幻想入りしたジェダイの騎士と河城にとりと時々妖夢 作:古井論理
19BBY、ジェダイ聖堂はオーダー66の発令に伴う攻撃を受け、ブラスターの閃光に包まれた。昨年12歳にしてナイトの称号を得た若きジェダイ、ヤイト・ヴァリエはコルサント上空のヴェネター級スターデストロイヤーでそれを見ていた。ふとクローン・トルーパーの殺気を背後に感じた彼女は背後から近づいてきたクローン・トルーパーを一人切り伏せるとハンガーへと急いだ。
「そっちだ、一人逃げたぞ!」
「ジェダイが艦橋に集まっている、そっちが先だ!」
クローン・トルーパーたちが駆けて行った後の廊下を抜け、ハンガーへと駆けていくと果たしてそこにはクローン・トルーパーが使用していた偵察型のZ-95ヘッドハンターが待機状態で放置されていた。近くにはこの船が持つ飛行隊の指揮官をつとめていたジェダイ・マスターの死体が転がっており、彼のパダワンのものと思われる血のついた足跡がさっき歩いてきた廊下の方へと続いている。ヤイト・ヴァリエは近くに転がっていたクローン・トルーパーの死体から装甲服をはぎ取って身に着けた。無理矢理胸をつぶして窮屈な胸部アーマープレートの下に収め、ヘルメットをかぶり、ブラスターをコクピットに置いてライトセーバーを隠し、出撃許可を得ずに機体を浮かせハンガーを出発する。
乗っていた機体の動きが鈍いのを自覚し、アストロメク・ドロイドが搭載されていないことに気づいたのは、背後に見えるヴェネター級が爆発した後だった。ヤイトは死を悟りながらも、脳内で高速のハイパードライブ計算を始める。と、無線が音を立てた。驚いた彼女は震えながらも回線を開く。
「所属不明機に告ぐ。操縦者の身分と所属を明かせ。応答なき場合は逃亡者と判断して撃墜する」
その声とともに後ろにクローンが操縦するZ-95ヘッドハンターが迫ってきていたと気づいたのはそれから間もなくのことだった。咄嗟にハイパードライブを起動し、目的地も決めぬまま最大出力でジャンプする。衝撃音とともに前方の窓枠が迫ってきて、ヤイトは死を直感した。
……生きている。
気が付くと、ヤイトはバラバラになったZ-95のかろうじて残ったコクピット部分にいた。周囲にはなぎ倒された木々があり、見上げれば空が見える。猛烈な喪失感を覚えながら、彼女は身を起こした。
「ここはどこの星だろう」
そんな考えが脳裏をよぎった。コクピットを開けようと力を込めて、そうして、猛烈な喪失感の正体を悟った。フォースとのつながりが感じられない。周囲には何か不思議な気配があるが、それだけである。その気配は近づいてきて、コクピットをこじ開け、三つの人影になった。
「縺薙l縺ッ菴輔□繧阪≧?」
「譁ー謇九?螯匁?ェ縺九↑?」
「縺?d縲∵ゥ滓「ー莠コ蠖「縺?繧阪≧縲ゅΟ繝懊ャ繝医▲縺ヲ繧?▽縺」
三つの人影はそれぞれ何かわけのわからない発言をしている。ヤイトがただ困惑しているうちに人影は背負っていたリュックサックらしきものから原始的な工具を取り出して、ヘルメットの生命維持装置を分解しようとし始めた。唖然としていたヤイトはそこでやっと動くということを思い出して、体を起こした。三つの人影は驚いて距離を取ると、こちらの様子をうかがっている。敵意はないことを察したヤイトは警戒を緩めつつヘルメットを脱ぎ、彼らの言葉や心理を分析し始めた。フォースとのつながりがなくても、それくらいはできる。洞察力と体に残るフォースの残滓を駆使したヤイトの前に、未知の言語は五、六分ほどで意味の分かる言語になり、彼女は慣れない発音でその言語を口に出した。
「ああ、私、は……」
「しゃべったぞ」
三つの人影のうち二つは慌てて去っていった。残る一つの人影は、そっとヤイトの方に手を出して言葉を発した。
「私は河童の河城にとり。君は誰だい?みたところ外来人のようだが」
その声とともに、にとりと名乗った人影の姿が明瞭になった。ヤイトと同年代くらい、十代前半の少女といったところか。ポケットがたくさんある水色のスカートをはき、大きな襟がある水色のシャツを着て、胸の前に鍵のようなものを紐で括り付けている。ヒューマノイドのようであるが、河童というからには別の種族なのだろうか。それとも、この言葉ではヒューマノイドのことを河童というのだろうか。
「私は銀河標準語でヒューマノイドのヤイト・ヴァリエ。ジェダイの騎士で、コルサントからきたの。外来人って何?ってかここはどこの惑星?見たところ森林惑星のようだけど」
にとりは不思議そうな顔をして、困惑した様子で言った。
「コルサント……ってどこ?あとヒューマノイドって何?ジェダイも知らないな。あんたは見たところ人間だよ。人間なら私ら河童の盟友だから教えてあげよう。ここは森林惑星とかそんなSFみたいな場所じゃなくて幻想郷っていう場所だよ。ここは忘れられたものが流れ着く、何もかもを受け入れる楽園。人間の里に着けば良かったんだろうけど、ここは妖怪の山だ。そろそろ当直の哨戒天狗が来るだろうね、人間の里へ案内してもらえればいいけど、まあ無理だろう。かわいそうに、あんたもつくづく運がないね」
「河童……?哨戒天狗……?」
ヤイトは混乱した。ここはもしや、未開の惑星だろうか。そうだとしたら船の調達は絶望的だ。ここで生きるしかないのかと考えた。しかし死ぬしかないとにとりは言っている。
「にとりさん、侵入者に遭遇したなら報告してほしいものですね」
木の上から、巨大な剣を持った古風な装束の女が見下ろしている。その女は剣を構え、臨戦態勢である。
「にとりさん、一緒に切られたくなければどいてください。侵入者には規則に従って対処しないといけません。こんな深くまで侵入されて逃がすなんて、哨戒天狗の名折れです」
「椛、違うんだよ」
「何も違いません。里の人なら進入ルートを聞いた後で殺しますし、外来人なら問答無用で殺します。この人は外来人ですか?」
女の持つ大剣が、光を反射してきらりと輝いた。