技術チートを使って現代世界で完全没入型VRゲーム配信者になろう! 作:VRゲームやりたい
謎の超技術が僕の目の前に現れてから、一ヶ月が経過した。
まだ夏の暑さを残していた空気はすでに消え、冬と言われても納得できるくらいの鋭さが顔を出し始めている。
結局、僕は仮想現実世界を作成することに成功した。しかし、僕がやったことは実質的にほとんどない。
ウィンドウの問いかけに対して『はい』を選択した僕は、視界がブラックアウトするとほぼ同時に、見慣れない空間へアクセスした。
今ではオリジンと呼んでいるその空間は、いわゆるエントランスであり、いくつも存在する世界に対するハブのような役割を果たしているらしい。
初めてのダイブをしてすぐは、オリジンしか存在しないため、あたりを見渡しても何も見つけられなかった。
そのため、そこからはいつもの半透明のウィンドウから出される指示について黙々と従い、自身のアバター、そして世界を作成していった。この間、ほとんどの業務はこの謎のテクノロジーが自動的に進めており、僕はどんなアバターや世界を作りたいか頭の中でイメージしていたに過ぎない。
そして現在、僕はオリジンに浮かぶ3つのワープゲートの中心で、ソファにもたれかかっている。
作った世界は大きく分けて『ファンタジー系世界』『近未来系世界』『現代系世界』の三種類だ。ワープゲートの上部には、世界を俯瞰して撮影した写真がウィンドウとして浮かんでいる。このおかげで、鎧を着ながら現実系世界に行ったり、Tシャツで近未来系世界に行くことがない。
いくらスーパーテクノロジーのVRゲームだとしても、世界観にそぐわない格好をしていると、没入感が軽減されてしまうのだ。気分的に。
「何回見てもすごいなぁ」
相変わらずボソボソとつぶやくような声は誰にも拾われない。しかし、自分の耳に届く声色は、現実世界のものとは異なり、心地の良い可愛らしいものになっていた。
というのも、この世界での僕の身体は紛うことなき少女となっている。これは、世界が作られる前に行われたアバター作成で、僕がふとイメージしたのが、可愛らしい女の子だったからである。
スーパーテクノロジーさんは、あっという間に僕の脳内イメージを3Dモデリングし、僕自身の身体として適合させた。決してTS願望があるわけではないが、わざわざやり直すのも面倒くさくて、そのままにしている。女の子になってチヤホヤされたかったとかではない。決して。
「まぁ今のところ不自由ないしね。それに……」
手に持ったグラスをストローでかき回しながら、メニュー画面を開く。視線の先には、録画、配信の文字。
まだ試したことはないが、どうやらこの世界から現実世界のインターネットにアクセスして、動画投稿や動画配信を行うことができるようなのだ。
見たこともないようなハイテク技術であるこの世界を、一人で遊ぶのはあまりにもったいない。
世界を作成してから一ヶ月、3つの世界を遊び尽くすなんてことは到底できていないが、この面白さは間違いなく、今までのどのゲームよりも革新的だ。それを、世界のみんなに自慢したくて仕方がなくなっていた。
当然、まずリスクを考えた。こんなオーバーテクノロジーが急に現れたら、人々はこぞって解析、特定しようとするだろう。僕にはスーパーハッカーとしての力も、警察さんに対抗できるような力も持っていない。身元がバレたらあっという間に突撃され、実験やら利用やらされてゲームオーバーだ。
しかし、このスーパーテクノロジーさんいわく、外部からの特定の恐れは一切なく、また仮に僕自身の身体的検査をされたとしても、欠片の証拠も出てこないらしい。そして、わかってはいたことだが、今の人類にこの技術を模倣することはまず無理で、その糸口を掴むことすらできないと言う。
そこまで太鼓判を押されてしまうと、恐怖心は自然となくなってくる。僕はすでに、この超常現象に対して惚れ込んでしまっているらしい。
そして、この仮想世界を公開するにあたって決めなければならないことがいくつか存在する。
第一に、この世界の呼び名である。
いつまでもスーパーテクノロジーさんとか、超常現象などと呼んでいる訳にもいかないし、この世界を僕が公開する以上、自ずと創造主は僕ということになるだろう。そんな僕が、意味わかんない現象みたいなニュアンスで呼ぶのはあまりに不自然だ。
あと、単純に名前決めないと面倒くさい。
「できればシンプルな方がいいよなぁ」
ストローを噛みながら、甘ったるいいちごミルクをチュウチュウと吸う。
最初は未知の存在的な意味で、Xにしようかと考えていたが、どこぞの異論を唱えてそうな仮面さんに先取りされてしまった。
わかりやすくシンプルな、それでいて壮大な名前。夢。楽園。リアル。世界。
色々な単語が浮かんでは消えていく。そして、最後に頭に残ったのは、最もシンプルでありふれた名前だった。
『Another World』
現代の技術を超越して、限りなくリアルに近づいたこの世界を、僕はそう名付けた。僕にとっての第二の故郷。もう一つの世界。
たかだか一ヶ月しか過ごしていない世界を、そう表すことになんの違和感も感じなかった。
「Another Worldを正式名称として承認しました」
機械音が頭の中に鳴り響く。それと同時に、半透明の画面が変化し、この世界の詳細を表示する。
Another World(AW)
管理者:
管理者の欄は空白になっている。ここに僕の名前が入るのだろう。
さて、他にも決めることはたくさんある。
僕は今後の展望に小さい胸を膨らませながら、作業へと没頭していった。