[[2015年 十月上旬 2日\20XX年 10月3日]]
日本国会でへ参考人招致が決定された事は、瞬く間に全世界を駆け巡り、メディアの注目の的となった。〈事件〉での自衛隊出動に始まる特地進出以来、当然だが地球にもたらされる特地に纏わる情報は少なかったが、代わりに黎國の情報が大々的に発信され続けた事で、大使館があらゆる意味で多大な迷惑を
しかし時間が経って自衛隊と黎國軍の調査が進むに連れ、徐々に特地の実情が鮮明となり、極めつけは基地で保護されている現地の避難民からの証言が得られた事で、より信憑性の高い情報が出回るようになる。
この時期の参考人招致は野党側による政権の牽制が主な目的であり、目標は自衛隊の完全撤退、そして代替となる組織をアルヌス基地に駐留させざるを得ない状況を作り、政権交代を確実にする事だろう。
と言うのが幕僚軍儀の判断である。
「野党はいつからこんなに露骨になったんだ……」
しかも名声と同時に普段の素行が悪い事が知れ渡っており、またどの偵察隊よりも先に現地の民間人と接触した
逆に黎國側からは大使の招致が不可能と返答されるとあっさり引き下がり、更なる不興を買っている始末。大使館が散々迷惑を
「しかも同時並行で三国の代表者会談を許したのか」
帝国からの来賓の警護費用にすら難癖をつけ、諸外国の工作員による拉致・暗殺を成功させ、日黎両国に更なる負担を強いる腹積もりである、と読んだ
四方を取り囲む諸外国は全て敵となり、国の内側である議会やメディアにも敵が
そして当然政権側にも問題が山積みである事は留意するべきであり、前政権が〈事件〉以前に積み重ねた汚職や失態だけでも損害は量り知れず、これらに〈事件〉に対する対応が加わった事で有耶無耶になってしまっている。
具体的なものだけでも収贈賄に不正申告の黙認、天下り問題、官僚の公金着服、果ては情報漏洩に至るまで。ここまでの問題を抱えているというのに更に負担がかかっては、政府機能の破綻も時間の問題である。
(さすがにこれでは
上から下まで何もかもが歪んでいる相手であるため、とても味方する気にはなれない。しかし文字通り世界が日本を共通の敵、ただの資源として扱うのならば、せめて黎國だけは日本国、あるいは日本国民の味方でなければならない。
(……これは、本当に困った)
後者の会議には自分が宰相か丞相と同行すればいいのでまだ負担は軽いが、問題はやはり前者。はっきり言って今の日本国会、ひいては非政権側の参議は全く信頼も信用も置けない。
第一に国交開設交渉に派遣した特使の素性をろくに調べもせず、即日で議場に召集するばかりか交渉とは無関係な質疑応答を強行し、結果国交締結に支障を
第二に内閣や報道などを通じて広く知らせ、絶対にやめさせるべき大使館への迷惑行為の数々を、なんと自分たちが所属する政党を支援する団体に実行させているという。
ここまで露骨な外交問題を起こすとは、一体何を考えているのか分かったものではない。だが廊門が開いてから起きた一連の事件を、そして大使館を通じてもたらされる地球諸国、地球の国際情勢を思い出してみれば、朧気ながら予測はつく。
(本当に戦争が嫌なら、
生物は自分が最も安全な立場にいる時に本性を現すと言うが、感情や思考を表現する能力、つまり言語能力が他の生物よりも発達した人間ともなれば特に顕著となる。
一切の宣告なく始まった攻撃への対応、反撃を妨害するのは、まさしく虎視眈々と他人の財産を狙う侵略者、あるいは略奪者の発想そのものである。
〈事件〉からの五日間、非政権側の参議らが日本軍の出動を邪魔したのは、夷狄の攻撃による被害を増やす事で政権側の発言力を弱めた上で、国民の人口を減らして厭戦的な思考に
更に政権奪取に成功してしまえば、後はどこか都合のいい国に廊門そのものなり利権なりを“譲渡”し、責任と負担を国民に押し付け、自分たちは高飛びするだけでいい。
だが当然成功する可能性は限りなく低いため、計画は諸外国の間諜の協力の
(……だからと言って……)
だがこれからいきなり大使受け入れを表明し、ある程度の人数が集まったら突然断交して大使たちを人質にする、という卑劣な手段を実行できるような度胸はない。
そもそも大使館で寝泊まりできる職員の人数などたかが知れている。何より、自国民とはいえ各国の政府もこちらのように、異国に対して下手に出る事はない。
必ずしも信用のおける人材を派遣して来るとは限らないし、救出不可能と分かれば民意を無視してまで切り捨て、こちらに世話を押し付けて来る可能性さえある。
古代の戦乱渦巻く大央華では、今挙げた事が年中行事のように頻発していたのだが、今回はこのように運ぶ訳にはいかないだろう。
「やっぱり家族連れしか手段がないか……」
開戦以来すっかり失われ、ようやく巡って来た貴重な家族団欒の機会。政治の場を利用して我が子と再会するという、非礼極まる外交となるのはまだ数日先の事。