東京観光のため一時解散した来賓と自衛官らのうち、陸士長
(年頃の男の子とは思えないな……)
黎國というマクロな視点から切り取れば、近世以前の技術水準だがところどころ近代的な技術が散見されるが、倫理観が現代の日本とほぼ同等であるという
中学生や高校生と同程度の年齢でありながら、その精神性は大人と大差ないため、先ほどの国会衆院でのやり取りを見なければどうも信じがたい。こうして勉学に励む姿を見ればなおさら、疑問と疑念ばかりが
「そういえば……」
する必要のない事、分かりきっている事であると理解してはいるが、せめて何かしらの会話をしておかなければと声をかければ、
曰く、「なぜここまで日本に協力的に接してくれるのか」と。外交とはある種の賭け事であり、交渉相手の情勢を見て対応を変えるのは常で、現状の日本は〈事件〉被害者の救済や内部問題の対応、帝国への逆侵攻に加え対外政策など、政治的にも戦略的にも多忙かつ不利な立場にある。対して黎國は同じ被害者の立場とはいえ、国民にも政治家にも外国人からもさんざん迷惑をかけられておいて、その反撃は過激ではあるものの極めて限定的かつ正当性があり、日本へはなんの賠償も求めない方針であることは奇妙極まりない。
被害者だからという同情なのか、はたまた別の意図があるのかはわからないが、少なくとも何かしら特別な意味があるのだろうと勘繰るのも自然。
どのみち問いかけるだけ無駄だったと胸を撫で下ろすが、彼は開いたままの本を閉じてさらに続ける。
「理由を調べもしないくせに過去の行為だけを引き合いに出して、いつまでもどこまでも被害者を追い詰めて破滅させるような社会なんて、人間である以上は見過ごす事はできないので」
この発言には「ああ、やっぱりまだ子供なんだな」と少し呆れるが、それでも彼の感性は普通の人間のそれであると再確認できた。実際に戦場で敵兵を殺している間は何とも思わなかった、というより殺していると自覚していても考える余裕はなく、
とはいえ
その一面が特使団として来日した際に露呈しなかったのはまさしく幸運であり、その上で先の参考人質疑の場で某議員が盛大に自爆した事は奇跡に等しく、現在進行形で黎國に対する評価や印象が好転しつつある。もちろんこの国会図書館にいる三人には、現在のインターネット上での騒動を知る手段はないのだが。
わざとらしく髪を
「他にいきたいところはあるか?」