イタリカ残兵二千三百に日黎連合六十を加えた防衛戦は、血で血を洗う激闘を極めており、しかし防衛側優位で展開している。まず目立つのは、小銃と拳銃一丁ずつで一番槍を務める
そして
「リアルにご都合主義的な状況だな……」
その
あの狂気が自分たちに向けられたら、と思うと肝が冷える案件であり、本人には悪いが規則違反は規則違反なので、きっちり始末書を提出して貰わねばなるまい。
「いいわぁっ……ああ……」
死体の数が増え、血が溜まってゆくに連れ、ロゥリィに不吉な事象が起こり始める。とても未成年には見せられない恍惚とした表情で、次々と人が物言わぬ
違和感を覚えた
さらに靈脈には今この場で死んだ野盗や帝国兵のものと思われる霊魂が、浄霊もされないまま流れ、そのままロゥリィの立つ氣孔へと吸い込まれている。
「もぅ……耐えられないわぁ!」
突然叫んだかと思えば、一気に城壁の上へと駆け上がり、そこから一足飛びに東門の戦場へと飛び降り、身の丈と同じ大きさの
彼女から聞いた話では、彼女が仕える神
ならば彼女が武器を持ち、こうして命を奪う事に躊躇がないのも、神の思想に従って行動しているだけであると考えれば納得がいく。しかも帝国のような戦争立国ともなれば、軍神や死神への信仰は自然と強いものになる。
戦場で目立つ人物は二人。狂気的な笑みを浮かべ、返り血で黒い衣装を赤く染めながら、尚も
「……あの小僧は、これから更に苦労するな」
気が動転して判断力が低下しているとは考えられない。防衛側の作戦も挟撃であって包囲ではない。では、何が起きていると言うのか。それは後方を見ればよく分かる。
「あれでは
前方の状況がよく分からないため前に出ようとする後方の兵と、後ろから押されて前に進むしかない中腹の兵で退路が
よくもまあこのようなあくどい策を考えて実行させ、しかも成功させたものだと、リハルドの知略に感心してしまう。本来このような作戦は谷や山のような起伏の大きな地形を使い、正面と後方両方を火や洪水で
また今回のような平地、それも街や城に籠っての防衛戦となれば、一方向から侵入できなければどうしても回り込まれてしまい、挟撃するにも兵に負担がかかる。
ならば敵の数の利を逆に利用し、身動きが出来ない状況を作ればよいという考えに至るのは自然であり、実際に野盗どもは後方に居座る味方と丘に陣取るイタリカ兵、そして突然現れたロゥリィの猛攻のせいで、自分たちを左右から見下ろす丘を越える事さえままならない。
(それに、私の姿を見て怖じ気付いた腰抜けもいるみたいだし……)
そして、上空を飛ぶ龍と
もちろん、歩兵たちも彼らに続いて出撃する。そして同じ頃に北門の門扉が開き、高機動車が軽快なエンジン音を響かせて走り出した。
確実な成功を予想して開始された六度目の攻勢の出鼻を挫かれ、三時間近くも足止めされている野盗の軍勢の残兵はおよそ三千。イタリカ側の増援は巨大なドラゴンを連れており、地形そのものを作り替えるという反則ものの魔法を使うに止まらず、不死身の神官ロゥリィと名将リハルドをも味方につけ、鉄壁の布陣で立ちはだかっている。
東門をいつまでも攻撃し続けるより、兵力が少ないであろう北門と南門から侵入するべきという判断に至るまでに、余りにも時間をかけすぎてしまったのも野盗たちの失敗の一つと言える。
こちらの騎兵は二百にも届かない少数で、しかもそれらを二つに分けて門を目指さなければならない。対して敵の騎兵もまた百以下だが、向こうも温存していたらしく今まで確認できていなかった。
夜襲に
まず北門へと向かっていた一隊はまず
また南門を目標としていた一隊は自分たちに接近する
こちらは逃亡する
斯くしてイタリカ防衛戦は、最終的に日黎の援護を受けながらも、防衛側の勝利で幕を降ろした。