クリスマス?そんなイベント知らないなぁ(遠い目)。
直哉side
誠君が高専に入学した次の日の昼頃。俺は道場で倒れ伏す真希ちゃんの手を踏みつけていた。真希ちゃんの手の先には、薙刀代わりの長い棒が一つ。
「はい、これで俺の勝ち。何度も言うとるやろ、真希ちゃんは俺と組手するにはまだ早いって」
それを聞いて歯を食いしばる真希ちゃん。今回の組手は術式・呪力無しで、真希ちゃんは武器ありでの組手。当然俺の圧勝だった。
「うるせえ!もう一回だ!」
「だからこういうのは順序が大事なんやって。せめて信郎君倒せるレベルになってから俺に挑めや。俺だって暇やないんよ?」
それでも不服そうに顔を歪ませる。はあ。どうしてもというから付き合ってやっているが、三回やって一撃も入れられてないんやから、いい加減にして欲しいわホンマに。仕事を早めに終わらせて自己鍛錬するはずの時間を態々真希ちゃんに使ってやってるんやから、むしろ感謝してほしいわ。一級術師に時間とってもらえることに感謝しいや。それに少しは女の子らしい振る舞いしてみたらどうなんや?乙女のおの字もないで?
それに比べて真依ちゃんは立派やね。自分が女やと理解しとる。
今母親に卵焼きの作り方を教わっとる真っ最中や。誠君が帰ってきた時に食べさせたいんやと。それくらいの女子力を発揮したらどうなんや真希ちゃん。
「直哉さん、ああは言ってるけどここぞとばかりに真希をボコボコにしてたよな」
「ああ。甚爾さんと同じフィジギフだからって子供相手に嫉妬とか何やってんだあの人」
「そんなんだから誠さんにドブカスって呼ばれるんだよ」
「聞こえとるからなお前ら!」
俺らの組手を見ていた奴らに怒鳴る。やかましいわ、次の組手の相手はアイツらやな。
まああんなこと言ってはいるが真希ちゃんを助けようとする素振りは見せん。それは別に見捨てているだとか見ないふりしているとかではなく、真希ちゃんがこうなる事をわかった上で俺に組手を頼んだのを知っているからや。じゃなかったら負けると分かってても全員で特攻かましよるからなアイツら。マジで怖いで、目が。『扇松事件』は悲惨やった・・・
「ま、のんびりやりぃや。どうせどれだけやっても準一級が関の山なんやから」
そう言って俺は真希ちゃんの手から足を退けた。
「・・・うるせえ」
どうやら今のはそこそこ堪えたらしく、少し拗ねた反応を返してきた。
準一級。これは真希ちゃんが呪術師になりたいと言った時に誠君が伝えたものや。どれだけ技術を磨いても、半端な力では呪力持ちに敵わない。真希ちゃんを心配してなのか、珍しくそうはっきりと真顔で幼い真希ちゃんに言った。なら絶対に一級術師になると啖呵を切った真希ちゃんを誠君は止めなかった。まあ啖呵を切ったとはいえ、その時の誠君の言葉は今でもそこそこきついらしいけど。
— なお、本当は現実を突きつけることで呪術師になることを止め、自分が殺される可能性を止めようとしての行動である。だがその程度で真希が止まるわけもない。手段として、子供の時点での真希の殺害もあったが速攻却下。誠は
「取り敢えず真希ちゃんは休憩。ほらそこのゴミ共、今度はお前らの番や。せめてサンドバック代わり位にはなれよ」
「あ、これマジの奴だ」
「俺、これが終わったら彼女と結婚するんだ」
「お前彼女いないだろ」
ぞろぞろ俺の前に立つ術師たち。いざ始めようとした時、俺の部下が1人近寄ってきて耳元に口を寄せてきた。
「・・・わかった。お前ら堪忍な。ちょっと用事できたから出かけてくる」
「どうぞどうぞ」
「もう戻って来なくていいですよ」
「あ、お土産だけはください」
「よし、最後らへん二人の顔は覚えた。帰ったらみっちりしごいたるからな♡」
「おいおいおい」
「死んだわあいつら」
死刑宣告して二人の目が死んだことを確認してから俺は道場を後にする。あんま時間が無いかもしれへんからちょっと早歩きで。すると親父と鉢合わせた。
「直哉、この時間は道場じゃなかったか?」
「誠君が任務に手こずっとる情報を手に入れてな。今から貸しを作りに行くところや」
俺はニヤニヤと親父に言う。低級の呪術師と行っとるらしいから、きっとそいつが足引っ張っとるんやろう。そこを華麗に助けた時、誠君がどんな顔するか見ものやわ。考えるだけでゾクゾクしてきたで。
「ま、せいぜい頑張れ。誠がお前に助けられる姿など想像できんがな」
そう言って大声で笑いながらどっか行きおった。とっととくたばれクソ親父。俺はそう願いつつ、チャンスを逃さないために急いで廃病院へと向かった。
(誠が家を出てまだ一日しか経っておらんというのに)
「・・・ブラコンめ」
「ゴミカスゥー!スゥー、しねぇー!!」
「なんでこの距離で聞こえるんだお前は」
八乙女side
復活したものの、私が置かれていた状況はそんなに変わっていない。目の前にはカイ〇キーモドキ、後ろには一般人。私の心は全開、体の方は客観的に見て満身創痍。これらを鑑みて・・・
「丁度いいハンデね!」
私は右手を銃に見立てて一級呪霊に向け、呪力を込めた。
一級呪霊は肉の管を伸ばしてそれを妨害しようとしてきたけど、もう遅い。
「
一瞬の溜めの後、私を覆うほど巨大な風の球が飛んでいき、肉の管をミンチにしながら一級呪霊に直撃する。表面は刻まれ、後ろへと押し出していく。だが押し出しながらも、ダメージよりも回復する速度の方が上回っていた。
あの呪霊の術式は恐らくは回復系だろう。どうりでタフなわけだ。まだ不完全とは言え、嵐神の火力は低くないと見積もっている。それでも倒しきれない。なら、私の呪力を全て使い、手印と祝詞も行った最大化力で押しつぶす。そのために、隙を作る必要がある。
「取り敢えず、頭ね。突風」
一歩、歩みを進めた瞬間、私はトップスピードに到達し、一級呪霊の目の前へと移動してその頭を刎ねるように蹴りを放つ。それをギリギリで対応した一級呪霊が左腕を盾にし、さらに頭と首を呪力で覆った。更には受けた直後に反撃を行うため、余ったもう一本の左腕を振りかぶっていた。
— 黒閃 —
蹴りが衝突した瞬間、空間は歪み、呪力は黒く光った。
盾にした腕は砕け、一級呪霊は初めて大きくよろけた。私はジェット噴射のように背中から風を発生させて飛び蹴りを放ち、一級呪霊の胸を貫いた。
「外した!」
「鎌鼬!」
私は刀を振り下ろし、それをなぞるように不可視の斬撃が放たれる。一級呪霊は拳を振るうが、先程までの威力の比ではない鎌鼬を妨げず、拳は両断された。だが首から上をロケットのように脱出させて回避し、胴体をすぐに回復させた。
だが、肉体は変化していた。先程よりも肉体を固く設計したらしく、昆虫のような外殻を有していた。首は顕著で、動かせない代わりに、ガチガチに固められている。よっぽど首を刎ねられるのが怖いらしい。
「鎌鼬」
刀を振るい、無数の不可視の斬撃が放たれる。これは威力より数を優先した鎌鼬。これでは装甲に傷をつけられないが、装甲の隙間に入ればそれでいい。そして狙い通り、いくつかその隙間を切り裂くことに成功した。
「■■■■!!」
「その斬撃は夕風と同じように入り込んだ箇所から体内を破壊していく。それが十や二十と増えて、あなたはいつまで耐えられるかしら?」
体の内側から破壊され、悶える一級呪霊。この状況を不味いと判断したのか、鎌鼬の中を突っ切ってきた。そして、四本の腕と手指を伸ばして呪力の弾丸、いや、呪力のマシンガンを放ってきた。
「竜巻、突風」
私は後ろにいる少女の周りに、竜巻を利用したバリアを張り、私には突風によるスピードを上昇させ、この闘技場の中を縦横無尽に飛び回る。手数が多いため何発か掠り、宙に血が舞うが問題は無い。致命傷となるものは全て躱すか弾いている。
今の私は調子が良い。呪力が全身を巡り、集中が全く途切れない。視野が広い。呪力操作を誤る気がしない。私は今、ベストコンディションだ!
そんな状態だからこそ私は、戦闘における一瞬の隙、一呼吸の間を見つけた。
「突風」
その小さな一言で、一級呪霊と私との距離はほぼゼロになった。一級呪霊は腹から拳を生やして応戦するが、それを重心を少しずらすことで紙一重で躱し、一級呪霊の腹に左手を添えて一言。
「爆風!!」
私の手から放たれた暴風が巨体を持った一級呪霊を吹き飛ばし、壁にめり込ませた。表面に傷が付けられなくても、衝撃によって中身にダメージはあるはずだ。私はその隙に、手印を結ぶ。
「日輪 嵐の夜 黄泉」
一級呪霊は体を起こそうと、動き出す。めり込んだ壁から這い出たらしいが、こちらの準備は終わった。私は右手を突き出す。
「嵐ッ神ッ!!」
一度目とは比べ物にならないほどの濃度の風の球が手のひらサイズまで一気に凝縮され、放たれる。それは一級呪霊に触れた瞬間、一気に巨大化した。その特大の一撃を耐えようと藻掻き、こちらに手を伸ばすが、再生速度が間に合うことは無い。嵐神は肉体を粉微塵にして飲み込む。そして、一級呪霊の姿は跡形もなく消え去った。
「ッ!」
膝を着き、力が抜けたことで少女を守っていた竜巻が消える。
「お姉さん!」
少女が駆け寄ってきた。膝を着いて、心配そうにこちらの様子を窺っている。
・・・取り敢えず、一言。
「勝ったぜ、ぶい」
残念ながら腕を上げる余力が無いため、笑顔だけで許して欲しい。少女はそれを見て一瞬キョトンとして、少し笑った。
「悪いんだけど、肩を貸してもらえる?ちょっと、や、ば・・・」
「お姉さん!?」
そこで私は、意識を手放した。
これ終わったら赫やったり五条と八乙女の絡み(仁義なき戦い)やったりネタに尽きねえ!勝ったながはは!
金剛、お前はもうちょい待て。それまで空気だお前は。