ある晴れた日、土の舞う道をコギツネは二輪車の「がら」に乗って走っていた。
「で……今回はまた飯がおいしい国か。両親はどーした?」
呆れた様子で自動学習AIの「アイ」が文句を言う。
「そりゃあ、探すさ。でも手がかりが本当にないからね、美味しいごはんのある場所には得てして人が集まるものさ。」
「とか何とか言っておきながら食べたいだけだろアンタ。」
コギツネは黙ってしまった。
どうやら図星のようだ。
「……まあ、人が集まるのは本当さ。ともかくさっさと進もう。」
コギツネは誤魔化すように言い、「がら」のスピードを速めた。
土煙が舞い、アイの文句が遠く響いていた。
「……着いたけどさ。」
「ああ……これは。」
「「滅亡してるね(な)」」
息がぴったりである。
「また収穫なしか……おなかへった……」
「せめて……せめて金目のものだけはかっぱらってやる……!」
メラメラと闘志を燃やすコギツネを冷めた目で見ているアイは
「アンタ、賊と変わらないからな。」
と1人呟くのだった。
「……酷いや、建物がみんな倒壊してるよ。」
「地震でもあったか?……いや、その割には地面は綺麗なままだ。」
国内は酷い有様だった。
家屋は崩れ、塵が舞っている。
「うーん、金になりそうなものを探すのも一苦労だね。」
「そうだな……コギツネ、敵だ。」
「分かってる、迎撃準備をするよ。」
そう言った直後、数匹の魔物が襲いかかってきた。
「【狐火】」
蒼炎が放たれる。
それは魔物を火で包み、一瞬にして命を散らす。
「さて、せめてドロップ品くらいは貰っていこう。」
なおも襲いかかってくる大量の魔物を刀と炎で薙ぎ払っていく。
数分後、コギツネの周りにはドロップ品の山が出来ていた。
「さて、状況を整理しようか。」
山の前に座り込み、アイを手に持ちコギツネは話し始める。
「まず大量の魔物。倒壊した建物の数を見る限りはここの滅亡はこいつらのせいだろう。」
「そうだな、明らかに裂傷痕が多い。ただ……」
アイが言い淀む。
「うん、魔物の分布がおかしい。この辺りにはいるはずのない魔物、更には……普段と様子の違う魔物も多数いた。」
「サンダービーが出てきた時は驚いたな、さらに火を吹いた時は何事かと思ったわホント。」
「どこが[サンダー]なのか小1時間問い詰めたいところだね……」
少し呆れながらもコギツネは続けていく。
「さらにこのドロップの量、1匹につき1つ落ちている。」
「普段ならコレだけ倒しても3、4個落ちたらいい方か?」
建物の傷、明らかにおかしい魔物の様子、コレらを加味しながらコギツネは結論を話していく。
「まぁ、あくまで予想だけど……人為的なスタンビートだろうね。」
「魔物は人造だろうな。過去のデータに似たようなのがあったが、恐らくドロップ品を触媒しにして無理やり形を持たせてる。」
「うん、そうだよ。わたしたちみんなまものにおそわれたの。」
「そうだろうね……っ!?」
聞き覚えのない声が聞こえる。
コギツネはその場から飛び退き、腰に差していた刀を構える。
「だいじょうぶ、わたしはてきじゃないよ。」
白いワンピースを着た、歳にして9歳ほどの少女が語りかける。
「おい、こいつレーダーに映らないぞ。」
「……ボクも話しかけられるまで全く気づかなかったよ。」
AIであるアイのレーダー、狐とのハーフであるコギツネの感覚をすり抜けることはほぼ不可能だ。
しかし、目の前の少女が自分たちを傷つけるとも思えない。
「……ボクたちになんの用だい。」
最低限の警戒は解かず、コギツネは少女に話しかける。
「たびびとさんにお願いがあるの。」
少女は真剣な眼差しで更に言葉を紡いでいく。
「おかあさんを助けてほしいの。」