禪院直哉side
俺は生まれた時から特別やった。御三家の一つである禪院の当主、禪院直毘人の息子として生を受け、多くの才に恵まれとった。
早くに相伝の術式を持っていることが判明し、親父譲りの呑み込みの早さと褒めたたえられていた。次期当主は俺だろうって、みんなが言っていた。一つ上に天才と呼ばれている奴もいるらしいけど、そいつはまだ術式もわかってへん。この前見に行った時も、大人の練習試合をじっと見ている姿は不気味やったけど、見た目はパッとしない、モブのような奴やった。
強者を知らなかった俺は呪力を持たないとうじくんを見に行って逆に脳を焼かれるようなこともあったけど、それ以外に関しては、俺は何にも縛られず自由やった。
「聞いたか?あの天才の術式が十種影法術だって」
「ああ。これは次期当主候補に選ばれるかもな」
だけどもあの日、
そいつを可愛がっていた奴らは歓喜し、逆に目障りに感じていた奴らはそいつを憎んだ。そしてその日のうちに次期当主候補となったんや。
別にそれだけならかまへんかった。あくまで候補にすぎひんし、俺があのしょぼそうな奴に負けるとは思えへんかった。
でも、絶対に許せへんかったのはその後や。
次の日あいつは、あいつはよりにもよってとうじくんを武術の教育係にしたんや!
「ぶっ殺したる」
自分がどれほど浅はかなことをしたのか、それを思い知らせるためにそいつを探した。そして見つけた。でも、ちょっとしたハプニングがあったんや。
「お前なんか、死んでしまえ!!」
「きゃああ!!」
丁度ハプニングの横で俺が見たのは、俺よりいくつか上の少年があいつを庇った女中を刀で切り伏せているところ。本来子供では刀は重すぎてまともに振れへんけど、呪力で筋力を強化しているようやった。
物陰から観察始めて気づいた。周りに人はおらん。あの少年はこのタイミングを見計らっていたんやろう。少年の息遣いは荒く、その表情は殺意に満ちていた。
そしてあいつはきっとびびって動けへんに違いない。いい気味や、そのまま殺されたらええ。せっかくやからどんな情けない顔をしてるんやろうと思って顔を見た。
「・・・ふひ」
ゾクッとした。なんや今のは。見たのは笑顔のような何か。そして、立ち入ってはいけない場所に片足を突っ込んでしもうたような、そんな感覚が俺を襲った。
「な、なんだよ、頭おかしくなったのか?」
そうは言ったが、武器を持ってるくせしてビビっているのは少年の方やった。情けないとは思たが、正直言うと、あの時の俺もびびったんや。
「・・・ご、ごめんなさい。い、命だけは、たしゅけて・・・」
するとあいつは、急に怯えたような表情で情けない命乞いを始めた。さっきのは気のせいやったんやろか。そう思ってしまうほどの急な変化やった。
「い、今更命乞いだなんて遅い!お前のせいで誰も見向きもしてくれなくなったんだ!お前なんていなくなればいいんだ!!」
少年の方は、女中を切って後戻りができなくなったため正常な判断ができなくなっているようやった。怒り狂った少年は、まだ怯えているあいつに刀を振り下ろす、はずやった。
「いっでえ!!」
あいつの陰から影のような狼が現れ、少年の右腕に噛みついたんや。影のような狼が噛みついてきた勢いで少年は後ろに倒れこみ、次の瞬間その影のような狼が消え、代わるように白い狼と黒い狼が現れた。そしてそれぞれが少年の腕に噛みついた。これによって少年は両腕を使えず立ち上がれなくなった。
一瞬の出来事ではあったんやが、見ることはできた。あいつは片手で手印を作り、影のような狼が現れ、その後で両手で手印を作った時に二体の狼が現れたんや。恐らく、片手と両手の手印で使い分けているのやろう。
何となく、見た目によらず戦い慣れているような気ぃがした。
そうしてあいつは、身動きを取れなくなった少年の腹を踏みつけ始めた。一度や二度ではない。緩急を付けたり、少し位置をずらして少年の反応を見て愉しんどる。
「おえ、ぐ、ぐえ!や、やめ、おえ!」
「ねえねえ、今どんな気持ち?今どんな気持ち?自分より小さい相手にぃ、武器を持って襲ったのにぃ、抵抗も出来ないで踏みつけられるってどんな気持ちぃ?」
そして踏みつけるのを止めた。少年は泣きながらもそれに安堵するが、悪魔は嗤っていた。
悪魔は少年の頭の傍にしゃがむと小さく何かを囁いた。
「お兄さん、本当にみっともないね。そりゃあ誰も見てくれなくなるよ」
あいつが何を言ったのかは俺には聞こえんかった。わかったことは、その言葉で少年の心が折れたことやった。
「じゃ、続きいくよー」
立ち上がって、今度は頭を蹴り始めた。やり過ぎず、でも痛みを感じる程の威力でなぶっていた。襲われたからやり返しているんやない。いたぶれる口実ができたから愉しんでいるのだと理解した。
いたぶるその姿はまるで、おもちゃで遊ぶ子供の様やった。
「さて。飽きてきたしそろそろかな」
そういうと、少年を踏むのを止め、落ちていた刀を拾い上げた。
「よっと。本物だあ。重いなこれ。呪力で身体能力を強化すれば・・・おお、振り回せる」
新しいおもちゃを与えられた子供の様に喜び、
「お兄さんが殺した女中さ、俺に取り入っていい思いしようっていう魂胆が丸見えだったけど、曲がりなりにも俺に良くしてくれてたんだよ。だから、何かあったら助けてあげようかなー、とか思ってたんだよ。それなのにお前は彼女を殺した。だから、俺もお前から大事なものを奪うね?」
「ま、まっ」
少年の言葉を待たず、振り上げた刀は少年の手首を切った。直後、手首から血しぶきが上がり、切られたことによる痛みによる悲鳴が上がった。
「これで剣士としてはお終いかな?刀使ってたしそれに自信があると思ってたけど・・・うんうん、正解だったみたいだね」
後に知るが、その少年はどうやら剣術の才をよく褒められていたらしい。だから、血と涙でぐしゃぐしゃになった少年の絶望した顔は、当然の反応やった。
そして悪魔は、少年の髪を鷲掴みにして顔を近づけた。
「大事なものを奪われる覚悟がないのに人のものに手を出すとか、お前馬鹿だねぇ~」
そう言って髪から手を離し、顔面をぶん殴った。
少年は吹っ飛び、体を何度か弾ませて庭へと放り出された。
「さて、と。お墓、いいものを頼んでやらないとな・・・ん?」
そして、俺と目が合った。体が動かない。どうして俺はもっと早くにその場から離れなかったんやと自分を責めた。一部始終を見ていたんや、消されるかもしれへんと、幼いながらにそんな考えが過って・・・
悪魔は笑顔を作り、人差し指を立てて口の前へと持って行った。
直後、俺はその場から逃げ出した。
あれから数日、俺は部屋にずっと籠っている。布団を被って、みっともなく震えていた。お付きの女中は勿論の事、親父も俺の様子を見に来た。だが俺は「少し体調が悪いだけや」と言って深く踏み入れさせなかった。
悪魔が少年をいたぶっていた光景が頭から離れへん。
俺も今まで、この家に居て嫉妬や憎悪とかの悪意を向けられたことなんて数えきれないほどある。でも、あいつのは違う。他の奴らの悪意とは比べ物にならへん。あれと比べれば、他の奴のは子供のいたずら程度や。あの日、俺は本物の悪意に触れたんや。
あんな化け物が今まで同じ屋根の下にいたなんて信じられない。あれは人やない。人であっていいはずがない。あれはきっと、人に対する負の感情から生まれた呪霊なんや。
悪魔の最後の笑顔が忘れられへん。あれは、他の誰かに話したら次はお前の番だぞという意味に違いあらへん。恐怖はあの時確かに、心に深く刻まれたんや。
そしてある日、気づいたんや。あいつの傍にいるのはとうじくんや。とうじくんが危ないという結論に至った。とうじくんは強い。俺よりもずっと。でも、あれはダメや。とうじくんでも近くに居たら、何をされるかわからん。
俺が殺さなきゃアカン。俺は部屋を出て、武器庫から呪具を一つちょろまかした。
悪魔が一体になるのを待ち、常に奴の死角にいるように動く。やるなら一撃で、脳をこの呪具で貫く。俺はまだまともな戦闘経験を積んでへんが、俺の術式なら、そんなの関係あらへん。あいつに一瞬で近づき、呪具を突き刺す動作をするだけや。
周りに誰もいなくなった。この位置はあいつからは完全な死角。こちらに気づいた様子はない。一撃で、決める。
そして俺は物陰から飛び出し、術式を起動した。最短距離で距離を詰め、右手の呪具をあいつの頭に突き刺すイメージをし、走り出した。
親父と比べれば洗練されているとは言えない動き。それでも、あいつを殺せるのならそれで充分。この一撃に全てを掛ける。
あいつまで二歩まで到着し、飛び上がりで呪具を振りかぶる。
これで、死ねや!!
「あ、え?」
おかしい。なんで俺は床に横になって、あいつの足が目の前にあるんや?握っていた呪具はない。そして、腹に違和感がある。触ってみると、べちゃ、と嫌な音がした。
触った手を見ると、赤い液体が付着していた。
「~~!!」
直後、腹に激痛が走る。声にならない声が漏れた。
「・・・なんで襲ってくるんだよお前。どういう思考回路してんだ」
声の主は何処か呆れたようやった。
「でもまあ、拡張術式の実験台になってくれたことには感謝するわ。んー、体を貫通してないところから見て、やっぱり本家落花の情と比べたら威力が低いな。常時展開可能なのはいいけど、これで領域対策は難しいかな。あくまでも護衛がいない時用だなこりゃ」
何かブツブツ言っとるけど、要するに俺の奇襲は失敗したみたいや。種はまるでわからへん。でも、俺はまだ死んでない。なら立ち上がるまでや。
「いや、止めときなよ。致命傷じゃないとはいえお腹に穴空いたんだよ?お前の父親には借りがあるし今回はこれで見逃してやるから、早く治療を・・・」
「黙れドブカス!!お前をとうじくんの傍に居させるわけにはいかへんのや!!」
動悸が激しい。呼吸は正常とは言えへんし、腹から血も止まらへん。でもここでこいつを殺さなきゃ、碌なことにならへんことだけはわかる!だから、今ここで!息の根を止める!!
「・・・わかった。最後まで付き合うよ。玉犬」
手印を結ぶと、二体の式神、玉犬白と黒が現れ、悪魔が構えをとった。
互いに相手の動きを探る。血が滴る音がした。
先に動いたのは俺やった。俺は術式を使い真っすぐ悪魔の下に向かう・・・事無く、庭に飛び出し、左手で石を拾った。そして俺を追うように二体の式神が襲い掛かる。
「のろま!!」
右手で白い方を殴り、黒い方を蹴り上げるイメージをし、実行した。
「甘えよ」
「ゴパッ!!」
直後、腹に向けて取っ手の方を向けられた呪具を投げつけられ、激痛が走る。俺はそのまま口から血を吐いて膝を着きそうになったが、何とか踏ん張った。
顔を上げ、標的を見る。そいつは既に走り出し、こちらに向かってきていた。
俺は悪魔目掛けて呪力を籠めた石を投げた。それらは悪魔に当たることなく黒い影のような何かに弾かれた。
「それが種やな!」
「わかってどうする!」
それを今考えとんねん!
俺は術式で距離を取ることにした。俺の術式なら早々追いつかれることはあらへん。あっちはまともな飛び道具が無い事が幸いや。でもそれも長くは持たん。何せ穴空いとるからな。
あいつを殺す前に死んでもうたら笑い話にもならん!
「・・・玉犬!!」
その言葉と共に、俺の進行ルートに合わせて白の式神が襲い掛かってきて、俺は吹っ飛ばされた。進行ルート読むとかどないセンスしとんねん化け物か!!
「ま、まだ・・・」
「いや、終わりだ」
片手だけの手印。それと同時に俺の陰から影のような狼が飛び出し、再び体を吹っ飛ばした。
「ごっ・・・は・・・」
ざけんなや 体が起きん ドブカスが
「それでまだ起きようとするのか。悪い、お前の事舐めてたわ」
そう言って、化け物は俺に手を伸ばして・・・
ここで俺の記憶は途切れている。その後、こいつを人間として認識したり、ぶっ倒して襲撃する日々を送ることになるのは、また別の話や。
どっちが主人公かわかんないなこれ・・・
それはともかくアンケート!
蒼 京都校で繰り広げられる呪いを巡るお話。さしす組は交流会くらいしか出ず(五条悟を除く)、オリキャラや京都にいるキャラがメインで出ます。バトルあり、青春ありのシリアスです。原作リスペクト!
赫 東京校で過ごす青春の日々!バトルはたまにやるけど基本日常系。魔虚羅は調伏しない。(鉄の意志)
紫 どっちもやる。基本は蒼のストーリーで、その時間軸で赫ではこんなことがあったんだよー、というような話を投稿する。でもネタ被りを避けるために話を作らないといけないため、週二から週一~二投稿になる可能性あり。
それから宿儺に関してですが、流石に原作が終了していないのに過去編で原作ブレイクするのはあれかなと思ったので出しません。いやだって正直展開がまるで読めないんだもん。取り敢えず高専編を綺麗に終わらせようと思います。