五条悟からは逃げられない!   作:創作好き

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皆さん、本当にありがとうございます!!

今回は五条視点です。戦闘もあります。呪術廻戦で戦闘シーンを書いたのは初めてですが、楽しんでいただければ幸いです。



悪魔との10秒間のラストワルツ

五条悟side

 

あの日、あいつに話しかけたのはただの気まぐれだった。

その日は事前に禪院家から当主が来る話は聞いてたけど、興味もなかったから会議には行かずに家の中をブラブラ歩いていた。

退屈だった。少しでも何か面白いことがないかと思っていたら、変なものを見つけた。

 

庭にある池の傍でしゃがみこんでいる影が1つ。黒い髪、黒い目をもった俺と同い年くらいの何処にでもいそうな子供。一言でいえばパッとしない奴だった。

 

でも、そいつの目と呪力の流れが気になった。黒は黒でも底が見えない、絶望を伴ったかのような目。後から知ることになるが、ああいう目を死んだ魚の目というらしい。それが珍しくて目を引いた。

そして気になったもう一つの理由、呪力の流れ。そいつの呪力はまるで川が流れるかのように綺麗に流れていた。それを意識的なのか無意識になのかはわからなかったが、今の家の当主より呪力を流すのが上手いんじゃないかと思った。

 

なんだかおもしろいことが起きる予感がした。今までにないワクワク。この退屈な日々を終わらせてくれるのではないかという、そんな予感。

 

草履を履いて、あいつの背後へと歩き出す。あいつはまだ金魚を見ている。何か考え事をしているのだろうか?

 

「じゃなくて!」

 

唐突に奇声を上げた。池を見つめていて声を荒げることなんてあるのだろうか?更に距離を詰めた。

 

「チーズ蒸しパンになりたい・・・」

 

「何言ってんだお前」

 

あまりに意味がわからな過ぎて話しかけるより先に突っ込んでしまった。いや、だってチーズ蒸しパンになりたいってなんだ。今考えても理解できない。

後で聞いてみたが「あの時はチーズ蒸しパンになりたい気分だったんだよ。因みに今食べたいのはポテチ」と言われた。んなこと聞いてねえよと返した。

ポテチうまかった。

 

・・・話を戻す。

俺の声に気づいて振り向き、一瞬呆けた後、二度見してきた。よっぽど俺の外見が珍しかったのかじろじろと見てきた。未だに動揺していたが、俺はそれを無視して話しかけた。

 

「お前ここで何してんの?」

 

「家に帰ってジャ〇プ読みてえなって考えてた」

 

何か自信満々に答えてきた。金魚眺めながらチーズ蒸しパンになりたいって呟いてジャ〇プ読みたいってどんな思考回路してんだ、そのジャ〇プってやつとチーズ蒸しパンに何の因果関係があるんだよって思った。何かコイツ面白いな、とも思った。

取り敢えず話を広げるために更に話しかける。

 

「ジャ〇プってなんだ?」

 

「知らないの!?」

 

「・・・知らなきゃ悪いかよ」

 

当時の俺は、外の娯楽にそこまで興味がなかった。何もかもがどうでもいいって思ってた。

だからジャ〇プのことも知らなければ、日本人なら常識のかめ〇め波すら知らなかった。

 

「その、違いましてねぇ、えっと、ざっくり言うと、ジャ〇プていうのは色んな漫画の作品を集めた雑誌なんです。今度読んでみたらどうですか・・・?」

 

その答え方に俺はムッとした。何か急に腰を低くして答えてきたからだ。なんだこいつ、情緒不安定か?と思った。更に話しかける。

 

「ふーん、あっそ。じゃあ何か面白いの教えろよ」

 

「うーん、無難なのだと、ド〇ゴンボールとかですかねえ」

 

「どら〇んぼーる?変な名前。つまんなそう」

 

「は?」

 

低姿勢だったのに急に怒り出した。後に俺のこの発言は間違いだったと気づき、この発言を撤回することになるが、この時の俺はあいつが反応を示したことが面白かったんだ。

ドラゴ〇ボールマジおもしれえ。フ〇ーザの絶望感パネェわ。

 

「何?何か文句でもあんの?」

 

更に煽って反応を見ることにした。これでどんな反応を示すのか楽しみだった。

あいつは少し黙ったかと思うと、急に笑顔になって喋り出した。

 

「ううん、平気。まあ所詮は世間知らずのボンボンだから、そんなこと言っちゃうのもしょうがないよね。ここは僕が大人にならないとね。ごめんね、君が世間知らずだってことを考えてなく。ごめんごめん」

 

クッソ煽ってきた。謝ってる風を装って滅茶苦茶馬鹿にしてきた。今まで敵意や殺意を向けられたことは数えきれないほどあったが、真正面からここまで煽られた経験はなかった。

 

「は?何、喧嘩売ってんの?」

 

「まさか。そんな大人げないことしないよ。それに僕は謝ってるんだよ。どうしてそう思ったんだい?理解に苦しむな」

 

手振り身振りを使ってさらに煽ってくる。

言葉だけじゃなく態度も舐め腐っていた。どうやら煽るのをやめる気はないらしい。きっと俺のこめかみはピクピクと動いていただろう。我慢の限界だった。

 

「・・・ぶっ殺す」

 

手をコキコキと鳴らして近づくと、俺の殺気にびびりだした。

 

「すぐ暴力に訴えてくるとか原始人かよ!恥ずかしくねえのか!」

 

「てめえはその原始人に殺されるんだよ原始人以下!」

 

もう俺の怒りは止められない。顔面ぶん殴って骨の一本か二本はへし折ってやるつもりだった。俺の説得が無理だと判断したあいつはすぐさま逃げ出した。

 

「なんだぁ、逃げんのかぁ!」

 

勿論逃がすつもりはない。俺は笑顔で追いかけた。気分は獲物を追いかける狩人だ。

だが思っていたよりもあいつは足が速かった。俺も運動には自信があったが、どうやら足の速さはあいつの方が上らしい。

 

だから、丁度よかったから試すことにした。躱せなかったらそれまで。だけど、俺の予感が正しければ・・・

 

右腕を上げ、手印を結ぶ。空間から無限を削ることで全てを飲み込む穴を作る不可視の一撃。

 

「術式順転 蒼」

 

「ほぎゃあああああ!?!?」

 

躱した、躱した!右足を削るつもりで放ったけど、恐らく俺の視線からその方向を瞬時に把握して飛び退いた!

俺は興奮しているのをバレないようにするために顔に出ないよう喋る。

 

「へえ、やっぱ躱すのか」

 

「殺す気かお前は!?」

 

「だからそう言ってんだろ!!」

 

鬼ごっこ再開。その後も呪力を込めて殴りかかったりしたが、それも躱された。

殺すつもりはないとしても、全力でやってるのに倒せない。

ワクワクが止まらない。さあ、こいよ。一方的じゃつまらないだろう!

 

 

「うるせえ!無下限を突破できる手段なんざこちとら持ってねえんだよ!」

 

 

それを聞いて、足が止まった。そして理解した。そっか、コイツも俺に近づけない(・・・・・)

それがわかると、俺の何かが一気に冷めた。さっきまでの興奮が嘘みたいだった。

裏切られたような気持ちになった。確かにこれは俺の一方的な願望だった。でも、それでも、この失望という感情は抑えられなかった。

 

「あっそ。もういいよお前、どっか行けよ」

 

そして背を向けて立ち去ろうとした。早くどっかに行ってほしい。じゃないと殺したくなるから。期待だけさせといてこれはねえだろと、理不尽に思ってた。

 

 

後ろから呪力を感じ、足音が聞こえた。まさかと思い、振り返った。

 

そこには死んだ魚ではなく、黒いダイヤモンドのようにギラギラと輝かせた目を持ち、悪魔のように口角が上がっているあいつが飛び上がっていた。

 

「チェストオオオオオオ!!」

 

ドロップキックが俺めがけて放たれる。そして当然無下限呪術によってそれを防いだ。その直後、俺の陰から狼の式神が俺の首を掻っ切ろうしたが、爪が届くことはなかった。

 

「・・・へえ、やる気になったんだ」

 

「ああ」

 

距離を取ったあいつをもう一度よく見る。目には戦意が宿り、全身の呪力が先程よりも速く循環している。まるであっちが狩人で、こっちを獲物としてみているような、そんな顔。

やる気満々、絶対に勝つという気概が感じられた。

 

正直、俺が負けるとは全く考えられなかった。でも、頭ではわかっているのに、気を抜けば足をすくわれると俺の勘がけたたましく訴えてくる。

 

「今からてめえを屈服させる!!」

 

今までに感じたことがない程の覇気。六眼と無下限呪術の抱き合わせである俺を狙ってきた奴はごまんといた。だが大抵は実力差もわからず返り討ちにされるか、俺を見て早々に逃げ帰るかのどちらかだった。

 

だがこいつは違う。俺の実力を理解したうえで、五条悟()を狩りに来ている!!

初めての感覚だ。俺を見て、俺を倒そうとするこの圧!!

 

もう手加減なんかしてやらない。互いに思う存分・・・

 

 

呪いあおうじゃないか!!

 

 

 

 

その後の数分間は激戦だった。あいつは無下限呪術を突破できないか持ちうる手段を片っ端から試してきた。式神や式神を使った同時攻撃や波状攻撃、簡易領域や落花の情、さらにはそれらを応用した技術を使って攻撃した。もちろん全て俺に届くことはなかったが、1つだけ気になるものがあった。

 

簡易領域とあいつの生得術式の陰を組み合わせた結界術。あれはほんの薄皮一枚だけだが俺の無下限呪術を中和した。ダメージなんてない。だが、それでも俺はひやひやした。俺の勘どおり、あいつは俺の首を掻っ切りかねないと。俺に近づきつつあるんだと感じた。

だがやはり、あいつは着実に呪力を消耗していった。

 

対して俺は無傷ではあるが、まともに攻撃を当てることすらできずにいた。術式順転は見切られ、格闘技も躱すか流されてばかりだった。間違いなく格闘技はあっちが上。そんなんだから有利であるはずなのに喜べずにいた。

 

いや、嘘だ。滅茶苦茶喜んでいる。何故ならこんなにも真っ向からぶつかれる相手がいなかったから。俺は歓喜していた。

 

あいつの勝利条件は呪力が切れるより先に無下限呪術を突破する手段を見つけること。俺の勝利条件はあいつの呪力が切れるより先にあいつをぶっ飛ばすこと。呪力切れでの決着なんて認めない。そんなものは勝利とは言わない。だから、それより先に実力でねじ伏せて見せる!

 

そしてようやく一撃を入れる機会が訪れた。あいつの攻撃にカウンターを入れたのだ。

だが、屋敷の中に吹っ飛ばせたが両腕と呪力でガードされていた。決まったと思ったのに。

 

キッショ、なんで(防御)間に合うんだよ。

 

ワクワクが止まらない。いまだにこちらが有利であるというのに気を抜けない。興奮と緊張が混ざったそんな状態で、土足で屋敷に足を踏み入れる。

 

すると父親とお付きがなんか出しゃばってきた。

「落ち着け」だの「暴れないでくれ」だの、鬱陶しかったから「これ以上邪魔したら殺すぞ」と言ったら引っ込んだ。たく、この程度で引くなら最初から出てくるな。あいつならきっと殴りかかってくるぞ。

 

ここで、未だにあいつの名前を聞いていないことに気づく。だがすぐに後回しにすることにした。一刻も早くあいつと殴り合いたい。名前を聞くのは、全部終わってからでいいだろう。

 

部屋の奥へと歩くと、あいつが待ち構えていた。その目には闘志が失われていない。それどころか輝きが増しているように見えた。

 

「待たせて悪かったな。周りがうるさくてさ」

 

「気にすんなクソガキ。お陰でぶっ飛ばし方が思い浮かんだから」

 

詫びを入れたら煽りながらそんなことを宣う。僅かな時間で思いつくものか?ハッタリだろうか。んなわけねえか。

 

「へえ、まだ勝つ気でいたんだ。そのちっさい脳みそで何が思い浮かんだんだ?聞かせろよ」

 

こちらも煽り返して尋ねる。さて、今度は何を試すのやら・・・そんな余裕のある上からの態度をしていたが、実際は嫌な予感がしていた。

 

「まあまあ慌てんな」

 

そう言って手印を結び、予感が確信へと変わった。

 

「今から見せてやる」

 

それは、呪術戦の極致。扱えるものはごく僅かしか存在しない奥義。

 

「領域展開」

 

 

 

混沌影魔庭(こんとんえいまてい)

 

 

 

先程までいた屋敷の風景は原型を無くし、新たな世界が象られる。

そこは一見洞窟のようだが、天井は小さな光源によってびっしりと埋め尽くされており、それぞれが不規則に明るく点滅し、世界を照らす。だというのに床は何処までも黒く、天井の光に照らされることはない影の沼。

そして何処からか優しい笑い声とあざ笑うような声が2つ。

 

まさにカオス。そこは見ただけで人が立ち入ってはいけないとわかる異界。そして、そんな世界を作り出した悪魔が、俺と戦う為だけに作り出した舞踏会だった。

 

六眼によって状況は瞬時に理解した。領域展開による術者の能力の底上げと領域全体の必中効果をカット。そして必中効果をあいつの周りから繰り出す術式にのみ絞ることで、代わりに領域展開の難易度を一気に下げたんだ。そしてあいつの両腕と両足には影が纏わりついている。あの影は術式の一部。つまりあいつは、俺を殴れるということだ!

 

まあ難易度を下げたからと言ってそんなぽんぽん使えるものじゃねえんだけどな領域展開(これ)。思い付きで、それもこんな土壇場で習得したのは頭がおかしい。

だが領域展開(これ)を使ったんだ。あいつの残り呪力を考えれば10秒維持するのが限界。それを過ぎればあいつは倒れるだろう。

 

つまり、互いに相手を倒すタイムリミットは10秒!この10秒が、俺達の待ち望んでいた時間だ!!

 

初手、俺達は駆けだした。順転は使わない。どうせ躱されるし、その隙を狙われたらたまったもんじゃない。迷いは無かった。互いの間合いに入るのに1秒。

 

そして間合いに入った瞬間、互いに呪力を纏わせた拳によるラッシュが始まった。

この眼を持ってしても気の抜けない攻防。右ストレートを繰り出すも、左手でいなされ。左手でジャブをしても拳で真っ向から弾かれた。

 

永遠とも感じられたラッシュは、時間にして5秒で終わりを告げた。

 

あいつの右ストレートが俺のガードと衝突した瞬間、呪力は黒く光り、空間が歪んだ。

黒閃。呪力の流れと打撃との誤差0.000001秒以内の場合に発生する現象。その威力は約2.5乗にも膨れ上がった。

両腕に痛みが走り、ガードが破れるどころか後ろに吹っ飛ばされた。残り3秒。

 

俺は飛ばされ足が影の沼から離れるも、すぐさま足を踏ん張らせて待ち受ける。そしてあいつが跳んできた。これが最後の合瀬。お前ができたんだ。俺にできない理屈はねえ。

 

互いに腕を振りかぶる。だが目標に届くには僅かに俺の方が速い。イメージしたのは、あの黒い輝き。俺は確信する。あれが出ると。

そのまま吸い込まれるように俺の拳はあいつの眉間に向かった。

 

悪魔は、嗤っていた。

 

「がうっ!」

 

痛み。

 

・・・痛み?なんだ、何の痛みだ?思考が一気に散る。俺の邪魔をするこの痛みは何処からだ?探して、すぐに見つけた。右腕だ。俺の右腕が軌道をずらしていた。そしてその右腕には黒い狼が噛みついているのが見えた。

 

そして、あいつの拳が黒い閃光と共に俺の眉間を打ち抜き、俺は影の沼へと叩きつけられた。

 

 

 

 

世界は戻り、風景は屋敷の中に戻った、ような気がする。視界がぼやけていてよくわからない。

 

そんな状況でさっきのことを考えて、理解した。あいつの左腕の陰から式神の半身が飛び出していたのだ。俺達の距離は式神の全長よりも短かった。だから術式の必中適用距離となり、既に噛みついている状態で式神が召喚されたのだ。

 

成程、完敗だ。俺がデカい一撃を食らわせようとし、あの間合いに入った時点で負けが決まっていたわけだ。

 

意識が薄れていくのを感じる。

すると、嗤い声がした。それもいやに耳に残る嗤い方だ。

そうか、お前もか。ああ、俺も本当に楽しかった。

 

次は俺が勝つ。そんでまたお前が熱くなって俺を負かして、また俺が勝つ。

だからまたやろう。何度でも、何度でも。

 

そうしてあいつは、最強の戦跡を五条家(ここ)に刻んだ。

 

 

 

 

この日、呪術界に激震が走った。最強と呼ばれた六眼と無下限呪術の抱き合わせ、五条悟がとある少年に敗れたという噂が広がったのだ。当時の五条家当主はこのことを漏らさぬよう手を回したが、既に遅かった。

 

五条悟を倒したというその少年の名は禪院誠。この件をきっかけに、彼には懸賞金が掛けられることとなる。

彼にもう、平穏は訪れない。

 




特別な目を持った(六眼)少年と、見た目にそぐわない年齢(転生時の年齢換算)で、自身の世界を展開した(領域展開)男が戦う・・・俺はいつから〇姫を書いていたんだ?

ところで黒閃って空間が歪むらしいですけど、それで無下限バリアー突破できませんかね?
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