技術チートを使って現代世界で完全没入型VRゲーム配信者になろう! 作:VRゲームやりたい
完全没入型のVRゲームがやりたい。
でも、残念なことに現代の技術でそんな高度な代物は作ることができない。
世界に散らばっている天才たちがこぞって研究しても、世の中に出てくるのはせいぜい視覚と聴覚を没入させるようなものばかり。
それに、仮に何十年先にそうした技術が生まれたとしても、利権や人権みたいな圧力に板挟みにされて、僕らがイメージしている仮想現実世界とは程遠いものになってしまうだろう。
だからといって、自分でそんな大層なものを作れるかと問われれば、それは否である。
天才でもなく、技術もなく、そして0からものを生み出すほどの根気強さもない。
プログラミングなんてやったことないし、市販のゲームメーカーでゲームを完成させたことだってない。
だから、僕が望むような都合のいいVRゲームは一生叶わない夢なのだ。
せめて、毎晩眠りにつく前に、存在するかもわからない神様にお願いするくらい、一時の気の迷いとしては許されるだろう。
と思っていた時期が僕にもありました。
大学生の秋、全休なのをいいことに、太陽が真上に来るまで眠っていた僕に、聞き覚えの無いモーニングコールが流れてくる。
「仮想現実世界を作成しますか?」
最初はまだ寝ぼけているのかと思ったが、だんだん意識がハッキリしてきても、しきりに頭の中で機械音声が流れ続ける。
左手を伸ばして枕元を探ってみるが、相変わらず寝相が悪い僕のスマートフォンは、ベッドの下に落ちており、無機質な声の第一容疑者はあっという間にアリバイを完成させている。
いい加減煩わしく感じて、原因を突き止めようと起き上がるが、あたりに発信源らしきものは見当たらない。
「うるさいなぁ、朝からなんなんだよもう」
かすれた声で一人つぶやく僕に答える人はだれもいない。
しかし、一人暮らし症候群の代表的な症状である独り言は、初めて大きな成果をもたらした。
ピコンという謎の効果音とともに、自分の目の前に半透明のウィンドウが浮かび上がる。先程まで僕を悩ましていた機械音はすでに聞こえない。
「出力モードを変更しました。音声案内に切り替える場合は、所定の設定項目へアクセスしてください」
「あなたは仮想現実世界の管理権限を付与されました。仮想現実世界を作成しますか?」
途端に、ゾワリと身体が震えるのを感じる。それは、いきなり現れた未知に対する恐怖か、それとも願望が突然叶うかもしれないという非日常への興奮か。
事象の意味を全く理解できないまま、僕は誘導されているかのように、『はい』の項目を震える指先で選択した。
それはある学校で。
「なあ、この動画みたか?」
「知ってる知ってる。急に現れた、現実みたいなクオリティのゲームのPVだろ」
それはある家庭で。
「ちょっとあんた、いつまでスマホいじってんの! はやく……って、なにこれ?」
「昨日アップされてバズってるやつ。すげーリアルでしょ?」
それはある機関で。
「おい! 解析は進んでいるのか!」
「すみません。やっぱりどう考えても現代技術で再現できるものだとは思えなくて……」
それはある会社で。
「投稿元のIPは特定できたのか?」
「いえ、全く。それどころか動画の削除についてもうまくいきません。自社のサイトであるはずなのに一体……」
一人の一般大学生が生み出した波は、急速に人々を、そして世界を巻き込む大きな波へと進化していく。
その身元を一切明かすことなく。