・・・やめだ。
俺は自分が好きなものを書いてそれを面白いと思ってくれる人のために書く。元々万人が面白いと思う作品を書けるような実力を持ってるとは思ってない。俺は不平等に読者を満足させる。
諸君、私は王道のジャンプものが好きだ。
諸君、私は虎杖悠仁が好きだ。
諸君、私はナツキスバルが好きだ。
諸君、私は絶望の底に叩き込まれても這い上がりざる負えなくて必死になって足掻き、周りには笑顔で振る舞う。そんなキャラクターが好きだ。
性癖の開示により、一時的にシリアス成分を引き上げる!
広げろ!!原作の設定と世界観の解釈を!!
というわけでシリアス回です。あ、筆折りかけたのは本当です。
病院、というより、ゲームに出てくる実験施設のような場所で1人の少女が立ち尽くしている。その少女は辺りを見渡し、自身の周囲に気配が無い事を確認した後、自分が何処にいるのかポケットに入れておいた地図を見て、その場所が病院にないであろうことを察して確信した。
「・・・結界ね」
玉犬が匂いを嗅ぎ取り辿り着いた一室に、彼女は誠と入室したのだが、入った瞬間、明らかに一室というには無理がある謎の通路に1人立っていたのだ。この状況から察するに、結界に入る条件は先程の一室に侵入すること。そして複数人で侵入した場合、強制的に分断されるのであろうと予想する。
(二級以下の呪霊にも結界を使えるのはいるけれど・・・最悪一級以上であることを想定した方が良さそうね)
八乙女玲子はいつ如何なるときでも冷静さを欠かない。自身が置かれている状況をすぐさま把握し、自分に今何ができるかを考え、行動する。視野の広さと判断力が彼女の利点だった。
(一級以上の可能性がある事を加味すると、禪院君と合流するのが無難ね。となると最優先事項は禪院君と合流すること。民間人を見かければそのまま保護。でも一級呪霊に会ってしまった場合は・・・)
頭の中で考えを纏め上げ、最適解を見つける。彼女は判断ミスをしない。例え自身が死地にいて、極限まで追い込まれていたとしても、彼女は今できる最善を選び、生き延びることができるであろう。
「祓う。それしかないわ。逃げ切れるかもわからないし、それに民間人もまとめて救助できるしね」
だが今日の彼女は違う。いつも彼女ならば一級呪霊と遭遇した場合は逃走を選択する。それは今の彼女も理解しているし、理性の部分が戦うべきではないと言っている。だが彼女には、逃げるわけにはいかない理由があるのだ。もし逃げれば、彼女がこれまで積み重ねてきた数年が無駄になるから。
「それじゃあ行きましょうか」
そうして彼女は歩き出す。運が悪かったら死ぬな私、なんて自分に呆れながら。
「どこだここ」
我が名は禪院誠!分不相応にも特別一級術師の称号を賜りし者!通称禪院モブA。
俺は今、1人ホラゲーのステージみたいな場所にいる。玉犬に連れられて、八乙女と一緒にとある一室に入ったんだが、気が付くとここにいたのだ。催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・
冗談はさておき、これは恐らく結界の類だろう。原作呪術廻戦にて、宿儺の指を取り込んだ呪霊が作った結界に近い。今回は少年院と橋の呪霊のミックスで、条件を満たすと結界に入れて、中身は迷路みたいになってて脱出が困難になってるってとこかな。まあ俺には玉犬がいるし、脱出だけなら容易だろう。匂いで外に繋がる道を教えてくれるのだ!
問題は、八乙女と2人の民間人、計3人を拾わないといけないということ。本音を言うと俺は今すごく逃げたい。だって宿儺の指の呪霊が作った結界に似ているんだぜ?もう嫌な予感しかしねえよ。多分一級以上の呪霊だよ。もちろん一級なら祓えるが、特級だった場合は八乙女だけでもひっつれて全力で逃げるね。
確かに玉犬・渾がいるから特級にもダメージは与えられるだろうが、それで確実に祓えるかって聞かれると俺は全力で首を横に振る。なぜなら特級っていうのはピンからキリまでいるから。特級の中には領域展開したり即死技を使ってきたり、ギミックを破らないとダメージが与えられない奴とかがいる。原作の真人がいい例だね。いやほんとクソボスだなアイツ・・・
だから特級と戦うなら最低でも一級術師が2人は欲しい。七海さんや爺さんみたいな一級が。
まあ原作には一級以下には術式を使わず、特級には術式を使ったけど1人で殴殺する筋肉アイドルファンや、領域展開を使う特級を事実上1人で祓えるお金大好きな一級呪術師がいるんだけどね!何なのあの人達・・・
だから最優先事項は八乙女との合流、次に民間人2人の救出だが、先にこの結界を作り出した呪霊に遭遇してしまった場合、俺は民間人の救助を諦めて八乙女だけでも拾って逃げる。人間としては最低だが、所詮俺の実力はその程度だ。領域を使えば祓える可能性は格段に上がるが、相手も領域を使え、万が一押し負ければもう逃げることすら叶わない。だから俺は、確実に自分と仲間が助かる道を選ぶ。
だって俺には、全部の人を助けられる力なんてないのだから。転生してもそこだけは変わらない。悟とは違い、所詮何処にでもいるモブAだ、俺は。
「・・・さてさて、方針も決まったことだし、玉犬を呼び戻そうかねえ」
この結界に入った時、玉犬も分断されてしまったが、玉犬は俺の式神。遠くにいても呼び戻すことが可能なのだ!原作でも交流試合にて狗巻の近くにいた玉犬が恵君の下に戻る描写があるしね。
ああ、恵君にお兄ちゃんって呼ばれたい!ショタ恵君を写真越しにしか見たことがないから会いたいんだが、残念ながら俺には敵が多い。もしショタ恵君や師匠の奥さんの居場所がバレ、人質にでもなれば大変だ。だから師匠にはこっそり東京へと引っ越してもらっている。ゆえに、俺は周りの目を気にして会いに行けないのだ。
クソ、師匠に会いたい!!それに恵君にお兄ちゃんと呼ばれながら肩車したりお馬さんごっこしたりヒーローごっこして悪役として「やられたー」とかいってあげたいし盛大に甘やかしたい!!・・・だいたい真希ちゃん達にやってあげてるなこれ。
閑話休題。
玉犬を呼び戻す前に、玉犬の周りに誰かいるかを確認しよう。俺は玉犬を意識し、視覚と嗅覚を共有した。
式神との感覚の共有。これは原作で恵君は使用していない。俺の拡張術式だ。視覚の共有だと冥冥がカラス、メロンパンは使役している呪霊で行っているが、俺は五感全てを共有することが出来るのだ!カラスと呪霊の視覚を共有できるなら、最初から術式に組み込まれている式神にもできるんじゃね?という発想から始まり、視覚の共有が出来た後、視覚が出来るなら他の五感も共有できるんじゃね?と思って練習したら出来た。
原作では夏油傑は呪霊との視覚の共有が出来ず、夏油の体を奪ったメロンパンが成功しているのを見るに、大事なのは術式の解釈を広げること。わかりやすく言えば想像力次第で大抵のことが出来るのだ。それによって俺の手持ちの技の種類は多い。転生者特有の想像力の豊さが活かされてるぜ!地味だな・・・
とにかく、これで玉犬の周りを探れるんだが・・・八乙女と2人の民間人の匂いを嗅ぎ取る事には成功したが、近くにはいないらしい。だがこの結界内にいる事は確定した。共有を切った後、俺は玉犬を呼び戻して俺の周辺の匂いを嗅がせた。そして玉犬が反応する。どうやら民間人の1人が近くにいるらしい。ならそちらを回収し、特級相当の呪霊に出会わない事をお祈りしつつ、残り二人も回収しよう。・・・特級じゃないといいなあ。でもこういうのって特級っていうのが物語のお約束なんだよなあ。死にたくないなあ。
…死なせたくないなぁ
俺は小さな希望と大きな諦めを抱えて歩き始めた。
「今禪院君がロリショタ達と戯れる気持ち悪い妄想をしている気がするわ」
「急にどうしたんですか」
「女の勘よ」
八乙女は現在、民間人を救出して結界内を走っていた。
救出した女子中学生はとある一室の物入れに身を隠していたが、その部屋に下級呪霊が侵入。物入れを開ける瞬間、呪霊が集まっているその部屋を見つけ、少女は八乙女によって救出される。
だが、救出された少女の訴えによってすぐさまその場所から離れることとなった。
「それで、そろそろこんなにも急いで離れる理由を話してもらえるかしら?」
とある一室に逃げ、そこで休んでいる内に質問する。八乙女は少女を落ち着かせるためにその場に留まるべきかと考えたが、少女の必死の訴えに嫌な予感を感じ、すぐさま移動することにした。そして走るルートも少女が選んだものにしている。理由は勘だ。そうすべきだと彼女の勘が告げていた。
「・・・私ずっと、医者の格好をした大男とかくれんぼと鬼ごっこを合わせたものをやってるんです。それで、何度も殺されかけて・・・」
「・・・成る程ね」
少女は未だに五体満足、先程から何かを探し回るような動きをとる下級呪霊、隠れ場所が多いこと、少女の発言、そしてあの悪寒。
八乙女はこれらの情報から、1つの答えを導き出す。
「弱いのと一緒に探し回って、見つけたら追いかけ回して遊んでる・・・そんなところかしら」
「・・・はい」
少女の声は弱い。2日間、怪物達から逃げ隠れ続けていたのだから、疲れは勿論恐怖は凄まじいものだろう。だがそれでも気になる事があった。
「気分を害したらごめんなさい。どうしてあなたは呪霊・・・あの怪物達が見えているの?それに、何故未だに走り続けられるの?ずっと何も食べないで、疲労もかなり溜まっているはずなのに」
「あのオバケって見えないんですか?そっちはわかんないです…ごめんなさい、もう1つもわかんないです。ずっとお腹も空かないし、疲れても少し休めばまた走れるんです」
八乙女は思考を巡らせ、1つの仮説を建てた。それは、縛りによる能力の向上だ。
結界内に入ったものは呪霊を視認可能になり、疲れたら回復させ、空腹を忘れさせる。侵入者へバフを与える代わりに、この結界の強度、そして術者へバフの追加だとしたら?
(呪霊にとってこれはゲーム。有名どころだと青◯に近いわね。この子が卓◯で、大本の呪霊が◯鬼。デメリットになる呪霊の可視化や体力増強も、呪霊達にとっては愉しむ時間が増えるから問題なし。寧ろメリットとなる。この大本の呪霊、かなり頭がいい上に腐った性根してるわね)
「想定より、厄介な相手かもしれないわね」
「・・・お姉さん。私、死んじゃうのかな…」
八乙女の言葉を聞き、少女は膝を抱えて声を震わせた。精神的にもう限界なのだろう。八乙女は自身の発言の迂闊さを心の中で叱責し、少女を優しく包み込む。
「お姉さん・・・?」
「大丈夫、あなたは私が守るもの。by綾◯」
「…ふふ、何それ」
「さあ、何だろうね。私もよくわからないわ」
「なんでですか・・・」
持ちうる限りのネタを持って少女の不安を掻き消す。ネット用語を覚えたのは別にメンタルケアのためではないが、八乙女は自身が出来ることはする性分だった。
「それに、私より100倍強い人も助けに来てるの。だからもしもの事があってもその人がチョチョイのちょいで終わらせてしまうわ。チョチョイのちょいじゃなくても、絶対守ってくれるでしょうし」
「その人、お姉さんより強いの?」
「・・・いつか追いつくわよ」
「そっかあ、お姉さんより強いんだ。すごいねその人」
「まだってだけよ、まだ。アーユーオーケー?」
「オーケーオーケー。だから落ち着いて目が怖いよ!?」
「最終手段には髪を金色に染めることで戦闘力を100倍にするわ」
「それ何てサ◯ヤ人ですか・・・」
目をクワッ!と開けて近づいてくる八乙女は距離を取って落ち着くよう訴えかける。そして少し笑った。大分落ち着いてきたようだった。
だが、またも表情に陰りが見えだした。
「・・・実はね、歩美ちゃんって子もここに来てるの。私の大事な友達。・・・でも、ここに来たらはぐれちゃって、もしかしたら、もう・・・」
「多分大丈夫よ。彼が助けているわ」
ようやく自分以外のことにも目を向けられるようになったら、今度は共にここに来た友人のことを考えてしまい、再び悲しみにくれかけたが、それをすかさず八乙女がブロックした。
「・・・お姉さん。私、真面目に・・・」
「私の勘って結構当たるの。具体的には約10分前にその子のピンチを救出。絶賛その子に怖がられながらもお姫様抱っこして走り回ってる・・・ってところかしら?死ねばいいのに」
「え、いや、あの・・・こわ・・・」
勘と言いながらまるで見てきたかのような具体的な内容だったりとか、唐突に殺意を芽生えさせてるとか、なんか意味が分からな過ぎて恐怖を感じてしまった少女。命の恩人に失礼だと頭ではわかっていても、さっきのオバケとは別ベクトルで怖いと感じてしまった。
「さて、そろそろ動きましょうか。呪霊…怪物に見つかる前に禪院君と合流できたら私達の勝ちよ」
今度こそ大丈夫だろうと判断し、勝利条件を提示しながら立ち上がる。少女はもう、暗い顔をしていない。だから、少女は元気よく答えた。
「はい!」
「そうしたら安心してお風呂飲んできていいからね」
「は・・・お風呂はありませんし飲みませんよ!?」
元気よく突っ込む少女を微笑ましくみながら、彼女は絶対無事に帰すと心に決めて、八乙女玲子は歩き出す。自分が昔、無事に家に帰してもらえた時のことを思い出しながら。
「・・・数、多くね?」
後ろに少女を庇いながら、誠は無数の呪霊と相対する。どれもこれも3級以下の呪霊。だが如何せん数が多すぎた。大元の呪霊と遭遇する前に八乙女ともう一人の民間人を見つける筈だったが、あっという間に囲まれた。
一箇所に留まれば大本の呪霊が来ることは少女から聞いていたため走り回っていたが、少女を守りながらこの数の呪霊から逃げ切るのは至難の業だった。
(だがこれだと捜索というよりなぶり殺しにする気満々だと感じる。となると、大本の呪霊に何かあったか。完全にここで仕留める気だしな)
悟なら少女を守りながら逃げることができるんだろうなあ、などと考えながら手印を結ぶ。
「円鹿」
現れたのは鹿のような式神。それは後ろにいる少女を守るように現れた。
誠は少女に振り向き、笑顔で語り掛ける。
「大丈夫。君には指一本触れさせないから」
返ってきたのは小さな悲鳴だった。先程から呪霊を怖がっていたが、今は目の前の男への恐怖が勝ったらしい。誠は心の中で泣いた。
やっぱり俺って普通の笑顔ヘタクソなんだなあと思いながら呪霊の群れに近づく。
呪霊達は笑っている。これから始まる一方的な殺戮ショーが愉しみで愉しみでしょうがないのだ。この男は一体どんな声を上げて泣き叫ぶのか。どんな醜態を晒してくれるのか。それが愉しみでしょうがない。そう言っているようだった。
だからまず、今この男がどんな顔をしているのか見たかった。
絶望しているのか、諦めがこびりついているのか、僅かな希望を抱いて挑もうとする勇者のような顔なのか。
最後の顔なら傑作だ。もしそれならばたっぷりといたぶり、苦しめよう。身動きが取れなくして、あの少女を目の前で生きたまま食ってしまおう。そして最後にこの男を殺して終わりだ。
呪霊達は笑う。愉しみがたくさんあるから。だから、どう愉しむか考えるために男の顔を見て・・・
「ふひっ」
笑い声が消えた。否。一人だけ笑っている。
「おいおい、どうした?俺が笑ってるのがおかしいか?」
男は嗤う。少女に向けた顔より邪悪な顔をしながら。
呪霊達は困惑する。彼らには理解できなかったのだ。この状況で何故嗤うのか。気が狂ったのか。だがそうではない。そうではないと感じた。何故か。
「お前達と同じ理由だよ」
瞬間、呪霊達は理解する。今から始まるのは一方的な殺戮ショー。主演は自分達と目の前の男。
殺戮されるのは、自分達。
「さあ、始めようか!!」
人の形をした悪意が動き出した。
呪霊の悲鳴が木霊する。潰され、食われ、引き裂かれる音がする。座り込んでいる少女には、もうどちらが怪物なのか分からなかった。
男は悪意を持って悪意をねじ伏せる。これが一番効果的で、一番強いことを知っているから。
この方法しか、守る方法を知らないから。
自分が書きたいものだけを書く精神で書き始めたら想像止まらなくなってきた。
これが、呪術廻戦のインスピレーション!!
今なら出来るよね?
領域展開ッ!!