「……で、報酬はいくらなんだい。」
とある国の酒場でコギツネは話していた。
どうやら依頼を受けるらしい。
「100、いや200マーでどうだ!」
「話にならないね。キミ、太陽のアミュレットの相場を知っているのかい?」
さも金額を釣り上げた風にのたまう男を睨み、コギツネは冷たく言い放つ。
「250だよ250。それに一点狙いなんだ、それなりの手間賃を加味して1000マーは必要さ。」
「そんなに出せるわけないだろう……勘弁してくれよ。」
情けなく鳴く男を後目にコギツネは酒場を去る準備を進める。
「じゃ、話は終わりだね。せいぜいその安値で受けてくれる変わり者を見つければいいさ。」
帰路に付こうとするコギツネに男は食い下がる。
「待ってくれ!!金はこれ以上出せないがとっておきの物がある!」
「……なんだい、言ってみなよ。」
なおもコギツネは冷たく男を睨みつけている。
「料理のレシピだ!しかも門外不出、伝説と言われている――」
「で、こんなとこまで来てるってか。眉唾だと思うんだがな。」
コギツネとアイは第5層の探索へ来ていた。
「と、言っても目の前の美味しい物のチャンスを逃すわけにはいかないだろう?」
「アンタ、ホントぶれないよな。」
「誉め言葉として受け取っておくよ。」
軽口を叩きながらもコギツネは敵を薙ぎ払っていく。
ちょこちょこドロップはするものの……
「アミュレット、出ないな。これだから一点狙いは嫌なんだ。」
「良いものは出てるけどね、デーモンズグレイブなんか良い値で売れるよ。」
コギツネはたった今ドロップしたデーモンズグレイブを摘まみ上げ、自分の「倉庫」へ仕舞った。
「不思議なものだね、ホント。いつでも仕舞えて取り出せる。」
「便利だから良いじゃねえか。ほら、次が来るぞ。」
20秒に一度ほどのペースで魔物は襲来してくる。
そして極稀にではあるが、ひときわ強い魔物が現れるのだ。
「……来るぞ、サンダービーだ。」
「了解。」
ジジジジ……
耳障りな羽音を鳴らして現れたのは、この階層のボスであるサンダービー。
ギチギチを口を鳴らし、己の食欲を満たさんとコギツネへ襲い掛かる。
「さっさと片付けようか―—「
コギツネはスキルを発動、サンダービーの攻撃を待つ。
『GLD?><KJ@Q!R"FMUP"OI:"F?>AMDS!?>E』
意味をなさない鳴き声を上げ、雷を纏わせた体でコギツネへ突進してくる。
しかし、
「よっと、危ない。」
コギツネは難なく避けることに成功、すぐさま攻撃に転じる。
「妖の蒼炎よ、其の焔を以て我が敵を穿て——【
コギツネは、自身に宿る
【狐炎槍】は「狐火」を「ブレードジャグラー」の仕組みで応用して使っている。
威力は中々なものであり、サンダービーは1撃で消し飛んだ。
「さて、ドロップはっと……アミュレットだな。」
「運がいいね、これでレシピが貰える。」
もうコギツネの目には美食しか映っていないようだ。
目を輝かせたコギツネは、全力疾走で5層から抜け出した。
「はい、持ってきたよ。早く報酬を頂戴。」
そう言うとコギツネは男にアミュレットを投げ渡した。
「わわっと……焦らなくてもやるから待ってな。ほら、報酬だ。」
男はコギツネに200マーと一枚の古びた紙切れを渡す。
「じゃ、俺はこれで……」
「【眠れ】」
コギツネの妖術により男が夢の世界へ落ちる。
「……精査の時間は必要ってか。無駄にしっかりしてるよなアンタ。」
「それほどでも。さて、読もうか……」
コギツネは男から受け取ったレシピを読み始めた。
みるみるうちに顔は険しくなり、周りの人間がドン引くような怒りのオーラを発していく。
「……【雷撃】」
「あっっだぁ!?おいアンタ何をあぐぅっ……!」
強引に起こされたのち、男はコギツネの手によって首を絞められる。
古びたように偽装された一般的なレシピ紙を片手に握りしめ、コギツネは淡々と男へ語り掛ける。
「答えろ。ここで死ぬか、大人しく金を払って生き延びるか」
食べ物の怨みというのは、何よりも恐ろしいモノなのだ。
「お待たせしました、サーロインステーキです。」
コギツネは高級ステーキの店へ来ていた。
「……いただきます。」
先ほどの憂さを晴らすようにガフガフとステーキを貪る。
「だから言っただろ、眉唾だって。」
「うるさい!!ボクは美味しい物の為ならなんだってするんだ!!実際今食べれてるし!!」
「(ホント、ぶれない奴。)」
半ギレで叫ぶ主に、アイはため息をつくのだった。