「こんにちは」
ノックもせず突然開かれる扉。トレーナー室に入ってきたのはサイレンススズカだった。彼女は完璧な笑顔でトレーナーに挨拶をする。だがその表情は完璧すぎて逆に不自然だった。
「こんにちは。どうしたんだい?」
そのスズカに対してスペトレは悠然と挨拶を返す。
「少し釘を刺しに来ました。最近ちょっと調子に乗ってるようで」
スズカは変わらず笑顔だ。
「ふむ?君にとやかく言われる筋合いは無いのではないかな?」
「私の親友に手を出しておいて何を言いますか。言いましたよね?変なことしたらタダでは済まさないと」
「はて?恋人同士でかつスペから求められてデートしたのに一体どこにダメな要素が?」
「未成年に手を出してることは犯罪ですよ?」
「それならこの学園は犯罪者の巣窟だな。しかしながら世間はトレーナーとウマ娘の恋愛を容認しているのだ。節度があれば合法なのだよ?」
「ロリコン」
「同性愛者に言われたくないな」
スペトレとスズカはお互い罵り合う。最初こそ笑顔だったが、そのうちに無表情になり、その現場を他の人が見てたら震え上がる光景だった。
「君も暇だなぁ。もうスペは俺の物だ。君に渡すわけないだろ?」
「別にいいです。勝手に持っていくので」
「走ることしか脳が無い脳筋の貴様にそんなこと出来るのかい?」
「では脳筋らしく今すぐ力ずくで奪いましょう。ウマ娘と人カスの違い分からせてあげましょうか?」
「それこそ無理だろう?私を傷つければスペが悲しむ。それに君がやったと知ったら嫌われるからな。君がそんなリスク負うわけない。ブラフもいいが相手は選びたまえよ」
「チッ」
スズカは苦虫を噛み潰したような顔になる。その表情を見て勝ちを確信したスペトレはおもむろにスマホを取り出して操作をする。
スズカのスマホが鳴った。
スズカはスマホを確認するとエアドロップでストレから1枚の写真が送られていた。
それは幸せそうな顔をしているスペシャルウィークの写真だった。
「……これは?」
「いい写真だろ?親友である君では見ることの出来ない、恋人にしか見せない表情だよ」
「……」
スズカのスマホにヒビが入る。
「醜い嫉妬が顔にでてるぞ?」
「……それならお返しにいい写真をあげましょうか」
今度はスペトレのスマホに着信音が鳴る。
スペトレは送られてきた写真を見る。その写真はパジャマ姿の楽しげな笑顔を見せるスペの写真だった。
「これは?」
「スペちゃんと寝る前に撮ったパジャマ姿の写真です」
「今更こんな写真など。撮ろうと思えばいつでも撮れるわ」
スペトレは鼻で笑ってスズカをバカにする。しかしスズカは無表情のままにスペトレに反撃する。
「嘘ですね」
「ほう?」
「貴方は言いましたよね?節度あるお付き合いをしてると。確かに世間はウマ娘との交際を認めていますが、性交渉などの不純異性交遊は認めていません。あくまで学生のおままごとのような恋愛だけです。それを理解し、守ってる貴方なら万が一一線を越える可能性のあるお泊まりは出来ませんよね?つまりこの写真は貴方にとって今は手に入れることの出来ない写真ですよね?」
「……」
「醜い嫉妬が顔に出てますよ?」
完全に立場が逆転していた。
しかし己の優位性が変わってないと言い聞かせてスペトレは深呼吸をして反撃に転じる。
「確かに君の言う通りだ。しかしそれがどうした?あと2年もすれば法的にも問題無くなる。君がそうやってドヤ顔できるのも短い間だけだぞ?」
「あと2年あれば充分ですけど?」
「ぬかせ。スペはノンケだぞ?」
「なら引き込むまでです」
お互い火花を散らす。一触即発の空気だった。
しかしその醜い争うは突如として終わりを告げた。
「お疲れ様ですトレーナーさん!あれ?スズカどうしたんですか?トレーナーさんと仲良かったんですか?」
スペがトレーナー室に元気よく入ってきた。スペはスペトレとスズカという珍しい組み合わせに驚いていた。
「ちょっとスズカちゃんにスペの日頃の生活に関してちょっと聞いてただけだよ」
「ええ、最近間食が多くなって太り気味になってたからその報告をしてたの」
「スズカさん⁉︎それは言わない約束じゃあ〜」
「前にも言ったよな?レースが近いから我慢しなさいって」
「えー、でも夜お腹空くんですよ〜」
「ふふふ」
スペが涙目でスペトレに許しを乞う情けない姿を見て、スズカは満足そうにしていた。
「それではそろそろ帰りますね」
「おう、ありがとな。それじゃ」
「はい、それでは失礼します」
「トレーニング頑張ってください!」
「ありがとう」
去り際にスペトレとスズカは一瞬視線を合わせた。
〈さっさと失せろ〉
〈くたばれ〉
スズカはそのままトレーナー室から出ていった。
スズカが出ていって、邪魔者がいなくなったことを確認したスペはすかさずスペトレに擦り寄る。スペトレはそんなスペの頭を撫でる。
スペはくすぐったそうに目を細めて頭を擦り付ける。
「トレーナーさんの手あったかいです〜」
しばらく撫でて満足したスペトレはスペの頭から手を離した。スペは名残惜しそうにしていた。
「それじゃ、今日もトレーニングしようか」
「はい!」
スペは元気よくグラウンドに向かうために走り出した。
「早く早く!置いてっちゃいますよ?」
「おいおい、待ってくれよ。走られたら追いつけないだろ?」
「えへへ〜、一緒に行きましょ!」
「今度はくっつき過ぎだよ」
そんないかにも恋人同士でしかやらないであろうやり取りをしながら2人はグラウンドに向かった。
この瞬間も彼の思考はスズカに対して優越感を抱き、今度自慢してやろうと考えていたのであった。
なんか突如書きたくなって書きました。
スズカがキャラ崩壊してますが、この子はこういう好きな人の奪い合いをやって欲しいという願望があります。