高評価コメントに返事を書けないので、せめてちゃんとおもしろいものを書こうとしたら、時間が掛かったうえに一話で過去回想が終わりませんでした。その上あとがきで書いた主人公の内面云々も書き終わってません。許して・・・
次、次でちゃんと描き終わりますから!
私は昔から、周りより色んな事が上手にできた。勉強も運動も、ちょっとした芸術品も人より上だった。その上容姿も整っていたから、それはもう人の目を惹いた。自分で言うのもなんだけど、男の子からはモテていたし、逆に女の子たちからは嫌われていた。
結果、私は小学生の頃から一人だった。
陰口はもちろん、物を隠されたり、机に落書きをされたりした。
先生に言っても証拠がないだとか理由をつけて関わらないようにされた。両親は私を不気味がって関わらないようにしていた。理由は簡単。私にはお化け、呪霊が見えていたから。それを不気味がって遠ざけたのだ。両親の反応から、学校ではお化けが見えることを隠していたけれど、結局孤立した。
私に味方なんていなかった。
いつの日か、色んな事がどうでもよくなっていった。何を言われても何をされてもどうでもいい。だって、自分が何をしようと何も変わらないんだから。何も考えないようにしていた。
そんなある日、掃除道具入れの上に置かれた教科書を取るために椅子を運ぼうとした時の事だった。
「え・・・?」
教室の景色が変わった。いや、最早教室の原型すらない。私がいた場所は教室ではなく洞窟となっていた。
【■■■■♪】
何か笑い声がして、嫌な予感がしたから慌てて物陰に隠れた。すると奥からピエロが玉乗りをしながらやってきた。楽しそうに進んでいる。でも、場所の雰囲気とそぐわない。その違和感が余計に恐怖を駆り立てた。
私はただ息を潜めた。一瞬声を掛けようかとも思ったが、それは絶対にダメだと思った。ふと思い出したのだ。ここ最近、この学校では数人の小学生、さらには教師も1人行方不明になっていることを。そして、あれがその犯人だと本能的に理解した。
笑い声が過ぎて行く。声が聞こえなくなってようやく息を吸い込んだ。何度も何度も空気を肺に取り入れる。今まで感じたことが無いほどの恐怖によって、正常な呼吸を取り戻すのに少し時間がかかった。
この場所に居続けるのは危険だと悟り、帰るための道を探そうと辺りを見渡したけれど、当然どれがどの道に繋がっているかなんてわからない。だから、前にテレビで見た壁に右手を添えて歩き続ければ出られるという迷路の攻略法を思い出して実行してみた。
触れた壁が冷たい。まだ少し足が震えている。でも、歩かないと。
私はゆっくり、でもしっかり一歩ずつ歩いた。
どれだけ歩いただろうか。出口はまだ見えない。
お腹が空いた。早く帰りたい
・・・帰る?何処に?私に居場所なんてないのに。
そう思ったら歩くのが一気に辛くなった。立っているのも億劫になった。
座って壁に寄りかかると、冷たくて気持ちい。もう何も考えたくない。
・・・もう、■んでもいいかな。
もしここから無事に出られたとして、意味があるのだろうか?何処まで行っても私は独りぼっち。楽しい事なんてない。もう、楽になりたい。
独り膝を抱えてうずくまる。お化けが私を食べに来るのを待ちながら・・・。
「———ひでぶっ!」
カエルが潰れた時のような男の子の声がした。
顔を上げると、そこにはお尻を上げてひれ伏す情けない少年の姿があった。
「痛ってえなあ、何で落下エントリーすんだこういうのは自然にワープとかそういうのが定番だろうが・・・ん?」
立ち上がった少年と目があった。
「「・・・」」
私には落ち度はないと思う。だけど何と言うか、ちょっと気まずい。
「・・・君は今、何も見てない」
「ふぇ?」
立ち上がった少年に急に話しかけられて変な声が出てしまった。でも目の前の少年は気にせず、目を見開きながら話しかけてくる。
「君は、何も、見ていない。あーゆーおーけー?」
「お、おーけー・・・」
肩を掴まれ、眼力で頷かされた。多分『はい』か『オーケー』しか選択肢がないやつだった。取り敢えずさっき見たことは忘れておこうと思う。
コホン、とわざとらしく咳を吐くと、今度は真剣な表情をした。表情がコロコロ変わって忙しい人だな。
「えーと、俺は学校の行方不明者を救出するために来た者だ。あー、だからその、君は必ず家に帰すから安心してくれ」
「家に・・・?」
どうして私と同い年くらいの子がそんなことをしているのだとか、そもそもこの空間を見て何も思わないのだとか、色々と疑問はあったけれど、その言葉を聞いて私はまた気力を無くした。
「・・・やだ、帰りたくない」
「帰りたくないって、ここは危ないんだぞ?怪我じゃすまな・・・」
「帰るくらいなら、死んだ方がマシだよ・・・」
優しく諭そうとする少年の言葉を拒絶し、顔を膝にうずめる。
放っておいて欲しかった。1人になりたかった。何も、考えたくなかった。
グ~~
「ッ!!」「!?」
暗い洞窟の中、その音はよく響いた。今日ほど死にたくなった日は無かった。誰か殺して・・・
すると、彼は手を組んで何かの形を作った。そして彼の陰から何かが2つ飛び出す。
「犬・・・?」
「狼だ」
白と黒の狼が彼にすり寄っていく。彼は二匹の狼を撫でると、頼むぞと言って私の隣に座った。二匹の狼は私達から少し離れた所で周りの様子を伺っていた。
「あいつらが呪霊・・・って言ってもわからないか。お化けが来るのを教えてくれる。取り敢えずここは今安全だよ」
「お化け、見えるの・・・?」
「見えるって・・・ああ、式神が見えてるんだからそりゃそうか」
そう1人で納得した。私以外に見える人に会うのは初めてで、何だか嬉しかった。
すると彼は自分の陰に手を突っ込んだ。そして出てきた手に握られてたのは・・・
「てれててっててー!カ〇リーメイト~!そして、み~ず~」
だみ声と共に現れたのは保存食と飲み物だった。式神?と呼ばれたあの子たちはお化けと同じだと思うからわかるけど、何でそんなものまで入っているのかがわからなかった。この人はドラ〇もんかもしれない。
でもこの人頭青じゃなくて黒いよな、と思っていると、保存食を渡してくれた。
「等価交換だ。これを食べてさっきのことは忘れるんだ。いいね?」
「・・・わかった」
さっきのことをまだ引きずっているのか。そう一瞬思ったけれど、これは私が気に病まないように言っているとすぐわかった。根拠なんてないけれど、そんな気がした。
「お化け見えてるとさ、なんか人に引っ付いてたりするのがいて気になったりするよなー」
保存食をかじっていると、声をかけてきた。食べている最中に喋るのは行儀が悪いけれど、そんなこと気にしなくてもいっか、と思って口を開いた。だって、色々とどうでもよくなっていたから。
「・・・うん。この前は他の子を叱ってる先生の顔に小さいのがくっついてて、おならしているのを見て笑うのを我慢するの大変だった」
「ふふ、確かにヤバいなそれ。俺は師匠とケーキ食べに行った時、お化けが寄ってきてさぁケーキに触られたくなくて手を振ったら周りから白い目で見られてマジで恥ずかしかった」
「師匠?」
「ああ。俺の体術の先生でな・・・」
お化けが見える。そんな共通の話題から始まった会話。でも、段々と話題は逸れていき、会話が止まらなかった。彼はリアクションをちょくちょくオーバーにしたり、身振り手振りで表現して、話だけじゃなく彼を見ていても楽しかった。
「それでドブカスが『ぶっ殺してやらあ!!』って言いながらフル〇ンで追いかけまわしてきたわけよ。ありゃ過去一で恐ろしかったね。それでついたあだ名が進撃のポコ〇ン」
「ふふっ」
たまに何かのネタみたいな単語が出てきてわからなかったけれど、雰囲気で楽しめた。アニメが好きなのか聞いたら「うん!大好きさ☆」と言っていたからアニメや漫画のネタなのだろう。個人的に気に入ったのは、「呪術ってなあに?」に対しての「さあ、なんだろうね」である。呪術については完全にはぐらかされたが、どちらのフレーズも覚えた。今度調べてみよ・・・
「・・・」
「ん?どうした急に。腹が痛いのか?」
私の顔を覗き込んでくる、黒い瞳。妙に会話が弾んでしまったけれど、忘れてはいけない。私は、帰るつもりなどないのだ。なのに、彼と話していると私は・・・
これ以上彼と話してはいけない。そう思った私は隣の彼から距離を置いて座り直す。
「え、なに、何なの?もしかしてあれ?臭いとか思われてた?何々菌みたいなあれ?」
「それなら逆よ。私って臭いらしいし触れると菌が繁殖するらしいから・・・」
「oh・・・お前もか」
私の言葉を聞いてうんざりしたような顔になる。・・・もしかして、この子も同じなのかな?
「君も、嫌がらせされてるの・・・?」
「昔な・・・って、今もされてるな」
そう言って、また隣に座ってきた。
「あいつらうざいよなー。関わらないように離れても探してなんか色々やってくるし、わざわざこっちに聞こえるように悪口言ってくるし、控えめに言ってくたばれクソ野郎共」
かなりご立腹のご様子だった。でも、なぜだろう。元気がないように見えないのは。
「つらく、ないの?」
私は言ってから後悔した。これは、私の立場だったら言われたくない事。それを、何も考えないで言ってしまった。だから、急いで発言を取り下げようとしたけれど、先に答えが返ってきた。
「滅茶苦茶しんどいけど?」
さも当たり前のようにそう言った。怒るでも、しんどそうにでもなく、常識を聞かれて困惑するかのように。
「自分が嫌な事されたら嫌な気持ちになるなんて普通じゃん。悪口言われたら悲しい気持ちになるし、叩かれたら痛くて泣きたくなる。何もおかしくなくない?」
彼の言葉は、ストンっと私の心の中に落ちていった。
「だからそいつらが1人になった時に闇討ちして心へし折ってやったわw」
「それなんて蛮族?」
前言撤回。落ち切らずにそのまま跳ね返ってあらぬ方向に飛んで行ってしまった。私はこの気持ちをどうすればいいんだ。返せ私の共感を。
「失礼だな、闇討ちと言っても気絶させた後拷問まがいのことやっただけだから文明人レベルはあるぞ」
「言い方変えるね。血も涙もないね君」
「年単位の暴力と嫌がらせを報復するならこれくらいするだろ」
「思いついてもやらないよ普通・・・」
先程まで彼に共感を覚えていたのに、別の国の人と話している気分になった。なんで真面目な話をしてたはずなのにツッコミみたいなことしなきゃならないの・・・?
「まあとにかく、俺が言いたかったのは・・・」
「暴力こそ全て?」
「いや違うから。それはあくまで手段の一つだから・・・」
すごい、ここまで説得力の無い言葉、生まれて初めて聞いた。
「自分にとって嫌なことが起きているなら、全力で足掻かないと。じゃないと何も変わらない」
「・・・それで、闇討ち?」
「ああ」
私の顔を見ながら話していた彼は、膝を抱えて何処か遠くを見ながら話し始めた。
「俺さ、さっき言った通り・・・いじめられてたんだ」
ポツリと、明かしてくれた。
「当時、そりゃもう辛かったさ。何でこんな目に合わなきゃいけないんだーって、ずっと思ってた。んで、途中から考えるのを止めてた。でもさ、いつからだったか、ヒーロー番組を観るようになったんだ」
嬉しそうに、語り出す。
「どんな悪い奴もノックダウン。弱者を守り、強者を挫く。俺がその時最も欲しい人が、テレビの向こう側にいた。でもさ・・・」
そんな人、現実にはいなかったんだよ
これは、彼にとっての黒歴史なのだろうと思った。居もしない誰かを待ち焦がれ、期待して、何もしなかったという結果だけが残った。そう言いたいのだろう。
「それでさ、そんな時に見たのがダークヒーローだったんだ」
「やり方は汚いけど、自分の芯は絶対に通す」
「守りたいものは絶対に守り通したその姿」
「その姿を見て、なりたいものが決まったんだ」
彼の話す姿はまるで、夢を語る子供の姿の様だった。先程までは見た目にはそぐわない、どこか大人びたものを感じていたのに。きっとこれが、彼の本心。
「怖いのも悲しいのも、全部強さに変えようとして、理想に憧れて、その上で自分に嘘をつかなくなったら、邪魔者は追い払えたけど今度は誰も寄り付かなくなったんだよ」
彼は、苦笑しながら喋り続ける。
「まあ、やりたいことは全部やれたから、後悔は無かった。それに、自由が気持ちいことを知れた。俺を見て可哀そうとか言う奴もいたけど、とんでもない。間違いなく、自分の心を騙している時より幸せだった」
暗かった過去を、明るいものに変えた彼は自信をもってそう言った。
「それで、えっと、俺が言いたいのは・・・そう、俺達はもっと自由に生きていいんだよ」
黒の中の、その奥に光を灯したその瞳が、私を見る。まるで、私の本心を見透かすように。
「君は、どうしたい?」
彼には、私のことは何も話していない。だから私の事なんてわかるわけがない。それなのに、どうしてあなたは、私の心に触ってくるの?
「わた、しは・・・」
抑えようと、忘れようとしていた気持ちが、私の奥底から這い上がってくる。何も考えなければいいと思っていた。何にも希望しなければ、これ以上惨めになることも、辛くなることもなかったから。でも、そんな私の弱い意志なんてどかして出てきた、私の心の底から出た本音。
「もう叩かれるのも嫌がらせされるのも、何より私を受け入れられないのは嫌!!もう全部、全部!無茶苦茶にして壊したい!!」
それは、今ある環境を無きものにしようとする破壊願望。あまりに危険であまりに無謀。そんなもの、とてもではないが人間社会で受け入れられるわけがない。
「オーケー、じゃあ好き勝手暴れてやろう。お前を傷つけるもの全部壊して、不良にでもなっちまおうぜ!」
そんな私の願望を、彼は正面から受け入れてくれた。
「いいの、かな。こんなこと・・・」
「いいだろ別に。お前だけが傷つく必要はねえよ。傷つける奴も、それを見て見ぬふりをするやつも、全部全部ぐちゃぐちゃにしてやろう!俺もそうしたし。あ、なんなら俺が手伝ってやろうか?」
・・・ああ、そこまで言ってくれるのか。私の
幼いながらにわかる。この人は劇薬だ。どん底にいる人間にとって、ただのきれいごとなんて聞きたくもない。正論でどうにかなるなら既に解決しているだろう。だから私のような人間は救われない。そんな中に、暗闇の中でも輝くものがあったらどうか。私みたいな汚いものでも受け入れて、それでも輝くのだ。魅入られずには、いられない。
「・・・ううん、大丈夫。これは、私一人でやるから意味があるの」
一瞬彼の提案を受けかけたが、それを断る。彼が手を貸してくれれば、絶対に上手くいく。そんな確信があった。でも、それでは意味がない。私の手で全部壊して、私の手で変えなければ、私は前に進めない。彼の言う、自由が手に入らない。
「そっか。それじゃあこんな所、さっさとおさらばしよう」
彼は立ち上がって砂利を払うと、私に手を伸ばした。
「本当の意味で、自分を始めるために」
私は、その手を取って立ち上がった、その時だった。
二匹の狼が遠吠えを上げた。
「! 下がれ!!」
白い狼がいる方に私を下げさせると、その逆から何かがこちらに向かってきている。
洞窟の中を、一つの大きなボールが弾みながら近づいてくる。その上には、1人のピエロがいた。洞窟という場所にそぐわないその存在が距離を詰めてきて、止まった。ケラケラ笑ってお手玉始める。彼は手を組もうとして、手が止まった。
「・・・マジか」
彼が視線を送った先を見ると、他のお化けがたくさん集まってきた。そしてあっという間に囲まれてしまった。
(クソ、領域展開がダメになった!この娘が領域内に入ったら俺の領域の特性上死にかねない。あいつは恐らく一級。1人抱えながら勝てる気がしねえ!この娘を領域に巻こまなかったとしても、もしこいつらの他に呪霊がいたら守れない!大人数でなぶり殺すつもりで呼んだんだろうが、結果として切り札が使えなくされた!こちとらまだ二級だぞ、クソ!)
彼は歯噛みして、何かを考えている様子だった。何を考えているのはわからない。でも、これだけはわかる。私が足手まといなのだろう。
「・・・私のことは気に「俺は真の男女平等主義者、女の子にもドロップキックをかませる男だ」へ?」
顔を半分、私に向けた。
「お前は絶対に帰す。だからふざけたこと言うな。黙って見てろ」
前を向いて構える。彼の背中はとても大きかった。
決意を決めた私はこの日初めて、呪いの戦いを見ることになる。