帝国領域を襲う災難から逃れるために居住地を離れ、作りかけの道の端まで移動して来た避難民を引き連れ、アポルムまでの道のりを護衛する
災難については道中で避難民の一人から教えられたが、現地では
またこれらのドラゴンの多くは基本肉食であり、個体によっては人すらも平気で襲うばかりか女子供と言った弱者を積極的に食らうという、残忍かつ狡猾な性質のものばかりであると言う。
事実コダ村には生き残った村民が二十人もいなかった、と続くこの気味の悪い話に歯噛みする刹那、
「龍脈の流れが変わった!すぐにこっちに向かって来るぞ!」
驚天動地の大声が兵と避難民の鼓膜を破かんばかりに響き渡り、馬は叫び声に驚いて暴れ出す。着実に何かが近付いていて、こちらに殺意を向けているのも明白。
避難民もパニック状態に
「《
リハルドが怒号をあげ静止を呼び掛けるが、もはや避難民たちの耳には声など聞こえていないに等しく、誰一人として足を止める様子はない。
こうしている間にも、恐らく炎龍と呼ばれるものかそれに近しい存在が、ピンポイントでここへと流れる龍脈を通じて接近している事に変わりはない。
だが
負担をかける事になるが救援要請を出すべきか、全滅覚悟でここにある戦力だけで対処するべきか、
初めて廊門を抜け帝国領域に入った時、
だが無理を通して自分の親征を了承してくれた父母たち、「今回だけ」とは言いながら同行を許容してくれた諸将、後先考えず先鋒として前へ出た自分を守るために戦死した兵たち。
彼らの心労と
「……基地に応援要請」
男
無論失敗は許されないし、追い返せなければ味方に甚大な被害が出かねない。責任は重大極まる。だからこそ、避難民には一刻も早く離れてもらわねばなるまい。
「テュカさんを自動車から降ろして、避難民と一緒にここから離れさせて下さい」
たとえ敵国民であっても彼らは被害者であり被災者、このように自衛隊側に告げるのにも、躊躇はない。
応援要請の指示に従い、真っ先に無線機を手に取った
この臨時連絡には、幕僚たちも将兵も一人として慌てていないものはおらず、非番の人員も一人残らず叩き起こし、文字通り基地を総動員させて対応に当たっている。
基地を駆け回る数多くの自衛官と黎國兵の中には、
「
そして出動の命が下るや否や、誰よりも早く自らの騎禽である鵬鷹の背に飛び乗り、第3偵察隊と東方第二斥候班がまだとどまっているのであろう真東へ向けて飛び立つ。
彼と彼の乗る
幕僚らが出撃準備のみを命じ、これ以上何も言わないのは、得体の知れない敵と直接矛を交えているのは現場の人間のみであり、下手に後方から指示を出して混乱を生じさせないようにするためだ。
特地人が炎龍と呼ぶ者との戦いは、既に始まっている。
こちらを追う炎龍との距離が急激に縮まる中、高機動車三輌を並べ即席の塹壕を掘った陣地で迎撃に臨む日黎連合は、
避難民たちにはもう護衛を附けられるだけの余裕はないため、可能な限り遠くに逃がすため列を整えさせ、味方の情報を伝えた上で南に逸れるアポルムではなく、ほぼ真西のアルヌスへ向かう様に
「本当にすまない。あのエルフの少女がもう少し記憶がはっきりしていたなら、まだマシな迎撃作戦を組めたんだが……」
現役の軍人時代、確実な勝利のための情報収集に余念がなかったリハルドにしてみれば、アルヌスの戦いと言い今回の炎龍迎撃と言い、情報が足りない不利な状況から戦局を
しかも情報不足が原因で大敗を喫しているともなれば、伝承という曖昧な出典や記憶喪失の経験者などは決して信じたいとは思えない。
「黙れうつけもの。敵の弱点を知らぬと言うのはわらわたちとて同じだ」
リハルドの弱音を
だが龍の力で気象操作をした上での攻城戦は例が多いが、如何せん手間がかかる割りに成功率が低い上、今指揮を執っているのは経験の浅い
正直に言って、敵を追い返すどころか全員が生還できるとは考えられない。不安しかない状況の中、頼れるものは少ない。だが、しかし。
「(でも今は……これしかないんだよね)」
やはり速い。と思えば、その影はだんだんと大きくなって行き、遂に形が視認出来る距離に近付いた時、確かに翼を生やした蜥蜴のような生物の姿が見えた。
「ったく、怪獣と戦うのは自衛隊の伝統だけどよっ!」
ぽつりぽつりと雨が降り始めるとともに、炎龍の姿形もはっきりと見えるほど、相互の距離が格段に縮まっており、
「攻撃開始」
雷は確かに直撃し、炎龍を地面に叩きつけたが、動きが
「畜生!ポケモンなら“
余りにも最悪な予想通りな光景に、
そうこうしている間に
しかし、皮膜は翼竜の翼のそれや、プテラノドンの翼の皮膜の復元とは全く異なる強度らしく、鉄の鎧を
「やっぱデケェ!マジ物の化け物だな!」
またも
対して、当然ながら攻撃に気付き、怒りの形相を浮かべてまず
爆発という未知の衝撃に一瞬怯んだ隙を突き、次は急接近した黎國兵による火槍の弾丸が鱗の薄い腹を襲うが、こちらも薄さに反して強度が異常に高く、甲高い音ともに弾かれる。
「チィッ!これだから龍と戦うのは嫌いなんだよ!」
見れば口の中の爆発が相当
『どうするよ
自陣に戻るため部下を引き連れて走り出した
(目立つ外傷はなし、引き返す様子もない……これで打つ手は一つ……!)
分かりきっていた事だが、もはや全力で迎え撃つ他に手段はない。
「総員、陣を放棄!半円状に散開して、敵の