現在地球という舞台において、日本に出現したゲートとそれに
この舞台の主役となるのは、あらゆる国難への対処に追われる最中、諸外国からの干渉と国内での工作により、政治的に混迷を極める日本国。
日本との最大の同盟国であり世界唯一の超大国という立場から、ゲートとゲートに関わるもの全ての独占を目論むアメリカ合衆国。文化的に似通うもう一つの国、黎國との関係構築のため、虎視眈々と機を
国際連合常任理事国に名を
「……黎國から見れば、今の地球の情勢は完全にいじめなんだろうな……」
しかし脇役扱いの中堅国、更にその後塵を拝する途上国と言えども、行動力からして
かつて人類史上最大の帝国を築き、四億人もの人々の命運を思いのままに
超大国の後ろ楯と歴史ある宗教の
「どうして世界はこんな事になったんだよ……」
いずれも諜報、工作を目的とした巨大な国家機関を有しているが、門が開いてからは日本国内での活動を活発化させており、先月来日した特使が帰国する際にはイスラエルからモサド、アメリカはCIA、イギリスのMI6、そしてインドのRAWの工作員が特使団を襲撃している。
さらに捕縛した工作員らの証言から中国国家安全部、韓国国情院、ロシアSVR、北朝鮮など、実に10ヵ国近い国々から特使の拉致、または暗殺を実行する主旨の指示を受けた工作員らが集まっている事が分かり、世界情勢は完全に末期の方向へ向かっているようだ。
現に安保理は、常任理事国全てが利益独占の足掛かりを作るため、あるいは日本への工作を推し進めるために拒否権を連発し、平和維持軍の派遣決議すらも決定できず、組織としてまともに機能していない。
「総理、嘆くのはいいですけど、今は……」
在職して一ヶ月以上が経過してなお業務が減らない事を嘆く総理大臣、
時刻は正午前、イタリカには
名指しで出頭する事になった
「捕虜の代表者は俺とトレアス殿で問題ないだろうが、民間人の代表が心配だな……」
今後の停戦、または講話交渉をより対等な形で進めるためにも、帝国が犯した
と言うより、今この場にいる帝国の政権側の人間は、今のところ皇女のピニャしかいないのだが。しかしこちらが抱える最大の問題は、恐らく野党、そして背後の地球諸国が、日本政府に不利な言質を得るべく招致するのであろう、帝国側の民間人の代表者を誰にするかというもの。
失言も裏切りもしないという強い信頼を置くことができ、かつ日黎連合側に有利で、野党側に不利な言質を握らせる事ができる人物である必要があり、自然に人選は厳正を極める。
しかし、リハルドの発言の直後、早速立候補する者がいた。
「私もニホンへ行く」
危険極まるこの旅の一員となる事に、躊躇なく返答したのはレレイ。まず彼女自身が学者気質であり、地球で発達している科学や帝国では見られない技術への興味が尽きず、アルヌス基地では見られないものを見てみたいという好奇心本意の立候補である。
15歳の少女らしからぬ欲望丸出しのキラキラと輝く目に、
「じゃあ……私も」
次に恐る恐る挙手したのは、意気消沈して一歩も歩こうとしない
黎國側の懸念としては、彼女の耳である。地球、特に日本国民の間では特地と帝国は
また耳が長く尖っている人間の姿をした知的生物は、日本では妖精として表現される事が多いらしいのだが、そのような人間が実在するなら完全に奇形である。
これはミュイの周囲にも狼の獣人や猫の獣人、あるいはゴルゴーンのような使用人がいる事から、教育水準の高さと徹底ぶりがよく分かるのだが、創作文化が盛んな日本ではそうはいかないだろう。
耳の長い人々に纏わる伝承が残る地域出身の者や、その伝承を知る他の地域出身の者ですら、テュカの耳を先天性の奇形と勘違いしたのだ。仮にテュカを擁護する者が現れたとしても、帝国におけるエルフの実態を知ってしまえば、過剰な報復意識の助長に繋がりかねない。
「……石を投げつけられる覚悟があるなら」
最後の一人だが、田舎の集落からの避難民が帝国領内の事情に精通している訳がなく、かと言ってイタリカの町人を適当に引き抜き、日本に連れて行くような事もできない。
そこで本人が妙に
視点は改めて日本に戻り、首相官邸。執務室には短い休憩時間を使って親書への返事を書く
(……人生何があるか分かったもんじゃないな)
決して長くはない内容の親書は挨拶と
だが驚いたのは更に後の内容である。それは、前任の大使と大使館の職員らが
特使団襲撃の一件の後、当事者たちは気にする
(本当に敵にならなくて良かった……)
自衛隊と黎國軍の交流と、大使館からの情報開示が進むに連れて、彼らの住む大央華の実情とその潜在的な危険性が見えてくる。
経済や産業的な視点から見れば、黎國を新たな市場や資源国として魅力的に見えるかも知れないが、政治や軍事の視点から見れば、当然ながら評価は違う。
地球の総人口を大きく上回る数の人口を抱え、その多くが尋常ならざる力を常日頃から扱っているのだ。特に軍人は身体能力も超人的であり、帝国が運用する翼竜やオークなどとは比べ物にならない生体兵器をも
将兵の数でも練度でも、個人毎の身体能力でもこちらを上回る軍隊が、もしも近代兵器を装備していたとしたら、考えるだけでも恐ろしい。