「本日はトレーナー養成学校に取材に来ました」
「私、テレビ初潜入という事で非常にワクワクしております。それではさっそく中に入って行きたいと思います」
「おはようございます。ようこそお越しくださいました。本日、案内を務めさせていただきます駿川たづなです」
「おはようございます。本日はよろしくお願いします」
「はい。それではまず、簡単な施設案内から始めますね」
「よろしくお願いします」
「この養成学校ではトレーナーを志す者たちの教育機関です。必要最低限の教養はもちろん、ウマ娘の身体的特徴や接し方などの日常生活に関わる所もしっかりと学べる所です」
「さすが全国トップクラスの学校ですね。トレーナーを目指す者からしたら心強いですね」
まず案内されたのは教室だった。教室では未来ある若きトレーナーの卵たちが一生懸命に学んでいる姿が見える。
『ウマ娘は我々人間とは大きく違います。よく世間的には似ている存在と言われていますが、それは違います。その中でも大きな違いはみんなご存知の身体能力です』
「これはなんの授業ですか?」
「これはウマ娘の身体的特徴ですね。私達人間と違う種族だからこそ、正しい知識を身につけてもらうためにこの授業については力を入れております」
「なるほど。ウマ娘のトレーニングが怪我なく効果的に出来るのはこの授業のおかげなんですね」
「それもあります」
「?」
「ウマ娘は身体能力がとても高いです。もし暴れでもしたら被害に遭うのはトレーナーの方です。なので、この授業の目的は正しい対処を行うための授業です」
「え?」
「それでは質問です。貴方はウマ娘が襲ってきたらお互いに怪我なく対処できますか?」
「……いえ、出来ません」
「そうだと思います。多くの人はなす術なくやられてしまうでしょう。それを防ごうと人の身でありながらウマ娘に対抗できる手段を身につける
授業を行ってます」
「知らなかったです。まさかそんな目的があったなんて」
「多くの人が誤解していますが、トレーナーとウマ娘のトラブルは多くの場合はウマ娘側に原因があります。ただでさえ少ないトレーナー達が被害に遭って辞めていくのは何としても防がなくてはいけませんから」
「ウマ娘側に原因?例えば?」
「ちょっとした言い争いから手が出て負傷させるとか、好きなトレーナーを襲って暴行するとかですね」
「……」
「トレーナーをしてるといろいろなトラブルがありますからね。最近はこの学校のおかげで被害は減っているんですよ」
「本当にいい学校だったんですね」
我々は意外な事実に戦慄してしまった。
「それでは次のところへ行きましょう」
「はい」
我々は次にグラウンドに向かった。グラウンドは大きなレース場になっており、我々は年甲斐もなくわくわくしてしまった。
「すごい大きいレース場ですね」
「はい、ここでは本格的な模擬レースが出来ます。たまにトレセンでも使わせてもらっているところですよ」
「トレセン学園の学生も使用するんですか?それは新人トレーナーに嬉しいですね」
レース場の近くに数十人のトレーナーと1人のウマ娘がいた。
「あれは?」
「あれはレース実習ですね」
「レース実習ですか?」
「この実習ではウマ娘の協力で実際のレースでの経験談やウマ娘側の想いを聞いて、生徒側がどういったレース運びを行うか考えます」
「本格的ですね。ウマ娘側の想いも聞いて、実際の適正と鑑みてお互い満足出来る走りを考えるわけですね」
「その通りです。トレーナーとウマ娘はお互い信頼し合ってる仲です。その信頼を築くためには必要不可欠なことです」
『貴方なら私をどう走らせたいですか?』
『終盤で差せるように序盤は足を溜めさせたいと思います』
『採用です!』
『ふぁ⁉︎』
んんん?
「……なんか採用されちゃってますよ?」
「気にしないで下さい。あれは彼女なりの冗談です」
「そ、そうなんですね」
「ですが、たまに本気でトレーナーを探しにくる青田買いを狙う子もいるので一応注意しなくてはいけません」
「そんな子が?」
「やっぱり実力で勝ち上がる世界ですと実力が劣る子はトレーナーに見つけるのは苦労します。彼女達も勝ちたくて必死なので、出来る手段はなんでも使ってきますよ」
「トレーナーの被害の実態を聞いた後だと非常に怖いですね」
「あれ?1人足りませんね?どちらへ?」
「あれ?本当ですね」
私は逸れたスタッフを探すため辺りを見回した。すると少し離れたところにウマ娘と何か話してる姿が見えた。
『ねえねえ!貴方トレーナーに興味ない?才能あると思うんだけど』
『え?そんなことないですよ』
『えー、だって一目見ただけで私の癖を見抜いたんですよ?才能ないなんて嘘ですよ〜』
「なんか捕まってますね」
「あー、もしかしたら御社の社員減ってしまうかも知れませんね」
「えぇ⁉︎それは困りますね」
「一度狙われたら大変ですよ。さっきも言いましたが、彼女達はどんな手段でも使ってきます。彼女達の一定数はレースの戦績で下手に権力やお金持ってますから買収などの行為は割と頻繁に見ますよ。あとはそういった武器が無い子なんかは色仕掛けなんかをやってきます。ウマ娘は成長期に急激に身体が成熟する【本格化】という現象がありますが、そのおかげで子供なのに大人の色香を纏う姿に脳をやられる人が多いみたいです」
「今すぐ止めましょう!」
急いで彼と彼女の元に走り間に割り込んだ。
「探したぞ。さあ仕事に戻るぞ」
『あら?もういってしまうんですか?それではまたお会いしましょう!」
彼女は意外にもあっさり引き下がってくれた。元気よく走っていく後ろ姿を見送り、私は彼に彼女と何を話したのか聞いてみた。
「どんなこと話してたんだ?」
『えーっと、トレーナーにならないかって言われました。給料は今の10倍出しますって」
「10倍⁉︎」
そんなポンと出るもんなの⁉︎
『はい、あとは今度一緒にデートしましょうとも。私のこともっと知ってもらいたいとか』
「相手は学生ですよね?こんな手段使ってくる学生とか私の学生時代では考えられない」
最近の子はどうなってるんだ?
「ちなみにあの子は中等部の子ですね」
駿川さんがボソリと言った。
それを聞いた彼は気まずそうに目を逸らし一言。
『……私はロリコンじゃないですよ?』
「あんな中学生いてたまるか」
私も同じ立場だったら間違いなく浮かれてた。誰も彼を責めることはできない。
「それでは気を取り直して次に行きましょう。もうお昼の時間ですね。次は食堂へ案内します」
「よろしくお願いします」
「ここがこの学校の食堂です。うちの学園は全寮制ですので毎食バランスの良い食事ができるよう、栄養士や調理師が毎日丁寧に手作りしております」
「おお!それは素晴らしいですね。学生達もここでの食事で毎日元気よく活動が出来るわけですね?」
「はい。また他にもメニューには使用した食材や栄養素の記載をしており、学生達に栄養学の知識も身に付けれるようにしております」
「食事の時も学べる環境があるとは!」
「実はこの取り組みは以前とある学生が提案してものなんですよ。学園側も学生の提案はいい勉強になると考え、実際やってみたところ好評でした。それ以来この取り組みは本格的に行われるようになりました。このような環境が出来たのは学生達のひたむきな努力の結果でもあるんですよ?」
「立派なトレーナーになるために学生自ら考え実現しようとし、学園もそれを応援する。非常にいい環境ですね」
「我々教員も学生に教えられることは多いのでお互い日々勉強ですよ」
「さすがは日本一の養成学校です」
「ありがとうございます」
「ところでここの食堂では何か裏話があったりしますか?」
「いえ、ここでは特にそういった話は無いですね。強いていうなら今日みたいにたまにウマ娘が来る日は食堂の食材が底を尽きて数日は食事が質素になる日があるくらいですかね?」
「、まさか食べられる野草とか探したらしてました?」
「よく知ってますね?」
「えぇ……」
冗談だったのに。
「あ、今はそんな事少なくなってますよ?最近は米や野菜を学園で栽培するようになったみたいで前ほど食糧難になってないみたいです」
「、あっ、そうなんですね」
『おい!今日オグリキャップが来てるみたいだぞ‼︎』
『まじかよ!クソ!おい皆んな!今のうちに食べれるだけ食べとけ!』
『また食糧が底を尽きてしまうのか』
『いや、まだ希望はある。次の食材仕入れ日は16日後だが、畑の野菜もあるし、この前飼育してた鶏が産んだ卵もある。それがあれば去年みたいな悲劇は避けれる』
『おい!さっき野菜がおやつ感覚で全部喰われたみたいだぞ‼︎』
『\(^o^)/』
「、阿鼻叫喚ですね」
「運が悪かったみたいですね」
「こうやって彼らの精神が鍛えられていくんですね」
私はトレーナーになれそうになさそうだ。
「これで施設案内は以上となります」
「ありがとうございました」
一通り学園の案内が終わって我々は応接室で休憩をすることにした。
「いや〜、いい体験でした。普段の学園生活の一部を垣間見ることができて感激です」
「こちらこそお礼を言わせて下さい。わたくしどももウマ娘を支える団体として世間の皆様に知ってもらえるいい機会になりました」
『失礼します』
ノックが響き、背の高い学生が中に入ってきた。
『テレビのインタビューの件で来ました』
「協力ありがとうございます。それではこちらへどうぞ」
インタビューする相手も来たので我々はそろそろ次の企画を取り行うことにした。
「それでは次については実際に学園に在籍する学生からお話を聞いてみたいと思います。まず最初は生徒会長の〇〇くんです」
『生徒会長の〇〇です。よろしくお願いします』
「それでは早速質問していきますね。〇〇くんはどうしてトレーナーになろうと思ったんですか?」
『はい、私がトレーナーを目指した理由は、昔ウマ娘のお姉さんがいまして、その子がレースで勝てなくて落ち込んでるのを見て自分がトレーナーになって勝たせたいって思い、トレーナーを目指しました』
「なるほど〜。立派な動機だと思います!」
『そんな立派だなんて、お恥ずかしいことですが、完全に下心でしたね』
「いえいえ、それでもこの狭き門の学園に入れたんですから立派ですよ」
『ありがとうございます』
青年は初々しく照れながら頭を掻いている。青春ですね〜。
「それでは次の質問です。この学園の良いところは何ですか?」
『はい、この学園らトレセンが運営してるということもあり、ウマ娘の皆さまの協力をしてくださる環境が整っており、実戦的に学べる機会が多いことが良いところだと思います』
「ふむふむ」
『また、その時にウマ娘の方からトレーナーのスカウトをしてくれることもあり、トレーナーとしての就職も比較的容易だと思うところも魅力だと思います』
「ああ〜そんな話もたまにあるみたいですね。〇〇君もそんな事があったんですか?」
『私もこの前学園に来たウマ娘の方にスカウトしてくださいまして、現在は担当がいる状態です』
「おお〜、早くも〇〇君の担当が出来たんですね。……ちなみにどんな感じでスカウトされたんですか?」
『聞きたいですか?』
「……テレビで放送出来る範囲でお願いします」
『……えーっと……』
「あっ、いいです。この質問は無しで」
開けてはいけないない箱だった。
「それでは最後に未来のトレーナー達に向けて一言」
『……私達は狩られる側。これだけは忘れないで欲しいです」
「ど、どうもありがとうございました」
ほんと何があったんだ?
予定してた収録が全て終わり、そろそろ会社に戻ることにする。
「ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
「それでは失礼します」
「あっ、忘れてました」
駿川さんはそういった昼間ウマ娘にスカウトされていたスタッフの元へ向かった。
「はい、こちらトレセンの連絡先です。何かあったらここへ来てください」
『え?でも僕はトレーナーになるつもりはないですよ?』
「いえいえ、これはスカウトではありません。避難用です。もし今日の夜からでも身の危険を感じたらここへ来てください」
『はい?』
「下手に外にいるよりトレセンでトレーナーしてる方が安全ですよ」
『……』
明日から新しい人探すか。
ちなみに収録当時は知る由もないが、後日このスタッフはあの時のウマ娘に拉致されかけてトレセンに逃げ込んだあと、トレーナーとして再就職した。
トレーナー達の学校って意外と楽しそうだよね。その分色々大変そうだけど