普通に中学生してたら超展開に巻き込まれたヤツ   作:はごろも282

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裏 好奇心の時間

 E組女子は現代を生きるイマドキ風少女である。危険生物の暗殺という重要な役目を背負わされたとはいえ、ソレでもナイフケースにデコッちゃったりするタイプの少女たちなのだ。

 もちろん、彼女らの趣味嗜好はバラバラだ。真面目な子もいればちょっとやんちゃ盛りの子もいる。そんなことは彼女らの中では暗黙の了解のようなもの。

 

 ただ、彼女らはれっきとした思春期の女の子。個々の違いへの理解はあれど、この修学旅行、ある一点において通じ合っていると思い込んでいた。

 

 そう、それ故のコイバナ爆誕である。

 

 ☆

 

 口火を切ったのは誰だったか、いや本当に誰だったっけ?片岡メグはそう思った。

 知ったことか、中村莉緒及びその他大勢はそう思った。

 

 修学旅行の定番である。恋バナ、ガールズトークでテンション爆上げポヨポヨフィーバー間違いなしの定番ネタだ。出会ったこともない芸能人のニュースですらキャーキャーできる彼女らにとって知り合い、それもクラスメイトの恋事情なんて御馳走でしかなかった。

 

「気になる男子って話よ!やっぱそーいうの盛り上がるでしょ?」

 

「烏間先生……は除外だよねトーゼン」

 

「当たり前でしょ。殿堂入りよ」

 

 ヌルっと始まった会合において、烏間先生の除外は当たり前だった!

 

「えー!?」

 

「あはは、陽菜ちゃんはそうだよねやっぱり」

 

「アリだと烏間先生カッコイイで終わっちゃうからね」

 

「男子にすら公の事実はノーカンよ。それじゃ渇きは癒せない!」

 

 別にまるで隠そうとしていない普段の彼女の行動が裏目に出た。今宵の少女たちは内に秘めたモノに飢えているのだ。倉橋のモチベはガタ落ちした。

 

 少女らの年頃において、烏間がトップに躍り出ることは当然である。ただでさえ15歳付近は年上男性への憧れが強い時期だ。隔離された差別環境、真摯に向き合ってくれるイケメンで強い年上ときたらもう。

 ぶっちゃけた話が性癖壊れて同年代がガキに見えてもしかたない。なに、とっても速くて頼りになる教師?ハハ、タコが喋ってらぁ。

 

「先生はなし、うちの男連中の話よ」

 

「「「…………」」」

 

「……困った。出てこないわ」

 

 E組に気になる男の子はいなかった!!

 

「ゆ、由々しき事態よ……!これじゃ1年間色に欠けた青春になってしまうっ」

 

「べ、別にソレは困らないんじゃ」

 

「何言ってんのさ!それじゃアタシは誰を弄ればいいのっ!」

 

「それが目的かきさまーッ!」

 

 キャーっと叫びながら中村は取り押さえられた。御用改めである。とはいえ、わりと全員同じ気持ちだった。流石にあまりに色気がない。自分の話はごめん被るが他人の恋事情とか知りたいのだ。日和ってないで誰か話せよ、脳裏にはいつだってそんな言葉が過ぎっている。

 

「神崎さんはいないの?誰かさ」

 

 そして矛先は、後方でニコニコ佇む少女に飛び火した。

 

「あ、気になる~」

 

「神崎さんは男子も気にしてるよきっと!」

 

「え?うーん、私は特に……」

 

「とか言って!隠してんじゃないの~?……おりゃっ!」

 

「きゃっ!?ちょ、ちょっと……はは……くすぐらないで……!」

 

「ほらほら白状してごら~ん?ここか、ここがいいのか!」

 

「やめっ……ははは……ほ、ホントに……いないってぇ……!」

 

 姦しいことこの上ない光景だった。グループ研修で仲良くなった茅野が遠慮なく責め立てる。圧倒的クスグリ力、男子が見ていたらイチコロだった。

 

「でも、うちでイケメンって言えばやっぱりあの二人?」

 

 そんな光景をみながら、誰かが呟いた。瞬間、示し合わせたかのように女性陣の脳にる二人が思い浮かぶ。代表して中村が口を開いた。

 

「──前原と磯貝ね」

 

 名が挙がったのは学級委員長とクラス1のプレイボーイ。頷く周囲、異論なしだ。

 

「前原はまあ、女癖ワルソーね」

 

「バッサリ言った!?」

 

「偏見なのに否定できないのがつらいトコだ」

 

 最初に上がった前原の評価はソレだった。いいヤツなのは知ってるけど、それはそれとしてそういう一面もありそうだよね。そんな感じである。

 

「その点で言うと磯貝君は真面目そーだよね!」

 

「委員長だしね。気が利くし、そりゃモテますわって」

 

 続く磯貝は好印象だった。そんな話が続けば、標的は自然と磯貝と仲のいい人物にうつる。

 

「ねぇメグ、実際どうなの?」

 

「えっ私?」

 

「うん。だって磯貝君と一番話してるのメグじゃん」

 

 矢田の台詞により、会話の中心に引き釣り出された片岡メグ。突然の事態に驚きつつも、彼女は自然体で答えた。

 

「話すっていっても事務的なことよ?でも、しっかりしてるし頼りにはしてるわ」

 

「うわぁ、やっぱそうなんだ。こりゃ優良物件だ」

 

「烏間先生の方がカッコいいよ?」

 

「アンタはいつまで引きづってんのよ」

 

 恋バナというよりは既に批評になっていた。他の男子の名前が出てはあーでもないこーでもないと評する。コレはコレで楽しいのでオーケーだ。どうせ男子もやってるからお互い様だよね、みんなそんな感じの心持ちだった。

 余談だが、男子はもちろんやっていた。異性のいない環境でできるド失礼なトークもあるのだ。

 

「顔で言えばカルマもモテそうじゃない?」

 

「顔はいいからね。成績優秀だし」

 

「喋らなきゃサイキョー?」

 

 カルマは素行がマイナスポイントだった。それ以外問題ないあたり高スペックな男だ。

 

「いや、でも今日一緒だったけど普通だったよ?」

 

「甘いコーヒー飲みたがってましたし、対話は可能です」

 

 班メンバーからの申し訳程度のフォロー。意外にも、旅行を通してカルマの評価は上がっていた。

 

「え、何そのギャップ!意外なんだけど!」

 

「ねー。カルマ君ってブラックコーヒーとか飲んでそうだし」

 

「というかナチュラルに狂犬扱いしたね奥田さん……」

 

「あ、班と言えば3人とも!色々あったらしいけどダイジョーブだったの?」

 

 班行動から、話は今日の出来事へと飛ぶ。茅野たちの班が何かしらに巻き込まれたという情報だけ聞いていたため、みんな気が気ではなかったのだ。

 

「あはは、大丈夫だったよ。心配してくれてありがと」

 

「乱暴されなかった?ケガとかは?」

 

「ないよ。男子のみんなが頑張って守ってくれたから」

 

 そう言って今日の流れを大まかに話すことになった茅野、神崎、奥田の3人。3人のおかげで男子4人の好感度はあがった。棚ぼたである。

 

「へー!アイツら、やるときはやるんだね!」

 

「相手高校生でしょ?ケガとかしなくてよかったね……」

 

「カルマ君に宇井戸君だもんね。そりゃ腕っぷしなら心配ないか」

 

「あ、あはは……」

 

 3人はとりあえず愛想笑っておくことにした。股間を抑えて信じられないくらい震えていた宇井戸の姿を奥田は全力で忘れようとした。やさしさの権化だ。悲しい事件を公に出すまい、宇井戸君の名誉のためにも!

 3人は図らずも意見が一致していた。

 

「宇井戸もねぇ……宇井戸……普通だよね」

 

 そんな流れから、自然と次の評価対象は宇井戸になった。既に杉野と渚は出ていた。班で最後まで触れられなかった男だった。

 

「うん、本校舎にいた時は噂だけ聞いててヤバい人だと思ってたけど……」

 

「ね。めっちゃ人畜無害だった」

 

「最初同じクラスになるときすごい身構えたよ私」

 

「普通に会話できて拍子抜けしちゃったよね」

 

「男子と話してるときはアレだけど」

 

 散々な言われようだった。ただ、前評判がカス過ぎて逆に普通で高評価になる稀有な例でもあった。

 

「でもさ、毎月ボロボロになってるから喧嘩はしてるんでしょ?」

 

「──ん~、してないんじゃない?」

 

 そんな評の中、待ったをかける声があった。声の主に視線が集まる。

 

「だってさ。巻き込まれてるだけって言ってたよ?」

 

「……イヤイヤ倉橋さん?『喧嘩してきたぜッ!』なんて正直に言わないのよふつー」

 

「えー、そうかなぁ?だって昔から『不良発見器の那月君』って呼ばれてたよ?」

 

「「「そんなあだ名あったの!?」」」

 

 倉橋の発言に全員度肝を抜かされた。不憫すぎるだろう宇井戸。少しかわいそうになった。

 

「……って、なんでそんなこと陽菜ちゃんが知ってるの?」

 

 いち早く気がついたのは矢田桃花だった。同級生の昔のあだ名を知っていることへの不信感、矢田は鋭かった。

 対して、倉橋はしれっと答えた。

 

「んー?えーっとね~、小学校同じなんだ」

 

 あんまりにも自然なその答えに女子たちは普通に聞き流した。

 

「へぇ、じゃあ幼馴染だ」

 

「っていっても、噂で聞くくらいだったから詳しくないよ?」

 

「あ、そっかー。じゃあ面白い話は聞けないね……??」

 

 あれ、なんかおかしくね?

 

 その思考に至るまで、ケッコーな時間を要した。そしてようやく理解が追いついて、ソレは爆発した。

 

「「「な、なにぃぃぃぃいいいい!?!?!!?」」」

 

「うわー!?うるさいよー!!?」

 

 ☆

 

「だから!詳しくは知らないの!ホントにっ!」

 

 ぷんぷんっ!そんな効果音が聞こえそうな勢いで倉橋陽菜乃は怒っていた。あの後滅茶苦茶問い詰められたからだ。

 そのあまりの圧に一生懸命昔の記憶をさぐる羽目になった倉橋の怒りもひとしおである。

 

「──つまり、宇井戸の不良疑惑はその体質と小学校時代の友達が原因ってこと?」

 

「わかんないけどね!問題児3人組って有名だったから!」

 

 もしかしたらケンカしてるのかもしれない。一応そう告げておく倉橋。たとえ脳内でなさそうだと思っていても言わないのだ。また絡まれるから。倉橋陽菜乃は賢かった。

 

 それに、こんな大勢の前でペラペラ話してたまるか。私だけ求められる難易度高すぎだろう。そんな思いもあった。倉橋陽菜乃、自分のプライベートはちゃんと隠すタイプだった。

 

 

「というか!なんでそんな秘密隠してたの陽菜ちゃん!」

 

 矢田の台詞を皮切りに、ソーダソーダと声が押し寄せる。こうなるからだ、倉橋はそう思った。

 

「だってさー、E組来てからの方が喋ってるんだよ?今さら言う必要ないよー」

 

「……なるほど、一理あるわ」

 

 十理あるよ!!倉橋は内心でそう思った。

 

 その後も続く姦しい会話の数々。倉橋はようやく逃げられたことへの安堵でいっぱいだった。

 

「……でも、宇井戸君の友達って別の中学でしょ?なんでうち来たんだろう?」

 

「もしかしたらさー!陽菜乃ちゃんを追っかけてだったり!?」

 

「あ、それなら知ってるよ。それも一時期有名だったから」

 

「それも!?」

 

 ホントに謎に有名だったんだもん。倉橋はそう思いつつ、覚えている限りの話をする。

 

「確かアレは──6年生の夏ごろだったかな」

 

 懐かしいなぁ……。倉橋はひとり昔を思い出した。そうだ、ここへの受験で勉強を頑張っていたころだ。倉橋は自身の経験も付随して思い出した。ちょっと嫌な気持ちになった。

 

「宇井戸くんはある日急に、友達の片方に『キャラが被ってる!!』って叫んでから進路変更したの」

 

「「「無茶苦茶だ!?」」」

 

 当時も驚いた内容だ。きっとみんな驚くだろう、いい気味だ。そんな思いを込めて話した倉橋は驚く周囲を見て気持ちがよくなった。

 

 その後、消灯を告げに来たビッチ先生のおかげで話は大きく逸れることになる。

 ビッチ先生が20歳なことに驚いたり、昔堕としてきた男の話を聞こうとして殺せんせーが乱入していたり、最終的には男女みんなで殺せんせーを殺しに出向いたり。

 

 そんな感じで、E組は修学旅行を終えたのだ。

 




女子同士の呼び方も女子会も知らねー!と思いながら書いたことを白状します

倉橋さんによる過去編回想の可能性(そのうち)

  • 原作すすめろ
  • 1話で終わらせな(変則ドーラ)
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