わかってるからね」
「……承知した」
少しは力を抜けと言う事だろう。
結構張り詰めていた自分に気づき、一度息抜きを考える狼だった。
◇
「あ、今どれだけ術式使える?」
単純な疑問だった。
意識がこっちに戻ってきて早々、狼と同期して記憶を受け継ぎ、今の力量は把握した。
しかし、術式の主導権は狼にある為、そこだけは把握してなかった。
「……御霊降ろし、各種瓢箪、神吹雪、形代流し、帰り仏、鬼仏の設置だ」
「うわぁ……大体何でも出来るじゃん」
思わず呆れる影。
全ての利点が大き過ぎる。
強いて言うなら毎回体を痛みが蝕む事が大きな障害となっているが。
「……呪力消費は大きいが、大抵の事は出来る。しかし、油や薬、飴は出せなかった」
「他人には使えないからね」
「それに効果が短い」
「其処をがんばれ」
それはさておき。
「本題に入ろうか」
そう影は語り出そうとするが、それを狼は怪訝に見つめる。
「……忘れたの?竜胤の出元!」
「………!」
すっかり忘れていた狼。
それ程悩みが大きかったのだろうが、影と話した事で幾分か余裕が出来たようだ。
流石に責めるわけには……いや先ずそれの為に鍛えてたのに忘れるとか……大分追い詰められていたのかな。
影は心配しながら怒って睨むと言う高度な芸当をこなしていたが、流石に疲れたのか顔の力を抜く。
「日本全土と一応世界を視たけど……位置的にも怪しい場所があった」
ここ。そう言って影は空間に地図を投影した。
狼は自分の知らない夢の世界の使い方に仰天するが、影が指差した先を見て表情を険しくする。
日本国福島県。
そう、恐らく葦名があった場所だ。
此処に……竜胤の大元が……!
そう狼は地図を睨みつけるが、それを止める影の一言。
「まだ君には行かせないよ?」
せめて中三になってから。
その言葉に気落ちし、何だか久しぶりに体の力が抜けた狼だった。
狼さん、自分のせいで怨嗟が現代に放たれたと知ってショック。
完全な無自覚、事故。
だからこそ狼さんには堪える。
この人譲れない大義があるので、それの為ならその道に心を決めて進みますし、ブレません。
しかし、完全に意図しないものは決断のしようがないんです。
それを見抜いた影くん。
取り敢えず休め!と叫び、休暇を取らせる事にします。
今回の狼さんなんですが、SEKIRO本編最初の井戸の時ぐらいまで追い詰められてました。
なのでこのまま行ってたら途中で壊れていたでしょうね。
今回のまとめ
・狼さんの呪力は怨嗟!だから一般的な悪感情からなる呪力と違って、使う時に怨嗟に焼かれるし、許容量越えると堕ちるし、しかし強力。
・恐らく竜胤と怨嗟は同じものが原因さ!だから竜胤の元の所に行こうぜ!なんだって?もしかしたら葦名!?
・強くなれよ!取り敢え素で前世最盛期を目標に!術式は一旦置いとけ。鍛えるのは体や刀に呪力纏わせるだけで良い。
・狼くんストレスマッハだけど気付いてない?お前はもう少し力を抜きやがれ!(by影くん)
・葦名行きは2年待ちなさい。
あれ…?テスト期間の筈なのに、ノリと勢いで一話書いちゃった……OWATA。
あ、次回は結構飛ばします。