ようこそバランス至上主義の教室へ   作:そしてさらば。

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どうしてロッソファンタズマを使わなかったの?

 

 

 

 高円寺に約束手形を押し付けられてから2週間ほどが経過した。

 いやー、あの日はまさか入店2日目にして担当ホストから借金を押し付けられて、そのままトンズラ放かれるとはなぁ。まるで絵に描いたような都合の良いATM女としての末路を迎えてしまった記念として、ボク史上今年一番の衝撃的事件として、まだまだ記憶に新しいわけではあるが。もはや通り魔事件の一種だろ。

 

 あんにゃろうめ、覚えてろよ。そんな可哀想な憂き目に遭ってもなお、ボクはいみじくもいぢらしく自分を捨てた彼に尽くす撫子が如き淑やかさで、健気に律儀に学校側から一方的に申し付けられた口封じの契約締結を言われるがまま行ったのだ。あーあ、特に望んでいない30万ポイントの貸付金の対価として、まったくよく分からないまま特に身に覚えのない何かしらの何某かを形として取られてしまったなぁ、ぴえん。ボク、悲しい。

 

 この時ボクが知り得ていた情報や考察は脅迫的説伏により洗いざらい吐かされて、自分が推測した学校の特殊なシステムとやらの考察を、有ること無いこと自説を唱えながら教師たちとの化かし合いを行ったわけだが、まあそれはもういいだろう。期間は五月一日まで、契約によりこの間は他の新入生たちへの情報供与を禁じられた訳ではあるが、そもそもこの学校がDAやアランの関係機関である可能性が高い以上、そんな恐れ多いことは最初からする筈もなく、故に取引の場においても、まるでクソぼったくりバーみたいですよね、ぐらいのことしか話さなかったし。それを聞きいて微妙な顔してたが、この契約の遣り口とかが正に、そういうとこだぞ。

 あの茶柱や坂柳の反応は見る限り、ぼったくりの線はもう無さそうと考えているが、演技の可能性もあり念のため用心はしている。しかしそんな中でも日々新たな可能性が浮き出て、ある意味退屈しないが。

 しかし人読みの結果的に見ればボクの推察は一部正解を引き当てたようだったが、なんだろう・・・途中式を間違っていたけど答え合ってたから点をもらえたみたいな、完成したプログラムが無事に動作したとぬか喜びしていたら、開発者の意図していない仕様設計が悪さして辛うじて動いていただけだったみたいな徒労を感じる。久しぶりにソース見返したらスパゲッティになってる・・・もう疲れたペスカトーレが食べたい、よろしくお願いしまーす。コンパイル、エラー、昇天、合掌、なむ・・・。あるいは最初からラムダ式で書いておけばあんな事には、まぁいいか。

 

 さて、あの時は本来話すつもりなんて無かった内容の一端をうっかり教室で語った訳であったが、それが何にしても口止め料とは、恐喝では無いんですか? 立証が難しいとして、破った際のペナルティは特に与えられなかったとはいえ、あくまでお願いとして押し付けられた協力金は、まるで選挙の応援演説に参加した人に充てた日当みたいだなぁ。つまりはこれでオマエも共犯者だからなって、言外にそう伝えたいんです? あーあ、参っちゃうよ。あと外部との連絡を禁じる措置って内部でも適用されるんですね、聞いてなかったなぁ。したらばボクら新入生は未だ外部の人間扱いでお客様待遇、いわば試用期間中みたいなものでして時が来るまではいつでも会社都合により切り捨て可能な、程の良いちり紙的な扱いなのでは? 飴と鞭、天国と地獄でバランス良く情緒を狂わせていき飼い慣らしていく古典的ブラック企業譲りの手法、ぴえん。

 ほら、こんな魔境に置いていって、ボクが可哀想だとは思わないのか高円寺? なぁなぁ?? ふーんだ、このヒモ男、スケコマシ、女の敵!

 コーくんこれってどういうこと?さっきの女は誰よ! ボクが一番だって、あれ嘘だったの? この後ラスソン一緒に歌ってくれるって言ってたじゃん、どうして? どうしてなの? …わかった、ボクがいけないんだ、そうなんだね、わぁ~ん…ごべんね、コーくん、ボクが悪かったから捨てないで・・・って、今度どこか公衆の面前で不良ホスト相手に大声で泣きついて大立ち回りしてやろうか? まあボクのメンタルにも大ダメージが入る諸刃の剣なので、やらないけどさ。

 しかしヤツはボクにポイント押し付けて契約書から逃れたつもりなのかも知れないが、オマエがボクを都合の良い女として捨て駒にしたように、ボクもオマエの事を後出しジャンケンで契約内容変えられた時の保険として捨印扱いで代わりに署名しといてやったからな。ボクに全権委任したんだから、それぐらいは覚悟の上だろうなぁ? じゃないとバランスが悪い。ボクはオマエがボクを見たのを見たぞ!

 

 

 して、件のクズ男コーくんこと高円寺は出張手当とかの仮払金かもしれないポイントを、たったの2週間ほどで既に使い果たしたのか、あるいはそのプロ乞食の血が騒ぐのか、己の持つ手管手練の限りを尽くさんと、主に上級生の女をターゲットに寄生して生活している様子だった。ある意味で逞しいその生命力は純粋にすごいなぁって思います、はい。

 

 そんな彼を見倣おうなんて、これっぽっちも思わない…こともないが、ボクが真似をしようものなら客観的事実から類推するに、世間様から事案としていらぬご厄介ご心配並びにお騒がせをしてしまう事請け合いなので断念するより他に道はなく。ちっとも羨ましくなんて無いんだからなぁと諦めている。したらば別のアプローチを試みるべく遠路はるばる上級生の集いし秘密結社ボドゲ部まで、イマイチやる気のない足を運んでいた。

 

 

 

「ほい、最後だから7枚」

 

 

「またユキムラちゃんの逆転勝ちかぁ…」

 

 

「ユキムラちゃん強ぇーな」

 

 

 

 ふっふっふ~、ちょろいね。

 

 無人島でウミガメを堅実に周回させたボクは今回も勝ち星を上げポイントをゲットした。こうなりゃ自棄っぱちだ、毒をくらわば皿まで行くかと賭博法に喧嘩を売って大儲けだ。言うほど大儲けか? 昨日は4万ポイントほど飛んだぞ? 今日で6万ポイんおっとっと、シャー芯を取り返したが、まあ遊びだしなぁ、モーマンタイ。バランスの良い札束ビンタプロレス合戦出来てボクもにっこり。

 この様にして割とこのボドゲ部ひいてはこの学校内では、ポ…シャー芯を用いた賭け事が何かを決める際などの慣例になっているらしく…。なるほど、どうやらこの学校の倫理教育は順調に進んでいるようですね・・・マヒロさん、バレなきゃ犯罪じゃ無いんですよ…それでもボクはやってますぇん。玉虫色の解釈って素敵。

 

 ダイジョーブ、ホンノチョーットダケ、ハイニナルダケダカラ・・・もう、なんか手口が違法薬物の売人のソレだとかは、もはや気にしてはいけない。ポイントのやり取りは学校曰く、要らない生徒は人に譲り渡すことも出来る、だったので、恐らく学校は何があっても生徒が勝手にやった事として自己責任のスタンスで、ではいざ何かあった時には嬉々として責任追及してくるんだろうなぁ。 この鮨屋は法律で認められていないメニューが並んでいる場合もあるため、大将のオススメは聞かないと教えてもらえません。何も知らない、自分には関係ない、悪いのは大将だ…と言う顔で、ウミガメ等の国際保護動物に指定されたものの可能性のあるオススメを、楽しみきるのがニッポン人の建前なのです。いやー美味いよ、大将。

 あーあ、約束手形消せないかなぁ。まあいいか、もーどうにでもなーれ。危ない橋をみんなで渡って同じ罪を分かち合おう。互いに秘密を握り合う監視社会で誰が芋を引くかの競争だ! 朱に交わればお前ら全員真っ赤な共産主義信奉者として独裁国家ニッポンが誇るリコリス色に染めてやるからな、覚悟しろよ。

 

 

 ダークサイドに身をやつしたボクは、それはもう大層はしゃぎ周り、トランプゲームでポイント溶かしたり、人生ゲームで巻き上げたり、ドーパミンが生み出す一時の享楽に浸った。ボクが勝てば情報を頂き、負ければ進呈する、アッシエントだ。そのゲームの勝敗を分かりやすく数値で見える化する為に、ちっとばかし電卓代わりにポイントが動いちゃうかもだけど、多分手元が狂ったとかの手違いだ。さぁ、ゲームを始めよう・・・ステイルメイト、シュヴィーッ! ごめんな、また負けたよ・・・。まったく、十枚落ちで接戦なんて、これのどこが引き分けなんだ! だって、ボク鳥頭のユキムラちゃんだからルールとかよくわかんない…ぽっぽ? 王手です?(キョトン) 竜神の剣を喰らうわぁぁぁッ?! はぁ、一体全体ボクのスーニアスターはどうやったら手に入るの?ゲームの神様ぁ…。

 

 

 さて、ボクらは皆前のゲームの敗北者じゃけぇ、といったところなので両者は情報をひとつ進呈。

 ボクはユキムラソラちゃん15歳友達彼氏募集中の恋多き女の子、そういう事になった。したらば女の子だったら誰でも良いと言わんばかりの男どもの下心を釣り上げて頼んでもいないリップサービスやらアプローチやらを適当に捌いて開いて開き直りすぎてアジの開きになりましたわねって、やかましいわ。

 まるでボクはサークルクラッシャーの如く姫プレイして相手から情報を巻き上げるばかりよ、はぁ、鬼ダルぅ。自分でやっといて何だが、自爆してる感じはある。アンタみたいな用意周到な男が失敗するなんて、鬼ウケるんですけどぉ? はいどうでもいい。オマエらの趣味趣向なんざ聞いてないんだ、もっとお買い得情報みたいな実用的なものくれよ、なぁなぁ、何のために態々こっちが危ない橋渡った上に折れてまでヨイショしてやってると思ってるんだ、ここはキャバクラじゃないんだぞ全く。けっ、この卓しけてんねぇ。つまらない男だなぁ。

 

 

 とまあHPと時間を無駄にする悲しい事件もあったが大丈夫、明日には明日の風が吹くさ。多少問題が起きてもなんでも買えるポイントがあれば免罪符だって用意できるよね? それにボクたち、点棒に見立てたシャーペンの芯を賭けて闘ったダケだもの。とても健全だったよね? だってシャーペンの芯だよ?? その辺の空気にも含まれてる炭素分子が固まってるだけの物体だから、ゴシゴシ擦れば消えるそれはまさに泡銭、ヘーキヘーキ。一本千円もするけど、観光地みたいなものだから多少値段が張ってもしゃーないっす。じゃ、買取お願いしやーす。

 

 

 そうしてこうして、そろそろお開きといったところで十分遊んで満足したことだし、ちょっとセンパイに人生相談と行こうかと襟を正して急接近だ。

 せんぱーい、このガッコーって、何だか退学者が多いじゃないですかぁ…ボクのクラス、ガラの悪い生徒が沢山いて、虐められたりしないか不安で不安で、怖くて夜も眠れないし教室に行くのが嫌になって自主退学しちゃわないか、不安なんですぅ。

 ちなみに余談だが、今日のボクは二つ結びのヘアスタイルにルビー色のボストン型メガネを装着した、さながら養殖文学少女といった出たちである。さらにはカラコン入れてウィッグで茶髪にしてるので、もう誰も見抜けまい、ふっふっふ~。

 

 

 

「だだだ大丈夫だよぉ、ユキムラちゃん。俺たちがい、居るじゃ無いか」

 

 

 

「そうだお、また遊びにおいでよ。今度はお菓子も用意しとくからさ」

 

 

 

 ずびっ、ありがとうございます。でもボク、チビだし…バカだし…運痴だし。今度のテストで赤点取らないか、不安で不安で。

 

 

 

「なんだ、そんな事かぁ。よっしゃ、ちょっと先輩に任せなさい。・・・ここだけの話、一学期の中間テストには必勝法があるんだよ。見つけるのはちょっと難しいかも知れないけど、攻略法さえ分かれば100点取ることだってよゆー、余裕。 …さーて、最後にクイズしようか。それが何か、分かるかなぁ?」

 

 

 

 う、うえーん。イジワルしないで下さいよ、センパーイ。ボク、友達もいないし、頼れる人はセンパイしかいないんですぅ…何でもするから見捨てないでよぉ、えーん。

 

 

 

「おっふ、泣かないでユキムラちゃん。友達ならもうここにいるじゃないか、俺たちは仲間だよー。今度過去問持ってくるからさ、それ見て一緒に勉強しようよ。大丈夫、ユキムラちゃんがもし赤点取って退学しちゃったら俺らも嫌だもん。それ見りゃ絶対解けるから、大丈夫」

 

 

 

「おい、流石に喋りすぎじゃないか?」

 

 

 

「大丈夫だって。俺らだって、なんだかんだで今までやって来たんだし、遅かれ早かれ分かる話じゃん。それにユキムラちゃんDクラスだって言ってるし、だったら今年もどうせドベだぞ、きっと。

 あーあ、こんな人畜無害な可愛い子がなー、どうせ碌でもない欠陥品のクラスメイトどものせいでポイント貧乏になるなんて、見過ごせないよな?」

 

 

 

「・・・まぁそれもそうか。俺らも南雲が居なけりゃ、きっと今頃はAクラスで、他の後輩の女の子にもモテまくってたのになぁ」

 

 

 

「てかAじゃないならDでもBでも、どうでも良くね? 俺らどうせもう勝てねぇし」

 

 

 

「南雲ハーレムまじでホンマに・・・まぁこれ以上は余計なこと言わんとこ、流石にこえーよ、やっぱり」

 

 

 

「はぁ、ほんま辛ぇわ・・・キミだけが俺らの癒しだよ、ユキムラちゃん」

 

 

 

 鼻の下伸ばしながらゲームを片付け帰り支度をする先輩たち。もしもしポリスメン? こいつらちょろ過ぎて、ちょっと…笑いが。だ、だめだ、堪えるんだ…し、しかし…。でもそれがいい感じに、えずいた感じとなって、奇しくも大泣きしてるかのような、あーなんか面白くて涙出てきた。でも割と怖いのも本当。そんなボクは決してサイコパスとかでは無いので悪しからず。だって、サイコパスってちょっと変だろ? ボクはそもそもサイコパスじゃないし、それにサイコパスからしてみればボクはサイコパスだろ? それってどういうことって? ナンセンスなことは言うなってわけ。でもそしたら突然ボビーがやって来てこう言ったんだ。じゃあ一体誰がパイを焼くんだってね、まあいいや。

 

 

 

「ぐすっ、センパイ達が優しく人でよかったぁ…。ボクってアホだから必勝ほー…? って言われても、絶対覚えられないと思うけど、頑張る」

 

 

 

 グッと両の手を握りしめ、頑張るぞいって拳を構えると、その意気だと背中を押されてペタンと項垂れ腰を落とすアヒル座りからヨイショと喝入れて立ち上がる。もう夕暮れ時だ、したらばそろそろ下校時間とあって極東魔術昼寝結社ボドゲ部の夏の集会所を後にする。また明日も来なよぉ、などとお声がけ頂くも、二度とくるかよぼけぇ! おっといかんいかん、と内心で煮え繰り返る腑を宥めすかしながら取り繕い、また明日来ます、と適当なこと返しておく。けっ、・・・ふう。あー、しんどかったぁ。

 

 

 とりあえず今日得た収穫としては既に在庫切れ起こして入手困難となっているニッチ製品、製図用メカニカルペンシル0.9mmの替芯60本分のお得チケットと、先日からやり取りしているポイントシステムの受け渡しは匿名でも可能だという実証結果か。匿名売買、先送りでお願いします…振り込まれない代金、そして二度と返ってこないレアカード、昇天、合掌・・・。一体この学校はどれだけの悪行を生徒たちに積み重ねさせさせるつもりなのか、今のところ犯罪者養成所のような新事実が次々と発覚して来ており戦慄しちょる。

 したらば古今東西ありとあらゆる詐欺を詰め込んで、それを体感できると謳われた某アクションMMORPGをば、まるで犯罪の手引書とも呼ばれたソレのプレイヤーであるボクにとって、ここはアドバイザー的な立ち位置として、可能性のある手口を列挙して、未来ある若者のために啓蒙活動に勤しむべきなのであろうか?

 例えばそれは先送り詐欺にSS詐欺や結婚詐欺、オレオレ詐欺に桁違い詐欺、強化詐欺に点検詐欺にアイテムすり替え詐欺引退詐欺露天詐欺に、はーいあーげた詐欺、ポイント詐欺にアカウント売買詐欺、乗っ取りにマクロやチートやグリッチの増殖品を横流しでアカウントBAN喰らわせたり、ツール自体にウイルス仕込んだり…もはや枚挙に暇がないぞ。システム面で見てもリプレイ攻撃とか中間者攻撃とかパスワードリスト攻撃とかゴールデンチケット攻撃とか、脆弱性対策は大丈夫かなぁ?それにシャー芯もそうだけど、わざわざこの学校のポイントシステムを絶対経由しないと買い物出来ない道理もないしな。

 その証拠に、今も図々しく上級生のお嬢様にメシをおねだりして、そして無事に餌付けされている、残念系不良ホストが厚顔無恥なツラして目の前を横切っておる。あれがゼロポイント生活の究極的理想型なのだろうなぁ・・・まあいいや。

 

 しかしこれは奇妙な対比構造だなぁ。ミニマリストとマキシマリスト、どちらがより文化的かを競う、我々が行うポイントバトルの形の一つと言えるだろう。

 

 

 

 青コーナー、21グラムの亡霊に取り憑かれたウルトラライトキャンパー、高円寺。その男、我が身を犠牲にするかの如く、あるいは命を預けた自慢のギアの贅肉を極限まで削ぎ落としていくが如く、己が人生設計プランの軽量化に軽量化を重ねて、コーナーで差をつけろと言わんばかりに駿足を信条に掲げて、最終的に生きていればそれでいいのだとさえ思わせるようなストイックさで世間体やら何やらまでをも全て断捨離していき、これから訪れるかも知れない冬の時代をヒモしてシノギングして生きていこうと云ふのか? その無謀な試みはまさにチャレンジャーだなぁ。アリとキリギリスの話って知ってる? でもキリギリススタイルもあながち間違いじゃ無いのよなぁ。ホットな地球の温暖化は熊さんにとっては寝苦しい夜なのか冬でも活動真っ盛りだし、日本円は為替損で口座で腐ってうんちだし、超長期的に見たら蓄財はインフレに着いて来れずにダメージレースで置き去りにされる始末よ。永久不滅を謳っていたサービスは終了するし、1年ぶりにログインしたソシャゲは浦島太郎でわけワカメな宇宙猫状態だし、まあいいや。

 

 

 赤コーナー、現物主義の申し子、ベースキャンパーのボク! ライフハックは暇人の嗜み、鉄板は分厚ければ分厚いほど美味い肉が焼けるよなぁって黄金比を追い求めてトライアルアンドエラーでゴミを蓄積していった脇道ばかりマッピングする求道者。ボクには帰る家がある。したらばありとあらゆる便利グッズで作業効率の向上を試みて自動化して、最終的には何もしないでメシが食べれる快適なぐうたら生活環境を目標に明るい明日を夢見てDIY。物で溢れて却って非効率な生活動線を形成しながらも日々幸せの青い鳥を追うドリーマー。既存のインフラストラクチャーをしばき倒して楽して小狡く銭を稼げ。レガシーシステムが死んだ?! そんなぁ…ショボーン。そうしてこうして日々情報をアップデートしていかないとネオニートはいとも容易く食いっぱぐれるので使いもしない最新技術で身を固めて落日の時を乗り越えるのだ。ところでニートは言葉が悪いのでレイブルとか大器晩成型だとか三圃式農業でローテーション組んでて今は休耕地扱いになってるだけで農夫は僅かな余暇をたまたま散歩してただけで何時もプータローしてるわけじゃ無いんだとか、まあいいや。でも結局シンプルなのが一番ってわけよ・・・? あれ、じゃあつまりはミニマムの勝ち、ってコト?! ガーン!戦う前から既に負けていただと!? そんなぁ・・・。

 

 

 選手入場の時点から既に敗北を喫するといふ新しい不戦敗のカタチを構築してしまいショックで心を病んだのでお買い物も程々にさっさとおうちに帰ります。ドゥーノットスタート。

 別に悔しくなんか無いんだもんね、隣のブドウは酸っぱいって言うしこっちはいつでも美味しいお肉が食べられるんだからな。悔しかったら参加費払ってバーベキューさせてくださいって頭下げに来いよ。あ、ポイント持ってないんだっけゴメンごめん。じゃ、そゆことで。

 

 モールの通路をすれ違う時に涼しい顔してアイコンタクト送ってきたそのヒモ男に対抗して、ボクは勝ち誇った顔でベーってしてやるのだ。やーい、オマエのLPたったの5、あほー。

 でもボクは料理が出来ない系の人なので、いざ来られても困る訳であるからして、そもそもBBQなるDQN特有のTPOは解せないので分厚い鉄板は持っていないのだ、ソーリー。そんな訳なので今日も今日とてボクも飯屋で腹を満たしてから家に帰るのだ。洗い物は少なければ少ないほど楽だからなぁ。

 したらばメシ食って帰って歯を磨いて風呂入ってダラダラネットして横になって寝るかぁ。すやぁ・・・。

 

 

 

 

 

 

 さて、そうしてまた牛に転生した翌日のことである。起きて遅刻間近ボクもすぐに華のJKにジョブチェンジしたとのことで忙しい学生生活を満喫?している訳ではあるのだが、奇妙な事に今となって今更ながら通っている学校が小学校だった疑惑が浮上してきている。さすがにない?本当かなぁ?? そう思っても無理はないと思う。それは何故かって?

 

 

― 博士、カメラは持ったか?

― デュフフ、バッチリでござる…

 

 

 公共の場で周囲の目も憚らずに正に小学生並みの発言を繰り出すアホが同じクラスに沢山いたからさ。堂々と盗撮の犯行予告するとはたまげたなぁ。こういうとき、耳がいいのも考え物である。聞きたくもない悪口とか、秘密とか、知る価値もない情報が押し寄せてしまい、キッショ・・・なんで分かるんだよ。となってしまう訳である。ニッポンの諺には知らぬが仏、見ぬが秘事、聞かぬが花ともあるしな。知識を得ることはボクにとってのライフワークではあるのだが、時折こうしてブラウザクラッシャーのようなタチの悪いうんちをつかまされることも、ままある。AIノイズキャンセリングの技術が進めば愚民から発言権が物理的に奪われる未来も、そう遠く無いうちにやって来るのだろうなぁ。真っ赤な独裁国家もこの時だけは万々歳かもな。うんちだけはゾーニングして、どうぞ。

 

 はぁ・・・憂鬱だ。それにしても四月も半ばだというのに、この学校は季節感を知らないのか早くもプール開きということで、現在ボク達は移動教室中だ。無駄に冷たい水の中を強制的に泳がされた昔の記憶が蘇り、ブルリと身震いする。休みたい・・・この学校は夏休みを前に水泳大会でもやるつもりなのか?

 

 テンションダダ下がりな道中、もはや耳の良し悪しなど関係なく、誰でも聞こえるレベルにまで下世話な猥談を垂れ流すおサルども。コイツらのせいで嫌でも妨害電波を受信した女子たち一同のやる気は下がりに下がり、今や最the低である。強制的に電波を送りつけるどこかの国営放送も真っ青なやり口に反吐が出るぜ。精神攻撃はゲームの基本ともいえるが、この学校は虐めにだけは敏感ではなかったのか? ビールは人気のドリンクメニューです、栓は外してもらえますが、注ぐのはセルフサービスです。二人以上の場合、互いに注ぎあうのがニッポンでのマナーです。まぁまぁまぁ、おっとっと。女性は男性のコップに注ぎ、女性は自分で注ぎます。なるほど、サムライの国ですね。はぁ・・・セクハラで労基に通報してやりたい。ちっぱい?やかましいわ。

 恨み骨髄に入るも、ステイッステイッまだだッまだだッと、憤懣遣る方無い己の情動をセルフケアして平静を装う。いつかあいつら地獄を見せてやるからなと決意を改め歩みを進める。

 しかし集団行動なる、正にうんちそのものとも思えるカリキュラムがほどほどに終わったのは行幸だったが、その下をさらにぶち抜くことがあるなんてなぁ。おかげで女子は見学を希望する生徒が続出しており、ボクもよっぽど休んじゃろうか悩んだが、後々どのような罠が待ち構えているか分からないから、ひとまず様子見だ。初日は説明が多いだろうし、まだ楽そうなタイミングで出席日数を稼いでいくスタイルでいこう。

 

 更衣室にたどり着いた頃には、授業を受ける女子は半分にまで脱落していた。もしかしたらこれから過酷なデスゲームが始まり、見学者は問答無用で命を落とす可能性が、まあ今更か。でも現状に至っては限りなく低い可能性もいまだ捨てきれてないからな。

 しかし万一にもこれで二度とあいつらとは顔を合わせることも無くなる可能性があっても、まあ特に何も。大して親しい間柄のヤツがいないとこういう時は楽でいいよな。な、そう思わないか?

 

 

「真島さん、その・・・すごい恰好だね。大丈夫?泳げそう?」

 

 

 更衣室で着替えに時間をかけるボクを見かねたのか、クラスの女子カーストでトップクラスにいるキキョウに声をかけられたが、大丈夫だ、問題ない。でも心配してくれてありがとな、と適当なこと言ってあしらっておく。ちょっと苦手なんだよな、コイツ。言ってることと考えていることが一致してない感がすごい。内心、お互いに本当はどうでもいいって同じ気持ちを抱いてそう。もう一人の、ケイだったっけ?あいつもな。これはまるで人狼ゲームみたいだ。それで例えるならボクは今まで唯の村人のロールだったから、何を気負うわけでもなく普通にこれまで暮らしてきたつもりだが、こいつらはオオカミとか占い師とかの重役だったのかもしれない。別に思ってもないのに取り繕うのって、聖人のフリするのって疲れるよな。

 でも、ボクも普段は空気を読める子なので、一応人付き合いはほどほどに、無難に対応しておくのだ。どの口がとか思われそうだが。

 

 

 さて、ようやく着替え終わったことだし、プールに行くかぁ・・・。

 当社比75%減ぐらいの、割と致命的なやる気のなさをどうにか振り絞って前に進んだら、早速心が挫けた。

 

 

 ここは小学校だったのか?(本日2回目) そう思っても無理はないと思う。それは何故かって?

 

 

ー 馬鹿な?! 長谷部の大胸筋マッスルは何故ここに現れない(意訳)

 

 

 こんなクソガキ発言してる幼稚園児が居るからさ。あれ年齢下がった?どうでもいいか。うーん、余りにも低俗な発言だったから、思わず多重翻訳して尚残る不適切箇所をオミットしちゃったよ。多分アトランティスとかアルテマウェポンみたいに隠されたるんじゃ無いかなぁってボクは思います。ロマンを抱く余地が残されているって大事だと思うの、けっ。

 え?こんな授業が明後日も同じく行われるって、あまつさえ次回から特に理由のない欠席にペナルティ有りってガチ? だったら今日こそ欠席すればよかったよ・・・。

 やっぱりこの年で男女合同って、些か無理がないか? それに幾ら屋内で温水プールが完備されているとはいえ、繰り返すようだがまだ四月も半ばだぞ? 80年代の小学校にタイムスリップしてないか?もしくは、あるいは、まさかなぁ? 

 

 ボクは欠席者が見学する2階席の休憩スペースも含めてグルリと周囲を見やった。今更だが、この学校って顔面偏差値高めだよなぁと、ガラにもなく俗っぽい思考が頭を過ぎる。

 と言うのも、もしかしたら成人向けゲームの世界に転生しちゃったのかもしれないという可能性が、ここにきて急に再浮上してきてしまったのだ。今のところ此処がDAやアラン機関である可能性が確かに濃厚ではあるが・・・今までの予測、別に両立も可能だよなぁ。したらば獲物を前に舌舐めずりをする、気色悪いニヤケ面した黒ずくめの何者かのイメージが否応なく想起される。サプライズだよって突如別の角度からやって来たそんな刺客の存在にボクは戦慄している。いつぞやこの学校の監視カメラは、食べ頃の男の子や女の子漁りに使用される、裏社会の会員向けサービスみたいだなぁとか冗談半分に考えていたが、まさかな?

 

 そのまさかで、ここはリコリス・リコイル原作開始前どころか世界観が違った? あるいは、成人向けビデオのパロディ的パチモン世界だったのか? まるで足元が崩れるかのような、存在意義を根底から否定されたかのような不安感が思考を埋め尽くしていく。ボクが見込んだ通り、君たちはどんどん美味しく実る…♥ そして夏頃までに食べ頃に育ったお肉たち…豚は出荷よー、そんなー。ってな感じで闇金に人身売買に違法風俗経営・・・お前の頭はハッピーセットかよとブチギレてしまいそうだ。

 だから無駄にガタイの良い自称体育教師のブーメランパンツスタイルも、アルカイックスマイルも、説明も何もかもの情報が右から左に頭の中を素通りだ。教員を騙る彼は今にもジュルりと涎を啜りそうな勢いでまじまじと、立派に育った高円寺のシックスパックや大臀筋を眺めており、何やらうっとりとしているようだ。既に彼のお尻は出演者に狙われているかもしれない・・・。

 

 客観的に見て我々女子生徒も様々な属性が取り揃えられているような気がしないでも無いが、男子生徒も大概だからなぁ。

 平田に幸村ちゃんあたりは素材そのままでも十分調理可能だし、沖谷などと一緒に女装すれば一粒で二度美味しそう。三宅は貴重な三白眼ヒロインに化けられるポテンシャルを感じている・・・お前がボクのフキさんになるんだよ。イケメンは美人にもなれてズルい。 須藤などは、命知らずにもヤクザに喧嘩売って案の定返り討ち、そのまま理解らされてそう。他の男子生徒を庇って・・・庇うか?あるいは売って、まあいいか。バスケ部のコーチでも良いや、個別指導、騙された、友達連れてこい、そして最終的にお友達とみんなで仲良く酷いことになってそうだ。パンツレスリング…いや、なんでもない。高円寺は、ダビデ像とか芸術的な方面のイメージなせいでむしろ男と絡んでいる方が自然体に思える・・・いかんいかん、何故ボクはこの様な腐った思考回路をしているのだ。自重しないと。

 

 

「綾小路くん、あなた何か運動してた?」

 

 

 おっと、あまり聞きなれない声にいまだに見慣れない男子生徒を見たな思ったら、アヤノコージだったか。彼は随分と鍛え上げているようだ。さながら飢えた獣のようだ、誰かに高円寺と掛け算の暗算をされてしまいそうだなぁ。

 その男、名前なら聞いたことがあったような?確か女子主催学年イケメンランキング5位とかだったかな? はいはい、つよいつよい。綺麗なツラしてるヤツはどんなシチュでもカプ作られちゃうから大変ですね(他人事)

 しかしランキング文化ね。どいつもこいつも、飽きないな。確かに興味深いデータではあるのだが、この学校の唯一明言してあるルールに抵触しないか、微妙なところだなぁ。それがやがてイジメ判定に繋がって絶望の淵に追いやられることになっても、ボクは知らないからな。やっぱり暫く人間関係は気にしなくていいや。

 

 ん?綾小路?? いやいや、ありふれた苗字だし、気のせいだろう。ずんちゃかちゃんちゃんちゃちゃんちゃちゃんちゃん…チクショー。ん、何か違う? あれ、じゃあこれ誰だ?? まあいいか。

 

 いや、よくない。んー? 何か重要なことを忘れている気がする。はて??

 

 

 おっと、授業が始まるようだな。ちなみに本日のボクは水泳の授業ということで鬱陶しい前髪をスイムキャップに収めて久々にオデコがバッチリだ。今度はシュノーケルマスクで隠れちゃってるけど。そしてさらにはネオプレンのウェットスーツに身を包み浮き輪で完全防備を固めているボクに死角は無い。このゲーム、最後まで生き延びるのはこのボクだ。

 

 

「真島、その格好は…まぁいいか。せめて浮き輪は一旦外せ、それでは泳ぎの授業にならん」

 

 

 なぬ?最終兵器を早くも奪われてしまっただと?? ぐぬぬ。し、しかしまだ慌てる時間ではない。コレでもDAで散々鍛えられてきたんだ。抜かりは無いわ!

 ところで自慢では無いがボクは運動面はからっきしだ。やつはDAでも最弱のリコリス候補なんて、ネタでも何でもなく、なんならその辺の一般生徒にも劣る自信がある。鍛えたら鍛えただけ成長できるのは、それはひとつの才能なのでは? 何を思ったか知らないが当時あの白い部屋では平均的に高い水準を目指して教育、というか選別が行われていたが、本当に徹底して行うのなら物理的に改造するしか無いと思うの、デザインベイビー的に考えて。もし此処が原作前なら、ボクらは贄とかその辺?遠坂の娘の胎盤からはさぞ優秀な術者が生まれ落ちるであろう・・・サクラぁ。ガクガクぶるぶる。豈図らんやDA(仮)を抜け出してきたのは現状唯一の正解ルートであり途轍もなく英断であったか。くわばらくわばら。

 

 さて話が逸れたが、つまりボクは運動音痴。給仕の真似事をしたが最後、運んでるお皿を全部ひっくり返す自信がある。ねぎタン塩みたいにひっくり返さなくても十分火が通る素材を台無しにしちゃうんだぞ、いいのか?

 よくない。して、水泳も苦手というか、水泳は特にへたっぴだ。だって全然浮かばないし、沈んじゃう沈んじゃうガボガボ。

 あっこのプール、深いッ!ぼぼぼーぼぼーぼぼ!!ぼハァッ!!助けてネネちゃん、ななこお姉さん、みさえ!!! この川、深いから、不快ボボボォ!

 

 

「ふむ。私から言わせれば泳げるまで指導すれば誰しも平等に泳げるのであれば、補助具がこの世に生まれる余地は無かったであろう、と考えてしまうのだがねぇ。伸ばせば伸びるだけの余地があるという事であれば、努力するにことに越したことは無いだろうが。ティーチャー、君は彼女を見てどう考えるのかね?」

 

 

 足、届かない・・・ガクガクぶるぶる。

どれだけ伸ばしても、絶対にヤツには届かない、この白い部屋の中、ボクは次の脱落者だ・・・。

ヤツは悪魔、悪魔の名は…うっ、頭が。

 

 

「きょ、今日のところは一度プールの端でバタ足の練習をだな…」

 

 

「ノンノン、ナンセンスな回答だねぇ。まるで翼が無くても一生懸命羽ばたきさえすれば、いつかきっと空を飛べる様になる、なーんて夢を見る無邪気な少年みたいな、残酷な考え方だよそれは。しかし鳥が欲しているものは現実的な解決策であり、少年がやるべきは折れた翼を定石に従いケアするか、いっそ代替する術を与えてやるべきだった。その様な精神論ではいつまで経っても我々人間は大地に足を囚われたままだねぇ。よって私たちは先人の知恵に倣い、今からセオリー通りに保健室に向かって凍えた身体を暖めにいくとするよ、ではさようなら」

 

 

 もはや馴染みのある不良ホストに横抱きで連れてかれてプールを後にしていく。凄まじい筋肉、道中ではボクが装着する内部に浸水していたゴーグルを片手で引き剥がしても尚ブレない体幹、やはり筋肉…‼︎筋肉は全てを解決する…‼︎

 そうだ、たとえボクが死に物狂いで泳ぎ続けても、TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには・・・。 アイツは駄目ネ、心が折れてる。あれ?アイツって、誰だっけ?? だめだ、考えるな、思い出すんじゃない。

 

 

 真っ白い部屋の中の記憶が蘇る。

 綾小路 清隆。

 

 透明なガラス玉のような、虚な瞳をした、悪魔の名前が。

 

 

 きゅう・・・。バタン。

 ボクは目の前が真っ白になった。白いのは…嫌いだ。

 

 

 

 

 

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