[[2015年 九月下旬 24日\20XX 9月25日]]
早朝。まだ日が浅く、地平線から少し光の筋が見えているだけの時間帯に、
‘……君に“おはよう”って言って メッセージを残して……’
もしも彼の着る服が軍服ではなく、派手な色合いの服であったりラフな衣装であったなら、少し印象も変わるかも知れない。しかし穏やかな口調と柔らかな声色で歌う声が、風に乗って世界中へ届けられているように見えている事に変わりはない。
そして今この状況が、戦時中の敵地であるという現実である事も忘れてはいない。日本時間午前5時40分、開戦から約一ヶ月が経過した特地での夜明けだった。
「やっぱり自衛官になるんじゃなかった、って思っちゃうよなぁ……」
午前6時ちょうどに偵察隊と斥候班の全員が起床し、テントを片付けて朝食を摂っている。朝食とは言っても質素なもので、自衛官は凍った缶詰め入りのレーションを、黎國兵は味噌玉一つと干し
「民を守るために兵が飢える……これもまた不条理だなぁ……」
その様子を見た
特に
(ここまで来てまだ言うとは……)
防衛大学校時代から根性部分に難ありである事は理解していたし、何よりその怠惰な一面とお人好しな性格を矯正し、もう少し真面目な人物にするために介助しているのだが、重要な場面で弱音を吐く癖が全く治っていない事にはさすがに驚きを隠せない。
その上で
「隊長!いい加減弱音を吐くのをやめてください!」
ついに堪忍袋の緒が切れた
いくら料理の味が不味いからと言っても、言葉にしてしまうのは行儀が悪い。という黎國側の兵の指摘が耳に入り、干し
一日の始まりを告げる朝食の時間でこの有り様では、恐らく無事に帰還できはしないだろうと、
予定の移動開始時刻より少し遅れて野営場所から離れ、さらに東へ進む事数時間が過ぎ、平野のど真ん中に草が取り除かれ土がむき出しになった道が現れる。
しかしリハルドの表情は
(……ここからだな)
エンジンがふかされると車輪が回転し、また目的地へと前進を始める。自動車の揺れに慣れたリハルドは空を見上げ、ゆっくりと流れる白い雲を眺めて故郷を、また家族を思う。
「あの、隊長」
そんな中
「帰りは午後になるって伝えてましたけど、この分だと夜中になりそうなんですが…………どうしましょう?」
車内は凍りついた。
正午半刻前。帝国の領域内に入ってから1時間以上が経っても、偵察隊と斥候班一行はお構い無しに、東へ東へとぐんぐん突き進んで行く。
(しかしあのドラゴンとこの乗り物は本当に恐ろしい……)
リハルドは翼を持たないながら驚異的なスタミナを誇る龍と、未知の動力を用いた高機動車の速度に改めて驚嘆していた。アルヌスの付近に
実際に自分でもこの距離を移動するのは疲れたし、往復など御免
アポルムを一日で通り過ぎ、イタリカまでなら三日足らずで到着するような乗り物を、帝国側から見れば掃いて捨てるほどの数運用しているのは確かに脅威そのもの。
帝国の上層部が自分に情報を渡さなかったのも、より深く理解できる。
(だが……少し不穏だな)
しかし嫌な予感がする。自分たちが向かう先を阻む者が現れそうな、そのような気配。事実、一行の進行方向を少し進んだ先には、自分たちと同じ帝国の圧政の被害者たちがいる。
出会うまでの時間はおよそ数分。そして行く手を阻む邪魔者も、すぐそこまで近付いて来ていた。
使用楽曲
keno
おはよう。