コアンという森にて山火事を確認し、生存者救出のため家事の現場まで到達した偵察隊と斥候班だったが、遠目から見ていた通りに時既に遅く、集落は壊滅、人影もなく、あるのはただ焼け焦げた瓦礫と
一縷の望みに託した捜索の末、生存者なしと諦め帰りかけていたところで、
生き残っていた少女は冷たい井戸水に長く
(可哀想に……)
ただの災害ならまだしも、悪意のある誰かの手で不条理に故郷と家族を失うのは、並みの苦辛ではない。過去三回の戦闘で部下を失い、その
(しかし……緊張感のないやつらもいたものだな)
なお、自衛官の何人かが彼女を
第一印象は本当にただの少女で、目に見える特徴として耳が長いだけ。意識が回復した後の自分たちへの反応からも、“未知”の存在を警戒していると言うよりは、
リハルドには特に強い反応を示していたところからも、帝国人に対する心象が悪い事が分かり、奇形児への差別は世界を隔てても共通である事に失望せざるを得ない。
「もう時間がないので、その子を連れて調査を再開しましょう」
空を見上げ太陽を観測していた
余談になるが、
特に自衛隊側の
自衛官たちの雑談に自ら交じり、天賦の才のおかげか凄まじい早さで日本語を習得しつつあるリハルドもまた、未知への好奇心の充足と目的達成への一歩を進めるため、テュカに積極的に話題を投げ掛ける様子がみられる。
「あれ、いいんですか?」
兵の一人が自衛官とテュカのやり取りを眺めつつ、まだ低体温症の症状が治りきっていないのに、あんなに喋らせて問題はないのかとぼやく。が、ショックから何とか立ち直った
「あの
言われてみれば確かに、彼女を様子を注視すれば笑顔を浮かべており、声も救出した直後のか細いものとは大幅に変化している。また顔色も良く、順調に快復に向かっているようだ。
兵士の何人かは信じられないと言いたそうな表情で、並走する自衛隊の高機動車の乗員たちを見つめているが、
「他人と
と付け加え、自分は任務に意識を向け直す。時刻は既に夕刻、空を夜の帳が覆い初めている。
第3偵察隊として出動していた
まさか懸念材料の
いくら雨風を凌ぐためにキャンプ用品一式を持たせていると言っても、無事に一夜を明かせる保障もないのに敵地のど真ん中で寝泊まりするなど、何を考えているのか理解できたものではない。
しかも有事の際のストッパーとして同行させた
「
何気なく通りがかりの
「…………戦争って、恐いですねぇ……」
どうやら戦争という非日常が原因らしい。
また視点が代わり、すっかり日が沈み暗くなったイタリカの街。領主の館のバルコニーから、二人の少女が城壁の外を見つめている。
今の特地は昼間の快晴が嘘のように、空は満遍なく黒く分厚い雲で被われ、星は残らず曇り空に隠れており、地上の様子はまるで分からない。
「……敵影はなし、今夜はないかもしれぬな」
うち一人は皇帝モルトの三女、皇女
イタリカまでの道中でも盗賊の姿をちらほら見かけたが、諸王侯連合軍の残党に吸収される形で規模が大きくなった野盗が、今戦っているの相手であると見るべきか。
「だとよろしいのですが……」
もう一人の少女は領主ミュイ・フォルマル。真っ暗闇に隠れた地平を見据え、姿を隠す野盗に怯えている。両親は既に亡く、頼りの義兄は戦で消息を絶ち、義姉も遠い自領に蟄居を命じられている。
今彼女の味方となっているのは、イタリカの町民たちと三千の兵、そしてピニャと薔薇騎士団の面々だけ。正直に言って心
目の前の少女の物憂げな顔に、ピニャもまた一抹の不安を覚えるが、ゆっくりと顔を横に振る。
(いや……私まで弱気になってどうする……シグルドを思い出せっ、ピニャ・コ・ラーダよ!)
こうしている間にも、夜は更けていく。日本、黎國、帝国の三者の代表者たちが、思わぬ出会いを果たす日は近い。