『時代の寵児』は最後の英雄となる   作:厨二病の末路

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趣味全開の物語です。

更新頻度は高くないですが、息抜きで少しずつ進めて行こうと思います。

楽しく書いて行きますよ!


プロローグ 終わりの始まり

自分の力を過信していた訳では無い。だが最強と最恐(ゼウスとヘラ)である自分達が、無様に負けを晒すなんていうことは無いと思っていた。

 

────そんな自信は『隻眼の黒竜』に粉々に打ち砕かれた。

 

翼を凪いだだけでボロ雑巾のように吹き飛ばされた。

その爪で多くの仲間が切り裂かれた。

空から放たれる火は、まさに天からの裁きのようだった。

 

道端の虫を、なんの気もなく踏み潰す人間と同じように『隻眼の黒竜』は俺たちを蹂躙した。当然、敗走を余儀なくされた。

 

せめてもの思いで、俺は皆を救う為に殿を買って出ようとした。

 

「お前の死地はここじゃない。それは俺達の役目だ」

 

「癪だけどね。私たちじゃコイツを倒せない」

 

そんな俺を他所に、前に出るのは二大派閥の団長たち。

 

「馬鹿言うんじゃねえ!お前達が居れば、いくらでもやり直しが────」

 

「やり直した先に、コイツを倒す未来(ヴィジョン)が見えん。しかもこの有様だ。再建に何年要するかも分からん」

 

「ッッ!」

 

名実共に最強とよばれた眷属である男が極めて冷静に言い放つ。その事実を受け入れたくはなかった。

 

だから、お前が倒せ。お前が英雄アルバートを越えろ

 

「────────────」

 

男は最後に太陽のような笑みを豪快に浮かべてその場を去った。

 

「じゃあな小僧。アルフィアと上手くやりなよ?」

 

女も不敵な笑みを浮かべて男に続いて行った。

 

 

「────クソ。勝手に託して消えやがって…」

 

身に宿る屈辱や怒りに、身体を掻き毟りたくなる衝動に駆られる。だがそれは今じゃない。先人達に『越えろ』と託された。彼らの想いを無駄にする訳にはいかない。

 

「あぁ、絶対に越えてやる。俺が必ず黒竜を殺す」

 

男は去り際に一言呟いて、かつての仲間たちに背を向けた。

 

 

 


 

 

何も無い山奥の村。1人の男ジン・ヨシュアは、風が鳴らす草の音を子守唄にして気持ちよく眠っていた。そんなジンの前に1人の女がやって来た。

 

「────────おい」

 

「……んん?」

 

福音(ゴスペル)

 

「ぐぼあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

およそ目覚ましとは思えない衝撃が身体を襲う。

 

理不尽な一撃をくらわせたのは、灰色の髪を靡かせる妙齢の女性。特徴的なのは、右目が翡翠色で左目が灰色のオッドアイである事だ。

 

……もっとも本人は、目を開けるのが億劫だと言って、普段は目が閉じられているが。神秘的な雰囲気を纏う美しい女性である。

 

そんな見た目と反して、性格が傍若無人で気に入らない事があれば、一言(ワンワード)でこちらを蹴散らすのだから、詐欺もいい所である。

 

「……もうちょっと優しく起こせねえのかお前は」

 

「黙れ。白昼堂々と気持ちよく眠れると思うな、家が壊れたから直すのを手伝え」

 

「んなもんザルドに頼めよ。あいつのが手先器用じゃん」

 

「ザルドはベルと出掛けてておらん」

 

家が壊れたって事は、エロ爺(ゼウス)がまたアルフィアにセクハラをしかけた結果ということだろう。というか破壊した本人が、無関係の俺を巻き込もうというのだ。流石ヘラの系譜である。

 

「おい、何か失礼な事を考えたな?」

 

「考えてねぇよ。そうカッカすんなよ。せっかく綺麗な顔してんのに、若い内から眉間にシワ寄ってババアみたいに────」

 

五月蝿い(ゴスペル)

 

「ごはあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

そのまま家の方向まで吹き飛ばされ、半壊していた家が木っ端同然となった。

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

「はぁ…。そんで家をぶっ壊した張本人は、我関せずとお茶を楽しんでるわけか」

 

「何か言ったか?」

 

「いいえ何も」

 

俺が黙々と作業しているのを尻目に、どっから取り出したか分からないテーブルセットで優雅なひとときを過ごしている。まるで女王そのものだ。

 

俺は、そんな女王に仕える働きアリと行ったところか。余計な一言で家が全壊してしまったので、急ピッチで作業を進める。

 

「お義母さーん!ジンお兄ちゃーん!」

 

遠くから、まだ幼い身体を精一杯動かして走ってくる姿が見えた。真っ白な髪の毛を揺らし、瞳の色は深紅。まるで子兎が駆けているようだ。

そんな愛らしい子どもの名前はベル・クラネル。

 

アルフィアの妹メーテリアと、ゼウスの性格を写し身にしたようなザルド曰く『愛すべきバカ』と称されるサポーターだった男の子どもだ。

 

「おかえりベル」

 

「ただいまー!……なんで家がなくなってるの?お爺ちゃんも居ないし」

 

「あの爺は2つ向こうの山まで吹き飛ばした」

 

「えぇ!?お爺ちゃん死んじゃうよ!!」

 

「この程度でくたばるようなら苦労していない。その内、素知らぬ顔で帰ってくるだろう」

 

アルフィアは忌々しげな表情を浮かべ、その表情を見たベルは「ひぇっ」と恐怖を顕にした。震えるウサギそのものである。

 

「アルフィア、ベルが縮こまってるからそのへんにしてやめてやれ」

 

そう言ってアルフィアを宥めるのは身長が2M(メドル)を超える巨躯の男。顔についた複数の傷は男が数々の戦場を越えてきた修羅の証である。

 

性格も、見た目通り無骨な武人肌だが、数年暮らすうちにジンと同様アルフィアの尻に敷かれるようになっていた。

 

ちなみに現在のヒエラルキーは、トップがアルフィア。続いてベル、ザルドとジンで爺に関しては、ドブの底以下とアルフィアは言った。

 

「ザルドぉ。手伝ってくれよぉ。俺一人じゃ今日中に終わりそうにねえんだよぉ」

 

半べそをかきながらザルドに助けを乞う。家の有様を見て全てを察したザルドは、深い溜息を吐いた。

 

「……分かったから情けない声を出すな。ベル、アルフィアと一緒に麦畑の方へ散歩へ行ってこい」

 

「え〜!」

 

「……ぶーたれるな。殴るぞ?」

 

「ひっ!」

 

これぞヒエラルキー頂点の女王(アルフィア)の言葉。恐怖政治そのものである。彼女が白と言ったら黒いものも真っ白となるのだ。

 

そんな言葉に反してアルフィアはベルの手を優しく握り、ベルは嬉しそうに顔を綻ばせて一緒に歩いて行った。

 

「やっぱりベルには勝てねえな〜」

 

実際には母親ではなく叔母にあたるのだが、一言その言葉を口にしようものならば福音拳骨(ゴスペル・パンチ)が脳天を貫く為、ベルはアルフィアの事をお義母さんと呼んでいる。

 

それでもベルに対しては、特別深い愛情を持って接している。ベルとの初めての出会いの時も、メーテリアと同じ真っ白な髪を目にした途端、駆け出したものだからジンとザルドも驚いたものだ。

 

「お前はアルフィアに想いを伝えないのか?」

 

ジンが黄昏た表情をしていると、見かねたザルドがそんな事を口にした。

 

ジンはアルフィアの事を愛している。2大派閥で有望格だったジンとアルフィアは何かと比べられる事が多く、『才禍の怪物』と『時代の寵児』等と持て囃されていた。

 

冒険者歴も年齢も1年しか変わらず、アルフィアは常に1歩先を行く目障りな存在だった。少し気に食わない事があれば手刀が飛んでくることなんて日常茶飯事。こよなく静寂を愛する、粗暴で神経質な『女王』だった。

 

だけど、戦闘の相性も良く次第にアルフィアの考えも、少しではあるが読み取れるようになった。その頃には、肩を並べて戦うのが嫌ではなくなっていた。

 

想いを自覚したのは、三大クエストである『海の覇王(リヴァイアサン)』討伐後にアルフィアの病状が悪化して生死をさまよった時だった。

この先、アルフィアが居ない世界の事など考えられなかった。考えたくもなかった。

 

その時の記憶は曖昧で後から聞いたが酷く錯乱していたらしい。お陰様でファミリアの、皆には俺がアルフィアが好きだというのが周知の事実となった。

 

我ながら滑稽だ。アルフィアが死に瀕するまで、その想いに気づけないのだから。

 

「伝えたさ。ここに来る前にな。だけどアイツ『私より強くなってから出直してこい』って一蹴しやがったんだ」

 

「なるほど、道理で手合わせしろと煩かった訳か」

 

当時アルフィアとザルドは、共にLv7上位でランクアップ間近で対するジンは、Lv7下位と言った所だった。

 

同じLvならステイタス差など余裕で覆せる自信はあるが、そこは『才禍の怪物』。条件次第ではLv9である『女帝』にすら勝ると言われた女だ。流石のジンも『俺はお前より強い』等と驕るつもりはない。

 

なのでザルドに修行をつけてもらうことにした。この男もこの男で、ワンチャン、団長(マキシム)に土をつけられると団員達から称されていた程で、実際に『陸の王者(ベヒーモス)』の討伐も、この男が居なければなし得なかったかもしれない。

 

しかし、修行を続けていた日々の中でベルと出会った。その時のアルフィアの表情を見たら、再び愛を告げる事を躊躇ってしまった。

 

あんな表情を作ってやれるのはベルと亡きメーテリアくらいだろう。

 

「そんで?わざわざ2人きりになったのは話があるからだろ?」

 

「あぁ。明後日に俺とアルフィアはオラリオに発つ」

 

話は予想通りの内容だ。最近来た神、エレボスと名乗ったそいつは、とある計画を告げて2人に協力を頼んでいた。

 

「…道理でアルフィアの事を突っついてきた訳か」

 

家の修復を進めながら、軽く溜息を漏らす。きっとコイツは、俺とアルフィアがくっつくなら、1人でオラリオに向かうつもりだったのだろう。

 

「お前もアルフィアも、マキシムや女帝たちのように次代の英雄の礎になるつもりなんだな」

 

「………」

 

ザルドは無言で答えた。正直止めるつもりはない。止めた所で止まるようなら最初から計画に加担することもない。だが……

 

「お前は俺が『最後の英雄』になる事を信じていないのか?」

 

胸に募るのは怒りだ。

 

「俺1人では英雄アルバートを越えられないと?」

 

「………」

 

この沈黙は肯定を物語っていた。きっと侮っている訳では無い。何度も拳を交えたジンの実力をザルドはとうに理解している。

 

だがそれでも、ジン1人であの『黒き終末』に勝てる未来が見えない。ならば、ジンに続く次代の英雄候補を次のステージへと、引き上げるべきだとザルドは思っていた。

 

「ならば証明してやる。お前達がこの計画に加担する意味の無さを。無様に負けを散らせて俺の経験値(エクセリア)となれ」

 

「!ククククッ…アーハッハッハッハ!良く吠えたな糞餓鬼!ならば見せてみろ!マキシム達が託したお前の可能性を!」

 

それは仇敵を前に見せるような、獰猛な瞳だった。興奮したようにザルドは笑う。

 

「戦いは明日、場所は以前に俺とお前が手合わせした影響で荒地になった場所でいいな?それとアルフィアも連れてこい。2対1で良い」

 

「俺達に1度も勝てた事がないお前がか?」

 

「その位しないと証明になんねぇだろ」

 

ジンは『陸の王者(ベヒーモス)』と『海の覇王(リヴァイアサン)』を討った両名を越えてこそ、その先に行けると確信していた。

 

「お前達を叩き潰して団長(マキシム)と同じ領域へ行く」

 

「フッ。ならば越えて見せろ『英雄』」

 

かくして、現最強達の戦いが世界の中心(オラリオ)から遠い地で行われることになった。

 

視線が絡み睨み合う両者だが、不意にジンが思い出したように顔が青白くなる。

 

「とりあえず家直そうぜ。アルフィアが帰ってくるまでに、直しとかねーと事情を話す前に福音(ゴスペ)られるぞ」

 

「……それもそうだな。少し急ぐか」

 

剣呑な雰囲気は何処へやら。『話をする前に機嫌を取らないと』等という結論が出るのは、結局ヒエラルキーに逆らえない、情けない男達だった。

 




という訳でプロローグでした。読んで頂きありがとうございます!

読んで頂いて分かったと思いますがヒロインはアルフィアです。難攻不落の要塞を気合いで落とします。

ステータスのプロットを練れていないので更新が早くなるか遅くなるかは未定になります!

少しでも面白いと思って頂けたら評価、コメント頂けると嬉しいです!
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